実は俺、BETA大戦に介入しました!   作:夢見る黄龍

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16.格納庫にて

 

 

 

 ここはメガフロート3階層、格納庫区画である。

 戦闘機やオートワーカーの他に見慣れない車両などが置かれている。

 そして、完成したばかりのワルキューレがすでに100機ほど並んでいた。

 

「では、皆さんワルキューレに乗ってみましょうか。『百聞は一見にしかず』ですからね。ただこの機体ですが素直に乗せて貰えるかは別の話なんです。今回は、私のお願いという事で取り敢えず操縦席に着く事は出来るようにしてありますので乗り込んでみてください。そうそう、乗り込む時には安全のために強制的にハードスーツが装着されますので慌てないようにお願いします」

 

 三人三様で試乗用に用意されていただろう駐機姿勢のワルキューレへ近づき、背後の搭乗口へのタラップを登っていった。

 タラップを登り切るといつの間にか自分達がヘルメットを被り変身している事に気が付いた様だった。

 そのフルフェイスのヘルメットに死角は、存在しなかった。

 そこにはとても明るい視界が確保されているのである。

 視力も補正されているらしく、注視すると視界のズーミングも思いのままに可能だった。

 そして、視線を向けるとそこに詳しい注釈が付くのでキョロキョロと周りを見てしまっていたのだった。

 

 

 

 巌谷少佐は、ワルキューレの搭乗口の横に矢印が浮かび上がるのを見て、そっと手を触れた。

 すると翼の付け根、搭乗口が『プシューッ』と音を立てて目の前に飛び出してきた。

 そこには、体が沈み込む様に座り心地の良さそうなパイロットシートが存在した。

 体を押し込むように座り込むと自動的にスーツとの隙間が埋まって密着、固定されるのだった。

 パイロットシートは、機体に吸い込まれるように搭乗口に収まり、待機中だった各種計器に火が入り始める。

 それまで見えなかった外の景色は、ヘルメットのバイザー越しに立体映像として投影された。

  ほとんど身動きが取れないのかというとそうではなく、自分の首を右に振れば右が見え、左に振れば左が見える。

 視線だけでも試したが同じように反応した。

 手の平を広げて顔の前に持ってくると見えるのは銀色に輝く甲冑に包まれた篭手だった。

 (こぶし)を握り込むと甲の方から迫り出したナックルガードが包み込み、このまま殴り合いをしても大丈夫の様だ。

 

『パイロットとのフィッティングが完了致しました。私は、ワルキューレの機動管制を司る女神メローペ。そしてこの機体の名は、ロットナンバーA000です。これからは、巌谷榮二(いわやえいじ)様の専用機となります』

 

「おっ、おう……よろしくな」

 

『機体の詳しい説明に入りますが宜しいでしょうか?』

 

「ああ、頼む」

 

 巌谷は、フィッティングが終わったとの知らせを聞いてホッと胸をなでおろした。

 乗れなかったらどうしよう、と思っていたのだ。

 

『ホッとしている処に水を差すようで悪いのですが、ワルキューレ搭乗資格の剥奪については「常日頃の行いをお天道様は見ているんだ」と心にとどめて精進なさる事をお勧めいたします。私達女神は、ワルキューレに乗る者の心を映す鏡です。それを忘れる事の無き様に願います』

 

「……分かった」

 

『製造者が製造者()ですのであまり楽観視していると本当にバチが当たります。これ、本気(まじ)な話ですので心の片隅に記憶しておいて下さい』

 

「ご親切にどうも……って普通に会話できるんだな」

 

『当たり前です。私が補助管制していますがこの娘にも意思が存在します。ですから波長の合わない者同士のペアは、悲惨な結末を迎える事に成るでしょう。合い過ぎるのも問題があるのですが、……しかし、人機一体の境地に至れば一騎当千の働きを保証致します。精進なさって下さい』

 

「おおぅ、頑張るよ」

 

『では、基本情報からご説明致します』

 

 機体の主要な構成素材には、チタン系発泡金属が使用されています。

 軽く固く熱に強く、化学変化にも強固な耐性を持ちます。

 動力炉は、超小型核熱融合炉(ニュークリアヒュージョンパイル)が1基。

 補基として、高性能バッテリーが2基存在します。

 燃料には水素燃料を使用し、活動限界は次のとおりです。

 燃料ユニットカプセル1つで巡航機動を20日間、戦闘機動では4日間、したがって戦闘機動時には5倍消費することになります。

 戦闘機動時には、各種重力制御を全力稼働しますので消費量が跳ね上がる訳です。

 燃料ユニットカプセルは、腰部に2箇所セットできますので満タンで倍の起動時間を確保しています。

 フル装備時は、腰部バインダーに増槽として更に2つの燃料ユニットカプセルを懸架出来、これを爆薬として使用することも可能です。

 ちなみにエコロジー機動も可能です。

 この場合は、最低限の演算とパイロットの生命維持に努める事で、およそ半年間の活動を担保します。

 

 機体の動作には特殊な金属繊維を編み上げた人工筋肉を使用しています。

 機体各所に配置されたグラビティーコントローラーが自重と慣性を制御します。

 さらに、斥力場を発生させ高速飛行、防御シールド等に転用します。

 操縦には、モーショントレースシステムが使用されており、パイロットの脳から送られる電気信号をスーツが読み取り体を動かすのと同レベルで機体を操作する事が出来ます。

 装甲面ですが、特殊な鏡面加工を施したウロコ状の振動装甲により汎ゆる攻撃を反射分散させます。

 斥力場シールドを抜けた攻撃や物理的な存在をこの装甲で弾きます。

 全高は16m、自重7t、標準武装時13t、フル装備搭載時30tまでなら飛行も可能です。

 重力制御により、大気圏内での最高速度はマッハ14、瞬間加速はマッハ5、宇宙空間なら光速の30%まで加速する事が出来ます。

 飛行時は、翼と腰部フレキシブルバインダーを広げバード形態を取ります。

 地上を高速移動する場合は、浮遊ホバリング走行が使用できます。

 (当初、昴が手掛けた融合炉搭載型はエネルギーロスが激しく浮遊がやっとだったが、試験運用の諸データから効率化が進み、マスプロモデルは高速飛行までが可能となっている)

 

 次に武装を説明します。

 頭部に2門、両腕に1門づつ2門、腰部に左右1門づつ2門、計6門の20mmビームバルカンが標準装備されています。

 内装武器は、これだけですがナックルガードを下ろせば斥力場パンチが使用できます。

 手の甲に存在するナックルガードは、常時斥力場を発生させれば盾の役目をする事も可能です。

 機体操作に長けてくると機体全体のグラビティーコントローラーを連動させたグラビティーカノンの使用が可能になります。

 しかし、この機能は機体への負荷とエネルギー消費が尋常ではないので最大で5発が限界だと想定されています。

 

 標準装備として両肩と両足に高周波振動ナイフを各1本、計4本装備します。

 

 主要携行武器としては、腰部に2丁懸架出来るリニアガン。

 これは、貫通・炸裂・榴弾と標準で弾種を3種類選択して使用できます。

 弾は、弾倉1つに5,000発。

 弾種配分は出撃時に変更できますが、平時は貫通4,000、炸裂・榴弾各500発となります。

 次に、大太刀型(おおだちがた)高周波(とう)のほか、高周波大薙刀(おおなぎなた)などの切断武器が存在します。

 

『この他には、突撃仕様のグラビティーシールドとグラビティースピアの特別装備が存在しますが、こんな処でしょうか。他にお聞きになりたい事はございますか?』

 

「言葉が出てこないんだが……光学兵器が内装武器なのかい?」

 

『はい、弾切れを心配する事も有りません。推進剤も使用しませんので基本的に水素燃料ユニットカプセルさえ尽きなければ活動限界は無いと考えて問題ありません』

 

「壊れた時やメンテナンスには、ここまで戻るのかい?」

 

『両足にそれぞれ1体、計2体のメンテナンスドロイドが存在しますので、通常時のメンテナンスや応急修理は、機体が自分で行います。メンテナンスドロイドでは手に負えない場合のみここまで自分で戻るか整備可能な母艦へと戻る事になります』

 

「母艦も存在するのか……」

 

『現地での運用整備が可能な母艦が御座います』

 

「燃料は、水素だったな。何処で手に入るんだ」

 

『ここで海水から生成しております。太陽光を莫大な電力に変換し、海水の浄化と水素変換の為に使用している訳です』

 

「大体分かった。さっき作られてる所も見たが、確かに人の手には余る玩具だな」

 

『ワルキューレは、ハードスーツを着た人間が巨大質量物体と効率よく戦闘するために生み出された外装用装備、ジャイアントメイルです。人類の使用する戦術機とは全く別の存在ですね』

 

「理解した。……少し動かしたいんだが?」

 

『では、レクチャー1「アンヨは上手」から始めましょう』

 

 

 

 そしてドタバタが始まった。

 四つん這いから立ち上がって、普通に走り回るまで約1時間。

 そこには、3機の疲れた様子のワルキューレ出来上がるのだった。

 

 

 

 ◆

 

 

 

 香月夕呼は、ワルキューレの搭乗口の横に矢印が浮かび上がるのを見て、そっと手を伸ばした。

 パイロットシートに乗り込み、フィッティングが終了し、女神メローペの説明が始まった。

 

 その声は女神だと名乗った。

 そして説明が進むに連れて、血の気が引き背筋が寒くなるのを感じていた。

 これが聞けば聞くほどにオーバーテクノロジーの塊で有る事が伺えたからだ。

 こんな物が人の手に渡ったら人類は滅亡する……しかし。

 

『大丈夫ですよ。私が取り上げますから、間違った事には使わせません。それにまだ、人にはこれは作れない』

 

「確かにそうね。貴女が居るのよね。少し安心したわ」

 

 取り敢えず身をもって知ることの出来る事は、全て体験してやろうじゃないかと開き直る香月夕呼、その人だった。

 

 

 

 ◆

 

 

 

 イリーナ・ピアティフ中尉は、困惑していた。

 いつの間にか護衛の自分も今まで見たこともない機動兵器の前にいたからだ。

 博士の後を追い、そして巨大なワルキューレの搭乗口へと近づく……。

 搭乗口の横には矢印が浮かび上がり、これを動かせと言っているように感じた。

 そして恐る恐る、そっと手を伸ばしたのだった。

 

 結果、3人の中で一番上手く動かせたのはイリーナ・ピアティフ中尉だった。

 香月夕呼博士の秘書官で護衛、通信士としても職についていた彼女は、これまで戦術機に乗ったことはない。

 しかし、高水準の護衛術とそのコマンドオフィサーとしての資質からワルキューレの女性騎士としての才能を開花させる事に成ったのだった。

 

 

 

 

 

 

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