「うぉぉぉぉぉいぃぃぃぃ!!!幻燈河先生!!!夜宵!!!何処にいるんだァァァァッ!!」
呪霊による幻覚で螢多朗たちと分断された虎杖は必死で二人を探していた。
「畜生!まさか先生たちと離れちまうなんて」
頭の中で虎杖の醜態をゲラゲラ笑う真人と宿儺の顔を想像を振り払いながら二人の気配を探していると
「うわぁぁぁぁぁっ!?夜宵ちゃん!!!」
「―――幻燈河先生の声!!こっちか!」
螢多朗の絶叫に気づき虎杖は声のした方向に走り出した。
「――――あれだ!夜宵の奴首を釣られている!?」
視線の先には呪力で練られたのだろうか紫の縄で首を釣られた夜宵が螢多朗に抱きついていた。
「先生!夜宵!!」
夜宵についている縄を切り螢多朗を地面につかせる。
「・・・・・悠仁君!!この子は夜宵ちゃんじゃない!!偽物だ!」
夜宵の偽物が虎杖に視線を向けるその目や口は寳月夜宵の顔では無かった。
「分かった!・・・おらッ!!」
敵と判断した虎杖は偽夜宵を殴り祓う。
「…大丈夫ですか先生」
螢多朗に手を差し伸べる虎杖。
「…ありがとう悠仁君」
その手を握る螢多朗。
「悠仁君あそこにいるのが例のH城址の霊だよ」
螢多朗が指を指す。
「―――――あれは」
指の先には癖毛の黒髪の・・・・・斬首された女性の生首が浮かんでいた。
「悠仁君、H城址の霊は人を傷つける呪いを持っているんだ。付けられたら徐々に傷が開いって最終的に首を切り落とすんだ。そして僕たちが死んだ後も逃がさないようなことを言っていた…だから呪い殺した相手の魂を食べて己を強固する……そういう行動原理なんだと思う。…推測だけど件の悠仁君の連絡相手が善霊って思っていたのはそれを隠せるほどの隠蔽能力とやばい心霊現象に見舞われた人は生還者がいなかったんだじゃいかな…とんでもない霊だよ」
「・・・・・その上この辺り一帯をアイツの領域で閉じ込めて逃げ場を奪ってしまう奴っすね」
虎杖は空を見る。空には呪力で覆われひびのような模様が見える。
「うん、そうして外からの隠蔽と脱出の手段を狭めるんだ。一先ず夜宵ちゃんは生きている先ずは夜宵ちゃんを探すよ」
「ウッス分かりました!」
螢多朗のプランに賛成する虎杖…だが。
『―――――逃がさない』
H城址の霊はターゲットを既に斬首の呪いをかけた螢多朗よりも虎杖に斬首の呪いをかけるために分霊を虎杖に仕向ける。
「悠仁君あの手に触れられると呪いが発動する避けて!!」
「―――――ッ!」
迫りくる呪いの手を虎杖は払い落す。
「先生下がって!俺が殿をします!!」
「うん!気を付けて命大事に!!」
螢多朗が下がり虎杖もまたじりじりと後ろに下がり始める。
『―――――意外と・・・やれる?』
H城址の霊が再び呪いの分霊を虎杖に飛ばす。
しかし、虎杖の反射神経と身体能力は其処らの修行僧など比べ物にならない。迫りくる分霊を呪力が乗った拳ではたき落す。
―――――落とす。落とす。落とす落とす落とす落とす落とす落とす。迫りくる分霊を呪いが発動する前に呪力で叩き落す虎杖。
『―――――強い人』
十はくだらないほどに分霊を落とされてH城址の霊は虎杖の強さを認めた。故にH城址の霊は飛ばす分霊の数を増やした。
(数を増やしやがった。コイツギアを上げやがった!!)
ここはH城址の霊の領域。H城址の霊の分霊がほんの一秒の差で10体の斬首の呪いを持った分霊が虎杖に迫る。
「オラオラオラオラ!!」
迫りくる分霊を次々と叩き落していく虎杖—――しかし、これまで斬首を狙っていたH城址の霊は虎杖悠仁の斬首を諦め確実に仕留めるために攻め手を変える。
虎杖悠仁の腕を、足を狙ってH城址の霊は分霊を飛ばしていく。
「こっちか。…いや、こっちもか!!」
相手が戦法を変えても虎杖のやる事は変わらない迫りくる分霊を次々と落としていく。
首を狙ってきた分霊を右手で殴り飛ばし。後ろから迫って来た分霊を躱して蹴り飛ばす。
『―――――』
体制が崩れた虎杖に左右に手足を狙った分霊を飛ばしてきたが虎杖はバックステップで躱し迫って来た分霊を殴り飛ばした。―――――そして一度に十五体も分霊を全方向に飛ばした。
「―――――しまっ」
迫る分霊を叩き落すが対応が間に合わず虎杖の右肩にH城址の霊の斬首の呪いが触れる。
「―――――チッ」
これで時間をかけてしまえば虎杖悠仁は右腕を失う。―――――そんな中。
「螢多朗!!悠仁!」
夜宵が戦いの音を探って二人を探し当てたのだ。
「夜宵ちゃん!!」
「夜宵!こいつが伊地知さんが言っていたここのボス呪霊だ!何でか知らないけど俺達に敵意を持っている!!斬撃の呪いをしてくるぞ!!」
夜宵の生存に喜ぶが眼前には準特級クラスの呪霊が戦闘体制でいるのだ警戒をしないといけないのだ!!
「…ふむ。ここまで螢多朗を助けてくれてありがとう悠仁。後は任せて」
「ま、任せてって言われてもよ」
「や、夜宵ちゃんこんな規模の霊をどう対処するの?」
あっけらかんと相手をすると言う夜宵に二人は困惑する。
「単純な話。――――選手交代圧倒的な力で上から殴る」
カバンから封印されている『卒業生』を取り出し封印している南京錠を外し首だけになった黒熊のぬいぐるみが姿を現す。
「弔って――――――邪経文大僧正」
そう封じている卒業生の諱を唱えた。
紫のオーラを纏いきっちりと袈裟を着こなしこれから死者に弔いの念仏を唱えようとしているかのような錯覚を覚える。
―――――それは間違っていないのだろう。・・・この霊は対処しなければ如何なる呪術師呪霊でさえ文字道理地獄に堕ちる最悪の特級過剰怨霊。それこそが邪な経文を唱える大僧正のあり方なのだから。
「―――――マジかよ」
ぬいぐるみから現れた大僧正の呪霊の莫大な呪力と威圧感に虎杖は驚く。
『おしゃらの・・・・・・』
ブツブツと念仏を唱える邪経文大僧正。それに対して螢多朗や虎杖は困惑する。
「二人ともノイズキャンセリングイヤホン。これで爆音で音楽でも聴いて絶対にお経は聞き続けないで」
夜宵の言葉の重みは直ぐに現れた。
『ほんまいしい・・・・・』
唱える度に周囲の生物は倒れその生物の霊を虚空から現れた腕が捕まえて地獄に堕としていく。
「―――――ゲッ!」
これはヤバイと察し二人は大急ぎでスマホに流れているお気に入りの曲を最大音量で再生する。
『―――――ッ!』
一方H城址の霊からすれば溜まったものではない。大僧正がお経を唱える度に自分の分霊が次々とやられていき、螢多朗達を閉じ込めるための領域を担当していた分霊たちが次々と地獄へと堕ちていく。
H城址の霊はH城址のパワースポットで蓄えた潤沢の呪力で耐えているが、このままでは自分もこうなるのは時間の問題だと理解していた。
『―――――経文さえ唱えさせなければ』
そう判断し大僧正の首を落とす。大僧正の首がポトリと落ちる――――勝った。
『いせいひょうどく・・・・・』
そう思ったのもつかの間大僧正は首だけでも念仏を唱えていた。
『―――――』
ならばと口と顎を切り落とす。もう、お経は唱えられない。今度こそ勝ったそうH城址の霊は思った。
『『『『「みょうぜん・・・・・』』』』
しかし邪経文大僧正の本体はその経文唱え呪殺した生き物を触媒に経文を唱え続けるだけだ。
『―――――ッ!』
ならば全部を斬首するそう思いH城址の霊は辺り一帯の生物を斬首するために逃げ出した。
「逃げた!!」
「追いかけるよ」
「おう!!」
夜宵達はH城址の霊を探してH城址の霊の後を追う。
「―――――見つけた」
螢多朗の特異体質である霊媒体質を利用したセンサーを元に夜宵達はH城址の霊に追いついた。
『―――――ニィ』
しかし、周囲には生き物はおらず全て斬首されたのだろうあざ笑うH城址の霊・・・・・だが。
『おんしょうじ・・・・・』
H城址の霊がお経を口ずさむ。H城址の霊は経文を聞き過ぎた既にH城址の霊は邪経文大僧正の術式に囚われていたのだ。
「これで終わり」
チェックメイトになったH城址の霊は項垂れる。
『…死んでもなお、こんな思いを味合わされるのね』
彼女の生前と同じく生殺与奪を奪われてしまった事に気づき哀愁を漂わせるH城址の霊。
「―――――残るか消えるか選んで」
『―――――ギリッ』
像のぬいぐるみを見せる夜宵。そのぬいぐるみはH城址の霊にとって首輪であり牢獄なのを理解しているからこそH城址の霊の悔しさは計り知れないのだろう。
「H城址の霊―――――…ゲットだぜ」
少し考え生き残る事を選んだのかH城址の霊はぬいぐるみに入った。夜宵は目的の霊を捕獲する事が出来て心なしか喜びが入り混じった声で言った。
「終わったね夜宵ちゃん」
「あーあ、伊地知さん大丈夫だって言ったのにな」
ひと段落着いたと感じ螢多朗と虎杖も安堵の声を出す。
「そうだね。其処ら辺は後で聞けばいいんだよ。…さ、帰ろうやよ―――」
帰りを催促しようとした螢多朗・・・だが。
『おんはらしおん・・・・・・』
螢多朗の口から紡がれる悍ましい邪経文大僧正の経文。――――――後始末がまだ終わっていない。
因みに大僧正の経文についてはアニメで聞いて書いたいわゆる空耳で通させてください下手に経文を唱えるのはアレな気がするので勘弁してください。ではまた次の話で