実は俺、BETA大戦に介入しました!   作:夢見る黄龍

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3686文字 → 4254文字 加筆修正 23/11/07

少し時系列を戻しました。
 2話 1998年7月末 → 1998年7月初頭
BETAは神戸の手前で足踏みしております。



04.悪巧み

 

 

 

 ここは、太平洋に出来上がったばかりのウンサンギガの拠点。

 隠密性に特化した沈降型メガフロートの最下層に存在する情報集積センターである。

 要は、地球での俺達の秘密基地であり作戦司令室だ。

 地球に降りてきてからここが完成するまで、およそ1日が過ぎている。

 そして俺達がこの宇宙に転移してきてからは、既に12日が経とうとしていた。

 

「地球での拠点も完成したし体制はそれなりに整ったと思うんだけどさ、正直な処どうやって地球上のBETAを殲滅しようか? これまでの事前調査の結果から見てこちらの人類はどんだけ慎重に見ても低能ばかりって結果が出てるんだよね。前提として『現行人類と手に手を取って協力して事に当たる』って話は無し(・・)で行こうと思うんだ。どうシュミレーションしてもこちらの人類は直接関わると碌でも無い事になりそう、というかとっても自己中心的な独りよがりが多くて面倒くさそうなんだよね。俺も人のことをとやかくは言えるほど偉くなったとは思ってないんだけどさ今後の接触も極力避けて最低限でお願いしたいと思うんだ。それで、意見のある人は手を上げて!」

 

 そうみんなに聞いてみた処、控えめに手を上げたのはなんとアステローペだった。

 医療全般に明るい彼女から、敵殲滅の意見が出るなんて意外な展開だ。

 何か良いアイディアがあるらしい。

 

[マスターは謙遜し過ぎです! 成り立てとは言え星間国家のトップとしてもっと堂々と好きな事を言ってしまっても良いと私は考えます]

 

「「「「「「ソウダ~、もっと言え~!」」」」」昴は、弱気過ぎ!」

 

 違った!

 普段おとなしいアステローペが激昂する勢いで意見されてしまった。

 他のメンバーも同じ意見のようだ。

 

「オオッウ、すまん。少し弱気過ぎたか? 消極的かもしれないけど『極力関わらない』を方針として上げたいと思う」

 

「旦那も結構無理な事をサラリと言うようになったじゃないか。それがどれだけ難しいか分かって言ってるんだろうね?」

 

 ウハッ、ジェニーにも突っ込まれてしまった。

 

「君達なら出来るだろ? 信頼してるから言ってるのさ……(冷や汗タラ~リ)」

 

「「「「「「「「当然!(ジャ)」」ムフ~ッ」」」任せるのジャ」」」

 

 ハコの他シスターズもウンウンと首肯している。

 何とか誤魔化せただろうか…ハコやジェニーはニヤニヤと笑っているところを見るに誤魔化せては無いんだろうな~、空気を読んでくれたのかな。

 話が中断したがアステローペが話題を続けて話しだした。

 

[Dr.アン様のところのキシャールさんからの受け売りなのですが、かの御仁は大昔にアンドロメダ銀河である害獣指定の種族を根切りにしたのだそうです。それもほぼ銀河全域に蔓延っていた種族を短期間にです。惑星間の隔たりも人流があれば何とでもなるそうで関係なく実行出来たそうですよ]

 

「ホホウッ、面白そうな話じゃな……それはウンサンギガには可能な方法ということなのじゃな」

 

 シャシが如何にも面白そうな話だと混ぜっ返した。

 

[肯定。私も情報だけは把握しています。確かにあの殲滅方法を取れるならば種族特性という物を逆手に取ってピンポイントに殲滅することも可能でしょう。しかし、この方法が使えるのは流通または人流がある事が大前提です。それにあの有機ロボットのベースとなっているこの次元の人類種を確実に対象から除いてやらなければいけません。そうしなければ助けようとしている地球人類に被害が及ぶ危険性を孕んでいますよ。出来るだけ多くのサンプルを取るためにも、いま地上に生き残っている人類に接触しなければいけませんよ]

 

[はい、そこのところは一番最初に(つまず)くところですので早期に排除しています。今回は敵対種族ではなく有機ロボットがターゲットです。ので、生物の抗体反応を逆手に取った方法を取りたいと考えています。現在地球上に存在するBETAの内、小型種の殆どはその構成材料の一部に人類を素にしたパーツが使用されているようです。これは、映画の宇宙戦争をご覧になった方は分かると思いますが、劇中で侵略してきたエイリアンに止めを刺したのは地球上に存在した細菌やウイルス、バクテリアなどでした。御存知の通り地球は他に類を見ないほどの細菌など微生物の坩堝なのです。この次元の地球環境もその点は類似しているようで我々の防疫システムで完全にクリアすることが出来ました。BETAはそれらの防疫過程を回避するために現行人類の肉体を原料サンプルとして使用する事でクリアしているものと思われます。これを逆手に取って反抗の為の足がかりとするのです]

 

「ふむふむ、だからBETAは要所に人っぽいのが垣間見えるって訳か……気持ち悪いんだよね、アレ」

 

[現行人類の肉体を素材として使用しているということは、それ以外の部分をピンポイントで攻撃する事のできるウイルス、またはウイルス型のナノマシンを散布し感染させることで取り敢えずの手足、小型種のほとんどを行動不能に出来ると考えます。人類の免疫抗体システムを利用しているのであれば、こちらにはいくらでも対抗のしようがありますよ。早い話、人類の体を治すためのナノマシンを散布して人類を助け、人類の生体部品を不当に使用している者には、逆に鉄槌を下すという訳です]

 

「接合部分を攻撃するって訳か……それって現行人類が元気になり過ぎたりしない?」

 

[肯定。そうですね、ある程度現行人類が超人化する例も出てくるかもしれません。トカゲのしっぽみたいに欠損した手足や体の一部が生えてくるとかですね]

 

「折角命辛辛戦争に生き残ったんだから、まあそれくらいのご褒美が在っても良いんじゃないかな。どうせ超人化は一時的なものなんだよね? ずっとそのままだとゾンビとかバンパイヤと変わんないもんね」

 

[その通りです。現在想定しているのは半年ほどでしょうか。その期間を過ぎれば身体機能は正常な状態に戻ります。BETAが地球上に居なくなる頃には新陳代謝が進み元の身体に戻る予定です。BETAの部品として使用されていると予想される死滅しているはずの人体組織部分は、死んでいる状態ですので急速な拒絶反応の後にアポトーシスを誘発することになるでしょう。結果、ごく一部であっても人体組織が部品として使用されているBETAは、全て死滅または行動不能に陥るはずです]

 

 アステローペは、殺害された人の死体をその構成要素として作成されたBETAに対して強い嫌悪感を覚えており、BETAにはその報いを追わせようというのである。

 

[肯定。現在確認されているBETA種の殆どに何らかの構成部品としてこれまで殺害された人体を素に製造されたと思われる部品が使用されていることが確認できています。残念ながら宇宙空間など無重量空間では空気感染等の方法が使用できませんので物理的な接触を図る必要が生じます。これには、大小の昆虫型マイクロマシンを使用すれば良いと考えています。BETAの防疫システムが何処までウンサンギガのテクノロジーと悪知恵を上回る事が出来るか楽しみですね]

 

「アポトーシスってことは腐るのか~……発生する生ゴミの回収はどうするのさ?」

 

[肯定。地上の汚染物質と生ゴミの回収は、その後のアフターケアとして我々がやってあげる事としましょう。地球の自然環境の回復を願っているメンバーも居ることですしね。ただしその後に人類がどういう行動をとろうが結果的にどうなろうと自業自得です。我々は高みの見物と致しましょう]

 

 今まで大人しかったメローペが叫ぶ。

 

[そこはマスターが神として降臨して、ドーンと人類を支配するんですよ。なんせウンサンギガ帝国の皇帝なんですから何の問題も有りませんよね]

 

「やだよ、そんなの。面倒くさいでしょ……」

 

[エ~~、やりましょうよ~]

 

「それじゃメローペに任せるよ、女神役はメローペな! ナノマシンの大気中への散布もよろしく頼むよ」

 

[ぎゃー、やぶ蛇だった~!]

 

 

 

 こうして地上には巨大なメイドのコスプレをした女神が降臨するのだが、それはもう少し後の話しである。

 

 BETA殲滅用のナノマシンの製造は、間に合うのだろうか。

 ドールによる時間稼ぎは継続しているが殲滅まではしていない。

 BETAが帝都に迫るのも時間の問題だろう。

 撹乱にあまり時間をかけると地球人類にも第三者の介入を気取られる事にもなるだろう。

 苦しい時間稼ぎを要求している現状で『現地人類とは接触を控えてくれ』なんて言っている馬鹿野郎(俺のこと)を信頼してくれている嫁達には頭がさがる思いだ。

 ここは、俺も一肌脱いどこうかな。

 

 BETAの制御部は既に解析済みである。

 それなら支配権の乗っ取りも出来るんじゃないだろうか……片手間に進めてみよう。

 数で攻めてくるんならそのまま返してやれば良いだろう。

 自分達がどれだけ酷いことをしているのか、支配者階級に分からせるのも一つの教育だろう。

 理不尽を理不尽で返されても因果応報、自業自得だと思って諦めてほしいものである。

 

「昴ちゃん、さっきから悪~い顔でニヤついてたけど又何か悪巧みしてるでしょ?」

 

「つっ。そっ、そんな事は無いさ~……」

 

「図星だね。さあ吐けっ、吐くんだ~!」「追え、逃がすな!」「腐腐腐…」

「痛くしないからね~」

 

 俺は、会議室を逃げ出すのだった。

 多勢に無勢、どうせこの後直ぐに捕まるんだけどね……とほほほほ。

 

 

 

 ◆

 

 

 

 木星(ジュピター)ステーションは、続々と帰ってくる宇宙船を受け入れるため、まずは宇宙港の港湾設備の拡張に励んでいた。

 この次元宇宙でのメインベースとなるこのエネルギー生成ステーションは、まだ骨格がむき出しの鳥籠のような状態である。

 これから先調達しなければならない資材とエネルギーは膨大である。

 

 先のガニメデとカリストでのお掃除作業で出たゴミは、全て原子還元されナノマテリアルに変換されこのステーションの骨組みへと化けたのである。

 マイアとエレクトラは、既に調査から帰って来て手の開いている宇宙船の管制AI達を()き使い、アステロイドベルトから手頃な小惑星を運ばせるのだった。

 

 猫の手も借りたい様なこんな状況でケラエノは何をしているのかと言うと、ステーション建設のために集まってきた資材とエネルギーを掠め盗り(・・・・)セッセと武器弾薬の製造に明け暮れているのだった。

 実はさっきまで昴がその手伝いをしながら怪しげな物を(こしら)えて居たのだが横目にしていた当事者のケラエノと全体を俯瞰(ふかん)して監視しているハコだけが知っている事実であった。

 

 

 

 

 

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