ようこそ!超能力部です!   作:YY:10-0-1-2

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第99話 たった一輪の華 その⑥

 

(……動きが、見える)

 

 先程まで、あんなにも速くて捉えられなかった動きが、見える。

 きっと、血の出しすぎで頭が冴えてきているからだろう。

 鉞を振るえば、アクゼリュスの鎌がガキンと音を立てて弾かれる。

 まるで体が最小限の動きで私を守ってくれてるかのような……生存本能というやつだろう。それが働いて、動ける。

 

「っ!! てめぇマジになんなんだよォ……あァ!!?」

 

 私の目の前に鎌が振り落とされる。

 それを後ろにステップして避けて、ぐっと力を込めて、勢いよくかけ出す。

 鎌に目掛けて思いっきり鉞を振るう。ズバッと音が鳴り、鎌と腕の接続部が切り落とされる。

 

「らぁ!!」

 

 私の叫び声が鳴り、やつの脇腹に鉞が刺さる。

 痛みからか声を出さず、顔をしかめるアクゼリュスをみて、ニヤッと笑う。

 効いてる、効いてる……っ!

 私はそのまま後ろに下がり、避けようと思った瞬間、蹴り飛ばされる。

 

 血を吐き、もう一度立ち上がる。

 おかしいな、あんまり……痛みを感じなくなってきた。

 

「クソが……テメェの……テメェ()のせいだ!!」

「……てめぇら?」

 

 鬼円の事だろうか……いや、なんかちがう。

 明らかに、私に向けての憎悪が強い……? なんでだ。

 ふと、視界が揺らめくのが分かった。

 

「!!」

 

 前に倒れ込み、その後に空気が斬りさく音で目を見開く。

 先程まで私が立っていたところ……ちょうど首筋があったところに鎌があった。

 コンテナが何個か切り落とされ、大きな煙を上げて爆発する。

 

 走り出す。あんなので斬られたら、私どころか金之助君まで死んじゃう!!

 

 金之助君を持って、走り出す。

 

「はぁっ、はあっ……」

 

 どうする、どうするどうするどうする!

 この近くに倉庫はない! 隠れられる場所がない!

 どうしよう、どうすればいい! 何か、なにかないのか!

 

「どこだァ、出て来やがれェ……カイツール……」

 

 快弦ちゃん、を呼ぶ声?

 もう一度ギリっと歯を噛む。あんなやつなんかに、快弦ちゃんを……呼ぶ資格なんて、ないっ!

 けれども、どうすればいい……なにか、なにか……っ!

 

「いや、爆発……?」

 

 なぜ先程爆発したのか?

 そうか、船に積むための……家電や、自動車あるのか。

 ならば、ならば……!

 

 私は辺りを見回す。あった、クレーン車だ。

 コンテナを船に乗せるためのクレーン車……あれを使って、コンテナをあいつにぶつければ……!

 ぶつけなくても、切った瞬間、車のオイルがかかるはず!

 

「っ!」

 

 私は駆け出す。なんとかクレーン車にまで辿り着き、汗を垂らす。

 起動しない! 当たり前だ、今のご時世、鍵を入れたまま帰る馬鹿などいない。けれども、動かさないと!

 

「動けっ、動け!!」

 

 エンジンを入れる部分を触って何度も何度も壊そうとする。

 ……ふと、声が響いた。

 

『こうよ!』

 

 なにか、黒い何か……髪の毛のようなもの? が鍵穴に入って……カチリ、と音が鳴る。

 クレーン車が動いた。

 

「!!!」

 

 分からない、分からないけど……動いたなら、使わせてもらう!!

 クレーン車を動かして、コンテナを掴む。

 コンテナが、クレーン車が動いたことで、アクゼリュスがこちらに気づいた。けれども、もう遅い!!

 

「当たれェエエエエエッ!!!!」

 

 クレーン車による、コンテナを持った攻撃。

 アクゼリュスの顔面にコンテナが当たり、そのままコンテナが落ちてさらに追撃する。

 ガシャン、と音を立てたコンテナは、潰れて……光った。

 

「うわぁっ!!?」

 

 大きな爆発と共にクレーン車が悲鳴をあげる。

 私は飛び降りて、ゴロゴロと転がり込む。痛ぁ……膝を擦りむいた!

 

「っ……!」

 

 アクゼリュスの姿が見えない。死んだの、だろうか……?

 ふと、後ろを振り向く。

 

「なっ……!」

 

 アクゼリュスが立っていた。

 片腕がもげており、身体中から血を流していた。

 どうやって……! 体を小さくして、コンテナの爆発の勢いでここまで吹き飛んだの!?

 

「死ね、クソガキィ……カイツールァァア!!!」

 

 私は後ろに逃げようとする。

 ダメだ、アクゼリュスの方が早い、私はアクゼリュスの鎌を見て口を開ける。

 まるで全てスローモーションのように、ゆっくりと動いて……。

 

「オラァァァ!!!!」

 

 アクゼリュスの顔面に右ストレートが入る。

 その顔は……知ってる! 殴ったその人の顔を、よく知ってる!

 

「邪魔ァ、すんなぁ!!!!」

「鬼円っ!!!」

 

 鬼円が顔面を殴り、目を見開く。

 アクゼリュスが殺そうとしていた私からそっちに鎌を向ける。

 鬼円の顔から、血が吹き出し、顔面から血が流れるが、鎌を思いっきり叩き折った。

 

「死に晒せぇえええっ!!」

 

 アクゼリュスに近づいて、もう一度……顔面を殴りつけて、地面に叩きつけた。

 大きな亀裂が入っていき、ズドンッ! と大きな音と共にコンクリートが1段階沈む。

 

 力を込めた鬼円の腕は、真っ赤に染まっており……明らかに、リミッターを解除してるような、筋肉の張りだった。

 

「おに、まる……」

「言ったろ、守るって……」

 

 鬼円は顔から流れる血を片手で拭いながら言ってくれた。 

 ほんとに、びっくりした……けど!

 

「ち、血っ! 大丈夫!?」

「なんともねぇよ……」

 

 フラフラしてるけど! 私は鬼円に肩を貸して、微笑む。……勝てた。

 金之助君も、意識を取り戻したようで腕を抑えながら立ち上がる。

 私たちは歩き出して……地面の影が動いたのを見た。

「なっ!?」

「チッ! しぶ、といなぁ!!」

 

 アクゼリュスは何かを言いながらブツブツと立ち上がり、顔面が崩壊した状態で私たちに鎌を向ける。

 最早それは顔ではなく、なにか……黒くなって、見えなくなっていた。

 

「っ! 鬼円!!」

 

 鬼円がガクリと膝をつく。限界なんだ、私たちも。このまま逃げ切れる? いや、この調子じゃ、街にまで被害が出る!

 私は汗を垂らし、歯を食いしばる。もう一度……やるしか!

 

 そう思っていた時だった。

 光が、アクゼリュスを貫いた。

 

「……春ちゃん。あとは……任せて?」

 

 満月を背にして、その人は言った。私は、口を震わせて、汗を垂らした。

 その、顔は笑顔で、可愛らしいはずなのに。どこか、怖くて、凶悪で……。

 

「……さて、やろうか」

 

 悲しそうに、笑っていた。

 

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