[マスター、チョッとよろしいでしょうか。この次元の様相が朧気ながら分かってきましたので御報告いたします]
ハコから声がかかったのは、フォートレスへの帰路について直ぐの事だった。
「そう言えばこの宇宙は、俺達のいた宇宙の普通と違って一風変わった作りになっているんだって聞いた様な……、だから帰りの次元座標がまだ見つからないって言ってたよね」
[肯定。あの
「???、何度も同じ時間を繰り返してるって事?」
[肯定。簡単に説明するとそうなります。多少の変化があったとしても、外的要因が無ければ延々とこのままループするでしょう。どういった意図でこの様な世界が構築されているのかは、
「……とすると、僕達はこの次元から見るとその外的要因って事で良いんだよね」
[肯定。そう仮定すると我々の介入によって閉じられているこの時空が開くものと予想されます。あの
「……うん、まぁ程々にね」
[肯定。では、先ず手始めとして現在実効支配中の四国に置く予定の食材プラントの件ですが、アメリカ合衆国産人口蛋白の駆逐を目標に掲げたいと思います。あんな物は、食材でも何でもありません。食への冒涜と言ってもいいぐらいでしょう。良くこの次元の日本人はあんな産業廃棄物を我慢して口にできますね]
「一応前大戦の敗戦国って事だからさ、好き勝手されてるんじゃないの。ちょっと気の毒には思うけど同情も出来ないかな。それで甘い汁を啜ってる輩もいるみたいだし」
[肯定。親米派の議員ですね。国土と国民を生贄にして平気な顔をしている連中です]
「帝国を言っていながらそんなのを議員にしてしまう民主主義にも原因があるし、クズを引きずり降ろさないで放置している国民や武家にも責任があるところだね」
[肯定。クーデターでも起きないものでしょうか]
「そんなの起きたらどうせ米国の傀儡政権にしかなんないでしょ。無駄無駄」
(少々種明かしをすると実は、この次元を管轄する神がBETAの排除を面倒臭がって次元を閉じた……って落ちらしい(作者独自解釈)んですけど、ここでは全てがナイ神父のせいという事にされてしまっています。まぁ、こんな所に放り込まれた方からすれば仕方がないのですがある意味自業自得ですよね。残念!)
◆
私には前世の記憶がある。
前世と言っても過去の記憶ではない。
何度も何度も繰り返す、同じ私自身の記憶だ。
今生で、いったい何度目になるのだろう。
もう周回した回数も何回か分からなくなっている。
実際のところ、私はもう今生の人生を諦めかけている。
何度同じ事を繰り返しても、この世界は一向に変わらない……という事に絶望もしている。
でも結局、私はまた今度も同じ事を繰り返してしまうのだろう。
前世の記憶を頼りに学問を重ね、意識して国連を動かし世界の改変を求めたのは、これでいったい何回目だっただろう。
だから量子物理学なんて難解な物まで持ち出して、時空の内側からこの世界を変えようともしてきた。
何度も何度も迷惑だったよね、ごめんよ白銀。
そして、毎回協力してくれてありがとう、鏡。
みんなさぞ辛かった事と思う。
あまり上手くは行かなかったけど、それでも君達のお陰で直後の破滅を数年後の滅亡にまで先延ばしするぐらいの変化を作る事には成功したはずだった。
そう、今までは。
でも今回は、これまでとちょっと様相が違う。
初めて此方の意図とは関係なく、時空の外から御客様が来てくれた。
どうやら間違いではないらしい……らしいというのは彼等の自己申告に他ならないからだ。
それも予想以上に強力で、下手すると劇薬とも言える外的因子にも思える。
これまでと違い何かが大きく変わろうとしているのかもしれない。
そんな僅かな希望と期待、そして恐れに震えながらも
こんな事が許されるのだろうか。
こんな私だけれど、どうせなら明るい未来も見てみたい。
こんな事をと望むのは、贅沢なのかしら……。
どうやら考え事は、ここ迄のようである。
[艦長。白陵基地まであと5分です]
「もう一度、基地を呼び出して頂戴。あの馬鹿達の事だから色々とやらかしてないといいけど……」
「艦長。それは無理な話です。だいたいやらかす連中ばかりを集めたのは貴女ではないですか」
「あらっ、残ったと言って欲しいわね。生き汚い連中が煮詰められたらああなったんでしょ。私のせいじゃないはわよ(集まるべくして集まったんでしょうけどね)」
[白浜基地、出ました]
『こちら帝国陸軍白陵基地、国連特殊任務部隊Aー01部隊長の伊隅です。司令、ご無事で何よりです。一昨日より消息不明となられたと聞いておりましたのでホッといたしました』
「あらっ、ごめんなさい。チョッと心配させちゃったみたいね。ピアティフも居るし大丈夫よ」
『今回は、珍しくお二方とも同時に連絡が取れなくなっておりましたので心配いたしました』
「……ピアティフ、連絡してなかったの?」
「今回は、想定外の事ばかり起こり、そんな余裕もなかったと抗冥させて頂きます。申し訳ありませんでした」
「まあ今回は、仕方がないわね。でも、今後も彼等と付き合ってゆこうとするなら、これが当たり前になったとしても不思議じゃないわ。気をつけなさい」
「了解しました」
『それで、司令。一体何があったんでしょうか? 先程の通達では、部隊員全員の出頭とありましたが……』
「今、そちらに向かっているわ。そろそろソッチでも確認出来たんじゃないかしら」
『いえ、レーダーには何も写っておりません。監視員からの報告も上がっておりませんが……』
「えっ」
「艦長。ステルス迷彩がそのままです」
「ああっ、ボーイ。ステルス迷彩を解除してね」
[了解しました。ステルス及び光学迷彩を解除します]
各種欺瞞装置が解除されるとそれは白浜基地の港湾部の最深部、基地機能の目と鼻の先に現れたのだった。
『えっ! えっえっえっ~~。なっ、何ですかこれは?』
伊隅部隊長は、目の前に現れた真っ白な空中浮遊物に驚いていた。
「今日から私の足になった、リトルボーイよ。今降りるから少し離れなさい」
基地機能の正面の空中に、いきなり出現した未確認物体に警戒した者達が銃器を抱え集まって来ている。
船外スピーカーから香月夕呼司令の声が響いた。
『司令の香月です。この船は、実験船リトルボーイ。危険は、無いから少し離れて周辺警戒を継続しなさい』
司令の声を聞いた者達は、少数をこの場の警戒に残し散っていった。
しかし、逆に近寄ってくる馬鹿も居た。
「離れろって言ったのが聞こえなかったのかしら。Aー01は相変わらず脳足りんばっかりよね」
[艦長。このままでは下りられませんがどうしますか?]
「大丈夫、伊隅がどうにかするでしょう」
案の定、その様子を通信指令室から見ていた伊隅部隊長が吠えた。
『そこにいるお前等、今から一歩もそこを動くんじゃないぞ!』
乱暴にドアを開け、走り出す音がスピーカーから聞こえてきた。
それまでお祭り気分だった野次馬が全員青い顔で立ち尽くす。
『だから言ったのに、ご愁傷さま♪』
駆け出してきた伊隅部隊長によって野次馬は整列させられ、直ぐに腕立て伏せが開始された。
驚いたことにA-01の部隊員が勢ぞろいしていた事だった。
付き合いの良い連中である。
「コイツラをワルキューレなんかに乗せて大丈夫かしら……心配になってきたわ」
「何とかなるでしょう……いえ、何とかしてくれるでしょう、機体の方が……」
「それもそうね。心配するだけ無駄かしら」
[……それで僕はどうしたらいいんでしょう? このまま滞空待機ですか]
「ハァ~、下りて頂戴。私達が戻るまでクローズで待機、誰も入れちゃだめよ」
[了解しました。艦長と副長が戻るまでクローズ待機ですね]
◆
・・・#%$&・・・
・・・異物の介入を確認・・・
・・・排除せよ!・・・
・・・現装備では不可能・・・
・・・上位個体の可能性あり・・・
・・・可能な限り捕獲せよ・・・
・・・解析可能か?・・・
・・・無理!・・・
・・・端末は全て消滅・・・
・・・非効率・・・
・・・端末の補充と増産を具申・・・
・・・認可・・・
・・・天との通信・不通・・・
・・・現状を維持せよ・・・
・・・了解・・・
・・・#%$&・・・