呪術収集   作:黑米田んぼ

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皆さまおはようございます。出来上がったので投稿です。いやーそろそろ早起きに体調を整えたいのに何故か夜遅くになると筆がすすむすすむ。全く度し難い・・・


第9話 旧Fトンネルー弐

「―――――着いた。皆買った水を持って」

 『卒業生』が封印されている場所に着いた夜宵は事前に買った飲料水を三人に配り始める。

 

「相手は戦時中の兵の霊でとにかく水を求めている。だから水を持っていけば手荒に扱われる事は無いはず」

 三人の手元に飲料水があるのを確認した夜宵は声を低くして注意を促す。

「だからと言って油断しないで、敵兵の霊も悪霊じゃないとはいえ軍人の霊生きるのも必死だったからか殺す事に躊躇無い。そこらの殺人鬼とは殺意の度合いが違うから間違っても舐めてかかっちゃったらダメ」

 

「…分かった。皆必死で生きようとしたんだよな」

 戦争で戦い死んだ霊たちの思いを考える虎杖。

 

「そういう事油断したら悠仁でも死ぬよ」

「分かっているよ夜宵…」

「どうしたの?」

 少し考え事をしていた虎杖に夜宵は問う。

 

「気にするなよ。ちょっと懐かしいなぁって思っただけだよ」

「…そうなんだ。こっちそろそろ着くから警戒して」

 三人にいよいよ件の『卒業生』が封印されている所だと伝える夜宵。

 

―――――そして、封印場所に四人は辿り着いた。

 草むらをかき分けたその先に何者かに齧られボロボロになっている裸体のマネキンが突っ立っておりその頭には袋が被せてあり傍には何故かテレビが置いてあった。

 

「―――――ッ」

(―――――ほう)

 マネキンから発せられる圧倒的強者のオーラ。しかしそのオーラは虎杖がそして宿儺でさえ経験が無い程に特異であった。元来呪霊はその起源が死者の霊であっても人々から向けられる様々な負の感情であってもそこから発せられるのは人々の負の感情エネルギーであろう。

 だが、マネキンが発せられるそのオーラは虎杖の記憶にあるような禍々しいオーラとは思えない。

 落ち着いており尚且つ芯のある年月を過ごした巨木のようなイメージを連想されるだろう。宿儺とてその『卒業生』の姿を見てはいないために全体像は把握できていないだろう。

 ―――――だが、それだけでもこの『卒業生』なるものは封印されていてもなお他の悪霊とは異なるプレッシャーを放つ。それだけの実力を持っている事に宿儺は笑ったのだ。

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・がじ・・・がじ・・・がじ

 

「!?」

 奇妙な音が聞こえる。―――否、既にこの現象を知っている夜宵以外の全員が発生音に気づいたのだ。

 

 奇妙な音はマネキンからは発生していた。あろうことか目の前のマネキンから何かを齧る音がするのだ。マネキンには獣のも人影も虫さえも無いはずなのに!

 

「・・・・・・虫じゃない?」

 詠子が周りの思いを代弁した。―――――その直後マネキンを齧る音が突然止んだ。

 

「こっちを見ている」

 夜宵がそう言う。直後に何処にもコンセントが無いはずなのに一人でにテレビが点いたのだ!

 

「「「―――――!!」」」

 テレビの向こうにはボロボロの日本兵が映っていた。日本兵は何かを言おうとしているのか口を開こうとしている。

 

『…我、太平洋の防波堤たらん』

 日本兵がそう言うとテレビがひかりその光は螢多朗達を襲おうとする者たちの姿を露わにさせる!!

 

「やっべ来るぞ!!先生達は下がって!!」

 虎杖達の眼前に現れる兵士たち件の『卒業生』が殺し憑りついたのだろう敵兵たちが虎杖達を殺そうと迫って来るのだ!!

 

「ひっ…」 

 1人の霊が螢多朗の足にへばりつく。

「オラッ!…先生大丈夫ですか!?」

 螢多朗にへばりついた霊を虎杖が蹴り飛ばす。

「あ、うん。ありがとう悠仁君」

「気にしないでくださいっすよこれが俺の役割っすから!」

 

(…いの一番に螢多朗を狙った。恐らく螢多朗の霊媒体質がそうさせた。もしかしたら水を狙っているだけなのかもしれない。それでもこのままじゃあいけない)

「悠仁!螢多朗をお願い!私と詠子が卒業生の封印を強化する!!」

 状況を判断した夜宵が敵兵の霊に清め塩をぶつける。呪力の力を得ても夜宵は正確に状況を把握し射程や攻撃範囲を考慮して清め塩で対処する事にしたのだ。

 

「夜宵ちゃん!卒業生のぬいぐるみの場所はどこ!?」

「マネキンの顔!!」

 螢多朗に注意が向きフリーになった詠子がマネキンに近づく。

 

「夜宵ちゃんパス!!」

 マネキンの顔についていた袋を剥ぎ取り中に封じられていた『卒業生』を詠子は夜宵に投げる。

 

「分かった!!」

 螢多朗に迫る敵兵の霊を薙ぎ払う虎杖を見て夜宵は自分がやればいいと判断してSトンネルの髪縄で作ったネットで投げられた卒業生をキャッチする。

 

「――――――夜宵終わったんだよな!?」

「うん。このSトンネルの縄で封じた事で封印がもう一段かけられた状態になって怨霊の漏出が防がれている回収完了」

 ネットの封を終えて周りの悪霊が消え始めたので虎杖は安堵する。

 

「ふーっ…」

「は…はは…何とか助かった」

 危険が無くなった事で螢多朗も詠子も安堵する。

 

「無事卒業生の回収も成功した三人共お疲れ」

 卒業生を抱えた夜宵は三人を労う。

 

「う、うん…悠仁君…ありがとう…おかげで助かったよ」

「気にしないでくださいよ幻燈河先生!…これで」

「うん、これで本番に迎える」

「「「・・・・・・」」」

 安堵した三人に夜宵は言う。―――――そう、これはあくまでも準備。本番の戦いはこれからだ。

 

 

 

 

「―――――ここだよね」

「らしいっす。伊地知さん達がここで待っているらしいっす」

 旧Fトンネルより少し前にあるファミレスに詠子は車を止める。虎杖をサポートしている補助監督である伊地知潔高がここを指名したのだ。

 

「―――――ああ、虎杖君来ましたねこちらです」

 伊地知が四人を見て手招きをする。

 

「こんばんはあなた達が虎杖君の」

「はい。補助監督の伊地知潔高と申します。今回は流石に我々が対処すべき相手です。本来であれば外部者である皆さんを巻き込むことが間違いなのですが」

「こちらこそ僕たちのわがままを聞いてくれてありがとうございます」

 会話を交わす伊地知と螢多朗穏やかに応対してくれる伊地知の大人な対応に螢多朗は穏やかになる。

 

「幻燈河螢多朗君に寳月詠子さん寳月夜宵さんですね」

 落ち着いた大人の声が4人の耳に入る。

 

「あっナナミン。お待たせ」

「虎杖君人前でナナミンは止めなさい。…お見苦しいのを見せました。改めまして私は一級術師の七海建人と言います」

 伊地知と同行していた七海が螢多朗達に名刺を渡す。

 

「あ、ありがとうございます(落ち着いた人だな)」

 落ち着いたその振る舞いに螢多朗は七海が伊地知とはまた違う静かで礼儀正しい大人と思った。

 

「あっ、立ち話も何です。席についてください」

 会話も終えて伊地知は着席を促す。螢多朗達は伊地知に従い席につく。

 

「好きな物を幾らでも頼んでください。こちらで持ちます」

「えっ、いや。良いですよそんな事!?」

「大丈夫です。これはあまり言うのもあれですが私達の上司が持ちますので安心してください」

「そうっすよ。伊地知さんこれ五条先生もちっすよね」

 既に虎杖はメニューを見ながら何を食べようか悩んでいた。

「ええ、そうです。ですのでお気にしないでください…肉料理はこれからを考えるとお勧めしませんが」

「あ、あはははそうですね…」

 注文を決めて店員が去ろうとする。

 

「―――――注文が来る前に一つ警告をしておきます」

 七海が鋭い目で4人を見る。

 

「な、何ですか?」

 

「―――――この件から手を引きなさい。神と喧嘩を売るなんて死にに行くようなものですよ」

 何処か寂しげな声でそう告げる七海。

「ちょっとナナミン!!何を言っているんだよ!?」

 思わず身を乗り出す虎杖それに対して七海は言う。

「虎杖君。五条さんから聞いたはずです。神霊系は基本一級案件、この間の特級呪霊に並ぶほどの強さ。たった一人で挑もうとしているのは自殺と同じです。虎杖君が流石にそうなってしまうのは流石に私でも思う事があります」

 何処か寂しげなその声に七海が神様案件で何かあったのだろうと全員が察する。

 

「―――――だからと言って引き下がる訳にはいかない」

 沈黙を破ったのは言わずもがな夜宵だった。

 

「引き下がらない。ですか…幼いのにそのような目をするのはあまり感心しませんが」

「この目は生まれつき」

「重瞳ではありません。全てをかけるそんな決意を込めた瞳。その年でそのような目をするのは思う所があります。…ましてや『他人』の為に」

「―――――…今何て言った?友達を他人って言うの?」

 目を細める夜宵。その目に映る七海を夜宵は既に嫌いになっていた。

 

「―――――友達だけではありません家族もそうです。酷いことを言いますが家族とて他人なんですよ夜宵さん」

 寂しげに言う七海。家族は他人と言った所で虎杖も顔を下げる。

「何で…そう言うの?」

 虎杖が項垂れているのを見てそれが何か意味を持つのだと気づいた夜宵。

 

「…あなたがもし死に瀕しそうになった時貴方は大切な家族を呪うかもしれないからです」

「そんな訳!!」

「幻燈河先生!!」

 七海の言葉に螢多朗が思わず身を乗り出そうとするのを虎杖は止める。

 

「…ナナミンの言った事は事実なんだよ。俺も学長に同じことを言われたんすよ。それで俺、前に死んだじいちゃんが遺言を言ったって言ったすよね。先生達と会う前に起こった任務で…俺…じいちゃんを呪いをかけそうになったんだ」

 震える声で言う虎杖に事実なんだと三人は理解する。

 

「友情は遺言は時に呪いになる。あなた方は自分が死ぬかもしれない戦いにそれでも…身を投じられるというのですか?」

 眼鏡をかけ直して七海がそう言う。

 

「―――――七海さんって言いましたよね。七海さんは僕の腕はどう見えますか?」

 最初に声をあげたのは螢多朗だ。

「ええ、呪われていますね。恐らくそちらのお嬢さんと番の呪い」

「僕はこの呪いのせいでずっと引きこもっていました。…いや、この霊媒体質のせいです。この力のせいで僕の周りに不幸を振りまいてしまう。そう思ってしまった。…でも、それでも僕には支えてくれる人がいた。そして今は守りたい人が出来た。僕は僕を愛してくれている人たちと生きていたいって自信を持ちたいんです。だから僕は夜宵ちゃんのお化け集めを手伝います。これ以上誰かを力不足で泣かせたくない」

「…それが君の理由ですか?」

「…はい。それが僕の戦う『理由』です」

 はっきりと覚悟を見せた螢多朗。それに続けて詠子が螢多朗の手を重ねて続ける。

 

「正直私には七海さんの言っている事が完全には分かりません。それでも私は夜宵ちゃんを螢君の傍に居たい助けたい。そう思っているんです」

「…これは受け降りですが愛ほど歪んだ呪いはありませんよ」

「それでもです」

「そうですか」

 そう優しく言う詠子に七海は苦笑する。

 

「言ったよねナナミン。家族を呪うかもしれないって」

「七海です。虎杖君と同じように言わないでください」

「…私はママを取り戻すために戦い始めた。…けどそれだけではこの積極性は生まれない」

「・・・・・」

 夜宵が七海を見つめながら言葉を紡ぐ。その言葉に何処か狂気が籠っているように思えた。

「私は―――――この背筋を這うようなその恐怖に喜びを感じているだから私は―――――恐怖を愛している」

「―――――貴方狂っていますよ」

「言われるまでも無い」

 冷たい空気がファミレスを包む。

 

 

 

 

 

「ご注文お待ちしました!!ステーキセット一つお子様ランチ一つエビフライ定食一つナポリタン一つカルボナーラ二つです!!」

 出来上がったのか店員が料理を持ってくる。

 

「・・・・・食事にしましょうか」

「そ、そうですね…」

 

「―――――いただきます」

 空気が重くなったのを尻目に夜宵は楽しそうにオムライスにスプーンを入れ卵とチキンライスを口に入れた。




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