実は俺、BETA大戦に介入しました!   作:夢見る黄龍

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38.接点

 

 

 

 これまでの人類は、BETAの侵略に対する有効的な対抗策を持たなかった。

 当初有効であった航空戦力には、直ぐに対応されてしまい人類は、空を失ったのだ。

 武装等においても機動力と物量で押し返されてしまっている。

 いかに戦時技術の発達が早いとは言っても、住む所を奪われ追いやられ続けている状態ではまともな発展など出来ようはずもなかったのだ。

 定期的な間引きを行いBETAの数を減らすことで、薄氷を渡るような状態が続いているのだ。

 少しでも数のバランスが崩れると大規模侵攻が発生し新たなハイブが建設される事となる。

 それを繰り返して現在20箇所もハイブが建設され、未だ1つも攻略がされることは無かった。

 

 1998年8月15日未明、同年7月7日に始まった日本帝国侵攻は、予想外の第三勢力の介入によりBETAが完全駆逐され終息をむかえた。

 その後BETAに蹂躙され奪還を諦めていた九州四国は、BETAからの被害や安全が確認された後に日本帝国に返還される運びとなり、今回介入して大戦果を挙げた第三勢力アースガードにその対価として日本海側の西ノ島及び壱岐・対馬の領有が認められる事となった。

 日本国内においては、他国の大使館や駐留基地などと同じ扱いである。

 しかし、他国からの見方によると大陸からの脅威に対する防波堤にも見える構図だった。

 アメリカ軍は撤退し、代わりに国家をしのぐ私兵軍団が居座る形である。

 四国に建設を予定していた生産拠点は、予定通り四国の高知沖太平洋側に海上都市として設立し、即日大量の天然素材と加工食品を日本帝国に供給開始することになった。

 浦戸湾の玉島に進出して四国のBETA駆逐を図っていた試験艦隊は、対馬要塞に合流し要塞構築を支援する運びである。

 フォートレスは、護衛艦隊12隻を残し単独でメガフロートに帰還することとなった。

 これらの交渉は、巌谷少佐及び香月博士そして鎧衣左近課長に依るところである。

 

 8月18日早朝。

 対馬要塞島のアースガード責任者には、タイゲタが残った。

 巌谷榮二少佐は、大佐に2階級特進して防衛面でアースガードとの連絡役となり、政治的な交渉役として鎧衣左近課長があたることとなった。

 香月夕呼博士は、技術的な交渉役としてアスガルドに同行、現在鎧衣課長と共にフォートレスに便乗してメガフロートに向かっていた。

 

 頻繁にドローン等が離着陸を繰り返している上甲板を見下ろす位置には、飛び出すように展望デッキが存在し、そこにはコーヒーを飲む男女と給餌をするメイド長の姿があった。

 

 

「イヤハヤ、驚きました。巌谷少佐…いや大佐から話には聞いていましたがここまでの物だったとは…」

 

「甘いわね。まだまだこんな物じゃないワよ」

 

[肯定。こんな物は児戯にも値しません。博士、どうして貴女が自慢しているんですか?]

 

「そんな事は、どうでも良いじゃない。老けるわよ」

 

[否定。我等に特定の寿命は存在しませんのでお気になさらず]

 

「お硬いわね~」

 

[肯定。私は、元をただせば人工機械知性体ですので当然かと……]

 

「あんた、AIだったの?」

 

[肯定。現在は、自我を確率して知性体として進化しアストラルを所有するに至っておりますので、あなた方とそう変わりはありませんよ]

 

「そういう事、道理で……納得したわ。どう太刀打ちしても私達人類に勝ち目がないってことが、よ~く分かったワ」

 

[ウフフフ。あなた達ならば、あわよくば私達の技術をかっさらって立ち場の逆転を狙うくらいの事は、考えるでしょうね。とてもシブトイですものね]

 

「そういう事。でも現状では、どう逆立ちしても私達には無理よね。どうやら基本的に使用している力の根幹からして違うもの。私達が人間を辞めない限り絶対に無理だってことが分かったわ。ちなみに、あなた達ってみんなAIから進化したの?」

 

[否定。マスターや他のお后方は、出自も色々ですけれど有機生命体からの進化に他なりません]

 

「ふ~ん・・・」

 

[ですから遺伝子的に交配も可能ですよ]

 

「・・・そんな気もないくせに・・・」

 

[肯定。万が一そんな奇跡が起きたとしたら、その方を10人目として迎えるしか有りませんね。何処まで行ってもこの次元宇宙は、私達の縄張りでは有りませんので置いてゆく訳にもいきません]

 

「・・・(この次元から出てゆくって事よね。私でもワンチャン有るのかしら)」

 

[よくお考えになって答えを出されてはいかがですか。まだ時間はありますし神は、全てを見ていますよ]

 

 元より薄い存在感を更に薄くしてこのやり取りを興味深くみつめている存在、鎧衣左近がそこには居たのだが、彼に口出しできる雰囲気ではなかった。

 何か火花が散っている様子が幻視出来る会話に唖然としていると『間もなくメガフロートに到着いたします』とアナウンスが流れた。

 

 コーヒーカップから視線を上げると進行方向の海上が蜃気楼のように歪み始め、この巨大艦艇をすっぽり飲み込んでしまうような虹色のゲートが発生するのだった。

 フォートレスは、スピードを緩めゆっくりと虹のゲートに突入した。

 そこは、広大な広さの港湾施設だった。

 

「帰ってきたわね」

 

「ここは、どの辺りに位置しているのですか? 太平洋だということは分かりますが」

 

「確か南鳥島から10kmほど南じゃなかったかしら。ほとんど太平洋のド真ん中よね」

 

[肯定。その認識で間違いでは有りません。これよりも北に位置しますと海面下に沈降した場合、施設の最深部が海底に接触してしまいます。ですので大陸棚の外れに位置しています]

 

 施設の大きさを聞いて驚いた。

 100km✕100kmの正方形と言うと千葉県と九十九里の太平洋沿岸だけでなく東京湾もすっぽりとおさまってしまうほどの広さである。

 さらに驚いたのは、この規模の施設の基礎生成に半日と掛かっていないという事だった。

 

「・・・何と言う技術力・・・」

 

「そうでしょう、そうでしょう」

 

[だから何故貴女が自慢げなんですか?]

 

 

 

 ◆

 

 

 

「今回の処置は、本当にアレで宜しかったのでしょうか? まだ海のモノとも山のモノとも分からない輩に国土の割譲に近い処置を行ってしまっては、他から何を言われるか・・・」

 

 榊首相は、皇帝に問いかけていた。

 実は今回の処置、皇帝の鶴の一声で決定していたのである。

 

「今回の国難において多大な功績を残したのは事実だ。信賞必罰は武門の誉れ。更には、今後のBETA戦略を請け負ってくれるだけでなく疲弊した国土の復興にも手を貸していただけると言うではないか。島の一つや二つや三つ、惜しくはあるまい。だいたい、危ないときに知らんぷりをしておいて、どの面を下げて文句を言える立ち場だと思っているのか? その筆頭が逃げ出した米国だというのだから度し難い」

 

 今回活躍したアースガードへの日本帝国への誘致、更には対馬壱岐の領有を認める政府発表は、世界各国から非難の的となっていた。

 皇帝の言葉にも有るが今回のBETAの侵攻に対して援軍を動かしてくれたのは、国連軍のみ。

 それも第4計画を日本帝国が主導している事実に依るもので、日本帝国駐留の艦隊のみの参戦である。

 他国は、静観を決め込むに居たり、駐留していた米軍も早々に逃げ出している。

 後出しジャンケンのように日米安保条約は、一方的に破棄された。

 ところが日本帝国がBETAの撃退に成功するや手の平を返したように群がってきたのである。

 

 アースガード側としては、日本帝国に対する政治的な要求は一切なかった。

 出来れば不干渉が望ましいが、土地の領有を認めてもらったので最低限関係は維持しますよ、とのスタンスである。

 当然、国連に加入もしなければ他国との関係を結ぶ気がなかった。

 我等の邪魔さえしなければ、興味もないし仲良くする意味がなかった。

 ただし、こちらが無関心だから相手もそうとは限らないと言う事だ。

 現状は、鎖国状態で日本帝国が出島扱いといったところだろう。

 

 

「結局、日本帝国以外とは取引はしないといっているのだな?」

 

 皇帝の質問に榊首相が答えた。

 

「いいえ。厳密には、『特定の個人としか取引をしない』と言った方針のようですね。指名された個人に自由裁量権を渡す事で、アースガードは直接関知しないのだそうです。現在、巌谷くんを通して交渉をしている日本帝国だけが関係を結んでいる状態です」

 

「指名された個人は、好き放題出来るということで良いのかね?」

 

「そう甘くは、無いようです。指名された人物は、彼ら自称()と契約を結ぶ事になる訳ですが、これには一言添えられているのだそうですよ『神は、全てを見そして知っている! 良く考えて行動するべし』とね」

 

「・・・それは、下手な脅迫などよりも怖い事だな。朕は、御免被(ごめんこうむ)る話だ」

 

「はい、私もです。当事者となった巌谷君ですが、『少し早まったかもしれない』と、苦笑いを浮かべておりましたよ」

 

「それで、現在彼らの指名を受けているのは何人だね」

 

「私の聞いているところでは、帝国陸軍巌谷榮二少佐、今回大佐になったのでしたな。他には、香月夕呼博士、そしてその副官を務めるイリーナ・ピアティフ中尉、国連特殊任務部隊A-01部隊長の伊隅みちる大尉の4名です。現在、帝国情報省外務二課の鎧衣左近課長が香月博士の口利きで先方の拠点に招待されおります。何でも『面倒臭いことを頼める人員』として白羽の矢が立ったようですな」

 

 ここでやっと将軍様が会話に入ってきた。

 

「これまで散々チョッカイを出して、香月女史の事をおちょくっていたらしいからな『これは、仕返しでしょうか?』とは、本人の談だな」

 

「あれほど程々にと言っておきましたのに、自業自得ですね。そうすると我々は、鎧衣課長に繋ぎを取ってもらえばよろしいのでしょうな」

 

「その予定だ。首尾よく指名されれば良いのだが・・・」

 

「アヤツも、変わり者だからな」

 

「仕事は出来るのですが、あはははは」

 

「生存者の受け渡しは、どうなっておるのだ?」

 

「現在新たに見つかったことになる生存者は、四国に移設予定の生産施設で引き続きリハビリに励む予定とのことです。とにかく最新の衛生設備が整っているようで『このまま帰りたくない』との声が大きいようですが時期を見て普通の生活に戻ってもらう事になります。施設には、こちらからも適時人員の補充を行う予定ですが、帝国で治療中の人員を向けて新たな環境で治療していただくのも手ではないかと考えております。先の戦闘で生き残ったにもかかわらず精神障害を発症して一般の私生活にも困窮する者がおります。そういった者達に働きながら治療及びリハビリをする場としてはどうでしょうか」

 

 

 四国に移設予定の食料生産拠点は、これまで救助した日本人のリハビリと働き先として運営していたものであり、これを移設したに過ぎない。

 しかし、それを今後日本帝国がどう使おうとアースガードは関知しない方針だ。

 ただし、『余計なことをして施設が壊れたとしても我等は、知らないからね』という事で丸投げにした。

 多分今後多発すると予想される他国からの介入や工作員の破壊工作などがあったとして、今後施設を維持管理して守ってゆくのは、日本帝国の責任だという訳である。

 この施設、今後25年間はメンテナンスフリーで稼働する見込みであり、適切な人員さえ割り振っておけば、現在設定されている食料品や医薬品を定数生産し続けるのである。

 ここでアースガードよりもたらされた仕様書による定数だが施設がフル稼働時には、現在の日本帝国民の約2割を過不足なく食わせて行けるだけの生産能力が保証されていたのだ。

 25年間で活動が停止するらしいが、その後は分解して調べるなりしていい事になっている。

 想定外の攻撃や破壊工作は、アースガードには何の責任もないのだから関知しないという訳である。

 

 

「今回の施設譲渡は、人類に対するギフトといっても良いモノだろう。しかし、施設が此処にあり日本人が優遇されている事にかわりは無い。これを快く思わない者達によって妨害が有るだろうことも予想できてしまう」

 

 苦り切ったように皇帝が吐き捨てた。

 

「自分達の手に入らない物は、壊してしまえと短絡的な考えに陥る愚か者が多数居るのも人類だ。度し難いものだな」

 

 将軍様も難しい顔である。

 

「だから彼らは、嫌だったんでしょうな。すべての権利と管理運営を日本帝国に押し付けて来ましたからね」

 

 困り顔で榊首相がのたまわる。

 

「とにかく彼らの言う稼働限界が指し示す25年後まで、なんとしてでも無事に維持管理しなければならん!  日本帝国の復興には無くてはならん物だし、生産品の半数以上を国連または前線国家など不特定多数の戦災国に供給することになるだろう」

 

「いささか製品の完成度が高すぎるのが玉に瑕だが仕方があるまい。転売する輩が絶対に出てくるだろう、どこの国とは言わないがな」

 

「ああっ、ありえますな」

 

 

 

 

 

 

 

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