場所は、機動要塞空母フォートレス。
時間は、8月13日1200時。
「お疲れ様でした、巌谷さん。作戦時間ピッタリですね、ご無事で何よりです」
着艦した巌谷を迎えたのは、甲板の一角で食事を摂っていた
そこには、
「ハイッ、只今戻りました。イヤハヤ楽すぎて、これじゃ怪我のしようが有りませんよ。それでそちらの御婦人方には、ご紹介いただけるのですかな?」
「ええ、紹介しましょう。私の妻達です」
「やはりそうでしたか。ハコさんを入れて全部で9人も奥さんが居るとは聞いていましたが、本当だったんですね」
「嘘だと思ってたんですか? まあ、僕は見かけ通りで地球人の年齢で言ってもまだ18歳ですからね。仕方が有りません」
「そんな事は有りませんよ。しかし、綺麗所が揃っていらっしゃる」
全員がそれぞれのハードスーツ(ヘルメット無し)の状態で食事を取っていた。
この時点で、まだ巌谷さんは蚊帳の外。
嫁達からは、完全無視、アウトオブ眼中の状態である。
「ではまず、私から名乗らせて頂きます。日本帝国陸軍富士教導隊所属、巌谷榮二少佐であります。本日より施設武装組織
ピシッと敬礼をすると、ここでやっと小麦色の美丈夫が一つ頷いてそれに答えた。
歳は20歳ぐらいに見える。
優雅に立ち上がると流暢な日本語で喋りだしたのだった。
「私は天の川銀河連盟4大種族が一つ、ウンサンギガ帝国の第8帝妃、護衛部隊筆頭ジェニファー・天河・アンダーソンだ。気軽にジェニーと呼んでくれてかまわない」
(昴達の地球人は、多かれ少なかれウンサンギガ一族の遺伝情報を持っています。古代日本人が一番濃く受け継いでおり、昴達日本人は特に直系王族の子孫としてその遺伝形質を継承していました)
続いて立ち上がったのは、地球人に近いヒューマノイドタイプの人物だった。
聞こえてくるのは日本語だが聞いたことのないワードが散見される。
やはり地球人ではないようだ。
「
三人目は、日本人のように見える。
「私は、ウンサンギガ帝国の第2帝妃の銀河・天河です。
次の四人目も地球人には見えなかった。
「妾は、天の川銀河連盟4大種族が一つ、阿修羅族第108王女にしてウンサンギガ帝国の第3帝妃、シャシ・天河じゃ。近接戦闘には、定評があるのじゃ」
5人目、6人目は見た目は日本人だろうか。
「私は、ウンサンギガ帝国の第4帝妃の双葉・天河です。医療関係に関わってます」
「私は、ウンサンギガ帝国の第5帝妃の裕美・天河です。財務経済を見ております」
そして、北欧系の美人が立ち上がった。
「私は、ウンサンギガ帝国の第6帝妃の聖・天河です。生産技術系のお手伝いをさせて頂いております。ワルキューレの一部、基本的な外観デザインを担当しました」
最後は、見ただけで分かる。
人間じゃない、エルフだ。
エメラルドグリーンの髪に笹穂耳の美女である。
「
そして最後に直ぐ側から声がかかったのだった。
[そして
直ぐ側に立っていたメイド長さんがジッとこちらを見てニンマリと笑った。
背筋にゾクゾクッと寒気がしたのは、絶対に気の所為などではないだろう。
駄目だ! 勝手に
これは、敵対したら絶対に駄目な連中だと直感がわめいていた。
「この巌谷榮二、お妃様方のご尊顔を拝し、望外の喜びです」
巌谷は、敬礼ではなく腰を折り深く深く頭を下げるのだった
◆
結局のところ巌谷は、同じ席に座らされて昼食を取っているのだが、まったく味が分からないほどに緊張していた。
軽食といえども全てが天然素材のご馳走である。
贅を尽くした一品ばかりなのだがまったく味が感じられないのである。
(味がしない、胃が痛い、誰かどうにかしてくれよ~)
などと巌谷が思っていると……。
[マスター。リトル・ボーイより通信です。お繋ぎしてもよろしいですか?]
「うん、丁度こちらから連絡しようと思っていたんだ。繋いでくれるかな」
[肯定。ではお繋ぎいたします]
途端に食事中のテーブルの直上に立体映像が立ち上がった。
映ったのは、白いホバークラフトを擬人化して三頭身にデフォルメした少年だった。
『こちら、リトル・ボーイ。艦長にお繋ぎします』
入れ替わるように、装甲スーツに白衣姿の香月夕呼博士が映し出された。
押しかけてきて初めて会った頃と比べると、別人のように肌の色艶も良く、年相応に若々しい。
最初に会った時は、疲れた20代後半ぐらいに老け込んで見えたが、今はまったく違う、別人だ。
白衣を着ていないとほんとに別人と間違うレベルで若々しい。
ただ一つ、目だけが鬼気迫る感じに底光りしているのは、変わらないのだけれど……。
『こちら香月。国連軍の方とは話を付けて、うちの部隊を拾って今白浜基地を出たところよ』
「ご苦労さまです。国連軍の方はどうでした?」
『巌谷少佐がハッチャけてるところを見せたら黙ったわね。あれはインパクトが凄かったわ』
「ハウッ!」 巌谷さんがサンドイッチを喉につまらせて苦しんでいる。
「あれを見せられたら大概の人は黙るでしょうね」
『ええ、まさかあそこまで一方的な映像が見られるとは私も思っていなかったのだけれど、レーザーを黙らせて制空権を取っただけであそこまで変わるとは思わなかったわ』
「そういう事です。割と単純な答えなんですけどね。数が数ですから、でもBETAのレーザーは、優秀すぎました」
『話は変わるけど、私達はメガフロートに向かえばいいのよね』
「ええ、構いません。午後の部を間近に見たいと言うならフォートレスへ合流しても問題ありませんよ」
『部下達の意見を纏めてみるわ。多分そちらにお邪魔することになるんじゃないかしら、脳筋が揃ってるから……』
「ふむ、試しに予備機を回しましょうか……乗せてくれるかどうかは、機体次第ですが……」
『それもチョット面白そうよね』
『司令、部隊員をあまり
映されていないところから香月博士に声が掛かった。
『
『……私が言っているのは、そんな事ではありません』
『それじゃ今の間は、いったい何なのかしら? それに、自分でもあの機体を早く試したいんじゃないの』
『ハァ~……分かりました。ご随意に……』 声の持ち主は、諦めたような返事を返すのだった。
『良し! これで部隊長の了解も取ったし、直ぐにそっちに合流するわ』
「お待ちしております。では後ほど……」
プンッ と映像が消えて通信が切れた。
せっかちな事である。
「
「挨拶は、合流した時で良いでしょう。それよりも巌谷さん、実戦で一当てした感触はどうでしたか?」
急に話題を振られて、またしても喉に詰まらせる巌谷さん、気の毒である。
「ケホッケホッ、スマン。いや~もう最高だった。空を自由に飛べるのがあんなに爽快だとは思っていなかったよ」
「それは、良かった」
「しかし、あまりに一方的で今までの俺達の苦労は何だったのかと思ってしまった。こんな事は、考えるだけ無駄な事なのは分かっている筈なのにだ」
「それは、仕方が有りませんよ。人生なんて『こんな筈じゃなかった』と思う事ばかりです。逆もまた然りですがね」
[マスター。海中から接近する物体を一つ、リトル・ボーイと確認いたしました]
「浮上してきたら接舷と同時に収容しちゃって。禄にテストも武装もしていない船だから収容後のメンテナンスをお願い」
[肯定。運用テストも兼ねての無償提供ですから問題ないでしょう。ついでに終わっていなかった武装等の艤装も行いたいと思います]
「任せた」
[肯定]
そんなやり取りをしていると、ほとんど間を置かずにフォートレスの後方100mほどの海面にリトル・ボーイが浮上してきた。
ゆっくりとフォートレスの側まで移動してくると更に海面から空中にゆっくりと浮上を開始した。
フォートレス後方の開口部が大きく口を開けると、リトルボーイは飲み込まれるように着艦するのだった。
[収容完了。香月博士ほか2名をこちらへ、残りのクルーは居住エリアへ移動後検査結果が出るまで隔離いたします]
「了解。アステローペ」
昴の後ろに一人のメイドが
「香月博士がつれてきた人員のブレスレットの配布と適合の確認、各種精密検査と背後関係の調査をお願い」
[
スッと頭を下げると霞のように消えていった。
「さて、メンツも
◆
こちらは、合流少し前のリトル・ボーイ。
白陵基地を出港して直ぐに海中に身を隠して移動中である。
粗方のレクチャーも終了し、部隊員へのブレスレット配布も終わっていた。
香月夕呼は艦長席に戻り、その際に伊隅部隊長を操舵室に同伴させていた。
護衛のはずの副官イリーナ・ピアティフ中尉は、見たこともない計器類に囲まれており、この艦の操舵手をしている様だった。
姿を見かけないと思ったらこんなところで操縦席に座っていたのだ。
「伊隅は、そこの席に座ってちょうだい。ここの使い方は、さっき渡したブレスレットにリンクする様になってるから直ぐに覚えられるわ。分かんない事は、ボーイに聞いてね」
香月司令に指示されたのは、ピアティフ中尉の収まる操縦席の右後方に空いていた席だった。
見たところ索敵や情報処理に特化した席のようである。
ちなみに反対側には通信関連の席が2つ用意されている。
中央には立体映像用と思しき球体が設置されており、そのすぐ上にボーイの擬人化モデルが浮遊していた。
操舵室の人員は、定員5名の様である。
「司令。
「良いわね、任せるわ」
中央にホログラムで3D映写されていたボーイが香月司令に話しかけた。
同時にフォートレスの現在位置が表示される。
[艦長。フォートレスは現在、小豆島の西側にて作戦行動中です。マスターもそちらにおりますのでメガフロートに向かっても留守番をさせられるだけかと……]
「ふむっ、……フォートレスに連絡出来る?」
[可能です。少々お持ちください……繋がりました]
ボーイのホロ映像と入れ替わるようにメイドさんの3D映像に変わった。
『こちらフォートレスです。只今、マスターにお繋ぎいたします』
それを見た伊隅部隊長は、ボソッと呟いた。「……何でメイド?」
仮面を付けた青年と数人の美少女達、そしてサンドイッチをパクツイている巌谷少佐が映し出された。
「こちら香月。国連軍の方とは話を付けて、うちの部隊を拾って今白浜基地を出たところよ」
『ご苦労さまです。国連軍の方はどうでした?』
「巌谷少佐がハッチャけてるところを見せたら黙ったわね。あれはインパクトが凄かったわ」
『ハウッ!』 巌谷さんがサンドイッチを喉につまらせて苦しんでいる。
『あれを見せられたら大概の人は黙るでしょうね』
「ええ、まさかあそこまで一方的な映像が見られるとは私も思っていなかったのだけれど、レーザーを黙らせて制空権を取っただけであそこまで変わるとは思わなかったわ」
『そういう事です。割と単純な答えなんですけどね。数が数ですから、でもBETAのレーザーは、優秀すぎました』
「話は変わるのだけれど、私達はメガフロートに向かえばいいのよね」
『ええ、構いません。これから始める午後の部を間近に見たいと言うならフォートレスへ合流しても問題ありませんよ』
「部下達の意見を纏めてみるわ。多分そちらにお邪魔することになるんじゃないかしら、脳筋が揃ってるから……」
『ふむ、試しに予備機を回しましょうか……乗せてくれるかどうかは、機体次第ですが……』
「それもチョット面白そうよね」
「司令、部隊員をあまり
しかし、伊隅部隊長が待ったをかけた。
「
「……私が言っているのは、そんな事ではありません」
「それじゃ今の間は、いったい何なのかしら? それに、自分でもあの機体を早く試したいんじゃないの」
「はぁ~……分かりました。ご随意に……」
「良し! これで部隊長の了解も取ったし、直ぐにそっちに合流するわ」
『フフフ、お待ちしております。では後ほど……』
通信は切れたのだった。
「ピアティフ。針路をフォートレスへ」
「了解しました。針路反転、フォートレスへ向かいます」
BETAの殲滅に向けて、合流する防人たち。
混ぜるな危険、もう手遅れかも。
可笑しな化学変化が起きないことを祈りましょう。
次回:
「そろそろコードネームで呼び合うのにも疲れて来たし、僕も名乗りましょう。僕の名前は……」