実は俺、BETA大戦に介入しました!   作:夢見る黄龍

39 / 46
4054文字


39.半島蹂躙

 

 

 

 1998年9月1日の早朝。

 それは、何の前触れもなく始まった。

 

 朝鮮半島、釜山沿岸から始まった地殻変動は、不毛の大地と化した朝鮮半島を、まるで波が広がるように北上していった。

 大小の地震を伴い大地が波立ってゆくのである。

 どう見ても自然発生した地震などであろう筈が無い。

 この地殻変動は、静まる事を知らずに時を追うごとにまるで大地が耕されてゆくように満遍なくその規模を広げて行った。

 ゆっくりとしかし確実に北上していった。

 

 甲20号鉄原(ちょるぉん)ハイブは、今は亡き韓国・北朝鮮の国境付近に位置している。

 北上してきた地波が忠清北道(ちゅんちょんぶくど)に差し掛かる頃には、鉄原ハイブにも動きが生じていた。

 今までに類を見ない程の勢いでBETAがハイブから吐き出され始めたのである。

 ハイブより吐き出されたBETAは、東西に大きく広がりながら一斉に南進を始めるのだった。

 

 

『甲20号鉄原ハイブにてBETAの南進を確認。京畿(きょんぎ)道付近でメタルワーム第一陣と接触の模樣です』

 

 対馬要塞島の情報処理センターでは、地球上の各種様々な情報が集積されリアルタイムで分析映像化されていた。

 逐一現在の状況がアナウンスされていた。

 今朝方からの地殻変動は、大量のメタルワームによる反攻作戦だったのだ。

 

『先頭の成獣300騎、土中より露出。先制ブレスの発射体制に入ります』

 

 ここで前線の映像が届いた。

 巨大な空間ディスプレイには、土中より飛び出た巨大な円柱のような物体が立ち並びユラユラと揺れ動いていた。

 丸みをおびた先端が地上20mほどで鎌首をもたげる様子が映し出される。

 そして、その先端を一斉に輝かせ始めるのだった。

 不毛の大地に土中より立ち上がった数百の塔は、整然と横一列に並びその先端を北に向けている。

 

『ブレスの充填が完了しました。発射します、薙ぎ払え!』

 

 アナウンスと同時に映像が光で満たされた。

 先程まで光っていた先端がパカリと口を開き、ブレスと言う名の粒子ビームが一斉に放たれたのだ。

 照射時間は5秒ほど、大量の極太の光の筋が北に向かって照射されたのである。

 その数、300。

 BETAのレーザーとは違う熱と質量を持った光の放流は、こちらに向かって突き進んでいたBETAの集団のほぼ半数を一瞬で蒸発させ残りの半数以上を地上から吹き飛ばした。

 さらには残存していたBETAも無事には済まない程度に損傷を負っていた。

 後方に居たはずの光線属腫などは、その脆弱性もあり見事に一瞬で挽き肉となって吹き飛んでいた。

 

『敵BETAの壊滅を確認。残敵の殲滅と掃討に入ります』

 

 それまで静かだった地波が再び沸き立つ様に発生し、北に向かって進み始める。

 地中には、大量のメタルワームがひしめきあって居たのである。

 地上に存在した物は、全て土中に飲み込まれて消えていった。

 すでに(むくろ)となったBETAもまだ動いているBETAも別け隔てなく土中に飲み込まれてゆく。

 白波が沸き立つように地面が泡立ち、大小さまざまなメタルワームの軍団が波のように土中を突き進んで行くのだった。

 

 幾筋もの地波の通った後には、耕された大地が延々と続いていた。

 それまで何もなかった大地に等間隔で土中より盛り上がる塚の様なものが散見される様になったのは一昼夜ほどが経った翌日のことだった。

 これは、メタルワームの吐き出した排泄物の堆積した物である。

 塚を崩してゆくとペレット状の鉱物資源や結晶物質が多量に堆積しているのである。

 

『このまま前衛は、甲20号鉄原ハイブ方面へ向かいます』

 

「半島全域を耕すには、少し時間が掛かりそうだな」

 

[肯定。まだ個体数が少ないですからね、最低でも今の5倍ほどにまで増えなければ大陸全土の土壌浄化には無理があります。四国では、かなりの数を増やしましたがまだまだ足りません]

 

「暫くの間、半島で養殖しよう。鉄原ハイブの攻略は、調うまでお預けかな」

 

[肯定。ハイブ前面でBETAの誘引を行い出来るだけ他のハイブからも増援を呼びましょう。各前線では、BETAの圧力が減少するはずです。地下侵攻の優位はBETAだけの専売特許では無い事を見せつけてやります。精々餌運びに専念してもらいましょう]

 

「BETAが余計な学習しないように、重力波と量子波の妨害を厳格に頼むよ」

 

[肯定。拔かり無く行います。お任せください]

 

「本格的なハイブの攻略を開始するのは、10月に入ってからだね」

 

 

 

 

 

 よく理由の分からない朝鮮半島での蹂躙劇は、早朝から日本帝国にも送信されていた。

 しかし、詳しい説明のないままに実施されたため、それを見た関係者は阿鼻叫喚の真只中に叩き落されるのだった。

 どこからどう見ても怪獣映画である。

 それも、一方的な蹂躙により憎きBETAが殲滅される映像なのだから堪らない。

 

 これを見た民衆は、狂喜乱舞する事となり、かたや現場を少しでも知る軍関係者は、顔色を青くした。

 下手に手を出したら焼かれるのは此方側だと悟ったのである。

 これらの情報は、日本帝国に潜伏しているスパイや情報提供者(売国奴)から即座に各国情報部に伝達された。

 これまで日本帝国に対して強硬にアースガード関連の情報提供を要求してきた各国首脳は、事の重大さに震撼するのだった。

 BETAを焼き払い大地を蹂躙している物体は、どう見ても強大な生物兵器にしか見えなかった。

 その後も色良い返事の一切ない日本帝国の回答に業を煮やした各国政府は、国連を通して日本帝国に情報の開示を求めるに至るのだった。

 

 国連事務総長は、各国から(強硬な米・ソ・中・韓、控えめな英・仏・独とその他)突き上げを食らって辟易としている様子だった。

 実は、国連軍を通して香月博士からの概要報告が既に届いていたのである。

 その報告とは、日本帝国主導の第4計画は、異星人とのコンタクトに成功し確実な実績を上げているという事実だった。

 しかし、接触した異星人がBETAではなく第三の存在だった為この情報は、厳重に秘匿されていたのである。

 だいたいどっかの国が暴走するだろう事が目に見えていたからなのだが、まさかアースガードが予告もなく行動を起こすとは思っていなかったからでもある。

 

 仕方無しに事務総長は、国連総会(ニューヨーク)に日本帝国を喚問のため呼びつける事になった。

 しかし、そこに呼びつけられた国連事務次官・珠瀬玄丞齋(たませ げんじょうさい)の抗弁は、次のようなものだった。

 

『イヤハヤ大変な事態ですな。BETAも仲間割れを起こすのでしょうか? だいたい、この件に関して日本帝国は、一切関知していないと聞いております。どうして我々がこれに関係しているとお思いになったのですかな?』

 

『『『『『『ぐっぬぬぬぬ・・・』』』』』』

 

 各国の外交官も居並ぶ首脳も二の句が継げない返答だった。

 『百(ぶん)は、一見にしかず』とは、良く言ったもので、証拠映像として提示されている怪獣映画(モノ)の何処にも日本帝国が関与している処は無く、それどころか地球人類が介在している様な処も映ってはいないのである。

 

 たしかにタイミング的には、国土をBETAに蹂躙された日本帝国が見たこともない戦力に手を借りてBETAを殲滅して国土からの駆逐に成功し、その対価として対馬に要塞が作られていると言う事実である。

 邪推するなという方が無理なようではあるのだが、日本帝国が朝鮮半島で何かしたという事の証明にはなっていないのだった。

 

『わざわざ緊急の国連総会を招集しておいて怪獣大決戦の上映会ですかな? 皆さん随分と暇なのですね』

 

 日本帝国は、今回の喚問内容について事実無根『無関係』である、と主張した。

 どこまでも知らぬ存ぜぬを決め込む事にしたのである。

 実際に日本帝国の関係者は、アースガードの行動情報を知らされていなかったのだから何の問題もない。

 逆に痛くもない腹を探られてエライ迷惑でしかないのだった。

 しかし、これでおさまりがつかないのは、米中ソの三カ国だ。

 

『対馬に軍事施設を建設しているようだが、アレは日本帝国の物かね?』

 

『アレは、自然保護団体の私的な建造物ですな。些か前衛的なデザインではありますが我が帝国とは関係の無い代物です。先のBETA侵攻で荒れ果てた対馬の自然回復に御助力いただいている次第です。被害にあった我が帝国は、国民の25%を失い国を上げて復興に励んでおります。軍事施設など作っている余裕など何処にも有りませんよ』

 

『食糧事情が被災前より良くなっているようだが、これはどうしてかね?』

 

『先に述べた自然保護団体が保有していた食料工場を特別に譲って頂いた成果ですな。今回の国難を鑑みて是非帝国で役立てて欲しいとの善意の寄付でありました。本当に有り難いことです。現在、帝国国営の施設として整備を進めているところです。日本帝国は、これを重く捉え対馬をはじめ周囲の島の領有権を与える事としました。一種の不干渉独立地帯ですな』

 

『それは、報奨として過大なのでは無いのかね。一種の独立国家ではないか』

 

『皆さんには、そう捉えられても宜しいかと考えております。日本帝国は、国として対等以上に厚く遇してゆく事が決定しております。荒れた土地を与えただけですからな、別に懐は痛みませんでしたよ』

 

『たかが自然保護団体だろう。そこまでする必要がどこに有るのかね?』

 

『それは、捉え方の違いでしょうな。日本帝国は、とても感謝したのですよ。渦中に大国(・・)が逃げ出しドコ(・・)も助けてくれませんでした。そんな国難の中で私財を投げ捨てて駆けつけてくれた。これは、誰もが当たり前に出来る事では有りませんよ』

 

『ぐっぬぬぬぬ・・・』

 

 

 

 これで閉会となった緊急国連総会だったが、日本帝国がこれでもかと持ち上げたおかげで自然保護団体アースガードは、一躍時の人となるのだった。

 俺にも寄越せとクレクレ達が世界中から対馬に押し寄せる事になるのだが、鉄壁の防御陣で一切相手にしないアースガードだった。

 

(要塞の周りに勝手に居着いて街を作るのはやめろよな。ここは、私有地だぞ!)

 

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。