実は俺、BETA大戦に介入しました!   作:夢見る黄龍

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vari様、ネモス様、モリブデ様、灰汁人様 誤字報告ありがとうございます。


25.蹂躙と根回し

 

 

 

 数えるのも億劫になるほどの光の線が、止め処無く地上から空に立ち上り埋め尽くしていた。

 BETAの光線属腫による対空掃射の嵐である。

 しかし、塵一つ空から落ちて来る事は無い。

 下から狙われていた獲物は間違いなくレーザーには当たっているのだが、蒸発してしまっている訳でもない。

 的にされていた獲物は、地上からの光の線を歪ませ反らし反射して何の痛痒も表す事のない様にその上空を飛び去ってゆく。

 暫らくすると今度は逆に空から光の雨が降り注ぎ、お返しだと言わんばかりにBETAを穴だらけにして通り過ぎていった。

 その数は、101と少数だ。

 地上を覆い隠す万を超えるBETAに比べれば余りに少ない数である。

 しかし、均等に満遍なく地上を光の雨で洗い流すように、確実にBETAの数を減らしてゆくのだった。

 

 嘗て航空機の脅威とされた光線属腫のレーザーだが、それが無力化されただけでまさかここまで立場が入れ変わるとは先頭に立って地上攻撃をしている巌谷も考えてはいなかった。

 既に簡単な作業となった一連の地上攻撃だが、こうやって実際に行ってみると如何に今回の対地攻撃が一方的な物であるのかを実感する。

 

「こりゃ~、もう簡単な流れ作業だな。ビームバルカンの雨降らせるだけで終わりそうだぜ」

 

[当たり前です。私達を戦術機など(あんなの)と比べないで頂けますか。怒りますよ]

 

「そう目くじらを立てるなよ。『飛燕』達が俺達の使ってた戦術機とは別物だってことは分かっているさ。だがなぁ~、こうやって実際にBETAの上を飛んでみてやっと実感してるって訳さ」

 

[現状のBETAどもには、対空レーザーの他に物理的な攻撃方法は存在しません。それを意味の無い物にしてしまえば、こうなるのは自明の理です。どれほど高出力だろうとレーザーはレーザーです。マスターの様に物理法則を捻じ曲げる様な事でもしてこないのであれば、高が知れています]

 

 ドンッ、ドンッ、ドンッと翼下に懸架された左右のリニアライフルから3連射された特殊榴弾は、目の前に迫っていた要塞(フォート)級に大穴を開けて息の根を止めた。

 脅威とされたその巨体が全く何の障害にもなっていない様は、ある意味哀れでしかない。

 

「確かに、あれは反則だ。まさか目の前で母艦(キャリヤー)級を握り潰すとは思ってなかったよ。言葉の通りあれを正に(てのひら)の上って言うんだろうな」

 

 巌谷さんは、自機を操縦しながらバディーとなった戦術AI『飛燕』(巌谷命名)とお喋りをしていた。

 既に今回の戦闘は、お喋りしながらでも熟せる様な簡単な作業となっていたのである。

 巌谷機が先頭を飛び、その左右斜め後方に2機づつ横に並んだ随伴の機体が一匹の漏れもなく綺麗に地上をビーム掃射して蹂躙して往くのだ。

 時間を負うごとに地上からのレーザー攻撃は少なくなり、たまに反撃のレーザー光が立ちのぼるが対空迎撃というには程遠い物だった。

 態々ここに生き残っていますよと場所を教えているだけの行動である。

 

[現在時刻1100(いちいちまるまる)となりました。BETAに接敵してから丁度1時間(3600秒)となります。目標敵集団15万のおよそ8割以上の殲滅を確認しました]

(15万×80%÷3600秒=33.33333匹、100機で秒間33匹を殲滅した計算です)

 

 巌谷達は、フォートレスから飛び立って10分ほどでBETAに接敵していた。

 予定通り出雲の手前、島根県三瓶山を迂回して太田市街を蹂躙しているBETAに出くわしたのである。

 見渡す限りに街と地上を埋め尽くすBETAの大群、地上から集中するレーザー攻撃に最初は怯んでしまったが護衛の4機が盾となってレーザーの槍衾(やりぶすま)を物ともせずに反撃に転じ、戦場を切り開いていった。

 唖然としている巌谷をそっちのけで戦術AIの飛燕が次々と指示を出してゆく。

 『そのまま飛んでいてくれれば良いですよ』と言われて、その余りの恥ずかしさに吾を失いそうになったのは黒歴史である。

 各機への指示は、『飛燕』に任せて護衛の小隊4機と先を争うように地上攻撃を開始したのは、恥ずかしさを誤魔化したかったからに違いない。

 

[わずかに生き残りが散見されますが小隊ごとに散界して残敵の掃討に移りたいと思います。スワローリーダーと第一小隊は、このまま上空警戒と地上支援に(あた)ります。隊長、しばらく自由に飛んでいいですよ]

 

「了解。あとの掃除は、任せるぞ。ヒャッホ~♪」

 

 いきなり奇声を上げて編隊を離れた赤い機体は、宙返りを繰り返し始めるのと同時に第一小隊4機がその周りを大きく囲む様について行き、後続で絨毯射撃をしていた96機は各小隊4機ずつに分かれて四方に散っていった。

 

[正午には津山でマスターの部隊と合流の予定です。残敵の掃討を手早く済ませて向かいましょう]

 

「了解だ!」

 

 10分ほどアクロバット飛行を続けて気が済んだのか、スイッチが切れたように水平飛行に戻ると護衛の第一小隊がスワローリーダーを先頭に逆V字に編隊を組んだ。

 

「それじゃもう一働きして一度撤退、フォートレスに補給に戻ろう」

 

[燃料・エネルギーの消費量は5%程で余裕がありますが、弾薬の残量は40%を切りました。補給のために一度帰還するとフォートレスに連絡します。行きがけの駄賃です、帰還進路に存在するBETAに残弾をお見舞いしていきましょう。大型種と光線属種を減らすだけでも後が楽です]

 

「了解だ」

 

 

 

 ◆

 

 

 

 所変わって国連護衛艦隊、香月夕呼は旗艦の艦長室に居た。

 狭いながらも対面に座れる椅子とテーブルがあり、夕呼と艦長のパウル・ラダビノッド准将が深刻な面持ちで相対していた。

 現在、国連艦隊は進路を西にとり、姫路を目指している。

 

「進言を聞いて頂き、ありがとうございます」

 

「根拠はこれから説明して貰えるのだろう? 君が何の理由も無く他者に意見するとは思ってはいないし、上官に意見具申するのだから尚更だろう。ところで初めて見る船だが何処(どこ)製だね。ミズ香月」

 

「プライベートシップですので出処(でどころ)は、ご容赦を願います」

 

「残念だ、船乗りにとって良い船への興味は尽きないところではあるのだがね。それで、人払いまでして極秘の話とは一体どういった事だね?」

 

「先ずお伝えしなければならないのは、現状のままでは帝国防衛軍は壊滅。日本帝国の帝都はBETAに蹂躙されることでしょう。現在、九州方面から東進しているBETAは大陸からの増援をうけて25万以上の数に上ります」

 

「その情報は確かなのかね? 衛星(アメリカ)からの情報にも無かったが……」

 

「アメリカは全軍撤退を表明しました。代わりに新型爆弾による迎撃を提案しております」

 

「何だと、日本の本土を新型爆弾の試射場にでもする気でいるのか……」

 

「日本帝国は、これを固辞しましたがアメリカはドサクサに紛れてスイッチを押す気でいます。現在、私の仲間が単独でBETA侵攻の遅滞行動に入っています」

 

「単独で遅滞行動だって? 死にたいのか、そのお仲間は……」

 

「いえ、それが……下手をすると殲滅してしまう可能性があります」

 

「……もう一回言ってくれるかね、私は耳がどうかしてしまったようだ」

 

「多分私の予想が確かならば、BETAは帝都に到達する前に殲滅されてしまうだろうと言ったのです」

 

「馬鹿な、そのお仲間は化け物か……。ああっいやっ、ミズの言葉を疑う気はないのだがね……」

 

「これを御覧ください」

 

 夕呼が、板状の物(情報端末)を二人の間のテーブルに置くとその板から立体映像が立ち上がった。

 そこに映されたのは、一方的にBETAを駆逐している光景だった。

 それも今では衰退してしまった航空戦力による対地上攻撃の様子だ。

 見た事もない航空機からの光弾による地上攻撃を受けて、地上のBETAが悉く穴だらけになってゆく。

 地上からの光による反撃は、全てが見えない膜の様な物に反らされてしまい対象には1発も当たっていない。

 我が物顔で空を駆け抜けてゆく謎の航空機の翼下から機関砲が火を噴くと、その前方に聳え立った要塞(フォート)級に大きな穴が開き沈黙させるのだった。

 

「何の冗談だね、これは……」

 

「見た通りの光景です。リアルタイムで送られてきている映像ですよ」

 

「随分と一方的じゃないか、BETAがゴミの様だ」

 

「まさしく、仰る通りですね。予想はしていましたがここまでとは……」

 

 ドンッ、ドンッ、ドンッと空気が弾けるような音と共に、その進路を塞ぐように触手を広げ立ち上がった要塞(フォート)級に大穴が空いた。

 その巨体が、何の障害にもならず倒されてゆく。

 

「彼らは何者なのだね? 説明してくれるのだろう」

 

「些か説明しづらいのですが、私の聞いた彼の言い分が正しいのであるならば……あそこで戦っているのは、神の尖兵です。にわかには信じられないかもしれませんが、通りがかりの異郷の創造神、それも創造と破壊を司る者達だそうです。偶々地球のそばを通ったから助成してくれると言っていました」

 

「・・・」

 

「これから話す内容は、とてもデリケートな話になるのですが、そもそも彼等は我々人類の事を全く信用していません。中には信頼できる人物も存在するだろう事は理解していますが、現在の世界情勢を破滅に追い込んでいるのはBETAだけが原因では無いだろうと言っていました。その責任の何割かが、人類内部の醜い諍いに依る物であることを既に知っています」

 

「う~むっ……耳が痛い話だね」

 

「彼等は、BETAを超える第三の人類の敵になるかもしれません。しかし、BETAと違って会話する事はできます。隣人として、または取引相手として……」

 

「ミズ香月は、我々に彼等と取引をしろと言っているのかね?」

 

「そうです。ただし『誠実な』と頭には付きますが……一欠片も騙す様な事の無い誠実な取引が理想です。そもそも、彼等に駆け引きは通用しません」

 

「それは、どういう意味かね?」

 

「彼等は、文字通り神であり、指先一つ動かさなくても地球上を更地に出来る力を持っています。しかし、その力を行使しないのは地球その物の再生を望んでいるからなのです。だから、まずBETAを排除するそうです。これは人類を助けるためにするのでは無いとの事でした。邪魔をするなら人類もBETAと共に消え去る事になるでしょう。人類は、その程度の存在だと言う事です」

 

「君の意見から想像すると、随分と過激な連中に思えるのだがね」

 

「当たり前です、神ですから。理不尽を形にしたような物だと御理解頂くしかありません。BETAなんて彼等に比べたら可愛いもんでしょう。幸いな事に、今回は我々の味方に付いてくれるらしいので下手な横槍が入らないようにしたい訳です」

 

「しかし、それは随分と難しいのではないかね。君も知っての通り人類は、BETAに負けている現実を突きつけられているにも関わらず勝ったあとの愚かなパワーゲームを夢見るような有様だぞ」

 

「言いますね。准将も随分と辛口じゃないですか」

 

「私もこれまで随分と煮え湯を飲まされているからね。しかし、職業軍人としては上の命令は絶対だ。そいつがどんなに糞野郎で理不尽な命令であったとしてもだ。だからこそ上の立場に立たなければいけないと思っている。国を失った私が頑張ったところで高が知れているがね」

 

「いいえ、そんな貴方だからこそ信用に値すると私は判断したのです。私達から見れば神の叡智とも言える数々の物を一時的にとはいえ使える手筈になっています。飽くまでも借り受ける、と言う事ではありますが、我々でも再現できるレベルの技術等は取得可能だと思っています」

 

「君の言う『彼等』に協力して、力を付けようと言うのだね。いやはや日本人の強かさには恐れ入るよ」

 

「現在、あそこで戦闘を繰り広げている部隊を率いているのは、私の同士となったたった一人の衛士です。他の機体は、全てが無人機による戦闘であるということをご理解ください」

 

 夕呼は、ホログラムの戦闘映像を指して話を進めた。

 

「あれらには人が乗っていないというのかね?」

 

「どうやらあの機体、彼等は『ワルキューレ』と呼ぶのですが独自の意思のようなものを持っている様なのです。ですから、自分に乗るべき衛士を自分で選ぶのだそうです。一旦嫌われると触らせても貰えなくなります」

 

「整備などはどうするのだね?」

 

「各機体に専任の整備ドロイドが2体装備されており、如何なる環境下でも整備が可能なのだそうです。ですから基本的に人の手は必要ありません。当然、解体など以ての外です、やろうとすれば返り討ちに遭うことでしょう」

 

「生きた猛獣と同じということか……それでも絶対にやらかす人間が出るだろうな(アメリカとか…)」

 

「どこにでも好奇心旺盛な人間はいますが、好奇心は猫をも殺すといいます。今回、それで済めば良いのですが、下手をしたら国が滅びますよ」

 

「う~む」

 

「連中は、それくらいの罰を受けなければ身にしみないとは思いますが……いえ、失礼しました」

 

「アハハ、ミズ香月も言うじゃないか。分かった、この件は君に一任するとしよう。第4計画の責任者は、君だ。その範囲内であれば協力しよう」

 

「ありがとうございます、准将」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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