実は俺、BETA大戦に介入しました!   作:夢見る黄龍

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12.(いち)前線士官の受難

 

 

 

 日本時間で1998年8月11日、19:30

 

 あの会談終了から1時間後。

 巌谷榮二(いわやえいじ)帝国陸軍少佐は、前線で接触した謎の機動兵器を使う部隊の事を報告していた。

 何時(いつ)又、BETAが押し寄せてくるか分からないというのに帝都まで呼びつけられてである。

 

「その部隊は、私設武装組織と名乗ったのだね?」

 

「そうです。アースガードという自然保護団体だそうです」

 

 アルファに提供された自然食品(全てレトルト加工されていた)は、ダンボール1箱ほどをサンプルとして提出している。

 しかし、眼の前に出されているダンボール箱の中には、各品1・2品しか残っていなかった。(コイツラ、クッタナ。道理で……)

 普段は顔色の悪い上司達、特にここ最近はBETAの侵攻で心身の休まる暇も無いのだろうと思っていたが今現在目の前の連中は、非常に顔の色艶が良くなっており眼の前のダンボールの中身を気にしているのだった。

 

「サンプルとして君が提出した品々だが各種検査にまわしている……聞くがもう無いのかね? 善意で最前線の部隊に提供されたものだ。あまり強制も出来ん」

 

「……対価を頂けるのでしたらお分けするとの確約は頂いておりますが……先方と連絡をお取りしましょうか?」

 

「!!! 先方に連絡が取れるのかね? 報告書には、無かったようだが……」

 

「はい、特殊な方法で私を除いては、連絡を取る事が出来ません。先方も相手にはしないでしょう」

 

「そうか(非常に残念そう)……、後ほど新たな命令が降りるだろう、それまでは待機を命じる。この後、国連軍から君へ面会が入っているが受けるかね?」

 

「? 国連からですか……誰です?」

 

「君も知っているだろう帝国軍白陵基地の国連施設に居る若き天才、香月夕呼博士だ。変わり者だから気をつけて対応するように……」

 

「……断れませんか? それ」

 

「多分無理だ。断ったりしたら後がしつこいぞ……」

 

「ウゲッ……」

 

 巌谷は、残してきた部隊へのフォローを行った後、客の待つという応接室へ向かったのだった。

 帝国軍白陵基地の若き天才……魔女・香月夕呼の噂は俺の耳にも聞こえてくる。

 特殊任務部隊を抱え、頻繁に大陸への出動もしているという。

 そんな御仁が俺に何のようだろうか?

 

 

 トン・トン・トン・トン

 

「失礼します。帝国陸軍富士教導隊所属・巌谷榮二(いわやえいじ)少佐です」

 

「やっと来たわね……早速、聞きたいことがあるのよ」

 

「お待たせしたようで申し訳有りません。香月夕呼博士で間違い有りませんか?」

 

「ええ、紹介が未だだったわね。帝国軍白陵基地内、国連軍特殊任務部隊A-01の司令をしています香月夕呼です」

 

「はじめまして、お噂はかねがね伺っております」

 

「どうせ碌でも無い話ばかりなんでしょ? うちの隊は出入りが激しいから……」

 

「いえいえ、そんな事は……。それで私にお聞きになりたい事とは一体何でしょう」

 

「銀色の戦術機……を持つ部隊の事よ。現在、帝国防衛軍が神戸の最終防衛線でBETAを抑えている事は、知っているわ。でも私の計算が間違っていなければ既に前線は崩壊していても可怪しくないの……誰かが影から援護射撃でもしているみたいなBETAの動きなのよ」

 

「ふむっ」

 

「巌谷少佐の部隊が接触した組織についてお聞きしたいの。私は、彼等と何らかの関連があると見ているわ」

 

「その情報は、何処から? 随分とよく聞こえる地獄耳をお持ちのようだ」

 

「ええ、自慢の耳が至る所に張り巡らせてあるのよ」

 

「……私は、先程接触した人物からある情報を託されました。そして、それを何処に持ってゆくのが一番人類の為になるのか。私は、帝国軍の軍人として帝国の為にとも考えましたが、彼は地球の再生の為に活動していると言っていました。ですから私も人類の為にこの情報を国連でBETAの研究をなさっている貴女にお渡ししようと思います。携帯かパソコン、情報端末のようなものはお持ちですか?」

 

「??? ええ、パソコンを持ち歩いているわよ」

 

 大きめのブリーフケースから出てきたのは、アックル社のパワーブックだった。

 

「ほう、PBとは趣味が良い。電源を挿れてこの設定を打ち込んで少しお待ち下さい」

 

 俺は、ピーちゃんから各社のパソコン接続用の設定を聞き出して手帳に書き出しておいた。

 アックル社用の設定を香月博士に見せて設定を入力してもらう。

 懐から引っ張り出したピーちゃんを操作し、香月博士のパソコンの横に置いた。

 さて、言われた通りに設定できたはずだがどうだろう。

 

『本部より受信した情報の転送を開始いたします。転送先の情報メディアのサーチを開始します……アックル社PowerBook 2400c/240、赤外線インターフェースが使用できます。使用者は、Yuuko Kouzuki。記録容量の残量は、……ファイルを圧縮してギリギリですが記録が可能です。データの転送を開始して宜しいですか?』

 

「ちょっと待ちなさい! この小型端末は、何? まずは、そこから説明しなさい」

 

「……ピーちゃん、説明してやってくれ。俺には無理だ」

 

(うけたまわ)りました。香月夕呼博士、はじめまして。私は、AI内蔵型小型端末、Pーphone(ピーホン) Model7と申します。私設武装組織アースガード(アスガルド)の標準仕様端末です。以後、お見知りおきをお願い致します。気軽にピーちゃんとお呼び下さい。前もって付け加えておきますが、巌谷様が私のマスターとして登録されておりますので貸与及び強奪、破壊や分解等は一切受け付けませんのでお了承下さい。データの転送を開始して宜しいですか?』

 

「……いいわ、始めてちょうだい……」

 

『データの転送を開始いたします。記録には、1時間ほどかかりますのでしばらくお待ち下さい』

 

「1時間って、いったいどれだけ大量の情報を転送しようって言うのよ」

 

『現在、内蔵HDに残されている容量でギリギリです。後ほど別の大容量な記憶媒体(メディア)に移動して圧縮されているファイルデータを解凍して下さい。正味20GBは、必要となりますのでバックアップを取ってから解凍する事をお勧めいたします』

 

「巌谷少佐、貴方とんでも無い連中と関わったみたいね……だいたい喋る端末、AI内蔵って何時(いつ)誰が完成させたのよ? 私は、そんなの聞いてないわよ」

 

『アースガードで使用される管制AIは、全て制作者であるアルファに所有権がございます』

 

「……アルファって誰?」

 

「俺達が前線で接触した部隊の司令官だ。多分あの機動兵器を作ったのも彼だろう。そうだろう? ピーちゃん」

 

『Exactly《イグザクトリー》、巌谷様は、分かってきましたね。流石、私のマスターです』

 

「何なのよこの端末?」

 

『ぴーちゃんです。香月博士』

 

「そうらしい……」

 

 この後も漫才のような会話が1時間、データの記録が終了するまで続いたらしい。

 

 

 

 ◆

 

 

 

「疲れたわ。時間が無いって言うのに……まったく」

 

『今後は、博士にも少し休めるだけの時間が取れるのでは無いでしょうか』

 

「どういう事よ?」

 

『香月博士のPBに記録されたデータには、BETAの生産者についての詳細が明記されています。BETAとはいったい何なのか? 博士が一番知りたい事では有りませんか?』

 

「何ですって? 嘘や出任(でまか)せを(つか)ませようったて私は(だま)されないわよ!」

 

『まずこの情報を精査されてからお考え下さい。嘘か真実かの判断は、博士自身がなさって下さい』

 

「ちなみにアルファは、その情報を集めるのに1ヶ月掛かったいてましたよ」

 

「フンッ、高が1ヶ月ぐらいで集めた情報が私の役に立つのかしら。中身を見せてもらってから返答させてもらうわ。巌谷少佐に連絡すればいいわよね……それで、一つ聞きたいんだけど、提供されたって言う自然食品のの中にコーヒーなんか無いわよね?」

 

「……!、確か…有りますね。()いてないコーヒー豆の真空パックがいくつか、銘柄も3種類ほど」

 

「それ頂戴、お願いよ! お金なら出すわ」

 

 このあと香月夕呼は、ホクホク顔でコーヒー豆の全種類の真空パックを抱えて帰ったらしい。

 香月博士は、天然物のコーヒー豆で落ちたのだった。

 何処までコーヒー中毒だって話である。

 

 

 

 





ストックが無くなったので今後の更新はゆっくりになります。
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