実は俺、BETA大戦に介入しました!   作:夢見る黄龍

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10.謎の戦術機

 

 

 

 勢いで着いてこいなどと言ってしまったが……この後どうするか巌谷は、何も考えていなかった。

 どう考えても異常な事態である。

 どうやら先程の攻防でBETAによる前線崩壊は、一時的に防げたようだった。

 何時(いつ)何時(なんどき)再攻勢が始まるかは、分からない。

 今のうちに部隊には、補給と出来るだけの休養を取らせなければならない。

 俺も休みたいところではあるのだが……。

 しかし、目の前に存在する所在不明機をこのままにする訳にもいかないのが巌谷の軍人としての立場だった。

 それにあれは『不味い!』と思うのだ。

 誰でもチョッと見ただけで分かるほどに、銀色の戦術機は異常の固まりだったのである。

 自慢ではないが巌谷自身、日本の戦術機開発の第一線にいて肌に触れていると思っていた。

 しかし、僅かな時間一緒に行動しても違いが分かるぐらいに、あの機体は異常だった。

 

 まず、音がしない。

 エンジンの作動音は元より、大型機械が動き回るのだから関節を始め金属の接触による騒音というものは少なからず発生するものだ。

 しかし、そんな音らしき物が一切しないのである。

 人だってよく耳を凝らせば呼吸音ぐらいは聞こえるはずだ。

 そんなレベルで微かにファンが回るような風の音が感じられる程度なのである。

 止まっているのかと思いきや、いきなり普通に歩き出すのだから『ドキリッ』とさせられる。

 

 更には、その機体の軽やかさだろう。

 羽のように軽いと言ったら嘘になるだろうが、見た目に重さを一切感じないのである。

 作動している所作やスピードに鈍重さといった物を一切感じないのである。

 幻の様に眼の前に現れ、地を踏んだ時の足跡さえもその場には禄に残らないのだから驚きである。

 その動作からも伺えるのだが、大型機械が武道の達人のように振る舞っている様に見えるのであった。

 

 もう見れば見るほど巌谷は混乱して来るのだった。

 

 

 

 ◆

 

 

 

「ガンマリーダー(シャシ様)、この後はどうするのですか?」

 

「ふむっ、あの機体は隊長機じゃろうか? 『着いてこい』と言われてつい同行してしまったが後の事は何も考えておらんのジャった。ワハハハハ」

 

『今、アルファーリーダー(マスター)へ通知致しました』<メローペ

 

『こちらCP(コマンドポスト)(ハコ)です。ガンマ中隊は、機体からは降りずにアルファーリーダー(マスター)の合流を待って下さい』

 

「ガンマリーダー了解なのジャ。こういうシチュエーションも何となく楽しいノゥ♪」

 

「「ハァ~」」<ラクシュ・リリアナ

 

 

 シャシ達ガンマ中隊は、帝国軍の補給基地…とも言えない物資が山積みにされた郊外の大型ショッピングセンターの駐車場に居た。

 CP(ハコ)からの指示も有り、何時でも動ける状態で帝国軍の補給の邪魔にならないように整列していた。

 巌谷を筆頭とする帝国防衛軍の戦術機には、帰投と同時に人が大勢で群がり整備に補給にと忙しなく動いている事が伺えた。

 中でもシャシが隊長機だろうと予想した機体から降りてきたパイロットは、大声を張り上げながら各種指示を出しながらこちらを(しき)りの振り向いては、どうしようか迷っている様であった。

 

 しばらくすると数人の護衛を連れ、先程の隊長らしき指揮官が近づいて来るのがわかった。

 ガンマ隊の隊長機がシャシの機体なのは、ここに来るまでの動きで予想が出来ていたらしく迷いなく近づくと声を掛けてきた。 

 

「俺は、この中隊を預かっている帝国陸軍富士教導隊の巌谷という。階級は少佐だ。さっきは救援を感謝する。危ない処で助かった」

 

 巌谷は、一息に自己紹介と感謝の言葉を述べると上から下までシャシの機体を見上げてから要件を喋りだすのだった。

 

 ・

 ・

 ・

 

 巌谷の要求は次のようなものだった。

 

 まずこの部隊の所属と行動理由の確認。

 立派な中隊規模で活動している事からも、それなりの規模の団体もしくは組織なのだろう事は予想できる。

 この不思議な機体の事も聞きたいが(巌谷の本音)、この部隊の今後の活動内容などについての確認だった。

 そして、その理由と立場の所管によっては、帝国防衛軍の立場として拘束逮捕等も厭わないとの勧告であったのだった。

 どうも巌谷本人は、今さっき命を助けられた相手にあまり煩い事は言いたくないらしく、いやいやセリフを読み上げているように伺えた。

 護衛に着いてきたSPらしき人物が(しき)りに巌谷に後ろから(ささや)いているが、露骨に嫌そうにしている事が見ていて分かるのである。

 そして、要求は伝えたが何の反応も示さない謎の戦術機部隊を見上げて思案にふけっている巌谷榮二帝国陸軍少佐の姿がそこには有ったのだった。

 

 

 

「CP、今のを聞いていたか?」

 

『肯定。こちらCP、要件は把握致しました。対処いたしますのでそのままでお待ち下さい。各中隊の合流まであと6分40秒です』

 

 しばらくすると、巌谷が見上げていた機体の頭部付近から小さな落下傘が降りてきた。

 ぶら下がっていたのは、ドッグタグにしては大きな黒い金属片の様なものだった。

 これ、極薄のスマートホンなのだがこの世界にはまだ無い物の一つである。

 

「何だ、これは?」

 

 巌谷がその黒い板をつまみ上げて裏表を確認していると、目の前の機体が如何にも人間臭い動作でジェスチャーを開始したのだった。

 左手で何かを持つ仕草をしてから、右手の指を立て、物を持っている左手のひらを下から上に擦りあげるような動作を繰り返したのである。

 

「同じ様に、こうしろって言っている訳か?」

 

 ジェスチャーをしていた機体は、巌谷の(つぶや)きに応えるようにうなずくのだった。

 

 『一々、動きが人間臭いんだよな』などと思いながら巌谷は手のひらの黒い金属片の表面を指で擦り上げたのだった。

 するとどうだろう、黒い表面に微かな光が灯り、中心にプレアデス星団を(かたど)ったロゴが出現したのである。

 ロゴの下に横棒が出現し伸びてゆく様子から起動する時間を表しているらしい事がわかった。

 やがて黒かった画面が明るく光り使用言語を選ぶような指示が表示されていた。

 100カ国語ほどが並ぶ中で日本語を選ぶと次には使用者の登録をする旨のメッセージが表示され……。

 

『使用者の登録を行います。丁度枠の中に顔が入るように正面に端末を翳して下さい』

 

 様子を伺っていた周りの人間が全員、いきなり聞こえた女性の声にビクッとなっていた。

 巌谷は、恐る恐る手のひらの端末を顔の前に持ち上げて音声の指示の通りに顔を映したのだった。

 

『OKです。そのまま顔をぐるっと回して頂けますか? 画面に表示される円をなぞって消すつもりで動かして下さい』

 

 巌谷は、もう自棄になってその指示にも素直に答えるのだった。

 

『お名前を頂きます。フルネームでハッキリとお聞かせ下さい』

 

巌谷榮二(いわやえいじ)

 

『次に国籍と住所をお聞かせ下さい』

 

「日本帝国、京都府*********」

 

『次に現在の日時を画面からお選び下さい』

 

 画面には年号と月と日、そして現在の時間またはグリニッジ標準時から指定できる事が表示され、指で触ることで変更選択が自由に出来ることが分かった。

 グリニッジ標準時を選ぶと画面に大きく現在地と日時が表示されたのだった。

 

『端末の登録と設定が終了致しました。この端末は巌谷榮二(いわやえいじ)様の個人端末となります。末永く御使用下さい。次に使用法を……』

 

 ことの成り行きについて行けず巌谷は叫びだすのだった。

 

「チョッ、チョっと待ってくれ! 俺個人の端末登録って何だよ?」

 

『この端末は、巌谷榮二(いわやえいじ)様の物になったということです』

 

「エッ、エッ、エッ、……お前、喋れんの?」

 

 『今更、何を当たり前の事を』と言いたげに端末は答えた。

 

『Exactly《イグザクトリー》。私は、AI内蔵型小型端末、Pphone(ピーホン) Model7と申します。今後は、ピ-ちゃんと気軽にお呼び下さい』

 

 ピーちゃんだと? と(おのの)いていると周りからクスクスと言う忍び笑いが聞こえてくるではないか。

 見回すと巌谷の顔の出ていたらしい一喜一憂が可笑しかったらしく、護衛達がツボにはまった様に後ろを向いては腹を抱えて笑っているのであった。

 

「ゴホンッ、兎に角…ピー…ピーちゃんを使えば対話が可能だという認識で間違いないのかな?」

 

『ハイ、間違い有りません……一つ大事なことをお伝えしたいのですが宜しいですか?』

 

「……何だね?」

 

『お許し頂き有難うございます。私、決まった時間お日様に当たって日光浴をしないと動けなくなってしまいますので、こまめに日光浴をさせて頂くよう要求させていただきます。くれぐれも密閉空間に長時間の保管をしたり、分解などをなさいませんようにお願い致します』

 

「随分と人間臭いな……、まるで人以上の者と喋ってるみたいだ……」

 

『巌谷様のその認識は、そう的外れでもありません。私は、その辺の何も出来ない脳筋とは違い巌谷様のご要望とあればペンタゴンの機密情報でも探り出して差し上げますよ』

 

「……その辺は、後で詳しく……」

 

『了解致しました』

 

 巌谷は、酷く疲れたような溜息を一つ大きくつくと気を取り直して呟いた。

 話の分かる責任者と対話がしたいと……。

 

『御要望の責任者は、現在こちらに向かって移動中です。……3・2・1、只今到着致しました』

 

 ピーちゃんの言葉と同時に現れたのは、目の前にあるのと同型らしい銀色に輝く18機の戦術機だった。

 

 

 

 

「状況は、ずっとモニターしてたけど……、プッ…笑っちゃいけないんだよね」(クスクスクス)

 

 隊内通信の音声からは、やはりクスクスと笑う声が聞こえていた。

 いやいや~、無理っ、笑らっちゃうでしょうよ。

 

 礼儀には、礼儀で返す。

 挨拶は、しないといけないだろう。

 ここまで来て知らんぷりも出来ないだろうしね。

 その大型ショッピングセンターの駐車場のには、日本帝国軍の戦術機が多数集まって来て居た。

 補給を受ける者、修理を受ける者、休養を取るため戻ってきた者など物資を必要とする者達が続々と集まって居た。

 

 そんな場所に見慣れない戦術機、見るからに綺麗と言っても良い芸術品のような戦術機が部隊単位で存在しているのだから人目を引かない訳は無いのだった。

 

 さて、混沌としたこの状況で昴はどんな対応をするのだろうか。

 

 

 

 

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