呪術収集   作:黑米田んぼ

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お久しぶりでございます皆様。スランプと誘惑ばかり。やりたいことが多すぎて結局かかってしまいました。それでも頑張って京都編まで行きたい。ではどうぞ。


第27話 旧Kトンネル

「―――――釘崎、虎杖!奴は森へと逃げて行ったぞ!」

 夜宵達が旧I水門の霊と戦っている最中、虎杖達は旧Kトンネルの霊を追いかけて旧I水門近くの森林地帯へと足を進めていた。

 

「…それはそうとさ、虎杖。そのぬいぐるみ役に立つの?」

 呪霊が隠れた危険地帯を歩きながら、釘崎は虎杖の手元にある厳重に封じられた。禍々しい呪力を漂わせている大僧正が封じられている黒熊のぬいぐるみに視線を寄せる。

 

「役に立つわけないだろ!!コイツの術式、お経を聞いたら地獄に落とす術式らしくて前に夜宵が出した時は無差別で俺や幻燈河先生を地獄へ落とそうとして来たんだぜ!!」

「よし、こいつは役に立たない。まずは俺たちで何とかするぞ。」

 大僧正の術式を聞いて、伏黒達は大僧正を制御不能の爆弾として扱い。出すのを封印し、一級術師の体を傷つけずに奪って見せた強大な呪霊と対峙しようとしているのだ。

 

「…予め言っておく一級術師である闍彌さんが敗れた以上、相手は準特級クラスと考えて間違いないだろう。術式は分からないが森へと逃げることを考えると穴倉を得意とする手合いだろうと考えたほうがいい」

 

「分かった!」

 先行の虎杖はゆっくりと木が月を隠す森の中へと足を進める。

 

 

 

「・・・」

 月の光も満足に届かない森の中で、先頭の虎杖は草を靴で踏みつける。H城址と同じく光がほとんど入ってこない。暗闇の森の中である以上、何時あの呪霊が仕掛けてくるか分かったものではない。

 ジャリ・・・ジャリ・・・靴が地面を蹴り一歩一歩進んでいくたびに光無き森に足音が響く。

 

――――――チリン♪

 

「ッ!?」

 鈴の音が響きその方向に虎杖は振り向く。

 

「・・・・・」

 そこには頭の上に小さな鈴を二つ付けた幼い少女が居た。

 

「伏黒…あれ……」

「ああ、…分かっている……」

 虎杖は伏黒に声をかける。そして、伏黒もまた虎杖の言いたいことを理解していた。真っ暗な夜の森。とてもじゃないがこんな時間に年端もいかない子供がこんなところに居るのは現状二つしか考えられない。―――敵か敵の術式による幻影だ。

 

「・・・・・」

 ゆっくり、…ゆっくり…少女に近づく虎杖。自然体だが何を仕掛けて来ても対応できるようにしていた。

 

『…!?』

 しかし、旧Kトンネルの呪霊が狙っていたのは虎杖では無かった。伏黒の傍にいた玉犬が気づき主人に伝える。

「釘崎ッ!?」

 近くにいた釘崎に狙いは自分らだと伝えて本能で右へ飛ぶ。

 

 

『――――――――』

 伏黒、釘崎が居た場所に大量の黒髪を持った上が白。下は黒の服を着た悍ましい女性のような呪霊が降りてきた。

 

『…あたま…ちょうだい…』

 髪の中には幾つもの頭部がありその中には虎杖が近づいた少女の頭部もあった。

 

「伏黒!釘崎!…っ!?」

 二人を思わず心配する虎杖だが心配する余裕は虎杖にも無い。

 

『あたま…ちょうだい…』

 子供の姿は消え顔や手があった場所には黒髪の渦があり虎杖を目掛けて黒髪が迫りくる。

 

「くっ!?」

 迫る物の性質上、手で払ったりするような捌きかたでは手首に巻き付かれて呪いの起点にされるかもしれない。そう考えた虎杖はバックステップで距離をとり躱していく。

 

「―――満象、虎杖飛べ!!」

『『「!?」』』

 相手に下手を取って自身の式神が呪いの起点にされたくないからこそ、伏黒は自分の式神の中で数少ない遠距離攻撃の出来る象の式神を呼び出し、莫大な水量が分霊ごと旧Kトンネルの霊を飲み込む。

 

「―――――やったか?」

 伏黒の叫びを聞いて近くの木に飛びついた虎杖は洗い流された二つの呪霊を倒したか気にしていた。

 

「・・・」

 相手は一級を倒した最低でも準特級クラスの強敵ならば追撃で鵺の電撃を浴びせるのがセオリーだが…

 

「―――チッ、虎杖後ろ!」

 

「―――――しまっ!?」

 その場から離れようとしたが、どうやら逃げる前に或いは分霊を犠牲にして発動するものなのか、それとも事前に仕掛けられたのか、足場にしていた足に髪の毛が絡まり逃げようとしても逃げられず。バランスを崩した虎杖の体重を支えることが出来ず枝は折れ、虎杖は大地のありがたみを知ることになった。

 

『―――――頂戴』

 釘崎の牽制を呪力を込めた髪で弾き飛ばした旧Kトンネルの霊はそのまま虎杖に向けて飛びかかる。

 

「んなろ!?」

 だが、2,3メートルの高さから落ちた程度のダメージでは虎杖悠仁にとって大したダメージは無い。五条悟から教わったのかそれとも天性の格闘センスなのか躰道やカポエラの如き蹴り技を旧Kトンネルの霊に叩き込み。すぐさま伏黒達の元へと移動する。

 

「…流石にやるな」

「ああ、流石は一級術師を倒した呪霊ということか」

 ゆらゆらと髪の毛を揺らした女性のような姿の呪霊旧Kトンネルの霊。

 

 

 

 

――――――――――旧Kトンネル。またの名を旧小峠トンネル。東京にある古びたトンネルは1988年から一年間もの間、4人の幼い少女を辱めながら殺害した殺人鬼、宮﨑勤がここに廃棄した遺体を起点に発生した呪いのスポットである。

 殺されバラバラにされた少女が奪われた体を取り戻したいのか手首の無い女の霊を見た。鈴の音を聞いた。金縛りにあったなどの霊現象が起きたとされている。

 

 そのため目の前にいる旧Kトンネルの霊はそんな殺された少女が悪霊化した末路なのか、それとも2006年に死刑となった殺人鬼の魂が呪いによって引き寄せられたのか、或いはそれらの噂と呪い集まったがこの地に霊魂を喰らった呪霊なのだろうか。

 

『―――――――』

 どのみち、虎杖達にとって祓うまたは捕獲する以外の選択肢は無い。ゆらゆらと掴みどころの無い動きで虎杖達にどう仕掛けようか試行する旧Kトンネルの霊。

 

「…後ろだ釘崎!?」

 再び伏黒が指示を出して前へと逃げる。二人が居た場所には再び旧Kトンネルの霊が現れた。

 

「ちっ、…コイツ、幾つの分身を持っているのよ?」

 幾つも幾つも奇襲してきた旧Kトンネルの霊に思わず口の悪い言葉が出てくる釘崎。

 

「H城址の霊は幾つもの分霊を用意していた。こいつも同じように分霊を出しているんじゃないかッ!?」

 虎杖がそう言う前に旧Kトンネルの霊が虎杖に攻め込む。

 

「そんな手で!」

 真正面から仕掛けてくるなら迎え撃ってやると呪力を込めて構える虎杖の耳に。

 

「後ろだ!?」

 伏黒の声が聞こえた。

「ッ!?」

 虎杖が振り向けばそこには新しい旧Kトンネルの霊の分霊が虎杖の靴に触れる。

 

「こっ!?あ、足が!?」

 蹴り飛ばそうとする虎杖の足が動かない。見ると虎杖の靴が地面に縫い付けれているのだ。

 

「物体を縫い付ける。こいつがこの呪霊の術式!?」

 虎杖がそう言った直後に旧Kトンネルの霊が虎杖の顔に近づき無理やり口を開けようとする。

 

「むぐっ…うがぁっ…」

 さしもの虎杖とて口だけの筋肉では呪霊の力を振り切れない。ゆっくりとゆっくりと旧Kトンネルの霊が虎杖の体に入ろうとしている。

 

「ッ!?次は虎杖の体を乗っ取る気か!?」

 伏黒がそう判断するが他の分霊や他の式神では虎杖を巻き込む釘崎も同様だ。

 

―――――――勝った。旧Kトンネルの霊は高らかに勝利宣言を心の中で行った。最上級の身体能力に呪いの王をその身に宿す虎杖悠仁、これならいずれ宿儺の術式も得られる可能性がある。これなら今度こそ南光坊にだって勝てるそう確信した。

 

 

 

 

 

 

 

「…戻ったかオズワルド、あれは今何をしている?」

 成り代わり達の集まる場所でオズワルドは成り代わり達の首魁の一人南光坊が声をかけて来た。

「ああ、闍彌さんですか?今旧I水門に呪物を置きに行ってもらっていますが?」

「そうか、一級術師の体を手に入れて、あれも浮かれているのだろう。浮かれて別の術師や呪霊にやられても不思議ではない」

「困った。それもあり得なくありませんね。最近我々の計画の余波のせいで術師達もざわついているようですし、もしかしたら高専の術師と出会うかもしれませんね」

 

「…ただの術師であれば良いが虎杖悠仁は危険だな」

 南光坊がそう言うと思わずオズワルドは首をかしげて尋ねる。

 

「宿儺の器ですか?確かに優れた耐性と身体能力を持っていますが所詮術師数か月も満たない初心者マークですがそんなに脅威ですか?」

 オズワルドとて虎杖悠仁の有能性は十分理解できている。…しかしだ。だからと言ってそんなに警戒するほどの強さを呪術師になって間もない彼をどうしてそこまで恐れているのだ?と疑問を覚えるが。

 

「…あれは羂索の作品だ。警戒をしないわけにはいかない」

「…そうだったのですか?」

 羂索、成り代わりの術式を持つ特異な呪詛師だ。まさか虎杖悠仁が『アレ』の作品だとは初耳だ。

 

「…天然物の宿儺の器などあり得ない。そしてそんなものを作ろうとする馬鹿は奴以外にいない」

「・・・・・そこまで言うのですか」

 羂索の事は古参の人間から再三聞かされた。この国で多くの呪術的事件を起こした特級危険人物だ。自分達成り代わり陣営とはそれなりの付き合いだが徹底的に信用するなと言わされている。

 

「…幾つもの体を入れ替えてそれでも癒えぬのだ。あの呪いの王に付けられた心の傷をな、それが宿儺だ。それを閉じ込めれる虎杖悠仁はそれだけで脅威となるのだ」

 そう言い南光坊は一切傷の無いしわがれた体を優しく擦る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――――不愉快だ。

『ッ!?』

 いつの間にか旧Kトンネルの霊の視界にはまるで腹の中のような怪しげな肉塊が浮かぶ光景が広がり、巨大な骨の上には呪いの王が座っていた。

 

「小僧の体を乗っ取るのは良い。所詮俺の取って小僧は檻だ。煮るも焼くも好きな調理方法を選ぶが良い」

 そう言い宿儺は片腕を上げる。

 

「―――――だが、碌に世話もしていない髪で俺に触れるな。食事中に貴様のような不愉快極まりない汚物が出たら折角の馳走も不味くなる」

 手首を旧Kトンネルの前に突き出し降ろす。

 

「俺の視界から去れ――――――――」

 

 

 

 

 

 

『gyaaaaaaaaaaaaaaaaaaa!!?』

「「!?」」

 声のならない声が旧I水門の森に響く。目の前に今、正に虎杖の体を奪おうとした旧Kトンネルの霊の呪い体が両断されているのだ。

 

(なぜ…いや、そんなこと意味が無い。間違えた!違う…そっちはダメだ!あれは…あれは…)

 天上天下唯我独尊、宿儺の価値観は己の愉快/不快のどちらか。

 

「…なんだか分からんがよ」

『ッ!?』

 今回は当然ながら不快。自分の魂に不用意に触ったことに怒った宿儺は容赦なく旧Kトンネルの霊を切り裂いた。切り裂かれた一撃は霊魂まで切り裂かれたかと錯覚するほどに肉体も無いはずなのに恐ろしいほどの痛みに動けず虎杖悠仁に脱出と反撃のチャンスを与えてしまった。

 

――――――――黒閃!!

 

『Aaaaaaaaaaaaaaaaa!!?』

 とっさに防御しても相手は黒き花火に愛された虎杖悠仁。フィジカルギフテット顔負けのパンチ力と通常の 2.5乗された呪力をもろに喰らう。更に質の悪いことに虎杖悠仁は宿儺の器になったことで無意識に宿儺の魂を認識している。そのせいで魂の輪郭を捕えた打撃を無意識に行えた。霊体である旧Kトンネルの霊には尚更痛い。

 

『おぼっ…おろろろろっ…』

 口から零れ落ちる一つの魂。それを見た直後の虎杖悠仁の行動はすぐさま追撃の拳を放つことだ。

 

『ッッッッ!!』

 虎杖悠仁がそうしたように旧Kトンネルの霊もまた拳を放つ。術式も髪も発動する間もなく喰らうなら攻めるしかない。交差する正拳突きが決着を決める―――――――

 

 

 

 

 

「――――――――黒閃!!」

 元より、旧Kトンネルの霊の戦い方は罠を仕掛けて嵌める受け身型の戦い方をするだけだ。宮﨑勤が通信教育で習っていたという空手の腕もすぐさま錆び付く。

 

『――――――――』

 突き刺さる右腕は霊体を貫く。魂さえ打ち貫く虎杖悠仁の拳に貫かれればもはや勝利は無い。

 

『嫌だぁっ…』

 必死にもがく旧Kトンネルの霊に虎杖は優しく二枚の形代を取り出し封じる。

 

「…伏黒」

「ああ」

 伏黒の影から清めの塩が入った袋と荒縄、鎖そして、Sトンネルの霊の髪縄が現れる。

 

「・・・・・・・・・よし封印完了」

 清めの塩が入っている袋の中には、先ほど封じ込めた旧Kトンネルの霊の形代が入れられている。虎杖の黒閃2発に宿儺の解をもろに受けて、厳重な封印をされてはもはや動くとすら出来ないだろう。

 

「おい、向こうから炎が見えるぞ」

 伏黒が指さす方向には火の柱が見え、恐らく夜宵が卒業生を開放したのだろう。現在虎杖達が手元に管理している卒業生の中で夜宵から聞いた卒業生の中で火を扱うのは一つしかない。

 

「急ぐぞ。もしかしたら卒業生が暴れているかもしれない」

 そう駆けだす伏黒と釘崎を見つめながら虎杖は。

 

「ああ、そうだな」

 そう駆けだそうとする前に後ろを見る。

 

―――――――おにいちゃん。…ありがとう。

「―――――」

 幼い少女の声が聞こえたような気がした。それが聞こえた直後に虎杖は駆けだした。




旧Kトンネル事旧小峰トンネルの霊現象の元凶である東京・埼玉連続幼女誘拐殺人事件の犯人宮崎勤は言い訳無用の極悪人であり地獄へ堕ちたのはもはやどうこうする必要も無いと思います。しかし、彼は両側先天性橈尺骨癒合症という生まれついての病に侵されていたようです。また家庭環境も酷いようです。詳しくは調べてみると分かるかと。
これに対して同情とかする必要はありません。しかし、知っておくべきなのかもしれません。シリアルキラーは生まれてついてとは限らないと。
もし思う事があるとしたら殺された4人の幼い少女のために黙祷を捧げてください。何時か彼女たちがより良い家庭で転生し立派に天寿を全う出来ることを。
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