実は俺、BETA大戦に介入しました!   作:夢見る黄龍

11 / 46
4062文字


11.私設武装組織アースガード(アスガルド)

 

 

 

 銀色の戦術機、と言うよりも巨大な騎士といった方が良いのだろうか。

 そんな27機の中でも特に立派な1機が儀仗兵のように整列する前に出てきた。

 『責任者を呼べ!』と言う巌谷のリクエストに答えるように現れ、合流してきた部隊の機体である。

 あれがこの部隊の隊長なのだろうと思う。

 巌谷は、ピーちゃんに語りかけた。

 

「責任者との対話を御願いできるかな?」

 

『承りました』

 

 プルル・プルル・プルル、コール3回で相手が出た。

 

『ハイ。アースガード。御用件をお伺い致します』

 

『こちらは、巌谷榮二(いわやえいじ)帝国陸軍少佐の端末です。司令官にお取次ぎをお願い致します』

 

『承りました。少々お待ち下さい』

 

 ♪♪♪ 音楽が流れ数十秒待たされる。

 端末の表面には、『私設武装組織アースガード』と表示されていた。

 

『ハイ。アルファーリーダー』

 

『司令、お忙しいところを申し訳ありません。巌谷様、先方が出ました。お喋り下さい』

 

「あっ、ああ……」 巌谷も周りにいた護衛も思った、こいつ何処の社長秘書?

 

「日本帝国陸軍富士教導隊所属、巌谷榮二(いわやえいじ)少佐です」

 

『初めまして、私設武装組織アースガード(アスガルド)の司令をしております、アルファーリーダーです。作戦中ですのでコールサインで失礼します』

 

「色々とお聴きしたい事があるのですが、聴取に応じて頂けますか?」

 

『フムッ、応じられないと言ったらどう致しますかな?』

 

「そうですね、普通なら『力づくでも』と強行するところですが、現状でそんな事をすれば潰されるのはこちらでしょう。今は、敵を作っている時では無いと考えます」

 

『……良いでしょう。私がお話出来る事でしたら応じましょう。話の分かりそうな御仁で安心しました』

 

「ありがとうございます。それは、こちらもですよ」

 

『では、少々お待ち下さい……』

 

 そんな言葉と同時に、先程合流してきた部隊の隊長機が片膝をついて駐機姿勢を取った。

 流れるように背中の翼が機体を覆い盾となる。

 『プシュー』というガスの抜ける様な音がすると機体を飛び越えて人が降ってきたではないか。

 巌谷達から10mほどの地上に『スタッ』と降り立った人物は、片手に巌谷と同じ端末を持っていた。

 しかし、その姿は異様と言ってよかった。

 戦闘用なのだろう立派な全身鎧を身に着けており顔も確認できなかった。

 その体型から男性らしい事しか分からない。

 そして何の気負いもなく、スタスタと近寄ってくる。

 

「お待たせしました。私設武装組織アースガードを預かります、アルファーリーダーです」と、右手を出した。

 

「ああ、巌谷です。よろしくお願いします」 巌谷も出されたその手を握るのだった。

 

 

 

 ◆

 

 

 

 何時の間にか椅子とテーブルが用意されており、円筒形の機械がお茶などの給仕をしている。

 全ては、アルファーリーダーと名乗った人物の戦術機から分離してきたユニットだった。

 

「お茶の用意も出来たようです。どうぞ、ゆっくりしてください」

 

 会談のセッティングを聴取される方がしているという異常事態だが、そもそもこんな物資集積場に気の利いた席など用意できるはずもないのだった。

 巌谷は椅子を勧められるままに席につくと正面に座ったアルファーリーダーと名乗っている人物がヘルメットへ手を掛けた。

 そして現れたのは、口元だけが開放された仮面を付けた人物だった。

 落ち着いてはいるが随分と若く見える。

 深い蒼味がかった漆黒の頭髪を長髪にしており、身長は180cmはあるだろうか。

 そんな事を確認している間に、テーブルの上にはお茶とお菓子、数々の軽食が並べられてゆくのだった。

 

「では、準備も出来た様ですので改めて御挨拶を致しましょう。私の事は、アルファとお呼び下さい。……我々は『アースガード(アスガルド)』、機動兵器ワルキューレを所有する私設武装組織アースガード(アスガルド)です。母なる地球を再生させるために組織された私設の武装組織です」

 

「ワルキューレにアスガルド、ですか。まるで神の軍隊だ」

 

「当たらずと(いえど)も遠からず、と言ったところですね。神が何を為すものであるかにもよりますが、それに神と名の付く者であってもピンからキリまで存在しますからね」

 

「神の事を良くご存知のようだ」

 

「些か顔見知りの者がおりましてね。困ったものですよ」

 

「先程は、地球の再生と仰っていましたがどの様な活動をなさっているのですか?」

 

「言葉の通り、地球の再生に尽力しておりますよ。少し過激な自然保護団体です」

 

「少し過激なですか、物は言いようだ。戦術機を使ってまでするような事ですか?」

 

「こればかりは、仕方がありません。あの様な機械を地球の外から送り込まれては、我々も取れる手段が限られるというものです。それに言っておきますが、ワルキューレは戦術機ではありませんよ」

 

「ワルキューレ『戦死者を選ぶもの』ですか」

 

「巌谷少佐は、博識でいらっしゃる。『戦場で生きる者と死ぬ者を定める女神』そして因果応報の定めに従い報いを与える者の事ですよ」

 

「因果応報は、仏教の教えの一つでしたね」

 

「宇宙の真理の一つでもあります。やった事の責任は、ちゃんと取れよという事です」

 

「それがどうしてBETAとの戦闘になるのですか?」

 

「そこで進化した生物が母なる大地を食い潰して自滅するのは、まあ自業自得でしょう、我々もとやかく言ったりしません。しかし、外から来て何の断りも無く、全てを簒奪してゆくような所業を許す事は出来ません。泥棒にだって仁義があって然るべきだと思うのですよ」

 

 如何にも『僕は、怒っています』と言わんばかりの言い様である。

 確かにその通りではある、俺もそう思うからだ。

 しかし、誰に責任を取らせるというのだろうか。

 

「その言い様から察するに、あなた方は責任を取らせる相手を御存知のようなおっしゃりようだ」

 

「ええ、知っておりますよ。調べるのに1ヶ月も掛かってしまいました。面倒な事です」

 

「……ちょっと待ってください。御存知なんですか? ほんとに?」

 

「ええ、お教えしましょうか? 本当は、(みずか)ら気が付いて欲しかったのですが本当に残念です。人類は、BETAに接触して40年以上、何も学習していない」

 

 この会話を聞いていた周囲の人間から驚愕のどよめきが上がる。

 この話、こんなお茶会でするような話じゃないだろうとやっと気が付いた巌谷だったが、今更どうする事も出来ないでいた。

 

「今の話をもっと詳しくお聞きする事は出来ませんか? 特にBETAに付いて……」

 

「止めておきましょう、何をされるか分かった物ではない。ああ、巌谷少佐を信用していない訳ではありません。一つになれない人類をです。直ぐそこまで滅亡が迫っていると言うのに、未だ同胞の手を取ることが出来ないでいる。これを信用できるとお思いですか?」

 

 そこに居る人間で反論できる者は、一人として存在しなかった

 

「情報は、お渡ししましょう。それをどのようにお使いになるかは、巌谷少佐に御任せします。有効にお使い下さい」

 

「分かりました。兎に角この戦いを生き残ってからですな」

 

「ハハハ、もっともです。さあ、お茶が冷めてしまった。入れ直して腹ごしらえと行きましょう。遠慮なく召し上がって下さい」

 

「実は、さっきから気になってしかたが無かったんです。これは、天然物ですか?」

 

「自家農場で出来た物です。質の悪いアメリカの合成タンパクなんか使っていませんよ。お仲間の分もありますので遠慮せずにどうぞ」

 

 周囲から『ワァッ』と歓声が上がる。

 巌谷も空かさず眼の前のサンドイッチに手を伸ばした。

 

「美味い!」(混ざり物無しの天然物なんか何時(いつ)以来だろう)

 

「情報は、巌谷少佐の端末に送っておきますので自由にお使いください。詳しい事はその端末のAIが知っています。出して良い情報、駄目な情報の判断などもしてくれますので扱き使ってやって下さい」

 

『何でも私にご相談ください。くれぐれも日光浴を忘れずに、です!』

 

「そういう訳です。そうそう、皆さんに差し入れと言ってはなんですが補給物資をお分けしましょう、流石に武器弾薬はお譲りするわけにはゆきませんが、遠慮なくお使い下さい」

 

 アルファがそう言うと、いきなり上空に見知らぬ航空機が出現した。

 しかも3機。

 音もなく幻のように現れた30mほどの航空機は、一般的な貨物コンテナ(冷蔵庫仕様)をぶら下げていた。

 眼の前でコンテナを静かに下ろした航空機は、直ぐ様上昇して飛び去った。

 その後を見上げていた連中も居たが、青空に溶けるように姿を消してしまったのだった。

 天然素材と聞いてコンテナに群がる男達。

 戦術機まで持ち出してきて運ぶ強者(つわもの)まで現れる始末である。

 

「いやはやこれはもう、お(ことわ)りのしようが有りませんな。まったく、欠食児童でもあるまいに……」

 

「戦場での楽しみと言ったら食は外せません。旨い物を食って戦意を向上させるのは古からの(ことわり)でしょう。不味い糧食では、意気も上がらない」

 

「おっしゃる通り、合成食の不味い事と言ったら……」

 

「ちなみに、我々は自然保護団体の様な者なので、こういった物資でしたら豊富に備蓄しております。ご連絡頂ければ格安でお分け致しますよ」

 

「……是非…上に稟議を上げさせて頂きます」

 

 

 帝国軍の胃袋を握れば色々と融通をして貰えそうである、などと考えている黒い笑顔のアルファがそこには居るのだった。

 事情徴収は有耶無耶の内に終了し、部隊は又の再会を約束してその場を離れるのだった。

 

 

『宜しかったのですか、サービスが過ぎるのでは?』

 

「なに、部隊の先頭に立って命をかけている人物だ。少しくらい優しくして上げないと可愛そうだろう。それに帝国とのパイプが欲しい処だったからね、渡りに船だったのさ」

 

『肯定。しかし、彼はこれからも苦労しそうですね。それに周りに居たギャラリーも何らかの処分が実施されるものと予想されます』

 

「そう悪い待遇にはならないだろうさ、俺ならしない」

 

『そろそろ良い時間だし船に帰ろうよ』

 

 18:35、血のように真っ赤な夏の夕日が西の空に沈もうとしていた。

 

 

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。