間が空いてしまいましたが再開します。
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国を失った難民の中で今一番熱い話題は、現在『地球で一番安全な場所は、何処だろう?』と、言うものである。
実際に問われたら誰もが多分日本帝国と答える事だろう。
以前は、オーストラリアが一番で次席がアメリカだった。
実際には、日本帝国国内のアースガードの支配領域内と言いたいところだが、一般人には詳しく知らされていない情報だし直ぐに敷地内から追い出される上に施設への人の出入りもほぼゼロで取り付く島もないので、現在は次席で日本帝国と言う他にないのが現状だろう。
日本帝国は、先ごろBETAに国土を蹂躙され人口の25%を失ってしまったが、
しかし、これら早期の国土回復もアースガードの尽力のおかげであったらしく、今後はそのアースガードが大陸からのBETAの盾となり帝国本土を守ってくれるとなれば話は変わってくる訳である。
まあ、BETAの脅威からは開放されて当面は安全となったとしても諸害国のスパイからは、アースガードも事実上守ってはくれないので日本帝国も大変だろう。
そして、それ以上に問題なのがどさくさに紛れて急激に流れ込んだ各国難民の処理であるだろう。
通常なら復興に人手が欲しいところで歓迎される事では有るのだが、今回は勝手が違ったのだ。
先ごろまで戦場だったはずの場所は、綺麗に整地されゴミや廃材の一つも落ちていない清浄な土地となっていたのだ。
メタルワームが非常に綺麗好きであり、そのあとに戦場を片付けたドールが復興の事まで考えて行った行動が裏目に出てしまったのだった。
我先にと流れ込んだ難民が勝手にバラックを建て町を作り住み始めるまでにそう時間はかからなかったのである。
日本帝国は、各国からの横槍に苦慮し戦後処理に手間取っている僅かな間の出来事である。
これにはもう一つの
律儀にも整地された戦場の隅には各種金属やレアメタルなどが球形のインゴットになって山と積まれていたのである。
種類別に選り分けるだけでそのまま利用出来る高純度の物ばかりであった。
これ、メタルワームの
誰が見ても宝の山である事は、直ぐに分かる事で、流れ込んだ難民は我先にと確保に走った。
宝を前に居座り街を作るのにこれ以外の理由が彼らにあるだろうか。
帝国陸軍が現地に向かった時には、およそその3割以上が難民達の手に落ちていたのだった。
さてこの時、避難していた帝国の国民はどうしていたのだろうか?
大いに国民性を発揮して避難命令を律儀に厳守していたのである。
出遅れた国民たちが、ようやく避難命令が撤廃されておっとり刀でいざ元の家があったところに戻って来てみれば、そこには見知らぬ外国人が勝手に小屋を建てて住み着いているではないか。
イザコザが起きないはずがないのであった。
日本帝国として難民たちには、強制的に立ち退きを要求した。
当然、難民達は抵抗する。
移動させてもどこからともなく雨後の筍の様に現れては、元の木阿弥であった。
国外退去以外には無いのだっが、今の日本帝国にはその余裕がなかったのである。
これは、元の国民が街を復興してもしばらくの間続くことになる。
『郷に言っては、郷に従え』という日本帝国の諺にも有るように、周囲の人間を味方に付けるのが得策であるのだが、そんな事は一切お構い無しでいつの間にか勝手に住み着き街を作り乗っ取ってしまう人種がいるのも事実だ。
特にブラ*ル
復興後日本帝国に、そのような場所が急激に増えており、治安の悪化が甚だしい。
『安全が聞いて呆れる』とまでは、まだ行っていないが大規模に取り締まらなければ時間の問題だろう。
だいたい日本帝国は、移民を受け入れていない珍しい国であり勝手に住み着く事は違法なのだ。
大量の大陸難民は、他国に引き取ってもらっている現状、網の目から漏れた人間は少なからず存在するのである。
結果こういった街や村、施設が何処からか勝手に湧いてくるのだから始末に終えない。
今日も帝国からの定時連絡が終わったあと、通信モニターの向こうで胡散臭いオジサンが愚痴をこぼしている。
『いやはや、難民なら難民らしくしていれば良いものを立場もわきまえずに、声高に他国で権利を主張してくるのには困ったものですな。きれいに居なくなってくれませんかね~、BETAみたいに……』
「民衆とはどこも似たりよったりですよ。国体の無くなった国民がどれだけ権利を主張して騒いだところで、誰も取り合ってはくれないでしょうに、その国の偉い人は教えてあげないんですか?」
『然り! わざと混乱を煽っている傾向がみられます。さらに面の皮が厚いのは、真っ先に逃げ出した支配層や官僚共はそれを都合よく使おうとしているのです。形だけの暫定政権というだけでも付き合うのにうんざりしているのに、肝心の己達が守るべき国土も国民の保護を放りだしで無政府状態にもかかわらず継続した政権を名乗りあまつさえBETAに占領された国土の現状の権利を主張する恥知らず共です。近隣諸国の軍が間引きに征く度に国土の使用料や入国に対する税金を払えとぬかす始末。占拠しているBETAに直接地代家賃を請求しろと言いたい処ですな。初動が遅れた責任はありますが、復興資材を持ち逃げされたのが実に痛い! 痛恨の極みです!』
「それで、今後はどうしましょうか?」
『取り敢えず良い難民と悪い難民とそれ以外に分ける事にしました。「働かざる者食うべからず」です。旨い食料で釣りあげて島流しにでもして隔離しましょう。強制退去を促したところで戻ってきてしまっては意味がない』
「島抜け出来ない様に牢番代わりのドールを貸しましょうか? 外敵から守ってあげていますよと言えば体裁も立つでしょう」
『それは、有り難い申し出ですな。体の良い「保護収容所」と言ったところですな。それでは、急ぎ予定地の選定に入る事にしましす。離れ孤島が理想的……ブツブツブツ……』
唐突に、珍しく目の下に隈を作った鎧衣課長との通信画面がブラック・アウトした。
[鎧衣課長との通信が切れました。最近、疲れが溜まっているのではないでしょうか? 随分と愚痴が増えたように見受けられます]
「ウ~ン、あれは仕方ないんじゃない。多分周りに直接愚痴を言える人がいないんだろうね。しかし、ここは告解部屋じゃないんだけどな~」
[肯定。しかし、神に直接願いを伝えているのと同じではありませんか。これと言って貢物もありませんし、まともに受け合う必要も認めません]
「ハハハッ、何かしら受け取っていたら立場上それなりに答えないといけないからね。いいんじゃないかな、今は聞き流しておけば。他から如何にも怪しいのが来たら、通報してやってよ。鎧衣さん達喜ぶから」
[肯定。仰せのままに]
「雨降って地固まるって言うし、良いんじゃない」
ヤりたい事だけ全力で後の面倒事は、すべて日本帝国に丸投げしてしまう事にした昴だった。
◆
榊首相は、自然と顔がにやけてしまうのと嫌悪感を滲ませて眉間にシワを作るのとを行ったり来たりしていた。
想定外に復興資材の確保が容易になった事と、しかしその一部を難民や不法滞在者達に持ち逃げされている事実とで、顔面が崩壊しかかっていた。
実は、安全確認が終了しアースガードから返還された被災地の現状が問題となっていた。
BETAの撃退が確認された当初、四国と九州そして兵庫から西側・中国地方以西の被災地では、当然存在するはずの破壊された瓦礫、戦術機や建造物をはじめBETAの死骸などの撤去作業などに物資も人手もそして膨大な金も時間も掛かると踏んでいたところ大きくその予想が外れていた。
そこには、すでに更地になった土地と利用可能な資材の山が存在することが分かったのだ。
政府は、この現実に最初は笑いが止まらなかった。
しかし、戦後いち早く現地になだれ込んだのは、国民ではなく不特定多数の見知らぬ難民や不法滞在者だった。
四国と九州では難民の流入を阻む事が出来た。
しかし、地続きの西日本各地の被災地には、政府の対応が遅れ有象無象が雪崩れ込んでしまっていたのだった。
この現状に避難地から帰省してきた国民は、怒り狂うことになった。
BETA災害から避難していて住むところを追われたのは、まだ命が助かっただけマシだった。
ところが開放された故郷に帰ってきてみればそこに居たのは、BETAでは無く何処の馬の骨とも分からない見知らぬ難民たちであったのだ。
勝手にバラック小屋を立て、家のあった場所が占拠されていたのである。
当然帰ってきた民衆との間で一触即発の状態になったが、不法占拠をしている難民には他に行く場所など無い事は、誰が見ても分かる事で双方引くに引けない中で、出たのは国民性だった。
どこまでも性根がお人好しな日本人は、そんな状態のところでも活躍してしまうのだから困ったものである。
バラック小屋は、土地の不法占拠だから政府指導の元で撤去されたが、戻ってきた住民達は整然と区画整理を開始しその中に、難民キャンプを組み込んだのである。
人も少なくなった……こんなところで啀み合っているよりもみんなで新しい生活を早く始めようとゆうのである。
最初は強硬に居座っていた難民たちも、正式に自分達の落ち着ける場を設けてくれた街の人々に感謝した。
それからの街の復興は、びっくりするほどのスピードで進むことになった。
難民達が不当に隠し持っていた資材物資などは、接収され復興に使われたが必要以上の資産の搾取等はされなかった。
逆に炊き出しや簡易宿泊所など被災民と同じ扱いを受けられるように取り図られ、一緒に街の復興に尽力する体制が出来ていった。
中には資材を持ち逃げする者達や暴力に訴える者達も居た。
しかし、ここで一番活躍したのは昔ながらのヤクザな商売の方々だった。
彼らを擁護する訳では無いが、一部無法地帯とかしている被災地での秩序の回復には、裏の事情に詳しい専門家の活躍は、動きの遅い政府よりも民衆に歓迎された。
平和な社会で行き場を失っていたヤクザな商売の方々は、張り切った。
中にはクズのような輩も居るには居たが、いつの間にか居なくなった。
それとなく鎧衣さんに情報を流したところ、そのお仲間が頑張ってくれたらしい。
クズの中には、他国のスパイや工作員も多数含まれて居たことが分かっている。
誰しも考える事は一緒で、混乱期に敵の懐に喰い込もうとしている訳だが、今回はどこの国や組織も上手くは行っていないようである。
兎に角何処からとも無く情報が漏れては、計画が尽く潰されるのである。
実は、すべての計画が立案段階ですでに察知されているのだから隠しようがないのである。
世界中のいたる所に人知れずアースガードの目と耳が潜り込んでおり、リアルタイムで管制AI達によって監視されているのだ。
邪魔な計画や活動は、自然な形で暴露され情け容赦無く潰される運命にあるのだった。
残念! ご愁傷さまとしか言いようがない。
それでも懲りずに頑張る方々なのだが、ただ他人の足を引っ張っているだけで偉大でも無ければ偉くもない。
いったい何時になったら其の事に気がつくのだろうか。
◆
さて同じころ巌谷榮二は、富士の裾野に広がる演習場に居た。
赤いスマートな機体に乗り単独で宙を舞っていたのだ。
対して富士の演習場を埋め尽くすのは、世界各地の軍隊から選抜して集まった戦術機の数々である。
雨霰の様に打ち込まれる砲弾(模擬弾)と銃弾(ペイント弾)を掠らせもせず、翻弄していた。
『あれは何なんだ、化け物か?』
今演習の臨時司令を務めている米軍士官は、冷や汗を拭いながら呟いた。
「あれがワルキューレ。地球以外の技術で製造された自立型機動兵器だ。個別に自我を持ち操縦者を自ら選び戦う神の戦術機さ。神器と言っていい代物だよ」
次々に脱落してゆく戦術機たちを尻目に、赤い閃光の様に舞い踊る。
『そんな
「事実目の前に存在しているじゃないか。現実を見ることだね」
帝国陸軍の技術補佐官として
どういう訳かすべての機体から総スカンを食らったのである。
後日、巌谷大尉に直接理由を聞いてもらったところ、何故か一人胸を抑えてうずくまっていたとの事だ。
プライベートなことを深く追求するのは、この辺で止めておく事にしよう。
さて、どうしてこのような状況になっているのかというと、アースガードへ接触したい各国の意見をまとめたところから来ているのである。
直接の接触を実行した部隊は、その全てが追い返されたのだ。
やり方が悪かった事は、否めない。
ほとんどの実行国が民間団体と舐めてかかり実力行使を行ったものだから目も当てられない。
『あんたら馬鹿なのか?』と聞いてみたいところだ。
BETAをゴミ扱いしてる相手に、BETA程度に手子摺っている人類が実力行使って、どう考えてもおかしいと思わないのだろうか。
結果、アースガードから総スカンを食らって日本帝国に泣きついた訳であるが、その対応は一貫していた。
ワルキューレのパイロットをワルキューレ自体に選ばせる事、その実行窓口を日本帝国に一任したのである。
例外は一切認めないし、これは日本帝国の軍人にも共通の対応であると言うことだった。
各国からの選抜者への説明に
状況に納得できない者達が巌谷大尉に詰め寄り、結果模擬戦になっていたりするのであるが、手も足も出ずに恥を晒すだけになっていたりする訳である。
この現状を知った各国政府は、事態を重く受け取りはしたが困惑を深め軍部首脳は頭を抱える事になった。
これまでの軍歴や慣例が一切通用しないのだから仕方がない。
機体がパイロットを選ぶのだからどんな腕自慢も機体に嫌われたら触れることも出来ないのである。
上にどんなにコネがあろうが、これまでどれだけ輝かしい戦績を上げていようが、そんなことは関係ないのである。
中には、ワルキューレから直接『生理的に無理!』と言われるに至ってパイロット生命を絶たれた者も出る始末。
理由は多々ある様だが素行不良等の他に異性への対応や性格が大きく影響を及ぼしている様であるらしい。
淑女をエスコートするように紳士としての誠意を見せなければ、ワルキューレには袖にされるのが当たり前の様で、特に女性問題を抱えている者や性癖を拗らせている者、素行の悪い者は側にも寄れない様である。
どんな裏技を使っているのか分からないが、ワルキューレに依る人物鑑定は非常に正確であり、どんなに個人情報を隠していたとしても駄目であった。
その結果第一声で止めを刺される軍人が多発する事になり、ワルキューレ適性試験を怖がる者が出始める始末である。
特に脛に傷も持つ輩は、及び腰であった。
表に出ていない犯罪歴が列挙されるに至って逃げ出す衛士達は後を立たず、特にCIAやKGBなど後ろ暗い業務にタッチしたことのある衛士は、最初に淘汰されることになりその後もまともな役職からは弾かれることになった。
一転して女性の衛士は、割とすんなり騎乗を許される様ではあったのだが、この時嫌われた者は男性以上に落ち込むことになったのは仕方がない顛末だろう。
何処の世界にでも同性に嫌われる人物という物は、少なからず存在するのである。
さて、ここで選抜された衛士達は、今後対BETA特殊部隊として独立した軍事行動を行うこととなる。
敵は飽くまでもBETAであり、各国間の問題には一切介入しない。
ただし、BETA技術の軍事転用や悪用に関しては、例外的に介入する事もあった。
実際には、キリスト教恭順派などに対する対応がこれにあたり、ESP能力を悪用したBETAの誘導や人類に敵対する活動には容赦なく介入した。
この時すでにキリスト教恭順派の教主は抹殺されており、残された残党が悪足掻きをしているような状態ではあった。
この件に関しては、誰の手による物かは定かではない……ということになっている。
後にこの話の事実確認をした各国の情報部は、心底震え上がることになるのだがここでは触れないでおこう。
時は、1998年11月下旬。
雪のちらつく富士山の麓での情景であった。