それではお楽しんでいってください。
『―――――で、神様を名乗る呪霊に喧嘩を売っちゃったと』
「スンマセン五条先生!!」
寳月家の近くの路地で虎杖は自分の先生である五条悟に電話をかけていた。
『まぁ、いいよ。伊地知じゃなくて僕にかけて来たのは正解かもね。伊地知なら流石に危険と言ってくるだろうしね。基本的に悪性に堕ちた神性は特級クラスだから対処は僕はともかく普通は一級が三人はいるからね』
「伊地知さんなら言ってくるでしょうね・・・」
『しかし、神様に喧嘩を売る小学生とか最近の子供は進んでいるねぇ~~』
「いや、そんな簡単に言わないでくださいよ」
『で、その後どうなったの?』
「あ、そうっすね。実はっすねあの後・・・・・」
「―――――はじまる」
時間は巻き戻り神様も宿儺も居なくなった夜宵の部屋で夜宵は一人呟いた。
「え―――・・・?」
「へっ?」
「離れないと巻き込まれる」
困惑する螢多朗と虎杖を尻目に夜宵は三人を部屋の外へと連れ出す。
「何が起こるんだよ夜宵」
「そ、そうだよ何が始まるの夜宵ちゃん」
二人に疑問をかけられながらも夜宵は自分の部屋を見続ける」
「私の部屋にいる身代わりのお化けは互いを狙いあう拮抗状態になっている。けれど、愛依の神様でパワーバランスが崩れて拮抗が崩れた今、弱った個体を狙い自分の存在をより強く残すために他者を食い合う共食い状態になる」
その証拠のように夜宵の部屋からは幾つもの金切り声や絶叫が響く。
「蟲毒は終わらない最後の一人になるまで」
声が聞こえなくなったのか夜宵は部屋を開ける。
「―――――おい、夜宵。これって」
虎杖は見る、以前であった特級呪霊真人に並ぶレベルの呪いが籠った黒熊のぬいぐるみ。
「そう、生まれた――――『卒業生』が」
夜宵はそう言った。
「夜宵ちゃんなんでこれを卒業生って呼ぶの?」
そう螢多朗は聞く。
「…それは」
言おうとした瞬間携帯の音が鳴りびいた。
「へっ?」
螢多朗は自分の携帯を見るそこには夜宵の文字があった。
「聞いちゃダメ廃人になる」
そう告げた夜宵は卒業生を封印しようとする。
「聞いちゃダメって…」
「そういう術式なんっすかねあのぬいぐるみ」
「なのかな?」
そう話していると。
「夜宵ちゃん~~どうしたの?電話なんて?」
卒業生は螢多朗から詠子へと狙いを変えて来たのだ。
「不味い詠子は何も知らない!?」
その事を伝えようとする螢多朗。だが、卒業生は扉を閉め開かないように閉じ込めたのだ。
「っ・・・・・開かないッ」
ガチャガチャとドアノブを回す螢多朗だが、扉は開かない。
「先生どいて!!…ウォラァァァァ!!」
虎杖が変わり呪力を込めて全開の怪力で扉を開ける。
「詠子!出ちゃだめだ!!」
詠子の携帯を持った手を掴む螢多朗。
「へっ!?どうしたの螢君!?」
顔を真っ赤にして困惑する詠子。
『―――――電話出ろよ』
卒業生は恨みの声を叫ぶ。その間も夜宵は卒業生の封印を続け最後の封印である錠前を着け終えた。
「―――――分かった?螢多朗、悠仁。私の部屋の影響下であっても抑えきれないほどの莫大な悪霊。隣五軒まで霊現象を起こしかねないために家から出して束縛しないといけないほどに強力な霊。だから私はこの霊を『卒業生』と呼んでいる」
「…もしかして、今まであちこちで呪霊を捕まえていたのって」
「これを作るのも目的の一つ…もう一つの目的。私のママを連れて行った悪霊空亡を追いかける事」
虎杖の疑問に夜宵は答える。
「空亡。それがお前が呪霊を集めている理由なのか夜宵」
「―――――うん」
『なるほどね。でも少なくとも悪い子じゃないね。悪いけど例の小学生もうちょっとだけ見守ってくれない?もうちょっとしたら僕の手が空くから。僕もその小学生に会ってみたくなったから。その子がまた新しい呪霊を捕獲しようとしていたらついて行って。悠仁もいい経験になるからさ。伊地知からは僕が言っておくから』
「ウッス、俺も詳しい事を聞いておきます」
『よろしくね悠仁。むやみに僕が出張で戻って来るまでその神様とやらに挑んじゃだめだよ』
そう言い五条は電話を切る。
「やれやれ、悠仁の周りは面白い事ばかりが起こるね~~」
出張先の新幹線で買った駅弁を食べる五条。
「…あ、狙われているっていう子の名字聞くのを忘れていた」
ふと頭の中に浮かんだ要注意家。慢心と腐敗しきった呪術界に置いても触れてはいけない禁忌の一族。いと高き大陰陽師の末柄にして欲をかいて恐るべき凶神を住まわせてしまった呪われた一族。
「―――――まぁ、問題ないでしょ傑?」
この手で殺した親友の名前を呟き五条は神代家の事を甘いタレが乗った肉とご飯と一緒に口に入れた。
「あ、悠仁君電話終わった?」
部屋に戻ってきた虎杖に螢多朗が声をかける。
「ウッス、暫くは幻燈河先生たちとつるんでいいらしいす」
「そうなんだ…あ、夜宵ちゃんも戻ってきた」
螢多朗の視線の先には玄関方面から来たのだろう夜宵がいた。
「・・・・・それじゃあ、情報交換をしよう」
寶月家のテーブルに虎杖、夜宵、螢多朗、詠子が集まる。
「取り合えず先にハッキリしておきたい。悠仁は何者で何で螢多朗や私に近づいたの?」
三人の視線に虎杖が集中する。三人の関係は親戚、幼馴染と確固たるつながりがある。だが、虎杖悠仁は違う外部から現れた霊能力者は敵なのか味方なのかハッキリしたいのだ。
「…最初に言うけど俺は幻燈河先生や夜宵を監視していたんだ」
「それは…夜宵ちゃんが今まで集めていたお化けが理由?」
虎杖の言葉に螢多朗が質問する。
「そうらしいす。…その夜宵が色々な場所に行ってお化け…俺達は呪いとか呪霊とか言っているんですけど、そいつらが突然居なくなったらしくて調べたら夜宵が容疑者になったらしくて…で、流石に9歳でこんな真似するのは普通じゃないから背後に呪詛師っていうヤバい奴が背後にいるんじゃないかって、それを調べるのが俺に与えられた任務らしくて…」
「・・・・・十六歳にさせる仕事じゃないと思うけど」
「そうっすか?俺少し前に同い年の身辺調査の任務をやってたんすけど…」
「そ、そうなんだ…」
虎杖の言葉に螢多朗は租借する。
「え、えっと虎杖君はその、…夜宵ちゃんがお化けで悪い事をしていないか。夜宵ちゃんを裏で操っている悪い…その、魔法使いみたいな人が居ないかを調べていたんだよね」
こんどは詠子が虎杖に質問する。
「そうっすよ」
「じゃ、じゃあ、今はどうなの?私や螢くん、夜宵ちゃんはそんな人たちとは関りが無いってのは分かってくれたと思うけど」
「あ~~、それなんすけどね。俺の担当の先生…五条先生って言うんですけどその人が戻って来るから暫くは夜宵や幻燈河先生について行って言われて」
「・・・・・ふむ、なら悠仁は私の心霊スポット巡りを邪魔しないってこと?」
「まぁ、五条先生からもいい経験になるって言われたし…」
「―――――そう。なら、私達の事も話す。私も今後の行動の為にも詠子にも改めてきちんと状況を1から伝えたいから」
「うん、良いよ話して夜宵ちゃん」
「―――――では」
夜宵は電子パッドの電源を入れてタッチペンを片手にもう片手にグレイ人形を持つ。
「―――――私は二年前交通事故でパパとママを無くした。…犯人である悪霊『空亡』は私のママの魂を攫って行った。それも、生き延びるためにじゃなくて何かをママに注ぎ込んで明らかに何か別の事をしようとしていると思う。私はママを攫った『空亡』を倒すための戦力を確保するために心霊スポットに行き悪霊を捕まえて集めている」
電子パットにその流れを書き記していく。
「・・・・・私の目は普通の景色これを現世として、もう一つお化けがいる景色これを幽世とする。事故の前はこれがちぐはぐでピントが合っていなかったんだと思う。事故の時初めてそれが無くなってピントが合ったんだと思う…で、それと同じ時期に頭の中で変な情報が流れて来た」
「じょ、情報?それってどんな情報なの夜宵ちゃん?」
夜宵の話に詠子が聞いてくる。
「―――――自分の体の一部を生き物に入れると霊的攻撃に対して身代わりが出来るようになるようになった。だから、捕まえた悪霊を人形に閉じ込めて身代わりにする方法を思いついた」
「それって術式に覚醒したってことか?」
その言葉に虎杖が口を挟む。
「…術式。それはどういうもの悠仁?」
「いや、俺術式持ってないし。…五条先生が言うにはその人が体に刻まれている超能力みたいなものらしくて呪力で発動するらしくて五条先生曰く呪力が電気で術式が家電らしいけど・・・・・」
「呪力とは?」
「えっと、呪霊って人の負の感情が集まって形になるらしくって呪力って人の怒りとか恨みとかそう言った嫌な感情で出すんだ…こうやって」
虎杖の手に青黒いエネルギーが纏わりつく。
「―――――へぇ、それが呪力なんだ」
「わ、私には見えないんだけど!?」
呪力に視線が集中する螢多朗と夜宵。だが、詠子は二人とは違い呪力が見えないのか良く分かっていない。
「・・・・・分かった。それが呪力、お化けが纏っているようなものに似ている精神のエネルギー。そして、それをエネルギーにして発動する術式」
虎杖の言葉を元に夜宵もまた手に呪力を纏う。
「え!?夜宵ちゃんもう呪力を!?」
「うっそだろ!!俺色々と大変だったのに!?」
「え、ええ!?さ、三人共何の話をしているの!?」
見えないせいで更に話がついていけない詠子。
「―――――話が脱線したけどとりあえずその情報を術式として仮定し身代わりの術式として古代中国を起源にした厄災除けの雛人形の術式『
「待って…家に持って帰って来たの…?」
「ホント知らない事に同情するっすよ詠子さん」
「大丈夫雛祭呪法で寳月家全員と螢多朗用の身代わりを作ってある」
安全を確保されている事に安堵する詠子。
「ただ、昨晩神様によってそのシステムが崩壊しかけたせいでやらなければいけない事が多くなった。身代わりのお化けを捕まえて補充するそうやって戦力を整えて更に神様を捕まえて戦力にする。そうすれば空亡を倒す戦力を手に入れるだけじゃなく神の花嫁として死の運命にある愛依を助けることができる」
「・・・・・って言ってもどうするんだよ神代に憑いている神様。あれ飛んでもない化け物だぞ。俺手も足も出ない飛んでもない化け物に立て続けに会っている気がすんだよな・・・」
「ふむ、神様以外に悠仁が出会った『化け物』には興味あるけど神様については一つ安心していい」
「安心していいって言うけどこれまでの事を繰り返していいて具体的な目途はついているの夜宵ちゃん?」
そう螢多朗に問われると夜宵は白状した。
「私は一度神様をヤッている。別の奴だけど」
「ブッ!?」
「「!!?」」
夜宵の告白に仰天する三人。それもそうだ神を倒すなんてそんなぶっ飛んだ小学生後にも先にも夜宵ぐらいだろう。
「神様の格にもよるけどその時の神様は『卒業生』三人で倒せた。だから、単純計算なら最低でもその倍『卒業生』6人以上あれば神様を捕獲する事が出来ると思う。だからこのまま戦力を集めていく事に対しては悲観する事は無い」
電子パッドに分かりやすく描きながら夜宵は纏める。
「―――――で、ここからが本番。私たちの陣営には今まで育てた『卒業生』が三人いる。そして、昨夜出来上がった同格の子。更に一月前に私に憑いていた地蔵7体を共食いさせて作った『超越地蔵』、この子は他の『卒業生』よりもやや強い。計五名このメンバーを持って東京並びに全国の激ヤバ心霊スポットを攻め落とそう」
「「「・・・・・・!!!」」」
夜宵のやろうとすることに驚愕する三人・・・だが、夜宵のヤバさはこの程度では済まなくなった。
「―――――それに並行して悠仁を通して呪術師達からやばいお化けの情報も得てそれらも捕まえよう」
「何で俺を情報源にしようとしているの!?」
「……だって、悠仁たち呪術師なら『卒業生』クラスのお化けの情報には詳しいだろうし、ネットの有志の情報を元にした激ヤバ心霊スポットよりも正確な居場所を掴められるかもしれないし『卒業生』クラスを手に入る可能性が多い事に越した事は無いし」
電子パッドには東京の心霊スポットが写された。
「・・・・・で、東京を制圧したのちその戦力をもって全国を攻め落とす」
夜宵が操作し電子パッドに全国の激ヤバスポットが映し出される。
「この危険度不明って何?」
「何も無いかそれとも危険度SSSのヤバいお化けがいるかもしれない」
それに螢多朗の顔は青ざめる。
「Sクラスで特級って感じなのかな?」
「特級が呪術師たちの最上位ランク?」
「らしいよ」
「―――――そう、ともあれ最初の手持ちに加えこれらの二十か所のお化けを捕まえれば勝利は確定する」
電子パッドに手を乗せて夜宵は言う。
「…――――空亡も神様も…そして宿儺も日本全国心霊スポットオールスターズで嬲り殺しに行く」
そう宣言する。
「う、運転は任せて!!」
途方のない心霊スポット全国制覇に最初に声を上げたのは詠子だった。
「す…スケジュールを合わせるのが問題だね…!悠仁君はどうかな流石に組織とかで立場があるだろし…好きにしても良いけど」
「うん、私も悠仁の選択を尊重する」
二人に好きにしても良いと言われた。・・・その虎杖悠仁は。
「―――――やるよ。幻燈河先生達を放っておきたくねぇ。自分の死に場所はもう決めているんだ」
そう言い放つ虎杖に三人は笑みを浮かべる。
「―――――さて、夜宵ちゃん悠仁君話をまとまったところで…」
「まとまったところで?」
「―――――今日の授業を始めようか」
ドン!と教科書が夜宵と虎杖の前に現れた。
「・・・・・え?」
「…空気…空気…」
困惑する二人を尻目に詠子は課題を思いだし図書館へと走り出した。
「ま、待ってくれよ幻燈河先生。俺…もう、先生の家庭教師を受ける必要は…」
じりじりと逃げ出そうとする虎杖に螢多朗は言う。
「家庭教師を辞めるにしても元手はとろう。学生なんだから成績も大事でしょう?だから勉強しようね悠仁君」
「――――――」
虎杖は逃げ出した!…逃げられない!!
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