実際、金之助には特殊効果というものがあった。
金之助さえもしらない、特殊な効果。特殊な肉体。特殊な……耐性。
金之助は、元々山育ちであり、動き回ったことにより体力、および肉体が成長していた。
山に対して、その肉体が適応しようと動いた結果である。
では、その山とは何か?
山とは、自然。
自然とは何か?
人間の手が加わっていない、山、川、海、動植物など「あるがまま」の存在を指す。
元々ある、ありのままの姿のこと。
その自然に対し適応しようとした肉体は、通常の人間ではありえない成長を遂げた。
怒れ、荒れる山に。
恐れ、渦巻く河に。
揺れ、動き続ける地面に。
噴火し、溶ける溶岩に。
「おおおおらぁああああああああああああっ!!!」
その身に、能力を宿したことによりさらなる力が増した。
その結果、彼は現在……存在する人類の中でも、通常の男性の
「そらぁ!!!」
「グゥアッ!!!?」
金之助の蹴りで思い切り吹き飛ばされたアクゼリュスは、一つ目のコンテナを突き破り、二つ目のコンテナにぶつかり止まる。
金之助はその目の前に来て、追撃をかけるように顔面を蹴り飛ばす。
「そぉっら!!」
その後、空中で一回転し、横脇腹に蹴りを入れ、ゴロゴロと転がす。
アクゼリュスの向かう先には……鬼円が立っていた。
「『日輪・戌之太刀』!!」
木刀を振り上げたことによりアクゼリュスが、空を舞う。
そして、飛び上がったのはアクゼリュスだけでは無い。
「『日輪……!!」
「『黄金ノ斧……!!」
アクゼリュスが目を見開き、鎌を構える。
が、そんなものは既に破壊されていた。
アクゼリュスの顔面に、腹に、木刀と
「……雉之太刀』ッッ!!!!」
「……八重斬』ッッ!!!!」
二人の渾身の一撃が叩き込まれる。
凄まじい速度で地面に激突したアクゼリュスは、ひび割れた地面に倒れ込む。
その後、鬼円と金之助が各々武器を構えたまま地面に降り立つ。
「やった! 鬼円! 金之助君!」
「……これで終わる思うか?」
鬼円のつぶやきに春乃がえっ、と声を出す。
金之助は静かに息を吐いて、オーラを再び滾らせる。
「……心音? こいつっ!! まだ生きてる!!」
金之助の叫び声が響いたかと思うと……。
まるでドス黒い、気配のようなもの。言い表しようのない、何かが春乃達を襲う。
春乃は口元を抑え、鬼円は目を見開き、金之助は鉞を構えた。
そうして。
鬼円の木刀と、金之助の鉞がスッパリと斬られた。
「っ!!?」
「なっ……!?」
一瞬。
二人の武器が斬られたのは、ほぼ同時に、一瞬であった。
鬼円は春乃を持って、金之助は地面に落ちてあった石を持って。
アクゼリュスが立ち上がる瞬間に逃げ出した。
「痛ってぇ……痛ってぇぞ……このドブ野郎ども!!!!」
アクゼリュスの声が聞こえたかと思えば、周りのコンテナや機械が真っ二つに斬り落とされた。
春乃はその光景は、口を開いて見ているのとしか出来なかった。
アクゼリュスの姿は、先程とは異なっていた。
まるでカマキリのように、両腕が鎌で出来ており、歯がギザギザと変形していた。
そしてなによりも。
「なに、あれ……さっきより、大きくない!?」
春乃の言葉の通り。
アクゼリュスの身長は、コンテナよりも少し小さく、しかし、明らかに鬼円よりも大きくなっていた。
この場にいる、高身長は鬼円であった。
その鬼円よりも大きくなった、ということは……つまり。
「ごはっ!?」
アクゼリュスが飛びかかり、鬼円を蹴り飛ばす。
コンテナごと蹴り飛ばされた鬼円は、ぐちゃぐちゃに潰されたコンテナの上に倒れ、頭から血を流し、左腕があらぬ方向に折れていた。
次に、金之助が勢いよく石を投げる。
しかし、その石は当たっただけで、貫くこともなく、また、痛みなど無かったかのように、アクゼリュスが笑い始める。
「ハハハハハハッ!! ここまでさせたことを地獄で自慢して回るといいぞ! この姿にさせたのは、久々だからなぁ!!!」
「ぐあああああああああああ!!!?」
自身の腕を使って、金之助の脚を刺さしたアクゼリュスは高らかに笑う。
金之助の脚をグリグリグリ、とねじり、悲鳴を楽しむように笑う。
「っ、あっ……」
鬼円から投げ出された春乃は、アクゼリュスを見て汗を垂らす。
倒れてピクリとも動かない鬼円。悲鳴をあげて、痛みに耐える金之助。
春乃は、動けなくなって…………
「……っ!」
……いなかった。
春乃は、金之助から貰っていた鉞を持って、立ち上がる。
その目には確かな決意を宿していた。
「やるか? 俺と?」
「……そんなに、私がご所望ならね!」
春乃が走り出す。
アクゼリュスの鎌が春乃に迫る。
(
春乃はアクゼリュスの鎌に目掛けて鉞を立てる。
鉞はピキっ、と音を鳴らし、春乃は建物の壁に激突する。
背中に鋭い痛みが走り、倒れ込む。
「げほっ、ごほっ……!」
しかし、春乃は立ち上がった。
春乃は立ち上がり、たしかにアクゼリュスを見つめた。
「……いいぜ、存分に殺してやるよ!!」
春乃は汗を垂らして、鉞を持つ。
ゆっくりと深呼吸をして、しっかりと目の前の相手を見据える。
「……行くよ、快弦ちゃん」
その声は、震えていた。
震えていた、がしかし……気合を入れるには、充分すぎる声だった。