呪術収集   作:黑米田んぼ

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さて、皆さんお久しぶりです。四国に来て初めての一人暮らしそこそこやっていますが色々な忙しさで作品を作るのも一苦労です。まぁ、ゆっくり待ってもらえれば幸いです。ではどうぞ。


第26話 旧I水門――肆

『…………足りない』

 闍彌巫子の体を呪殺しその体を変換しタッパーには大量の肉団子が溢れる。

 

「…おい、あれって…」

 目の前で殺害された闍彌と同時に溢れる肉団子を見て想像してしまった虎杖は思わず否定しようとするが。

 

「…多分、あのタッパーの中身はおそらく呪い殺されたおばあちゃん」

「!!…」

「っ、マジかよ・・・」

 しかし、冷静に夜宵は起こった現状を元に旧I水門の霊の能力を推測する。

 

「…それはそうと、私達にはもう一つ相手をしないといけない相手がいる」

 夜宵の髑髏のような重瞳はもう一つの霊。闍彌巫子の体を操っていた霊―――――旧Kトンネルの霊を見る。

 

『・・・』

 じっと、水の中にゆっくりと隠れ逃げようとしている旧Kトンネルの霊の姿を夜宵の瞳は捕らえる。

 

「―――あの呪霊(旧I水門の霊)も危険だがこっちの呪霊も何とかして祓わないといけないぞ」

 そう言い伏黒が影絵の構えをとる。

 

「――――鵺」

 伏黒の影から現れた仮面の付いたフクロウのような鳥。鵺が電撃を纏って旧Kトンネルの霊に攻撃を仕掛ける。

 

「!!!!!?」

 どうやら呪霊であっても水と電気の組み合わせは効くのか旧Kトンネルの霊の声にならない悲鳴が旧I水門に響く。

 

「!…恵!式神を戻して!!」

 旧I水門の霊がスケッチブックで何かを書こうとしているのを見て夜宵が伏黒に鵺を戻すように指示する。

 

「…何とか戻したが少しやられたな。…だが、奴の術式の発動条件が分かったな」

 夜宵の言葉を理解して鵺を解除する直前鵺の両翼がまるで塗りつぶされるような風に消されていくのを見た。幸いにも伏黒には鵺が破壊されて二度と呼べないような事が無い事を確認した。

 

「…夜宵、あの呪霊は何をした?」

「…スケッチブックに何かを描こうとしていた。恐らくあの肉団子には二つの方法で生成出来ると思う。一つ目が闍彌巫子を掴んだ謎の腕もう一つはスケッチブックで絵を描いて塗りつぶす。そうして出来上がった肉団子で回復と強化をする極めてシンプル且つ強力な能力」

 冷静に夜宵は起こった出来事に分析して旧I水門の霊の能力を把握する。

 

「…俺達は一応夜宵の術式で何回か防げるけどそれもどれだけ耐えられるか分からねぇ」

 夜宵の術式雛祭呪法は伊地知を含めた全員に施されているが、身代わりとなる呪霊は神と共食いによって根こそぎやられており。残っているは危険だがいざとなれば使うしかない特級呪霊が殆どであり使う時に疲弊して直ぐやられたらたまらないし、旧Fトンネルで集めた呪霊で身代わりにして突っ込むのには少し心もとない。

 

「不味いわよ。あの呪霊水中に隠れて森の方に逃げようとしているわよ」

 釘崎の言葉道理旧Kトンネルの霊は再び呪力を低くして螢多朗のレーダーさえ引っかからない程の隠密性で旧I水門の近くにある森林地帯へと移動しているように見える。

 

「…悠仁、私達なら大丈夫だと思うからこれを持ってあの呪霊を追いかけて」

 そう言って夜宵は大僧正のぬいぐるみを虎杖に渡して旧Kトンネルの霊を追いかけるように促す。

 

「…分かったけど、コイツよりも軍曹貸してくれよ」

 この間散々な目に遭った事もあり信頼が宿儺クラスに低い大僧正よりも巻き込み型ではあるが比較的友好的な鬼軍曹を求める虎杖だったが…

 

「…それは出来ない。ああ見えて軍曹は真っ当な軍人の霊。だからよっぽどの相手、神様クラスじゃなければ女子供に手を出せない。だから、旧I水門の霊やあの霊には軍曹はやる気を出してくれない」

 め、面倒くせぇ…見るからに感情が見て取るほどに顔に書かれていたが、どうにもならない。

 

「―――よし、俺と虎杖、釘崎で闍彌を成り代わった呪霊を対処するぞ合図をしたら走れ」

「…合図って?」

 夜宵の疑問を無視して伏黒は手で影絵を組む。

 

「―――脱兎」

 そう伏黒が呟くと伏黒の居た所から大量の兎が現れ旧I水門の霊の周りに集まり視界を塞ぐ。

 

『…無くならない。早く肉団子になってよ』

 過去の出来事のせいで大量の兎が義母に見えてくるのでスケッチブックで塗りつぶして肉団子にしようとするが潰しても潰しても消えない事に苦虫を嚙み潰す旧I水門の霊。

 

「―――行くぞ!」

「夜宵、幻燈河先生!!俺たちが戻るまで耐えたからよ!!」

 その隙に伏黒達は旧Kトンネルの霊を追いかける。

 

「う、うん。虎杖君達も頑張って!…それで夜宵ちゃんあの霊をどうやって倒すの?」

 特定の居場所を持っているか分からない生きた人間を襲い乗っ取るような旧Kトンネルの霊を虎杖達に追いかけてもらう事には賛成だがそれはそれとして、目の前にいる旧I水門の霊をどうやって倒すのか螢多朗が夜宵に聞いてくる。

 

「…あの霊の能力は人、霊問わず肉団子に変換する能力。今のままでは卒業生を呼び出してもすぐにやられて吸収されてしまう。だから、私達は身代わりによる残機が尽きる前にあの呪いの起点となっているスケッチブックを奪い取るか破棄する。その上で卒業生を出せば少なくともワンサイドゲームにはならず私達はあの霊に勝てる」

 

「…けど、それはどうやって?」

 もし、旧Kトンネルの霊が闍彌巫子の体と共に呪殺されていれば。伏黒の脱兎を駆使しながら釘崎の釘飛ばしやイチローのレーザービームに匹敵する投擲力でスケッチブックを奪い取れることが出来るのだろう。

 

「…単純、これを使って」

 とカバンから何かを取り出そうとする夜宵だが、旧I水門の霊は夜宵を霊の腕で引っ張り妨害する。

 

「―――――」

 すぐさま鬼子母神の指で霊の腕を落とす夜宵だが、旧I水門の霊は数で攻めてきたために夜宵の守りは削れていき。ついには守りが突破され持っていたグレイ人形が飛ばされ夜宵は霊の腕に捕まってしまった。

 

「……ッ!」

 霊の腕に捕まった夜宵は水門の頂上に連れてこられそのまま首を絞められていた。雛祭呪法は霊の締め付けのダメージは受けないが吊るされた事で夜宵自身の体重が首にかかり長時間この状態でいれば命は無いだろう。

 

「っ……どうしよう」

 本当ならば今すぐ夜宵を助けたい詠子だが、螢多朗もまた霊の腕に捕まって水攻めを受けている。夜宵と螢多朗どちらをまず助けるのか選択をしなければいけない。

 

「―――――詠子さん。夜宵さんをお願いします。幻燈河くんは私が何とかします」

 悩んでいる詠子を伊地知が指示を飛ばす。

 

「伊地知さんの言うとおりだ!!詠子!僕はまだ大丈夫だから夜宵ちゃんを早く助けて!」

 助けた後は僕を助けてねと螢多朗も詠子の背中を押す。

 

「わ、分かった。二人とも気を付けて!」

 夜宵を救出しようと詠子が水門へと走り出す。水門へと動こうとする詠子を旧I水門の霊は肉団子にしようとスケッチブックを塗りつぶそうとするが。

 

『!?』

 気を引こうと伊地知が清め塩を投擲する。特級相応の実力であれば蚊に刺された程度しか無いがそれでも注意は詠子から伊地知へと移る。

 

「…頼みますよ詠子さん」

 旧I水門の霊が伊地知にスケッチブックで攻撃をするが伊地知を含めて夜宵達は呪霊の攻撃は夜宵の術式で手元にある呪霊にダメージを肩代わり出来るため伊地知が術式によって肉団子にならない事に疑問を覚える。

 

「…無駄ですよ。私の術式はあなたのスケッチブックのような呪いを無効化する。私を殺したければ物理的に殺すしかないですよ」

・・・・・もちろん嘘だ伊地知は大した術式も呪力や体術を持っていない。優一伊地知が誇るのは補助監督として極めた結界術だけだ。

 

『・・・・・』

 伊地知の嘘はうまく引っかかってくれたようでスケッチブックは無駄だと判断し旧I水門の霊は霊の腕を伊地知へと伸ばしていく。

 

「っ、早くしてください詠子さん…」

 霊の腕を避けながら伊地知は詠子を待つ。ちらりと見ると既に夜宵を救出して降りようとしている。

 

「しまっ―――」

 とはいえ流石に実力が違いすぎるためにあっさりと取り押さえられ地面に叩きつけられる。

 

「くっ、このっ…」

 拘束を解こうと呪力で肉体強化を行うが伊地知レベルの実力程度では霊の腕を振りほどくことは出来ない。水位が上がり螢多朗共々水攻めされる―――――直後。

 

「―――――お待たせ」

 駆け付けた夜宵が二人をあっさりと救出した。

 

「夜宵ちゃん!!」

「…夜宵さん。ありがとうございます」

 水に濡れたスーツに震えながら伊地知もまた夜宵に感謝を伝える。捕縛した伊地知達を開放した夜宵は旧I水門の霊の注意を引き付けた。その隙をついて重い石を括り付けたSトンネルの髪縄を持った詠子が旧I水門の霊の凶悪な術式の発動条件であるスケッチブックを奪うことに成功した。

 

 

 

 

 

 

「――――――――…勝利の条件は揃った」

 射程距離無制限、身代わりなどの肩代わり以外の防御無効で対象者を肉団子にする凶悪な術式の発動条件であるスケッチブックを旧I水門の霊から取り上げる事に成功した夜宵達。これにより卒業生を出してもリゲインで回復されて競り負けることも少なくなった。

 

「―――――これで卒業生を出せる」

 距離を取るために夜宵は旧I水門の霊に煽り攻撃させその攻撃を卒業生に受けさせダメージを与えさせヘイトを旧I水門の霊に向けさせた。

 

 

 

(―――――悠仁、そっちも頑張ってね)

「煌めいて――――――…魄啜繚乱弟切花魁」

 自分たちとは別に強大な呪霊と戦っている虎杖達を祈りながら夜宵は卒業生を呼び出した。




次回から虎杖達のお話です。旧岩淵水門を参考にどのような戦いをするか今後も楽しめてもらえたら幸いです。
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