実は俺、BETA大戦に介入しました!   作:夢見る黄龍

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42.反撃と勧誘と道化と

 

 

 

 時は、1998年12月24日、クリスマス・イブの早朝。

 この日、ついにメタルワームによるBETAへの反撃が開始された。

 

 朝鮮半島で数百倍にまで増殖したメタルワームは、大きく3つに別れて朝鮮半島から侵攻を開始した。

 全体の6割を占めるメタルワームの本隊は、ゆっくりとそして真っ直ぐカシュガルを目指している。

 そして残り4割は、半分ずつインド方面とロシア方面に別れて同時侵攻を開始したのだった。

 

 これに対するBETAも、黙ってはいない。

 EU方面のハイブからBETAが雪崩を打って東進を開始した。

 同時に西方の周辺ハイブからカシュガルにBETAが集まり始めたのである。

 

 メタルワーム本隊は、周囲を囲まれながらそんな事は関係ないと貪り食いながらゆっくりとカシュガルに迫るのだった。

 BETAが本隊に群がる中、2つに別れたメタルワーム2隊は、もぬけの殻に近い近隣ハイブを蹂躙していった。

 そのあまりの容赦の無さと呆気なさに、メガフロートで観戦していた香月夕呼博士は固まるしかなかった。

 

「なっ・なっ・なんなのよ? これはいったい!」

 

[肯定。見てお分かりの通り、文字通りの蹂躙ですね]

 

「数には、数で対抗するのが常道でしょ。それも一方的に磨り潰すのが効果的だよね。敵に立て直す暇を欠片も与えずに蹂躙する……これが最適解でしょ。最初は、人類に任せて高みの見物を決めこもうと思ったんだけど……検討したのが馬鹿みたいに内輪もめばっかしてて収拾が付かないじゃない? こっちはストレスばっかり溜まって休暇にもならないからさ、サッサと終わらせちゃおうと思ってね」

 

「でも、そこに人類の意思は?」

 

「特に介在の必要は無いでしょ? 人類から見たBETA(これ)って天災みたいなもんですから生き残れただけ良かったと思って諦めていただきましょう。良かったですよね、僕達が地球の近くを通りがかって……」

 

[肯定。不幸中の幸いとはこの事ですね。お陰で人類は助かり、私達は暇つぶしと八つ当たりが出来る]

 

「・・・」

 

「色々と見てきたんだけどこの際俺達はさ、地球人類に配慮はしても遠慮はしない事にしたんだよ。ここの人類の現状に呆れかえったと言うところなんだけどね」

 

[肯定。当初は、人類にワルキューレを貸し与えてBETAに対抗してもらおうなどと計画しておりましたが、その後の経緯を見て吾々の考えが煮詰めた糖蜜よりも更に甘かったことを痛感いたしました。ここまで来ても同族を信頼できずに(あまつさ)え弱肉強食の外宇宙に故郷を捨てて出ていこうなんて考えている時点で現状認識が甘過ぎます。誤差です誤差、ここで滅亡してしまっても人類の未来は然程変わらない事でしょう]

 

 ハコの言葉は、香月の胸に痛烈に突き刺さった。

 言い返すことも出来ずにいると空我帝から更に追い打ちを掛けられる。

 

「実は、ワルキューレ達から苦情が殺到してるんだよ。巌谷さんとこに出張している娘達に良からぬチョッカイを掛けてくる輩が後を絶たないらしくてね『コイツら踏み潰して良いですか?』ってね。夕呼さん達も頑張ってるのは知ってるんだけどね。巌谷さんもいい加減にしろって随分と手を焼いてるらしいし……」

 

 この言葉は、決定的だった。

 確かに巌谷大尉から報告という名の苦情と言うよりも愚痴と言った方が良い物が連日のように舞い込んでおり、国連を通して意見しているのだが暖簾に腕押しで具体的な回答が得られないでいたのだ。

 兎に角各国政府から選抜されてくる衛士は、利権絡みでの人選しかしてこないらしく、ワルキューレの面接をやるだけ無駄だというのだ。

 巌谷大尉の元でこれまでにワルキューレに選ばれた衛士は、総勢で81名。

 すでに数万人の面接を行って、未だ100人にも満たないのである。

 それもほとんどが日本帝国と国連軍の人員で占められており、各国から向けられた人材は全滅に近かった。

 そういう訳で各国政府や軍部からは、相応の妬みややっかみも当然の如く有るわけだが、日本帝国外務省は『お前ら大概にしろよ』と言い返しているのが現状である。

 国連を通じて各国に働きかけては居るものの現状は暖簾に腕押し、現政権はまるで現実が分かっていないのである。

 分かっていて改善しないのだとしたら腐りきっているとしか言えないだろう。

 

 本当のところ、足並みを揃えて欲しかったのだが、昴達(アスガルド)(しびれ)れを切らすのも納得するしか無い話なのである。

 

「地球産のメタルワームもやっと地上のBETAを蹂躙できるだけの数に目処がつきましたから後は、BETAには彼らの餌になってもらって随時数を増やして行けば、後は加速度的に始末も着くと思うんですよね」

 

[肯定。後に残るのは、真っ平らになった大地とメタルワームの(フン)だけですが、無駄にはならないと思います。放射能や重金属の除染の手数料として多少の上前は刎ねさせて頂きますが、何を取られたかなんて現人類には確認のしようもありませんし、どうせBETAに搾取されていた事を考えればこれでも安いものです]

 

 メタルワームが蹂躙した後は、きれいに耕されて放射能や重金属などの有害物質をきれいに除染されるらしい。

 人類がBETA大戦のために汚染した大地は、清浄な大地として蘇るという事だ。

 そして地上に残されるメタルワームの(フン)は、再利用可能な各種資源の宝庫である。

 人類が復興するのに必要なお膳立てが揃うのだから文句の言いようもない。

 しかし、蚊帳の外だった各国政府が騒ぐのは目に見えているのだった。

 

[今回故郷を奪還することになるハイブ周辺各国には、掃討後の参戦権を打診する予定になっております。しかし、これに関係のない国家の横槍等に関してはワルキューレが監視することになります。監視戦力としてならば100機も必要ありませんからね……]

 

「ガックリ来てるとこ悪いんだけど、夕呼さん達には色々と押し付けちゃってる手前、これ以上の無理は言わないよ。でさ、折りいって提案なんだけど……地球でのバカンスのあと俺達と一緒に来る気はある? 今の地球に見切りを付けることにもなるんだけど……」

 

[肯定。地球上のBETAは排除しますが、その後の人類の面倒までは見ていられません。面倒事はサッサと終わらせたら適当にバカンスを楽しんで、銀河内の様子を見ながら元の次元に帰る算段をつけようと考えています]

 

「それまでこの宇宙を巡り歩く事になるんだけど、よかったら乗せていくよ……飽きたら地球に帰ってきてもいいだろうし、どうする?」

 

「……BETAの主星にも行くんですよね?」

 

[肯定。傍迷惑な行為には、キッチリ教育が必要です。チャンと落とし前は付けさせとかないと又同じことをやりますからね]

 

「幸い太陽系内の掃除は終わったみたいだから、後は銀河内に作られてるコロニーを順に潰しながらお仕置き遠征かな」

 

「太陽系内が終わった?」

 

「うん、さっきマーズゼロの地均しが終わって火星も更地に戻したって知らせが来たからね。後は、俺達が行きがけの駄賃に月のハイブを掃除すればここでの厄介事は全て終了かな。太陽系周辺宙域の掃除と探索はすでに完了してるし、こっちが終わればいつでも地球を飛び立てる手筈だよ」

 

[肯定。少しゆっくりしたいところですが周りが五月蝿くなって来ました。間違えてプチッと殺ってしまう可能性もあるのでサッサと撤収するに限ります。私は、宇宙(そら)の方が気が楽です]

 

「情報収集の間の暇つぶしも出来たし年明けには出発かな……。そういう訳だから考えといてよ。悪いようにはしないからさ」

 

 唐突に振られた話題の内容があまりに大きすぎて、咄嗟にどう答えてよいか分からずに混乱する香月夕呼だった。

 

 

 

 そんな会話がメガフロートでなされている頃、メタルワームの進軍に対応してBETAも活動が活性化していた。

 そんな中、(もぬけ)(から)となったハイブに様子を見ていた数カ国の人類軍が競争するように雪崩込んで、火事場泥棒よろしく仲間割れを始めていた。

 12月24日未明から、メタルワームによる逆侵攻が開始される事は、香月夕呼を通じて国連と日本帝国に連絡されてはいた。

 アースガードの保有する戦力の予想が立たない中で、これを各国政府やそれぞれの国軍がどのように解釈したのかは定かではないが、鬼の居ない間に宝を独り占めしようと暗躍を始めたのは確かである。

 どこまで行っても協力というものができない人たちである。

 昴達が呆れるのにも頷ける所業が世界各地で勃発していた。

 

 事の顛末を全て神に監視(映像公開)されているとはつゆ知らず、世間に恥をさらす人類軍とそれを見て大笑いしている昴達。

 最初、青い顔で見ていた香月夕呼も呆れて空いた口が塞がらない様子である。

 頭を抑えて心底辟易としながら、事実上の上司(国連)へ連絡するのだった。

 この時、夕呼は辞表を用意しようと固く誓っていた。

 

 これらのライブ映像は、どんなお子様でも分かるメローペのナレーションと解説付きで全世界に海賊放送され娯楽の少ないお茶の間を楽しませたのだった。

 

 しかし、笑えないの者達もいる。

 これまで真面目に裏で暗躍していた連中である。

 メローペによるナレーションは、兎に角非道で裏事情にも詳しかった。

 何処の誰それが何のため、何処の国の誰が何の利益のために誰に命令を出してこんな事をさせているのか、完全に道化として世界中に晒してしまっていた。

 ついでとばかりに関係する政治家や高級軍人の公金横領や裏金の暴露からはじまり、下半身事情までを事細かく暴露され、これ以降胸張っておもてを歩けなくされてしまったのは、質の悪いお巫山戯以外の何物でもないだろう。

 関わったのが神だけに、(ばち)があたったと思って諦めて頂くとしよう。

 

 

 

 

 

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