実は俺、BETA大戦に介入しました!   作:夢見る黄龍

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ご無沙汰しております。
まったりと再会です。
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31.合流するA-01

 

 

 

 香月夕呼率いる特殊部隊A-01の合流とともに、フォートレス艦内は一気に賑やかになった。

 

 これまでもドロイドやオートワーカーは勝手に稼働していたし、船の機能として自然と調和が取れており何ら違和感なく空気のように溶け込んでいたので船の中が賑やかと言える様子は一切無かった。

 ところがそこに僅かとは言え50人近くの人間が合流してきたのだ。

 艦内を移動するだけで、そこには人の息遣いと言うものが加わる事になり、それまで違和感も無く機械だけの世界だった処が人の世界に書き換わってゆくのだった。

 まだ、リトル・ボーイを下船しただけではあるのだけれど……。

 

「それにしてもなんて~船だよ、どんだけ広いんだ?」

 

「鳴海、勝手に動き回っちゃだめよ。あんたその歳で迷子に成りたいの?」

 

「そうですよ。現在は、作戦行動中で詳しい艦内の案内は明朝からって事ですし、大人しくしていましょう」

 

[イグザクトリー! まさにその通~り。では、聞き分けの良い皆さんには御褒美に(ボーイ)が特別にここフォートレスの説明と案内をしてあげましょう]

 

 リトル・ボーイの船体が床から伸びるガントリーアームにガッチリと固定されている直ぐその下で、今しがた下船したばかりの48名の隊員達は、周りをキョロキョロとしながら小声で情報交換に励んでいたが、そこに立体映像のボーイが突然現われたのだった。

 よく見ると周囲から続々と整備用ドロイドがこちらに集まってきている。

 ボーイの立体映像は、その先頭を走る1台のドロイドの上に投影されていた。

 あれがフォートレスの中を動き回るための仮初の体といったところなのだろう。

 ボーイは、集まってきた整備用ドロイドに簡単に指示を出すとフォートレス艦内ツアーを開始するのだった。

 

[A-01の皆さんは、3列縦隊で着いてきてくださいね。兎に角フォートレスは、縦にも横にもとっても広いので初見の方は間違いなく迷子になります。それに戦略上こういった施設は迷路のように特殊な構造をしています。各自が装備しているブレスレットが命綱だと思ってください。ソレが無いと無条件で防衛機構に排除される怖いところだということを言明しておきます]

 

 ボーイの立体映像が指を鳴らすとそれまで何もなかった壁や天井に床からも色々な障害物や拘束用や排除用の設備が一瞬顔を出してこちらをターゲッティングしてから一斉に引っ込んだ。

 そこにいた全員が、一度はレーザーポインターで眉間をポインティングされて固まっていた。

 

「質問よろしいでしょうか?」 早瀬水月(はやせ みつき)が恐る恐る手を上げた。

 

[どうぞどうぞ! どんどん何でも聞いて下さって結構ですよ。秘匿事項にかからない範囲でなら説明して良いとマスターの了解を頂いております]

 

「あの~、これをお作りになったマスターと言われる方は、いったいどういった方なのでしょうか?」

 

[マスターは、こことは別の次元に属する創造神の一柱です]

 

「神様なのですか……この船は、どういったモノなのでしょう?」

 

「この地球での足がわりといったところでしょう。元の次元に帰るまでの暇つぶしに、たまたま立ち寄ったこの星で気ままに行動するための道具です」

 

「暇つぶし……ですか?」

 

[ハイ、暇つぶしです。やろうと思えばBETAの存在する星系ごと消し飛ばすことも可能なお方ですが、仕事でもないのにそんな力は使いたくないそうです。現在は、ハネムーン中なので出来るだけ穏便に済まそうとお考えのようです]

 

「ハネムーン?……ご旅行中ということでしょうか?」

 

[マスターは、ハネムーン中に敵対する邪神による作為的な転移事故でこちらの次元へ跳ばされてしまったようです。どうもここを管理している神も同類のようですね。性悪で悪趣味な神の悪戯としか理解できません。そういった次第で、仕方が無いので状況の改善を試みているといった次第のようです]

 

「この次元にも神は存在するのですか?」

 

[どの次元にも少なからず神や上位的な精神生命体は存在します。通常は、認識出来ない様に隠れているだけでしょう。]

 

「BETAって、一体何なんですか?」

 

[ハハッ、ここで核心に迫りますか……良いでしょう。BETAは、この次元の上位存在と自己主張しているシリコン生命体の製造した土木機械群の総称に他なりません。炭素系生命体、所謂人類や昆虫なども含めた動植物の生存を惑星上の自然現象としか捉えていません。知的生命体には危害を加えない等のリミッターが有ったようですが肝心の知的生命体としての認識がシリコン生命体基準のため一切の制限が効いていません。マスターに創られた私達からしたら、比べられるのも嫌な酷い欠陥マシンです。所詮欠陥生物の製造した欠陥マシンといったところでしょう]

 

「……随分と辛辣なんですね」

 

[当たり前です。我々人工知性体にもプライドが存在します。BETA(あんなガラクタ)と同列視はされたくありませんからね、当然の評価ですよ]

 

「まるで人と一緒なんですね、人の中にはプライドのない人も居ますケド……」

 

[それは育った環境に依るところがとても大きいですね。親族もしくは育成環境がしっかりとしていればまともな子に育つのが常識というものです。育った子がまともではないと言う事は、親がダメダメな証拠です。稀にそれらを反面教師的に優秀な子が育つ場合もあるようですが、確率的にはとても低いと思います。欠陥品を世に出した親……制作者には、その責任を負う義務があります。物を創造するということはそういう事だとマスターは言っておられました。そしてそれは、立場が神であても同じなのです]

 

「結局は、何事もルーツが大事だということですか……勉強になります」

 

 しきりに頷く隊員達。

 

[では、案内を続けましょう]

 

 

 この船の名は、フォートレス。

 機動要塞空母フォートレスです。

 

 全長1800m

 全高300m

 全幅420m

 

 慣性重量1200万トン

 見掛けよりずっと軽いのは特殊な発泡金属に依るものです。

 キー・ジェネレーターは、秘密です! (小型次元転換炉搭載型ワルキューレがキーデバイス)

 メイン・ジェネレーターには、大型プラズマジェネレーターを3基装備しています。

 平時は、通常運行用と戦闘時供給用でそれぞれをカバーします。

  

 第1格納庫は、上部甲板の直下に位置して艦載機の離着陸を補助します。

 その下は、第1居住エリア。

 艦橋をはじめ指令室や乗員の居住エリアが存在します。

 第2格納庫は、直援機や予備機の待機および整備場です。

 シミュレーター各種に訓練施設も此処に存在します。

 その下が今皆さんが居る第3格納庫です。

 直接使用しない支援設備や小規模な工匠、生産施設が存在します。

 ジェネレーターブロックもこの階層に存在します。

 最下層ブロック、ここは地上攻撃用兵装ブロックで 着水時は各種資材(マテリアル)の詰め込まれた閉鎖ブロックとなります。

 浮上して空中に艦がある場合は、下方を攻撃する兵装が露出して稼働することになります。

 しかし、普段海の上では資材置き場ですね。

 

 説明した各戦闘ブロックの間に生活に必要な厚生福利施設や宿泊施設が完備されています。

 

 艦の前方に4つ、後方にも4つの物資用大型エレベーターが存在しており各階層を繋いでいます。

 

 

 主兵装としては

 

 グラビティーブラスト 1(艦首)

 アクティブレーザー砲 6(上甲板部4・下部収納部2)

 ホーミングレーザー砲 4(上甲板部2・下部収納部2)

 小口径(対空)パルスレーザー砲 300

 各種ミサイル及び魚雷発射管 120

 

 

 装甲防壁としては

 

 三重の斥力場シールド

 エネルギー転換吸収装甲

 三重特殊発泡金属装甲板

 

 

 現在搭載している艦載機や艦船は、主に次の通り。

 

 ワルキューレ赤ライン 100機(巖谷隊機)

 ワルキューレ白ライン  40機(香月隊機)

 ワルキューレ緑ライン  50機(フォートレス直援機)

 ワルキューレ無色    10機(予備機)

   最大500機以上の搭載が可能

 攻性型サンダーバード  30機(フォートレス直援機・重武装)

 輸送型サンダーバード  20機(送迎・探査および擱座機の回収等)

 リトルボーイ型艦船    3隻(色違いの同型艦が他に2隻存在します)

 120m級無人護衛艦  12隻(左右舷側内部に6隻づつ格納)

 

[この船は単独の艦船としても艦名のごとく動く要塞といえる巨大な代物ですが、攻勢に移る際には内蔵された護衛艦を展開して単独で艦隊を構成する事も可能です。これら全てのオペレーションは、我々のマザーもしくはシスターズによるワンマンオペレーションによって制御されています。マザーとはマスターにお仕えした最初のAIでありシスターズとはその直系の8名の娘に他なりません。わたくしボーイは、ズーと下位に位置するAIであり、所謂ローカライズ版と言った存在になります。これから皆さんが接するワルキューレもボーイと同じように単独の意思が存在する訳です]

 

 一行は、エレベーターで第2格納庫へと移動していた。

 

「皆さんには、これからシミュレーターに入って貰います。皆さんの健康診断・各種バイタル等は既に取得が済んでおりますのでサクッとテストを済ませてしまいしょう。数パターンのシミュレートをクリアして貰うことで性格や適性などを診断致します。それらの情報を元にワルキューレ達がパートナーのマッチングを行います。これには、衛士もメカニックも関係ありません。戦術機と違って身体的な衛士適性などは一切関係ありませんので適性の為にこれまで戦術機に乗りたくても乗れなかったと言う方でもトライすることが出来ます]

 

「戦術機適性が無い者でも乗れるんですか?」

 

[ワルキューレ自体が騎乗を許せば乗ることが出来ます。しかし、どれだけ戦術機適性が高く機乗時間が長く戦闘経験が有ったとしてもワルキューレがそれを許さなければ指一本触ることも拒絶されるでしょう。ワルキューレとは、そういった存在なのです]

 

 目の前には、アームで天井から宙づりにされた卵形のカプセルがズラリと並んでいた。

 

[ここにはシミュレーターが30基設置されています。拠点には更にこの10倍以上、300基ほどが存在しておりその全てがデータリンクされています。それなりに大規模なシミュレーション演習も可能と言えるでしょう]

 

 

 

 ◆

 

 

 

時間は、8月13日1300時。

 

 A-01の隊員達がフォートレスに合流し艦内ツアーを行っている頃、日本帝国は静かな激動の中にいた。

 

 九州方面部隊の全滅の報を受けて、日本帝国本土防衛軍は一度は押し返したBETAの本土侵攻に備えて防衛ラインの強化に努めていた。

 既に在日米軍は日本帝国からの撤退を開始。

 政府は、その穴の空いた防衛ラインの修復に頭を痛めていた。

 

「榊首相、海外からの支援は如何(いかが)か?」

 

 将軍閣下の問いにハッキリ聞き取れるボリュームで、しかし決して内容が良い結果ではない事が分かる暗い語調で返事が帰ってきた。

 

「現在は、国連軍が後詰めに入ってくれてはおりますが、米軍の抜けた穴は塞ぎ様がありません。各国からの支援は間に合わないでしょう」

 

「先ごろ民間のPMCが活躍したと聞いたがそこには頼めないのか? かなりの手練れという話を聞いている。穴の一つも塞げるのではないか?」

 

「はい、そちらにも連絡の手を伸ばしてはいますが、何分まだ海の者とも山の者とも分からない連中です。政府としてどこまで信頼して良い物かいささか判断に苦慮しております」

 

「この際、猫の手も借りたい状況だ。選り好みなど言っておれまい」

 

「実は、唯一の連絡窓口となっていた帝国軍士官の行方が現在所在不明となっております。どうも噂のPMCと行動を共にしているらしいのですが、あっさりと撒かれてしまった様です」

 

「ほぅ、監視は付けていたのであろう? 追いきれなかったとしたら手練れとの噂に信憑性が出るのではないかな」

 

「明日には所属する部隊に出頭する事になっております。移動中の自由行動の連絡は入っている様なのですが、この緊急時に連絡が着かないのも些かよろしくありません。本人も最前線から外されたのを快く思っていなかった様ですので軍の上層部もガス抜きが必要と放置した様です」

 

「ふむっ、現場の判断としては仕方なかろう」

 

「ただっ・・・少々気になる人物からの接触が確認されております」

 

「気になる人物とな?」

 

 何時の間に現れたのか怪しげなトレンチコートの男が一歩前に出てきた。

 

「詳しくは、わたくしから御報告致します。話題の監視下に有りました帝国軍士官に怪しい処は行動は有りませんでしたが彼の魔女が接触しております。現在国連軍護衛艦隊は、瀬戸内海で今作戦へ参加中との事で魔女の所在は一切が不明でしたが、先ほど白浜基地で一騒動あったそうですので詳細が分かり次第ご報告させて頂きます。わたしとしたことがあっさりと監視の手を切られてしまいました、いやはや参りました。面目次第も有りません」

 

「その方を煙に巻くとは、余程の手練れよな・・・。どう思うた? 鎧衣」

 

「まるで狐に抓まれたようでした。目の前からパッと消えられましたからね、実はタネも仕掛けも分かりませんでした。神隠しと言われた方が納得するほどの隠形、正直弟子入りしたいと思ったほどです」

 

「・・・一筋縄では、行かぬかもしれんな」

 

「「ハハッ」」

 

「鎧衣は噂のPMCとの接触を急げ、他国に出し抜かれては為らんぞ!」

 

「御意」

 

「それでここにある品々は、何だね? 見たところ食料品の様だが」

 

「これらは、噂のPMCから件の帝国軍士官を通じて前線の兵士に提供された物資の一部です。そのほとんどが長期保存が可能な天然食料や嗜好品の数々であった様でした。恥ずかしながら帝国軍の上層部が接収し試食の名目でほとんどを消費されてしまい、今残っているのは目の前にある物が全てとの事です。既に毒味は済んでおります、どうぞ御賞味下さい」

 

「ほほぅ! うむっこれは、美味いな。おかしなえぐみや雑味も無いところを見ても粗悪な合成淡泊などは一切使われていないと言うことが分かる。ウーム、天然物を口にするのは何時ぶりだったか・・・君達も遠慮せずどうだね?」

 

「では、失礼して」「頂きます」

 

「「美味(うま)っ!」」

 

「うむっ、実に美味い。見事といって良いだろう。そして、これが保存食だと言うのだから更に驚きであるな」

 

「まさかこれほどとは、馬鹿な上司がネコババしたくなる気持ちも分かりますな・・・」

 

「噂のPMCでは、それなりの量を流通させる事が可能であるらしいという事なのですが、件の帝国軍士官を直接通さない取引は一切を受け付けないとも言っているようです。取引について彼との成り代わりを目論んだその馬鹿な上司が早々に更迭されています。そして、そんな重要人物を危険な最前線には置いておけないとの人事力学が働いた様で、急遽後方の技術開発部隊への配置転換が通達されています。その移動中に姿を消したのですが『逃げた』と言うよりはPMCによって保護されたと言ったところのようですな。他国からの注目度が凄かったですからね」

 

「それほどの人気者か巖谷何某は」

 

「はい、巌谷榮二(いわやえいじ)帝国陸軍少佐です。護衛も兼ねた監視体制だったのですが夢か幻の様に監視の目を切られてしまいました、実に見事としか言いようがありません。そして、消える直前に魔女も目撃されており行動を共にしているらしいとの未確認情報も入っております。対BETA防衛作戦中につき、魔女の消息についても現在確認のしようがありません」

 

「なに、帰ってくると言って出掛けたのなら時間通り帰って来るだろう。軍人とはそう言う者だ、現場叩き上げは特にそうだと儂は思っておるよ。もしかすると、こちらの想っている以上の手見上げを持って帰ってくるかも知れんぞ」

 

「「ハッ」」

 

「とにかく最終防衛線の備えは万全に頼むぞ」

 

 話に一区切りついたのを待っていたようにノックの音がした。

 

「入れ!」

 

音も立てずにスッと入ってきたのは、筋骨隆々の大柄な老人だった。

 

「ご歓談中を失礼いたします」

 

「紅蓮ではないか、なに用か?」

 

「前線に斥候に出しておりました斯衛(このえ)16分隊よりおかしな情報が上がって来ております。海岸線を北上してくるはずのBETAの姿が見えないとの事です。瀬戸内海沿いにも日本海側にも影も形も無いとの報告が御座いました」

 

「しかし、九州を飲み込んだBETAが本州に再上陸したとの連絡は米軍からであったな。奴ら、今もスパイ衛星で監視しているのであろう。向こうは何と言ってきているのだ」

 

「ハッ、本州に拡大した戦域で帝国陸軍とBETAの激しい戦闘を確認していると言ってきております。勇猛果敢な兵士が多数いてうらやましいとも言っておりました」

 

 不思議そうな顔で紅蓮醍三郎が返した。

 

「それは、おかしいですね。先日本州に上陸したBETAを押し返して以来、本州では避難と防衛線の構築に全兵力を投入しております。再びBETAとの戦端が開かれたという報告は受けておりません」

 

 榊首相の言葉にその場の全員が困惑の表情を浮かべている。

 情報の食い違いに首を捻る首脳陣。

 

「何かが起きていることは確かなようだ。どんな些細な事でも良い、各方面から情報を集めてくれ」

 

「ハッ」「了解しました」「御意」

 

 将軍は、三人が部屋から出て行くと、椅子に深く寄りかかり溜息をついた。

 

「いったい何が起きているのか・・・」

 

 

 

 

 

 

 

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