実は俺、BETA大戦に介入しました!   作:夢見る黄龍

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35.天気晴朗なれど波高し

 

 

 

 アスガルドの艦隊は、無事日本海側に着水を果たした。

 当初、佐渡ヶ島に向かう予定のフォートレスだったが、鳥取沖に着水すると目と鼻の先にある西ノ島がBETAの蹂躙を受けて更地にされようとしていた。

 本州を東進してきたBETAは、出雲の手前でほぼ殲滅に成功したが山陰・中国地方はまだBETAの支配領域から完全開放はされていない。

 今後、アスガルドのドール部隊または帝国陸軍が本州の掃除を完了するまでには、もうしばらく時間がかかるだろう。

 その間、日本海沿岸部の島々は無防備なままの状態だ。

 朝鮮半島から北九州に繋がるルート上には、対馬や壱岐が存在しており今回の大規模侵攻のメインルートにもなっている。

 このままの状態にしておいては、後顧の憂いとなるだろう。

 

「ここで大陸からの侵攻ルートを断っておかないと、今後第二第三の大規模侵攻に怯えなければならなくなる。取り敢えずは、どっかルート上の手頃な場所に砦でも築いて絶対防衛線を張っとこうと思う」

 

[肯定。想定する規模と地理的にも対馬が理想的と考えますがいかがでしょう]

 

「今んところ新潟・佐渡ヶ島方面に向かってたBETAは全部潰したはずだから、現在甲20号鉄原ハイブ経由で半島から流れてきてる集団の残党を間引いとけば、しばらくは安心だよね」

 

[肯定。我々は、西ノ島から壱岐、そして対馬へと進軍してこのまま対馬に前線基地を構築するのがよろしいのでは無いでしょうか]

 

「よし、まず西ノ島の解放。続けて壱岐に向かってよ」

 

[肯定。進路を前方の西ノ島に向かいます]

 

『進路、西ノ島。ヨーソロー』

 

「でも、西ノ島に上陸したBETAって何所から湧いて来てるか分かるかな? 上陸ルートを潰しとかないと又来るんじゃないかと思うんだ」

 

[肯定。少々お待ちください・・・分かりました。ウルルン島から竹島を経由した一団が西ノ島に上陸したようです。少数のBETAですがその数およそ3000ほどです]

 

「ウルルン島から竹島を経由するルートか。ウルルン島ってK国の避難場所になってなかったっけ?」

 

[肯定。壊滅している物と思われます。光州作戦以降、台湾及び他国への難民となった者達は、難を逃れたことになりますが、独自にウルルン島に避難していた者達は絶望的でしょう]

 

「この状況じゃ誰も助けには行けないしね」

 

[肯定。小型の船舶またはライフジャケットで脱出が出来たとしてもこの高波では生き残れたかどうか運次第と言ったところでしょう。大型船は、最初にBETAの攻撃対象にされるでしょうから生存は絶望的と考えて良いと思います]

 

 身一つで海に飛び込んで逃げ出せたとして運良く生き残っても、更に運が良くなければ岸には辿り着けないだろうな。

 リマン海流と対馬海流のぶつかる辺りだから、下手するとこの荒波の中をグルグル永遠に流されている事になる。

 この時期、海水温はそこそこ温かい、台風にでもなれば岸には着けるかも知れないがたぶんその時点で溺れ死ぬのが目に見えている。

 海は、BETAに対する有効な防壁ではあるけれど、それを過信すると自分が逃げるときの足枷にも成りうるということだ。

 やはり強力な海上戦力が有ると無いとでは、選べる選択肢が大きく違ってくるよな。

 早いところBETAの数を減らさないと地球の環境破壊が進み、その影響で海が無くなると言う事も視野に入れなければならない。

 その段階まで進んでしまったら、もう人類は生身で生存出来無くなっている事だろう。

 

 

 

 さて、空爆で本州に残存していたBETAの殆どをまとめて挽き肉に変えたアスガルド艦隊だが、その雄姿をその目に焼き付けた香月夕呼の引率するA-01の面々は、自分達がトンデモナイ連中と関わり合いになった事を再認識していたのだった。

 ここまでの状況を観て『俺達、要らなくネ?』と思ったのは、一人や二人では無いだろう。

 さっきまで空を飛び、現在日本海を白波を立てて突き進む巨大空母と護衛艦の群れを眺めて黄昏れるA-01の面々だった。

 

「あんた達、いつまでも黄昏れてる場合じゃないわよ」

 

「そんな事言ってもアンナ物を観せられたら、誰だって気が抜けますって」

 

「もう少しシャキッとしなさい。今、上でこの後の予定を小耳に挟んできたんだけど、西ノ島を平らげたら壱岐・対馬へと逆侵攻を掛けて、その後対馬に要塞を構築するみたいよ」

 

「そんな絵に書いた餅の様な事が可能なんですか? 香月司令」

 

「ここの連中なら、鼻歌交じりでやるんじゃないかしら、それも何の苦労も無くネ。あんたら黙ってそれを見てるつもり?」

 

「そうだぞ。ここからの活動には、広範囲の作戦行動が必要になる筈だ。私達にも手伝える事が何かあるだろう。それに・・・」

 

「「「「「ワルキューレに乗ってみたい!」」」」」

 

「伊隅の言う通りよ。適性検査は、みんな受けたのよね。それじゃ格納庫に居るワルキューレ達にアピールしてらっしゃい。気に入ってくれれば取り敢えず乗せてはくれるらしいわよ。早い者勝ちね」

 

 ワッと散ってゆくA-01の隊員達。

 そして、これには衛士も整備士も雑用も関係が無いのだった。

 全員が騎手の対象者なのだから。

 

 

 

 ◆

 

 

 

 日本帝国軍本部、戦術機駐機場。

 ここでは、今まさに緊迫した雰囲気に包まれていた。

 5機の見知らぬ戦術機を包囲しているのは、本部付きSP隊と帝国斯衛軍第16大隊の戦術機である。

 

 巌谷少佐は、本部内に連行されていった。

 しかし、SPと戦術機部隊がワルキューレを遠巻きにして居るのには理由がある。

 巌谷が降りた後、無人だろうと安心した本部の馬鹿が不用意に近寄ってワルキューレを弄ろうとしたのだ。

 途端に摘み上げられて排除されたのであるが、自律行動をする戦術機に場は騒然となった。

 そして、ワルキューレには一歩も近寄れず現在に至るのである。

 

 

 時間を少し戻そう。

 

 巌谷少佐達スワロー小隊は、前線の補給基地に併設された指令所に来ていた。

 後を追ってきていた帝国斯衛軍第16大隊のB小隊も少し離れて駐機している。

 仮設の指令所の会議室には、ここの主である司令官と呼び出された巌谷少佐のほかに後を追ってきた斯衛軍第16大隊B小隊の隊長・関屋も同席していた。

 

「巌谷少佐、お呼びにより出頭いたしました」

 

「この前線の指揮官を務める一文字大佐だ。巌谷少佐とは、入れ替わる形でここに赴任した事になる」

 

「極秘に斥候を務めておりました帝国斯衛軍第16大隊B小隊の関屋中尉です。小隊長を拝命しております。今回は、緊急の案件ですので私も同席させていただきます。この後本部には我等も同行いたしますのでよろしくお願いいたします」

 

 一文字が着席を勧め3人が席につくと、早速本題に入る形で事情聴取が開始された。

 

「関屋中尉、斥候任務の方はよろしいのですか?」

 

「ハッ。報告は逐次行っておりますので問題有りません。既に最前線の状況は、部下が後方に連絡いたしました。そして、それと関係して巌谷少佐の行動を確認せよとの命令を受けております。特に騎乗していた戦術機と関連団体に関する情報に関して、最重要機密に該当しますので私が同席することと成りました」

 

「そうですか。了解しました、ここで聴取された内容に関して然るべき立場以外一切の口外を禁止いたします。巌谷少佐も宜しいですね」

 

「ハッ、了解いたしました」

 

「では、前線指揮官の立場から巌谷少佐に聴取をさせていただきます。貴君は、どういった立場や了見で見知らぬ戦術機(アンナ物)を乗り回しているのですか? 更にここは、最終防衛線の最前線ですよ。一昨日まで貴君が前線で指揮を取っていたのだから分かりますよね?」

 

「はい。小官は、現在任地へ向かうため休暇中であります。立場的には、技術開発局の課長に任じられました。今後、戦術機の新機種開発が主な任務になると伺っておりまして、これに対してはある程度の自由裁量権を認められております。本日は、過日前線にて接触した私設武装組織(PMC)の使用する戦術機を試乗する機会に恵まれましたので、これの性能試験を兼ねて乗り回しておりました。明日、職場へはこのまま出頭する予定でおります」

 

「・・・休暇中に新機種の試乗ですか。話の筋は通って居るように聞こえますが屁理屈にも程があります。大体最前線のここに居る理由には、程遠い内容ですね」

 

「発言宜しいでしょうか?」

 

「どうぞ、関屋中尉」

 

「小官は、斥候任務のおりに巌谷少佐の騎乗している戦術機がBETAの集団を、上空から釣瓶打ちにしている事実を目にしております。その戦闘後に、不審な戦術機の後を追ってここに来ている訳です」

 

「ああ、先程までの戦闘を御覧になっていらしたのですね。実際にあれを見られてどうですか、ご感想をお聴きしたいですな」

 

 苦虫を噛み潰したような顔で関屋中尉が答えた。

 

「・・・凄いとしか言葉がありませんでした。あれは何処の誰が作った物なんですか?」

 

「ここでそれは、申し上げられません。関屋中尉、御覧になって分かると思いますがあれらは、人の手には過ぎた代物です。それを実際に確認する為に私は自ら乗ったのです」

 

 呆れた顔で一文字大佐は

 

「巌谷少佐。君の軽率な行動は、厳罰に値する。追って上層部から沙汰が下されるだろうがしかし、一戦術機乗りとして言わせてもらえれば、君が羨ましいよ。私からは、厳重注意を言い渡す。速やかに本部に戻り謹慎したまえ。関屋中尉には、巌谷少佐の護衛を頼みたい」

 

「ハッ。我々はこの後帝都に戻るだけですので大丈夫です。補給が完了次第、護衛任務に入ります」

 

「関屋中尉の小隊と共に帝都に戻ります。お騒がせしました」

 

「聞いた話からすると護衛など要らないのだろうが、体裁だけでも整えるとしよう」

 

「「・・・」」

 

 この後、巌谷少佐とスワロー小隊は、補給を済ませた関屋中尉率いる斯衛軍第16大隊B小隊と共に、帝都に向けて飛んでいた。

 極秘行動であることから夜間というのも都合が良かった。

 深夜2300時に帝都についた巌谷達は、急ぎ戦術機の駐機場から本部棟へと急いでいた。

 一応当直の整備員には、機体に触れるなと声を掛けている。

 

「巌谷少佐。機体は、あのままで宜しいのですか?」

 

 と関屋が聞くと、ニヤニヤと笑いながら巌谷は、

 

「アレに無傷で(さわ)れたら無条件で乗る権利が有るよ」

 

 とだけ言うのだった。

 この時は、それがどういう意味なのか分からずに流してしまった。

 しかし、この後直ぐに言葉の意味が分かって唖然とする関屋だった。

 

 深夜にも関わらず、巌谷達が帝国陸軍本部上層部に出頭して聴取や報告を行っているのと入れ替わるように、駐機場にはぞろぞろとこの場には似合わない高級将校や不信な人物が湧いていた。

 有ろう事か、無断でワルキューレが移動されようとしていたのだ。

 関屋中尉は、ワルキューレにイタズラする輩が居るのではないかと心配しての言葉だったのだろう。

 結局のところ、そんな勝手が罷り通る事は無く、悪さをしようとした者達全員がワルキューレ本人達に無力化され一網打尽になったのだった。

 首謀者格の数人は、襟首を摘み上げられ宙吊りとなっており、護衛や有象無象はワルキューレの足元で伸びていた。

 護衛の機体には、巌谷の他に民間人が乗っているのだろうと銃火器まで持ち出して脅したようだが、ワルキューレにそんな脅しが通用するはずも無く、偉そうに命令している数人を吊り上げた後、スタンモードにビームバルカンで薙ぎ払ったのだった。

 盛大な音の割に駐機場に破損する物は、一切出ることはなかった。

 唯一、吊り上げられて振り回された連中は、例外なくズボンを濡らして泣き叫んでいたらしい。

 

 駆けつけたSPの話によると、5機のワルキューレは、如何にもばっちい物を触ってしまったとそれぞれで押し付け合いをしていたらしい。

 騒動の収拾に駆けつけた警備兵や眠らされていた整備兵にゴミのように押し付けた後、洗車用のホースを器用に使い手を洗っていたとの目撃情報もあった。

 ワルキューレは、自立稼働する意思を持つ無人機である。

 自分のバディーは、自分で決める。

 不心得な馬鹿や他国の工作員による強奪や破壊活動ましてや分解など、挑戦するだけ無駄であることが知れ渡ると、今度は自己アピールに長蛇の列が出来るようになるのだが、それはまだ先の話だある。

 

 

 格納庫で一悶着起きている頃、巌谷はある人物の前で冷や汗を流していた。

 どうしてこんな時間にこの人物は、ここにいるのか?

 場所は、謁見の間。

 時間は、0時になろうとしていた。

 

「夜中に出頭させて申し訳ないが緊急時だ、許せ」

 

 声を発したのは、将軍様である。

 なぜか目の下に隈を作った榊首相も直ぐ側に控えてござる、どうして?

 関屋中尉が一歩前に出て報告を開始した。

 

「御報告いたします。山陰中国地方に残存し帝都へ進軍しておりましたBETAは、謎の艦隊によって全て殲滅されました。詳しい状況は、同行いたしました巌谷少佐よりお聞きください」

 

 こっちに全部丸投げかよ、オイッ!

 

 

 

 

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