実は俺、BETA大戦に介入しました!   作:夢見る黄龍

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28.意地悪なレクチャー

 

 

 

 伊隅部隊長に懲罰を食らってヘロヘロになった奴らを積み込み、リトルボーイは白浜基地を後にした。

 アルファーの指示通り海中に潜航するとそれまで用も無いのについてきていた有象無象の目はなくなったのだった。

 

[監視衛星沈黙、白浜基地を監視していたと見られる不信な船舶の追跡も切れました]

 

「ご苦労さま。このまま出来るだけ深いところを通ってメガフロートに向かって頂戴。普通の潜水艦は、水深400mぐらいが限界だからそれより下を通ればほとんど問題ないわ」

 

[了解しました、艦長。見つかるようなヘマはしませんから御安心ください]

 

「後は、任せたわよ、副長(ピアティフ)。私は、下の連中に軽くレクチャーして来るから……」

 

「了解。お手柔らかにお願いします。こちらの事は、お任せください」

 

 

 香月夕呼は、それぞれに指示を出すと艦長席を立ち格納庫に向かったのだった。

 その頃、格納庫ではさっき迄ヘロヘロだった連中が、今では別人のようにはしゃぎ回って格納庫内を徘徊しているのだった。

 中でも特に気になるのだろう人が集まっているのは、5つの巨大なカーゴボックスだった。

 戦術機がすっぽり入るぐらいのカーゴボックスからは、如何にも『秘密が詰まっています』と声高に言っているような雰囲気を醸し出しているのだった。

 

「この船、さっきまで空を飛んでたと思うんだけど、今度は海中を進んでるみたいよ!」

 

「外、真っ暗で何も見えないね~……うわっ、いきなり明るくなった!」

 

 窓の外を眺めていた速瀬水月がつぶやくと、今まで真っ暗にしか見えなかった海中が鮮やかな色を持って明るい景色となって映し出された。

 実は、除き窓のように設置されて居る物は、船外モニターであった。

 この船は移動トーチカと称されるように全面が装甲されており窓に相当するものは存在しない。

 直接船外を見ることは、その構造上出来ないのである。

 早瀬のつぶやきに反応して暗視装置が働き、船外モニターに補正が入った結果であった。

 当然のように速瀬が見ている覗き窓以外は真っ暗なままである。

 

 伊隅部隊長から号令がかかったのは、船が海に潜って10分ほど経った頃だった。

 

「傾注! これより司令から説明が為される。全員中央に整列せよ。鳴海! ウロチョロするんじゃない」

 

 カーゴボックスによじ登ろうとして張り付いていた鳴海孝之は、部隊長に叱責されて壁から転げ落ちていた。

 部隊が整列したのを待っていたようにエレベーターの扉が開き、香月夕呼司令が姿を表した。

 見慣れない真っ白な装甲スーツを身に着けているが、その上から何時もの白衣を羽織っている姿は間違いなく香月夕呼博士その人である。

 それまで直立不動で整列していた部隊員に伊隅部隊長が号令をかけた。

 

「A-01、部隊長以下総勢60名揃いました!」

 

「楽にして頂戴」

 

「ヤスメ!」

 

 全員が軽く足を開いて楽な姿勢を取った。

 

「みんなに話す事は、沢山あるのだけれど、まずこれから見聞きする事は最高機密よ。如何なる人物や組織、身内親族にも許可無く口外することを固く禁じます。いいわね、2度は言わないわよ。ではまず、これを見て頂戴……」

 

 香月司令が手にしたカード状の小型端末を操作すると、それまで固く閉ざされていた5つのカーゴボックスが折りたたまれながら開いていった。

 中から出現したのは、既存の戦術機などではなく豪華な椅子に座った見たこともない巨人だった。

 

「これは、ワルキューレ。人の手で作られた戦術機などではないわ。神の手による神兵よ」

 

 ザワザワザワ……

 

「静かに! 今回、私は地球を救う為に自称『創造神』と名乗る人物と手を組みました」

 

「お待ち下さい、司令。それはどういう事でしょうか? 人類を見限ると仰いますか?」

 

「伊隅部隊長。それは違うわ。まずこれを見なさい」

 

 香月司令の声とともに頭上に映し出された巨大な立体映像では、BETAが九州方面部隊を駆逐している様が映し出されていた。

 

「BETAは、宇宙から来たわ。みんなは、火星からだと思っているでしょう。でも違ったのよ。もっとずっと遠くの宇宙から彼等(BETA)は、やって来た」

 

 映像の視点は地球から離れ、太陽系の各惑星上に点在するハイブを映し出した。

 移動する視点は、太陽系を離れ他の星系へと移ってゆく。

 すでに虫食いの様にされた惑星の残骸が多数映し出され、さらには宇宙を渡るBETAの飛翔体が確認された。

 その後視点は、銀河規模にまで引き伸ばされるとBETAの支配領域を明確にしたのだった。

 誰も物音一つ立てない、呼吸音も聞こえて来なかった。

 全員が息をするのも忘れて映像を見上げ、顔面蒼白である。

 段々と理解が及ぶにつれ、隊員達はガクガクと震えだし、中には泣き出す者まで出始めた。

 

「これが現実よ。どうやってもこのままでは人類に勝ち目は無かったわ(・・・・・)

 

 全員が絶望している中で、ハッとした顔で涼宮遥が香月司令を見上げた。

 

「司令。今までは無かったとおっしゃいましたか?」

 

「ええっ、今のままでは人類生存のチャンスなど一欠片も無かった。でも、天は我々に味方したと言っていいわ」

 

 香月司令の言葉と同時に映像が切り替わった。

 そこでは、ワルキューレがBETAを一方的に蹂躙していたのだった。

 その映像は、凄まじいインパクトをもたらすものだった。(巌谷さんがハッチャケてるところです)

 

「なんだよアレ! 何なんだよ」

 

「そんな……BETAがゴミの様……」

 

「うわ~、これは非道い♪」

 

「香月司令。これが答えですか?」

 

「そう、これが答えの一つ。地上は、人類の手で何とか掃除して纏めろよ、その力は貸すからな……と言う訳。でもこの力は、現在の人類には大きすぎる力。必ず火種となるでしょう」

 

「なるでしょうね。こんな物を見せられた上層部は、今以上に増長するでしょう。それこそ手がつけられなくなります」

 

「だからこれらには神によって首輪が付けられているわ。誰による創造物か思い知ることになる」

 

「???、それは……首輪?ですか……」

 

「さっき私は、これらが神機だと言ったわよね。それぞれが意思を持つ神の眷属、女神が管理する遺物にちょっとでも(よこしま)な事を働いたらどうなるか、その身で体験してみると良いのだわ、ウフフフ……」

 

「それは、想像するだけでもゾッとしませんね。私ならゴメンです」

 

「メル、挨拶なさい」

 

 香月司令が一番奥の機体に声を掛けるとその機体は、勝手に椅子から立ち上がり華麗なカーテシーを披露したではないか。

 

[『メルクリウス』と申します。気軽にメルとお呼びください]

 

「「「「「「「「「「喋った~!」」」」」」」」」」

 

「そりゃ~喋るわよ、意思があるって言ったでしょ。でもここまでハッキリとした自我があるのは部隊の中心になっている指揮官機だけなのだけれど。特に情報処理に特化したメルクリウスは、その辺が強化されている機体なのよ」

 

 伊隅部隊長が疑問を口にした。

 

「修理やメンテナンスは、どうするのですか? どう見ても人の手には余る代物ですよね」

 

「自分の事は自分でやるわよ。見ていなさい」

 

 香月司令が口にした途端、壁や床から円筒形のユニットが現われてワルキューレのメンテナンスや艦内の掃除などが始まった。

 

「そうそう、紹介が遅れたけれどこの船の名前は『リトルボーイ』。ボーイ、挨拶なさい」

 

 白い船を擬人化したような少年の立体映像が現われ、流暢に喋りだした。

 

[皆さん、只今艦長よりご紹介に預かりました『リトルボーイ』と申します。よろしくお願いいたします]

 

 吃驚(びっくり)する事が目白押しで、ほとんどの部隊員が情報を処理しきれずに目を回していた。

 

「兎に角、これから忙しくなるわよ。全員覚悟しなさい。ああっ、言い忘れていたけれど国の紐付きになっている人間は、決断を迫られるからそのつもりで」

 

 宗像美冴が声を上げた。

 

「決断とは何のでしょうか?」

 

「人類の生存を取るか、人類同士争う国の意向を取るか……まっ、この場合はチョッカイを掛けてきた国ごと消し飛ぶでしょうけどね。神は、人の心は見ても国の意向なんて物を気にしたりしないわよ。気に入らなければ鼻息一つで街どころか大陸が沈むわよ。ちなみに付け加えておくと、BETAは、四半世紀掛けて火星から地球に来たけれど、この力ある神はこの周辺銀河全部の調査に1月も掛けなかった……とだけ言っておくわ」

 

 質問した宗像美冴は、空いた口が塞がらない様子で呆然としていた。

 その様子を見ていた伊隅部隊長が聞き返した。

 

「その神様にBETAの始末をお願いする訳にはいかないのですか?」

 

「簡単に出来るらしいわよ。『地球ごと消し飛ぶけどそれで良ければ……』って答えが帰ってきたんだけれどね。私だってそれくらいの事は、確認するわよ、楽がしたいもの」

 

「……はぁ、そうですか」

 

「余りに力が有りすぎるんですって。怒らせたら地球が消滅するぐらいじゃ済まないわよ。もう、他では星系ごと掃除が始まってるらしいから……」

 

「……星系ごと……」

 

「そう、下手したら太陽系ごとBETAの掃除に巻き込まれるって事。彼も、結構気を使ってくれてるのよ」

 

「「「「「「「「「「・・・」」」」」」」」」」

 

 その話を耳にして絶望する者もいれば、顔を上気させて何かを考えている者も居た。

 思案に耽る者。

 思考を停止して固まる者。

 目を回している者などなど……。

 

「早速ワルキューレにチョッカイを出そうとしてるところを悪いんだけど、潰されても私は知らないわよ」

 

 ワルキューレの足元に忍び寄って椅子によじ登ろうとしている何人かが、ギクリッと固まってこちらを見ている。

 

「あんた達、ゴキブリやハエが寄ってきたら払い除けたり踏み潰すんじゃないの? それとおんなじヨ。掃除は、ドロイドがしてくれるから良いとして生ゴミに成りたくなかったら大人しくしてなさい」

 

 人の好奇心とは、恐ろしいものである。

 先頭に立って椅子によじ登っていた鳴海孝之は、転げるようにして格納庫の中央に戻ってきていた、懲りない奴である。

 

 

 

 

 

 

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