―――――連休最終日の17時47分旧I水門入口。卒業生を回収し終えた夜宵達は当初の目的地に到着した。
「もうちょっと、待つべきじゃね」
周りを見れば夜宵とそう年が変わらない子供たちが帰宅しようとしているのを見かける。帳を張ればよいと思うが万が一を考えると安全を確認してから動くべきなのではと虎杖は皆に進言する。
「…うん、分かった。取り合えず戦いが始まったら動けるように周りを見たりしよう」
虎杖の提案に夜宵も了承し取り合えずダムの一番よく見えるように足を進めようとすると・・・
「…誰かいる」
帰るようなそぶりを見せない老婆の姿を夜宵は見つける。
「あの人何処かで見たような…」
老婆を見て螢多朗と詠子は何処かのテレビで見た霊能者じゃないのか?と頭を悩ませていると・・・
「あの人は闍彌さんですね。どちらかは分かりませんが何で此処に…」
二人よりも早く伊地知が老婆の名前を言う。
「あ、そうだ!心霊研究家の闍彌巫子さん…え、どちらか?」
「はい。表向き心霊研究家で呪術師の闍彌さんは二人います。双子で姉の闍彌弥子さんと妹の闍彌巫子さん。どちらも一級術師です」
「一級!七海さんと同じ等級じゃないですか。どうして…」
一級と聞いて螢多朗は驚く。特級を除けば呪術師において最上級の等級であり。旧Fトンネルで出会った七海を思いだしその強さを持つ実力者がこんな場所に来ている事に疑問を覚える。
「…あ!10年前から心霊系の番組に出ているって書かれているからもしかして、撮影前の下見なんですかね」
スマホで闍彌巫子と調べて出たサイトには心霊番組に出演して各地の曰く付きスポットを霊視したり心霊写真のお焚き上げをしたり除霊したりしたと書かれていた。
「かもしれません。基本的に我々呪術師の活動は秘匿するべき事ではありますが。ある程度呪霊被害を受けた時に相談できる場所をアピールする事。曰く付きスポットが祓われたと認識させてその地の不安を向かわせないようにして強力な呪霊が生まれないように抑止することをやる方も多いです。巫子さんも一級ですが年には敵わなくってこういった仕事を進んでやるようになっていまして…」
と言い伊地知は闍彌に声をかけようとする。
「…お久しぶりです闍彌さん」
「…うん?……ああ、伊地知かい。久しいね」
そう言い巫子は伊地知の裏にいる夜宵達を見る。
「霊を連れた子供に番の呪いを受けた若いの二人に後ろにいるのは高専の子かい?それに…宿儺の器…こんなにぞろぞろと伊地知、アンタどんな理由で何で此処にいるのか説明してくれるんだろうね?」
「ええ、闍彌さんの疑問は分かります。こちら、新しく呪術師になった子達です。本日は旧I水門の調査をそれと、こちらの子の為にここの呪霊を集める予定です。闍彌さんはどのような御用で?」
伊地知がそう言うと巫子は一瞬考え込んだ表情をしたのちに口を開く。
「ああ、実はここに呪い除けを置いておこうと思ってね。もうちょっとしたら此処の霊視動画を撮らないといけないから多少は効果があると思ってね『知り合い』の上の人間に許可は貰っているから後で確認してみなさい」
「…そうですか。こちらで確認しておきます」
「…そうかい。呪霊集め…ね。まぁ、危険を承知で来るならついてきな」
「…ちょっと、皆来て闍彌さんについて調べてみたら色々と分かったんだけど」
巫子の相手を伊地知に任せていた虎杖達を集める螢多朗はネットで調べた次の事を言う。
「闍彌さんは実は僕たちが本当は行く予定だったZ霊園で取りつかれて様子がおかしくなった運転手を相手に除霊したって動画が出ているんだ」
「確か、ランクAの一級クラスの呪霊が居るんじゃないかって話だっけ?祓ったんだすげえなあの人」
自分達が行く予定だった心霊スポットにすでに行きそこにいるだろう呪霊を祓ったのではないかと言う情報に詠子などは驚くが逆に伏黒はそんなに驚いている様子は無い。
「…闍彌さんの対呪霊等級は一級。つまりはその程度であれば簡単に祓えるってことだ」
「・・・・・他人が憑依されたつまり人質を取られた状態でも余裕で倒せる人か。世界は広いね…Z霊園だけじゃない。同じく僕たちが行く予定だった旧Kトンネルにも行って無事帰って来たって…旧Kトンネルの危険度ランクはSランク」
「…ネットの情報を通して作ったものだから実際はそこまで強くは無かったって話じゃない?」
「かもな、呪霊だって色々な種類がいる。純粋な戦闘力が高い霊も絡め手が得意な霊もいる。そこにいるSトンネルで捕まえたっていう霊が良い例だ」
Sトンネルの戦闘能力は準一級の中から下ぐらいだろうがその能力は霊体に干渉し自由を封じれるぐらいの拘束力がある髪を幾らでも作りだせる術式を持っている。尚且つ体内に人一人を易々と飲み込める力も持っているため道具を格納できる倉庫の役割も出来る。秘伝要員としてはトップクラスの霊なのだ。
「…つまり順当であれば闍彌さんはここ旧I水門の主も十分に返り討ちに出来る実力者―――――」
改めて巫子を見る螢多朗だが…ふと、彼女と目が合い首筋にぞくりとする嫌な気配を感じ取ってしまった。
「大丈夫っすか先生?」
「あ。…うん、大丈夫だよ悠仁君。やっぱり七海さんクラスとなるとちょっとした振る舞いも堂に入るって奴なのかなってね…」
まるで獲物を見つけた肉食獣のようなそんな気配を巫女から感じ取ってしまった螢多朗は強い霊能力者というのはそう言う者なのだと感じた―――――その感覚が正しい事も知らずに。
「あ、進む前にここの曰くを言っておきますね」
「ええ、もしかしたらここの主の呪霊の術式が分かるかもしれませんからね」
「…それじゃあ読み上げるね――――旧I水門、通称『赤水門』は」
―――曰く死体が流れつく場所でそのままとどまった霊魂が現れる
―――曰く水の上に浮く黒い人影の噂
―――曰く水面にバラバラの人の手足が浮かんで見える
―――曰く水門の上に立つ女性の霊が目撃される
―――水門が出来てから近くで首つり自殺が起こるようになった
―――曰く近くの水没者供養の地蔵の首が落ちる
また、これらは夜の話であり昼間は市民の憩いの場所になっている。
「―――――あ~それだけの曰くが来るだけあるな。見ろよ、水辺に霊魂がいっぱいいるぜ」
螢多朗のセンサーからはそこまですごく反応するような物は無いが虎杖達が水辺に視線を向けるとそこには多くの死者の霊と低級の呪霊が住み着いていた。
「調べない事には何とも言えないから取り合えず…行こう」
夜宵の言葉に了承した一同は更に旧I水門の奥へと足を進める。
・・・・・そんな中帰路につこうとする子供たちを見送っていると一人の子供がまだ帰らず一人スケッチブックに絵を描いていた。
「…ご両親の迎えでも待っているのでしょうか。何も無いと良いのですが」
昼間は兎も角夜になると呪霊が活発化し場合によっては危険に巻き込まれる事もあるため伊地知は少し心配そうに子供を見つめる。
「…ちょっと、僕が声をかけにいきます」
そう言って螢多朗が子供に近寄る。
「おぉ、…あのコミュ力の低い螢多朗が…」
「なんと…」
自分から子供に声をかけに行く螢多朗を見て夜宵や詠子は喜んでいる。
「そんなに喜ぶものですか?良い大人って年ではまだ無いですがあれぐらい普通なのでは?」
あまりにもオーバーリアクションに伏黒は思わず首を捻るがその答えは直ぐに詠子が答えてくれた。
「…見て分かると思うけど螢ちゃん、私のせいであんな呪いにかかっちゃってその事を引きずって大学入るまで引きこもっていたんだ」
「…それは…失礼しました」
「ううん、良いの。どうであれ今は螢ちゃんもこうやって外に出てああやってゆっくり慣らしていけば良いから」
「…そうなんですか。…あれ?幻燈河さんどうしました?」
突然駆け出しいつの間にか別の場所に移動した子供を追いかけていく。
「…霊に操られた?…には見えない。人間の子供…」
まさか悪霊に催眠を受けたのか?と子供を現実の方の目で見るが特に変わりは無い。
「…呪力も感じないよな?」
「ああ、タダの子供のはずだが…」
虎杖、伏黒はそれぞれ呪術師としての視点で子供を見るが誰がどう見てもタダの子供。呪霊などではない。
「…!?…ッ・・・!!?」
子供と近づき渡されたスケッチブックをどんどん捲っていき驚きの表情をしていく螢多朗に明らかに一同は構える。―――――なんであれ螢多朗は今、敵の術中に入っている!!
『■■■■■■■■■■■■■!!!!!??』
絶叫が轟く。誰か、恐らく目の前の子供の本性が露わになったのだと全員は絶叫の元に視線を向ける。
「…みんなあれ見て」
夜宵が指を指す。そこにはダムの上に一人の女性らしき霊が姿を現した。
(あれって…)
子供が書いたスケッチブックを見て螢多朗は理解した。あの霊は子供と父親と浮気相手を惨殺した義母なのだと。
(消えた!?)
しかし、直ぐに義母の霊が消えた。
「あんた…代わりに吊られて…」
どうやって接近したのか義母の霊は螢多朗の後ろに回り込み身代わりを強要するが…
「―――――――あたしのエモノだよ」
それよりも早く巫子がぼそりと誰にも聞こえない小さな声でそう言い義母の霊を簡単に祓って見せた。
(―――――早え!!俺達が直ぐに幻燈河先生を助けようと動こうとする前に闍彌さんが祓いやがった!!この人確かにナナミンや東堂と同じく一級術師だ)
虎杖達が動く前に義母の霊を祓って見せた巫女の実力を見て虎杖達は巫女の実力を認識した。
「―――――――――おかあさん、いなくなっちゃった」
だがしかし、それが子供――――――否、旧I水門の主のターゲットが闍彌巫子へと移り・・・・・
「!?」
一瞬で巫女は口から血を吐き武器を持っていた腕が弾け飛びダムへと引っ張られ吊るされていた。
『!?』
一同が唖然とする。一級術師がなにも出来ずに仕留められた事も十分驚愕するがそれ以上に巫女が吊るされたダムの周囲には無数の霊体が同じように吊るされていた。
――――――そして、全員は理解した。この子供の呪霊は特級呪霊であり、その行動原理は恐ろしい程に純粋で真っ黒な―――――憎悪。
「ッ!?そんな!…せっ、折角手に入れた体なのに!!?」
腕は吹き飛び、首には縄で吊るされている。おまけに次々と霊体達の体が消えていき落ちていく。間もなく自分も『呪殺』されてしまう。
「~~~~~ッッッ!!かっ、かくなる上は・・・・・おぇぇぇぇっ・・・・・・」
『!?』
一連を見ていた虎杖達は見てしまった。『闍彌巫子』だった老婆の口から見るからに巫女とは思えない女の霊が這い出て闍彌巫子が呪い殺され肉体が旧I水門へと落ちていく前に外へと逃げようとしていた。
「…おい、伏黒。人の霊魂ってあんな感じなのかな」
一瞬虎杖は何かの勘違いだと思った。
「そんな訳無いだろう!クソッ!ただでさえ特級クラスと対峙しているのに!」
その可能性は伏黒が否定した・・・・・即ち。
「闍彌巫子は―――――成り代われた。恐らく旧Kトンネルの霊。だから私達は―――S級霊二体と対峙しないといけない」
夜宵がそう言う。あの成り代わり霊が別の体を奪って人間社会を脅かす前に速やかに祓わないといけなくなった―――それも、五条悟でさえ仕留めかねない特級呪霊を相手取りながら。
・・・・・さて、この呪術収集、呪術廻戦とダークギャザリングのクロスオーバー作品である以上避けては通れないものがあります。―――即ち呪術師は死後、呪霊にさせないために呪力で殺すべし。・・・これ、どうあがいてもあのまま呪殺されたら旧Kトンネルの霊死ぬんじゃない?と思いこうなりました。他人の体を操っておいて呪力でくたばらないは虫が良いと言うものです。そのためか原作であやふやなものは独自裁量で進んでいますコメントでも五条悟は成り代わりを見抜けると答えたのも渋谷で夏油が姿を現したら――なんだ、夏油の体を乗っ取った成り代わりかとド突いておわりになります。・・・というかあれだ。今後明らかになりますが平安宿儺が何で安部家と戦ったり新嘗祭に招かれたのかとかダークギャザリングの歴史を差し込むと案外すんなり行くんですよね。
次回旧I水門の霊対旧Kトンネルの霊対安い女?ファイ!