実は俺、BETA大戦に介入しました!   作:夢見る黄龍

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14.人類への対応

 

 

 

 現在のメガフロートでは、ワルキューレ融合炉タイプの増産に入っている。

 試験機30機は既にロールアウトして使用中だ。

 運用試験を経て、その後の初期ロットとして500機、総数で1万機を目標とする。

 最初期の試験機30機はこれに含まない。

 既に身内での魔改造が始まっているからだ。

 

 何で1万かというと、メローペが並列同期運用出来る最大値がこれくらいだからである。

 本人は、補助AIを別途装備して手を抜けば、更にこの10倍は制御できると豪語していた。

 まあ、出来るというのだからやらせてみようという事になった訳だが安全マージンを多めに取っている。

 

 で、この1万機には誰を乗せるのかという話で……全てメローペが決める事になった。

 独断と偏見でメローペが決定し、気に入らないやつはパイロットシートから強制排除するなどと言っていたが、その前段階でシートには座れないだろう事が予想される。

 多分どんなに頑張っても搭乗口を開けてくれないと思う。

 

 そういう訳で人類へ貸与する予定の機体は、1万機ポッキリこれだけである。

 運用と整備には、専用のドロイド(円筒形の奴が2機)が両足に1機ずつ標準装備されている。

 それで治らないものは、メガフロートへ勝手に帰ってくるという仕掛けだ。

 だいたい今の地球人類にワルキューレの修理もメンテナンスも出来ないだろうし、正直な処させたくないのが本音である。

 

 そして宇宙の方は、俺達が勝手に掃除をする事にした。

 これは、既に始めてしまっている。

 掃除が終わったら俺達は、この件からスッパリ手を引く。

 誰に何と言われようと俺達は、異邦人にかわりはない。

 この次元にあまり長い間干渉するのは、良ろしくないだろうと思う。

 だから、下手な影響力を後に残してゆくのも遠慮したい。

 したがって、事が落ち着いたら貸与した機体は全て回収する。

 置いてゆけと言うだろう。

 技術をくれと言うだろう。

 だけど嫌だね。

 どんなに強請られてもそこだけは譲れない。

 デッドコピーだろうが何だろうが『作れるもんなら自分達で作ってみろ』と言う話だ

 ただし、貸与された機体は、メローペの依代のような物である。

 勝手に分解されたり調べられる様な事を彼女自身が黙って許すはずがない。

 そんな事をしでかしたら、瞬殺で施設ごと潰されるのが目に見えるようだ。

 どうなるかは、ご想像にお任せする事としよう。

 

 多分行かないでくれと言うかもしれない。

 しかし、俺達は自分達の次元へ帰るのが目標だ。

 ここに何時迄も残る訳には、行かないのである。

 

 

 

 ◆

 

 

 

 巌谷さんが後方勤務になった。

 前線から外れて帝国技術廠の課長さんになったらしい。

 このいきなりの人事異動は、俺達のせいであるらしかった。

 俺達に直接連絡できるのが巌谷さんだけだったのが問題だ。

 

 何故か一夜明けて 8月12日の10:00に通信が入って、淡々とそんな風な愚痴を言われた。

 明日13日には、最前線は崩壊して帝都にBETAが雪崩込むだろうと予想される。

 それなのに、俺は後方で燻ぶっていなければならなくなった、と言うのである。

 本人は、八つ当たりなのは分かっているが言わずには居られなかったらしい。

 

 気持ちは分かる。

 現在彼は、職を解かれたので前線に戻る訳にも行かず、赴任までの時を悶々としていなければならないらしい。

 うん、愚痴の一つも言いたいよね。

 だからって死に急ぐのも違うだろうと、代案を提示してみた。

 

 赴任までの間、名前と顔を隠してウチで傭兵でもしないか? と提案したのだ。

 公言しないのならワルキューレに乗せてあげるよ……どうする?

 そんな事をチョロっと匂わせる話をしたら、見事に食いつきました。

 ご愁傷様です。

 午後に迎えにゆくよと連絡して、14:00帝都から東京方面に向かう無人駅で落ち合う手はずを取ったら、何故か夕呼さんが居るじゃないか。

 

「香月夕呼博士が、何でこんな所にいるの?!」

 

 つい、出会い頭に叫んでしまったじゃないか。

 ジトッとこちらを(にら)む少し疲れた美人……良く見ると枝毛があるよ、肌のお手入れも頑張ろうね。

 巌谷さんは、平謝り。

 

「申し訳ない、アルファ殿。身を(くら)ますのに失敗して香月博士に捕まってしまった。面目ない!」

 

「ふ~ん、貴方がアルファさんね? 私の事は良くご存知のようだけど自己紹介しておくわ、香月夕呼よ。帝国陸軍白浜基地内、国連軍特殊任務部隊A-01の司令をしているわ」

 

「ええ、存じ上げておりますよ。『オルタネイティヴ4』の最高責任者にして天才物理学者の香月夕呼博士。少し取り乱しました。ご挨拶が遅れて申し訳有りません。私設武装組織アスガルドの司令をしております。通称は、マイスターもしくはマスター。今作戦中はコードネームのアルファを名乗っております」

 

「……顔は、見せてくれないのね……」

 

「その内機会があればご覧に入れる場合もあるかと……兎に角移動しましょう。裏に車を用意してあります。……っと護衛の方は、本当ならご遠慮頂きたいのですが職務上そういう訳にも行かないでしょう。他言無用ということで宜しいですか?」

 

 駅舎の影からイリーナ・ピアティフ中尉が顔を出した。

 

「中尉、着いてきていたのね」

 

「私は、博士の秘書官兼護衛ですから、……これから見聞きする事を他言しない事を誓います。これで宜しいでしょうか?」

 

「その誓いが違わぬよう祈っております。そうでないと因果は巡りますので……」

 

「怖いですね」

 

「ええ、現実は恐ろしい……」

 

「いえ、私は貴方が恐ろしい……隙という物が一切感じられません」

 

「ほう、お世辞が上手だ」

 

「お世辞では有りません。先程声を掛けられた時は、死を覚悟しましたよ」

 

「私は忙しいのよ。そんな物騒な話は、車の中でしなさいな……」

 

 香月博士は、捨て台詞を残してズカズカと車の方に移動してゆく。

 ピアティフ中尉は、苦笑を浮かべると小走りに後を追いかけた。

 残された俺と巌谷さんは、顔を見合わせてからその後を追うのだった。

 

「この車? 随分と古くな~い?」

 

 俺が用意したのは前の地球でも使用していたハイエースのロングボディーだ。

 使い込まれていて見掛けは、20年落ちぐらいのポンコツに見える。

 俺がガキの頃、親父とよく天体観測キャンプに使っていた物を俺やシスターズが好き放題魔改造した代物である。

 見掛けはどうあれ、中身は動く司令室兼高級マンションの様なものである。

 ちなみにハコかシスターズが居れば、このままでも木星まで飛んで行けるぐらいの事はできる性能がある。

 アステローペが良くムーンベース(月要塞)への往復に使っていた車だ。

 

「まあ、乗ってみて下さい。自慢のマイカーなのでお譲りする事は出来ませんが」

 

「ふう~んって、広っ! 何、この車? 物理法則に喧嘩売ってるわよ!」

 

「移動しながら説明しますから、兎に角乗って下さい。但し、余計な物に手を触れないようにお願いします。冷蔵庫の物は手を付けても大丈夫ですよ」

 

 今日の運転席には、アルキオネが座ってハンドルを取っている。

 当然、メイド服姿である。

 

「それにしても博士。貴女はこんな所に来ていて良かったんですか? スケジュールは分刻みでしょう」

 

「仕方がないじゃない。あんな物見せられたら居ても立っても居られなかったのよ。急いで巌谷少佐に繋ぎを取ったら、休暇取って既に宿舎を出たって言うじゃない」

 

 香月博士は、私怒ってますって感じで腕組みしながらソファーにふんぞり返っている。

 アラッ、このソファー座り心地いいわね……なんて囁いているし……。

 

「巌谷少佐の行方を追うのには苦労しました」と、ピアティフ中尉が博士の後ろに立って巌谷少佐追跡の説明を始めた。

 

 いやいや、椅子に座って下さい。

 一応移動中ですので……揺れませんけどね。

 香月博士の隣のソファーにピアティフ中尉が収まり、応接テーブルを挟んで博士の向かいには俺、ピアティフ中尉の向かいに巌谷少佐が座り込んでキョロキョロと周りを見て落ち着かない様子だ。

 そんな男女4人、ちょっとカオスに成りかけている所に……。

 

[失礼します]と、気配も見せずにお茶を置いて回るメイド長姿のハコが現れた。

 

 俺以外が全員固まったところで、俺がお茶を片手に続きの説明を開始するのだった。

 

「お茶の用意も出来たので説明を開始しますね。何から聞きたいですか?」

 

「チョッと、心臓に悪いんですけど……貴方達は、どういった連中なワケ? 見るからにこのメイドも只者じゃないし……」

 

 香月博士が眉間に青筋を立てて聞いてきた。

 

[お褒めに預かり光栄です。マスターの9番目の妻、ハコと申します。お見知りおきを……]

 

  ……9番目! とか巌谷さんもピアティフ中尉もそこに注目しなくていいですから。

 

「まあまあ皆さん、落ち着いて下さい。そうですね博士は、物理学者でいらっしゃる。でしたら多元宇宙論(たげんうちゅうろん)は、御存知ですよね?」

 

「ええ、私は元々大学で、多元宇宙量子論の方を専攻しているから少しは詳しいわよ」

 

「私達が、その理論の生き証人だと言ったらどうしますか?」

 

「……それがどういう意味か分かって言ってるの? 生き証人ということは、別の次元宇宙からの来訪者?」

 

「ええ、その通り大正解! ただし、この次元に我々の同位体と思われる存在は、天の川銀河の何処にも発見できませんでした。種族の痕跡、欠片さえもありませんでしたよ。我らは、完全なる異邦人という事ですね」

 

「ふ~んそういう事、……それで、あなた達は何がしたい訳よ。こんな滅亡しそうな地球の人類に接触してきて、神様にでも成るつもりかしら」

 

「それも魅力的ですが……止めておきましょう。向こうで既にやっていることを態々こちらの次元でもしなくちゃ行けないという理由もない」

 

「って、アンタ神様やってたの? 通りで、天の川銀河とか軽く引っ張り出すし……」

 

「色々と調べて回ってるんですよ、我々が元の次元に戻る為の方法をね。香月博士には、その辺で少しお手伝い頂けないかなと思いましてね。替わりと言って何ですがBETAへの対処のお手伝いをさせて頂こうかなと思っています。イヤ~、巌谷さんが貴女に接触したと知ってから急いで調べましたよ。香月夕呼博士」

 

「あらっ、随分と高く評価して貰ってるみたいね」

 

「それはそうでしょう。この滅亡待った無しのどう仕様も無い地球人類を たった一人で何とかしようと足掻いていらっしゃる。唯一、現実が見えている方だ」

 

「あんたの寄越したライブラリーに(とど)めを刺されて、これでも随分と落ち込んでるんですけど」

 

「落ち込んでは居ても、まだ絶望はしていないのでしょう?」

 

「そんなの当たり前よ。だからこうして会いに来てるんだから」

 

 俺と香月博士の会話を 口をぽっかりと開けて聞いていた2人がやっと会話の内容に追いついてきた。

 

「「えっ、異世界人ですか?」それも神様?」

 

「成ったばかりの新米ですがね」

 

[マスターは、天の川銀河絶対防衛圏の守護者です。時空神より直接守護を依頼された方でもあります]

 

「ここでそれ、要るかな?」

 

[肯定。彼らには必要な情報だと考えます]

 

「まあいいや、話を続けましょうか」

 

 眼の前の3人がハコの説明にこちらを見て固まってしまっている。

 どうすんだよ、これ。

 

 

 

 ◆

 

 

 

「それで、異邦のお偉い神様がなんで関わろうと思った訳よ?」

 

 香月博士は、気怠げにコーヒーを啜っている。

 随分と投げやりな態度だ。

 それを見て巌谷さんも苦笑を浮かべている。

 ピアティフ中尉は、まだ固まったままである。

 

「まあ最初は、暇つぶしだったんですけどね。私も元は、地球の生まれですので次元が変わったとはいえ母なる地球が虫食いにされているのが我慢できなかった……と言う事ではいけませんか……」

 

「まあ、理由なんてどうでもいいんだけど……手伝ってくれるのね?」

 

 どうでも良いなら聞くなよ、っとも思ったけど俺は、言葉にはしなかった。

 

「ええ、微力ながらお手伝いさせて頂きますよ。但し条件を付けさせて頂きますけれどね」

 

「条件とは何ですか? 我々に対価が払えるのでしょうか」

 

 巌谷さんがやっと話に参加してきた。

 

「それは、然程問題にはならないと思いますよ。まず先程も言いましたが我々は元の次元に帰還する方法を探しています。現在も次元座標の割り出しに演算を続けていますがどれくらいの時間が必要なのかわかりません。別の角度、多角的な専門家によるブレイク・スルーが必要ではないか? と、考えた訳です」

 

「それで天才の私にお鉢が回ってきたって訳?」

 

「ええ、香月博士は知識をお持ちだがそれを実践できる機材も環境もお持ちでは無い、そして絶対的に研究を続ける時間がありませんね。それは、我らが提供しますので研究を完成させて頂きたいのです、損な条件では無いと思いますよ」

 

「……ちょっと旨すぎる話なんですけど……」

 

「巌谷さんには、我々の機動兵器ワルキューレの運用をお任せしようかと思うのです。但し、パイロットは機体が選びますので誰でも操縦できる訳ではありません。最終的に御用意出来るのは1万機、相性が良ければ子供でも操縦できますが悪ければ地位も名誉も血筋も関係ありません」

 

「そ、そうか……俺は、乗れるんだろうか?」

 

「こればっかりは、試してみるしかありませんね。我々の機体は、意思を持っていると思って下さい。駄目な場合は、パイロットシートにも座らせて貰えません。下手に弄ろうとしたら反撃されますから気をつけて下さい。迷子になっても自立起動して帰ってきますからパイロットが気絶しても生還できますよ」

 

「それは……パイロットいら無くないか?」

 

「パイロット一人でスリーマンセル構成を組みます。有人機1機に随伴する無人機2機というのが一番バランスが良いみたいですね。無人機でもそれなりの戦力ですが有人機は、数倍の機動が可能なんですよ」

 

「ほう、実際の戦闘はチラリとしか見てないがアレは無人機だったのか」

 

「巌谷さんが見たのは、慣らし機動中のうちの嫁さん達です。9機の構成は、説明したスリーマンセル構成で遊んでましたから1割程度の動きですね」

 

「あれで1割……全力で動いたらどうなるんだ……」

 

「多分、肉眼では見えないと思いますよ。まさに瞬間移動並の戦闘速度で切り刻みますよ。レーザーなんて難なく避けますし、地上だと無理ですが宇宙でなら亜光速戦闘まで熟しますからね」

 

「それ、パイロットは大丈夫なの?」

 

「ええ、我らが着ている戦闘用ハードスーツを着て貰う事で安全を担保します。一種のパワードスーツですので大丈夫ですよ。機体が壊れてもハードスーツは大丈夫ってくらい頑丈ですから……BETAに齧られても轢かれても潰されても大丈夫ってくらいには頑丈ですからね。これ着て戦った方が早いってくらいにはチートですので」

 

「なにそれ……」

 

「質量差って物がありますからね、いくら壊れない死なないって言ってもそれなりの大きさの間を埋めないと勝負に成りにくいんですよ」

 

「ああっ、そういう事ね」

 

「小さいと吹っ飛びます。シールドと慣性制御で吹っ飛んだ処で傷ひとつ付きませんがやっぱり効率が悪いんです」

 

[マスターなら素手で1万体ぐらい瞬殺しますけどね]

 

 ハコがボソリと差し込んだ一言で、また全員が固まった。

 

「そんな自慢しなくていいから。お前は、いったい何と張り合ってるんだよ」

 

[肯定。必要な情報かと……失礼しました。メガフロートに到着しました]

 

 

 車がメガフロートに到着した。

 クローズにしていた窓型スクリーンを開放して外を映しだす。

 その光景を見て、またまた固まる3人だった。

 

 

 

 

 

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