アクゼリュスとの戦闘が始まる2時間前。
鬼円と金之助……そして、春乃は歩きながら作戦を立てていた。
「……俺が前に出た方がいいっすよ」
「その理由は?」
「鬼円先輩よりも硬いっす、それに、快弦さんの仇を取りたいっすから」
その目には確かに殺意が宿っていた。
しかし、それは鬼円も春乃も同じであった。
「香蔵は後から来るように言ってある」
「あっ、そうなの?」
「何があるか分からないっすからね、切り札は取っときたいってことで!」
春乃の疑問に金之助が答える。
確かに、今まで多くの人を手にかけていた人物だ。そう簡単に自分たちの切り札を見せることはしたくないのだろう。
だからこそ、相手の技を極めるために、先陣切って鬼円と金之助が向かった、というわけだ。
春乃はそのサブ……というよりも、情報提供係とも言える。
常に通話を繋げられる、そして、相手の技を誰よりもよく見ている春乃だからこそだ。
「鶴愛さんのためにも……勝たないと」
「負けるわけねぇだろ、あんな奴に」
「っすね」
三人の目に、『負け』という言葉はもう無かった。
◇◆◇
「どうしたどうしたどうしたどうしたァ!! 動きが鈍いぜェ!!?」
「チッ! しつこいなあっ!!!」
金之助が鉞を振るうが、鎌で絡め取られてしまう。
アクゼリュスの顔面に拳を振るうが、それを避けられ金之助の首に鎌が迫る。
咄嗟に横から蹴った鬼円によって吹っ飛ばされる金之助。
金之助は、ケホケホと咳き込んだ後に、地面にあるコンテナを手に持つ。
ビキビキビキと腕に血管が張り巡らされ、重たいであろうコンテナを持った金之助はそれをアクゼリュスに投げつける。
大きな音を出してそれが真っ二つに裂かれ、ケラケラと笑うアクゼリュスの声が響く。
(こいつ、強い……!)
金之助が心の中で歯を食いしばる。
金之助自身、何かと戦うということが初めてである。よくても不良……鬼円などとしか戦っていないからだ。
だからこそ、目の前にいる
しかし、それだけで止まる理由となるか?
答えは否である。
(快弦さんのために、こいつを殺せ……っ! ここで、食い止めろ、被害も、何もかもを!!!)
金之助が飛び上がり、かかと落としを放つ。
アクゼリュスが地面に叩きつけられ、ヒビと共に土煙が舞う。
「まだまだぁ!!!」
金之助が土煙の中でアクゼリュスを殴る。
腹を蹴る、顔面を殴りつける、脇腹をチョップする、首元を殴る。
とにかくやつの、やつのことを殴り続けろと言わんばかりに殴りつける。
しかし、回し蹴りを放ったときだった。
顔面を蹴り飛ばすはずの金之助の足を掴んだアクゼリュスはニタァと笑う。
「しまっ!」
「オラァよォ!!!」
金之助の足を掴んだまま地面に叩きつけるアクゼリュス。
何度も何度も叩きつけられ、金之助の口から血が吐き出される。
が、金之助は地面に指を立ててガシッと掴み、動きを固定させる。
(こいつ、地面に指を立てて……! なんつう力だァ!?)
「せん……っっぱいっ!!!!」
オレンジ色の光が眩く輝く。
刀を振られたアクゼリュスの片腕が吹き飛んだ。
「!!!」
「あっ、か、片腕が!」
片腕が吹き飛んだアクゼリュスは、分かりやすくたじろぐ。
その隙をついて、鉞を手に持った金之助は、オーラを噴き出させた。
(殺れ!!! 今こいつをここで……っ!!)
それを、狙っていたとしても。
「ダメだよせ!!!!!」
アクゼリュスの手が動いた。
無くなったはずの片腕から、何かが
それは確かに形を成して…………金之助の肩を貫いた。
グサリと刺さったそれは金之助の肩を確かに貫いた。血が噴き出し、地面に滴り落ちる。
「っ!!!」
だが、止まらない。
金之助は鉞を確かにアクゼリュスの腹に押し付けて、引き抜いた。
大きくアクゼリュスの腹が裂かれた。
血が辺りに舞い散り、金之助の頬に返り血がつく。
「金之助君っ!!!」
春乃から、悲鳴にも近い声が響く。
金之助がアクゼリュスから離れて肩を手で撫でる。
べったりと赤い液体が手につき、金之助はそれを見て、ため息をついた。
やらかした、と。
思いっきり後ろから倒れた金之助は、血を吐き出して胸を抑える。
(そうだ、った……! こ、いつ……!!)
アクゼリュスの腕を見れば、まるで……カマキリのように、手が鎌になっていた。
アクゼリュスの鎌には毒がある。
それは、新しく作られた鎌でも……例外はない。
「おい、馬鹿野郎しっかりしやがれ!!」
鬼円の怒号が響き渡る。
春乃もアクゼリュスを見て汗を垂らす。
「ああ、痛ってぇなァァ……」
アクゼリュスはまだ立ち上がっている。
金之助は鉞をしっかりと握りしめて立ち上がろうとするが、身体が動かない。
目の前が真っ暗になっていく。
(くそ、まだ……やれ……る……っ!!)
金之助は目を閉じた。
そして、意識を一瞬ではあるが、手放した。