「アクゼリュス……アクゼリュス!!」
黒い通路を歩く1人の少女が、名前を叫ぶ。
アクゼリュスは持っていた鎌をしまって、振り向く。
片目を髪の毛で隠した少女が強い勢いで歩いてくる。そんな様子を見て、アクゼリュスはへっ。と鼻で笑う。
「なんだよ、カイツール?」
「なんでだ。なんであんなことをした!!」
「なんでって……あぁ、あの鶴の話?」
アクゼリュスはヘラッという。
カイツールの眉間にさらにシワが入る。その様子を見て、おいおい、と声を上げるアクゼリュス。
「なんでそんなにキレるんだよ? あいつらは敵だぜ?」
「敵だとしても、やり過ぎだ!!」
「ッカ〜! これだから人も殺したことねぇ〜甘ちゃんはさぁ」
カイツールの目が光る。アクゼリュスの手が鎌を握る。
お互い、睨みつけ合い、己の武器を握る。
そして、ぶつかり合うその瞬間、声が響く。
「やめなさい。バチカル様が来るわ」
その声に、2人が止まる。
廊下の奥からやってくるのは、バチカルと呼ばれる大男。瞳に、「1i」という文字が見える。
バチカルの雰囲気に飲まれ、二人は黙り込む。
「カイツール、監視はどうだ?」
バチカルがそう言う。
カイツールは、少し躊躇ったあと、口を開けて話し始めた。
カイツールは、春乃のことや、鬼円の特技、癖。超能力部に関する情報を全て、バチカルに報告した。
カイツールの情報を聞いたバチカルは二度、三度頷いた。
「なるほど。あんまり怪しまれるような行動はするなよカイツール」
「分かってます。バチカル様」
カイツールは言う。
……ここまで来て、分かっただろう。
カイツールは、
◇◆◇
私、
現在は、バチカルと呼ばれる男の命令で、超能力部に入って潜入調査、みたいなものをしている。
……理由は、一つ。仲間であるツァーカブとキムラヌートが超能力部に殺られたからだ。それだけの事で、ここまで警戒するなんて思ってなかったけど。
私のやるべき事は奴らの弱点を暴いて……殺すこと。
無駄な情なんてない。奴らに何の思いもない。……なのに。
『ん? そりゃあ、『
アイツの言葉が、頭に回る。
『快弦さんが、可愛いからそう言ったッス。隠されてても、笑顔は隠れませんから!』
アイツの言葉が、グルグル回る。
『俺、快弦さんと色んなことしたいッスから』
何も知らないくせに。
何も分かってないくせに。
私の事なんて知らないくせに。
それなのに、なんであんなこと言えるの?
なんで、私の決意を揺らがせてくるの?
春乃も、香蔵も、鬼円も、狸吉も…………金之助も。
みんな、私のことを怪しんだりしないの? どいつもこいつもどいつもこいつも……なんで、なんで。
私は静かに拳を握りしめる。
そんなことされたら、もう……どうしようもないじゃない。
あいつの言葉がグルグルと回って仕方がない。
なんで、可愛いとか言えるわけ? 女誑しなの? それとも、本心なの?
分からない、分からない分からない。
……やめてよ。変なこと、言わないでよ。
そんなこと言われたら、そんなことされたら……。
「私、好きになっちゃうよ……」
その言葉は。
私の、心の底からの本心であった。
だからこそ、超能力部のみんなを悲しませたくない。どうすれば、いいんだろう。
考えろ。私は、どうすればいいんだろう。
……とにかく今は、奴らの言うことを聞いてないと。その後に、金之助達と一緒に攻めこめば、きっと勝てる。
そうだ、そうしよう。
鬼円達を見てきたからわかる。超能力部は、必ず勝てるはず。
クリフォトの樹なんてすぐにぶっ潰せるはずだ。
なのに、どこか不安になっている。
……今のみんなのテンションはダメだ。完全に下がりきってしまっている。
なにか、何かこれを挽回するような『何か』が無いとダメだ。
……どうやって? 私なんかがどうやってみんなのテンションを上げるの?
分からない、分からない。分からないことだらけだ。
けれども、諦めちゃダメだ。
それでもやっぱり、自分の正体を明かすことは怖い。
きっと、私の正体を明かせばずっと楽になる。
でも、みんなはどう思うんだろう。それが、怖い。
私が弱気になってどうする。もっと頑張れるでしょ。
「……金之助。あなたみたいに……前向きになれるかな……」
今その場に居ない、そいつのことを考える。
私は、人じゃない。人じゃないから、誰かを助けるだなんてことが出来なかった。
……私も、金之助みたいに……超能力部みたいに、誰かを助けることが出来るのかな?