一瞬の瞬き、一条の光が通り過ぎると虚空に光の花が咲いた。
ここは、太陽系
光の発せられた先は見通せないが、オールトの雲の中にその大型戦闘艦は陣取っていた。
そしてここには、ハコ達によって7層にも及ぶ
外から来る物、内から出て行く物のすべてを対象とした迎撃システムの事であるのだが、一度通過させてから確実に迎撃するためのシステムであり、対象を確実に補足するのが目的である。
今のところ対象となる異物が通過する方位角が分かっているので100%機能しており、この迎撃システムから逃れる事が出来るのは空間跳躍の可能な存在だけである。
しかし、それが出来たとしてもハコ達の耳目を誤魔化すことは出来ない。
既に時間の巻き戻し以外ならば停止に限りなく近い停滞や逆の加速を可能とするウンサンギガの技術からは、それ以上を可能とする者以外では例えそれが神であったとしてもその目を掻い潜ることは無理である。
『システムより報告。確認された侵入物の消滅を確認しました。反物質対消滅砲は、正常に稼働中です』
[システムは、引き続き監視を継続。侵入物は迎撃し、太陽系から飛び出す物は鹵獲艦を発艦させなさい]
『システム了解。監視を継続します』
木星から豊富に送られてくる反物質カートリッジは、現在この艦の副砲の弾頭として加工され使用されていた。
光子魚雷の弾頭部分を艦砲で連射出来る様に加工したものだが砲弾化したことで小型艦でも多量に搭載できる事から、戦力の増強を考えここで実証試験がなされていた。
試験を行っているのは、小型の弾頭一つで大型艦を消滅させられるほどの威力のある弾頭であるが、
これは光子魚雷にも使用されている物だが光子魚雷として使用した場合は、その形態はかなり大柄な物になってしまう事からこれまでは搭載できる数に限界が存在した。
ハコ達の
しかし、弾の補給の要らないエネルギー砲にも砲身の耐久性により連射可能な間隔が存在し、有効射程距離を超えると急速に威力が減衰してしまうという弱点も存在する。
そのために、遠距離砲撃や威力砲撃を必要とする場合には、重力レンズによる収束砲撃が必要とされている。
その点において実体弾は、発射間隔を大幅に短縮する事が可能である事や射程が長くても威力の減衰が少ない宇宙空間では初速さえ稼げば時間は掛かってもどこまでも届く事から精密な軌道計算の可能な情報知性体には活用しやすい兵器である点があげられる。
反面、砲撃が当らなかった場合に初速のままどこまでも飛んで行ってしまう事から、発射直前に自動入力された座標データによって近接信管が発動すると言った危険物管理が必要である。
今回、試験されている弾体には基本的に不発弾は存在しない。
全ての反物質を格納しているカプセルの安全装置は、本体から切り離される(弾体として発射した場合も同じ)と信管等が反応しなかったとしても決まった時間で安全装置の維持エネルギーが消費され間を置かずに対消滅反応を開始し膨大なエネルギーを放出して消滅する事が規格として決められている。
1gの反物質が同等の質量と反応した場合のエネルギーは約180兆ジュール、これを安全に保管するための保管カプセルは、大きめのダチョウの卵ほどの大きさが必要だが、これを弾頭として使用する場合の簡易保護カプセルはテニスボールほどにまで小さくする事に成功していた。
簡易保護カプセルは、弾頭が収められたカートリッジから維持エネルギーを供給されており発射と同時に的とされる到達距離に至るに必要なエネルギーを逆算し充填される。
その結果、的を外したとしても反物質の維持に必要なエネルギーが切れた瞬間に反応を開始して消滅する事になるわけである。
1gの反物質が1gの同質量の物質に対消滅反応して90兆ジュール✕2のエネルギーを放出した場合の破壊力は、約43キロトンの核爆弾に相当し、これは長崎型核爆弾の2発分に比例する事になる。
1gの反物質でこの威力ですから1単位の反物質エネルギーカプセルに保管されている100gが反応した場合は単純に100倍の威力になる訳で、1発分最大量100gの反物質の量を少なくする事で調整が可能となる。
これらを踏まえて今回、弾頭1発の威力と効果範囲に加えて有効射程の延長を図る事、更に搭載数を増やし取り扱いやすくするための小型化と専用カートリッジ化を目標に開発が進められていた。
初期目標は既に達成されており、現在は運用するにあたってのデータ収集のため実働試験をここで実施しているのであった。
[何とか実用段階にまで持ち込めましたね。マスターが居ればもっと早かったんでしょうけれど]
[それは言っても仕方が無い話さ。マスターは、私達を信頼して任せてくれたんだし…]
[そうでしたね、期待には答えなければ……]
自分の発したボヤキに答えたケラエノの
マイヤは
太陽系内に残るBETA及びハイブは、火星のマーズゼロと月のサクロボスコ、そして地球に存在する物だけとなっている。
銀河中に調査のために散っていた手持ちの戦闘艦は、894隻。
その半数が戻ってきた時点で太陽系内の掃除は、ほぼ完遂していた。
BETAの詳細データはライブラリーにされ、宇宙での対処法も確立されようとしていた。
タイゲタは、対BETA用の専用ワーカーを組み立てたのである。
これはBETAから見た場合、正に天敵とも言える物になったのだった。
対BETA専用掃討ドロイド『メタルワーム』。
自己修復増殖型の半有機ドロイドである。
2つの形態を持ち、最小の物は太さ30mm、長さ500mmほどの蛇のような形体をしていた。
地中を自由自在に移動し、敵に食いついて体内に潜り込み内部から食い荒らす悪食である。
増殖型半有機ドロイドであるメタルワームは、当然のように成長して形態を変化させて増殖するのである。
ワーム形態で最大の物は、太さ3m、長さ50mにもなる。
大型になると地中から地上のBETAを丸呑みにしたり、輸送用の大型BETAに食いついては餌食にしていった。
メタルワームの大型の物は、頭部から弾丸のように小型種を撃ち出して敵に食いつかせて更に数を増やしていった。
大型のメタルワームが最大にまで成長すると頭部をイソギンチャク型に変態させ破壊されたBETAを全て飲み込み始める。
この段階のメタルワームになると体内にワームホールを持ち、微細に粉砕されたBETAは
そして送られてきた物の全てがナノマテリアル資材として転用されるのだ。
メタルワームは、BETAに関連する物質を全て食いつくすまで止まることは無い。
ハイブの構造物その物であっても全てを食い尽くし、BETAの痕跡すらも残ることは無いのだった。
[地球でも
[しょうが無いわよ、彼らは臆病だし、想像力が旺盛だわ。BETAを食い尽くしたら今度は自分達が次の餌にされるくらいの事は思うでしょうね。例え味方でも後ろから撃つ様な人種なら尚更ね……]
[それはもう自業自得でしょう]
明けましておめでとう御座います。
今年もよろしくお願い致します。