実は俺、BETA大戦に介入しました!   作:夢見る黄龍

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4048文字

 ご無沙汰しております。
 投下しますのでよろしくお願いします。
 


44.国連は踊りバカ共は暗躍す

 

 

 

 第四計画主席研究者で事実上の責任者でもある香月夕呼博士のもたらしたBETA情報に、国連総会に出席していた各国の関係者は息を詰まらせた。

 BETAの実態は生物ではなく、太陽系外の結晶(シリコン)生命体によって製造された炭素系有機ロボットであり地球で使用される重機やオートマトンと同じ存在であること。

 これは資源回収を目的とした他の星系への侵略であること。

 当然、BETAに生物的な自由意志は無く、そんな意思の無い物体と意思の疎通など出来る筈もなく、その行動原理は一方的搾取であり採掘である。

 すべてが高度にプログラムされた機械的な行動を取っているだけであること。

 そしてその行動の行きつく先は、資源採掘及び回収とBETAに対する外的脅威の排除であり、地球人類は採掘先でたまたま出くわした害獣、邪魔に蔓延っている害虫や雑草ぐらいにしか認識されていないこと。

 BETAを作り出し基本行動を命令し、一方的に利益を感受している上位存在とされる結晶(シリコン)生命体の在処(ありか)などなど。

 一つとして信じられない驚くような情報が垂れ流しにされたのだった。

 

 そしてそれらBETAの対処には、徹底的な駆除と破壊しかなくお互いに歩み寄りや妥協出来ることなどは一切存在しないことが語られたのだった。

 

 これまで地球上に発生した20のハイブの内、既に第20号鐵原(チョルオン)ハイブはアスガルドの手によって討伐されており、1週間後には東から順次BETAの討伐が開始されるというのである。

 先の日本帝国上陸のあと朝鮮半島の根本辺りまで押し返されたBETAを、その後3ヶ月間何の補給や支援もなくアスガルドが押し留めていることは、すでに確認されていた。

 この事実から各国は、アスガルドとの接触を図っているのだがうまく行っていないことが発端となって今回の国連臨時総会となったのだった。

 しかし、今回の当事者(アスガルド)民間軍事組織(PMC)であり、詳しい戦況報告などは一切公開されず、各国は掴め切れずにいた状況だった。

 僅かに残ったスパイ衛星などによる監視体制によって、大国は多少戦場の情報を掴んでいるようではあったが、直接戦場に介入できるような状況では無かったのが現状である。

 だからこそ尚更非合法な方法をとってまで詳しい状況や戦闘情報の収集に躍起になっていたものと予測できた。

 下手な欲を出さずに日本帝国のように素直に教えて下さいと交渉すれば良かったのである。

 武力を向けて来れば盗賊と同じである、それ相応の対処をするのは当然であり、そんなところと信頼関係など構築できる筈がないのだから……。

 

 香月夕呼博士のもたらした情報から、今後ハイブの攻略に人類の手は必要ないということがわかった。

 結果、BETA災害による被害も出ないだろう⋯⋯しかし、同時に恩恵も無くなることを意味していた。

 そして、付け加えるならばアスガルドがBETA攻略中に余計な手を出してはならないというのである。

 これを破った場合、漏れなくBETAと共に兵隊(ワーム)の餌にされるので悪しからずとの事であった。

 兵隊(ワーム)とは一体何者なのか、概要が知らされるに至っては第二のBETAだと騒ぎ出す者まで出る始末である。

 しかし、こんな一方的な言い草を容認できない大国は、反論を試みるが返された言葉は冷淡であった。

 

『どうぞご勝手に! ただし忠告はしましたよ。結果、どうなろうと当方は一切感知しませんし手心も加えません。どんな結果が出ようとも助けませんから、悪しからず!』

 

 強い口調で香月博士は、論破したのだった。

 これは、比喩でもなんでもなく『BETAと共に食われる覚悟があるのならどうぞご自由に』と言う事であるらしかった。

 

『生きたまま食われる』というワードを聞いて実際の戦場の事実を知る軍人達は、揃って血の気が引き怖気が走ったらしい。

 実際に戦場に出た経験のある者は、仲間が泣き叫びながらBETAに戦術機ごと生きながら貪り食われてゆく様や部下達の壮絶な断末魔をその目と耳で見聞きしており、それらを見捨てて逃げ延びたからこそこうして今が有るのだと理解していた。

 だから、聴き逃がせないワードであるのだ。

 そんな事など露程(つゆほど)も知らない政治家や官僚達は、どうやって自分の手駒によって横槍を入れてやれば戦果を掠め取れるだろうかと裏で画策するのだった。

 哀れなのは、そんなこと一つも知らされずに地獄に放り込まれる私兵達であるのだった。

 正規の軍人ならいざ知らず、今まで裏で汚れ仕事をしてきた者達に慈悲は必要無いのだが……不憫で有る事には変わりはない。

 綺麗にこの世から居なくなってくれることを期待して、態と憎まれ口をきいては会場を(あお)る香月夕呼であった。

 

 

 

 国連ビルの議会場は蜂の巣を突いたような惨状を示し、参加した各国は対応に走り出していた。

 我先にと壇上から降りた香月夕呼博士に接触しようとする者達は、津波のように跡を絶たない様子だったがその全てを一切寄せ付けず、香月夕呼とその護衛は厳重な警備体制の中で国連ビル正面のイースト川河川敷へ降りてゆくのだった。

 その様子を指を加えて遠目に眺める亡者達の眼の前で突如爆音が湧き上がった。

 数発のミサイルが四方から襲いかかったのである。

 狙撃だろうか、かなり遅れて数発の銃声も聞こえている。

 蜘蛛の子を散らすように建物の陰に避難する金魚のフン達はさて置き、直接攻撃にさらされている香月夕呼一行は、そよ風でも吹いている程度に振る舞っていた。

 周囲の惨状を別にすれば、激しい銃撃が何の痛痒も与えていないことは明らかであった。

 一行が如何なる防御手段を用いているのかは見当もつかないが、さらなる攻撃に晒されているにも拘わらず、『道が無くなっちゃったわ、どうしましょう?』との会話が聞こえてくるほどに落ち着いているのだった。

 更に爆音は続き、川面を急速に駆け上がってくる戦術機が4機視界に入ってきた。

 誰が見てもそこは戦場であった。

 

 駆けつけた警備兵も激しい攻撃には手が出せず傍観の構えのようである。

 

 それまで何も無かったイースト川に水飛沫が上がったのはその時だった。

 なにか目に見えない巨大(78m)な物体が水飛沫を上げて香月夕呼一行の方に移動してきて上空で姿を表したのだった。

 それは白亜に輝くホバークラフトの様だった。

 

 粉塵が晴れるとこれまで加えられていた攻撃はすべて、見えない壁に阻まれているようでその船体には傷一つ付けていなかった。

 船底からタラップが伸びて来るなり、それまで船体に庇われていた香月夕呼一行は、それを駆け上がって無事に乗り込んだのだった。

 

 姿を見せていた不審な戦術機は、周囲をランダムに飛び回りながら容赦のない攻撃を仕掛けていた。

 かたや香月夕呼一行を保護した白亜の船はその上空で微動だにせず、地上からわずかに浮上して停止していた。

 やがて船底のタラップが引き上げられるのと並行して艦橋前に一揆の戦術機の上半身が姿を表した。

 頭部が周囲を見回すのと同時に特徴的な形状をした両肩のレドームがゆっくりと回転を始めた。

 船底のタラップと共に香月夕呼一行を引き上げたホバークラフトは、ゆっくりとイースト川の水上に移動していった。

 イースト川中央に達した船は、着水と共に船側に4つの開口部が出現した。

 4箇所の側壁が下に倒れるように開き、開いた隔壁がそのまま離着陸用のプラットホームとなったのである。

 暗い船倉より姿を表したのは白地にオリーブ色のラインが配されたスマートな出で立ちの戦術機だった。

 その中の1機だけ背にロングバレルの火器を装備している、これが隊長機だろうか。

 イースト川の水面輝く陽光の下に姿を表したのは、A-01仕様にカラーリングされた4機のワルキューレだった。

 4機は、そのまま水面を歩くように船から離れると氷の上を滑るように川面を走り始めたではないか。

 音もなく風のように動き出したワルキューレ4機に慌てて照準する謎の戦術機達。

 

 しかし、放たれた全ての銃弾とミサイルがその姿を捉えることは出来なかった。

 瞬間移動のように接近した4機のワルキューレが擦れ違いざまにそれぞれの腕を振り手首を返したか視えたときには、全ての謎の戦術機は手足を落とされダルマにされていたのだった。

 揚力を失った機体は勢いのまま川面に落ち沈んでいた。

 ここまで、ワルキューレが姿を表してからわずか数十秒の出来事であった。

 

 4機のワルキューレは、その後四方に散開すると艦橋前に半身を出していたワルキューレの司令機からの情報に基づいて周辺に設置された重火器や武装勢力を無力化していくのだった。

 艦橋前に陣取っている機体は、戦闘が始まってからすぐに敵勢力の位置と数、戦闘力と脅威度を分析把握し配下のワルキューレに指示を出していたのである。

 

 騒動の規模を考えると驚くほど収束するのに時間はかからなかった。

 瞬く間に敵兵力は無力化され、地元の軍と警察に引き渡された。

 ただし、この際に敵対した全ての関係者が個人特定されており、一緒に引き渡された情報ファイルには使用された武器の出どころまで記載されていたのだった。

 

 目撃者多数の下で繰り広げられた戦争は、始まりと同じく唐突に終了することになった。

 幸いな事に当日国連総会に参加していた関係者に一人の怪我人も発生することは無かった。

 襲撃の直前姿を消している関係者も居たが、後日拘束され無事が確認されたが同時に逮捕されることになった。

 証拠や背後関係が速やかに開示されたことで然程間を置かず影で糸を引いていた連中は、手が後ろに回る事になったのである。

 そこには、拘束された関係者も少なくなかったというより、何らかの手引をしていたものがほぼ全て関係していたとも取れる次第だった。

 慌てて逃げ出す者や姿を消そうとする者、捕まって苦しい言い訳をする者などなど多岐にわたったが、もはや後の祭りである。

 

 この後騒動は変な波及を見せることとなる。

 

 世の中が可笑しな方向に動き始めるのだがその話はまた今度。

 

 

 

 

 

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