実は俺、BETA大戦に介入しました!   作:夢見る黄龍

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4520文字、お久しぶりです。
仕事環境がガラッと変わりまして、ちょっと鬱に入ってますが 気分転換に上げます。



45.

 

 

 

 この日、ニューヨークの国連ビル前で発生したテロ事件は、リアルタイムで全世界に公開されていた。

 通常は、各メディアが大国への忖度から事件の詳しい情報を秘匿し、かなり部分をぼかしたニュースしか公開されないのが通例だが、今回はニューヨークのド真ん中、それも見通しの良いイースト川水上でのドンパチである。

 周辺に目撃者が多すぎて、隠したくてもどうしようもないというのが現状であった。

 テロを仕掛けた方としてもその辺は勝手が違った形だろう。

 

 さらには、襲撃の一部始終が詳細にノーカットでお茶の間にまで届けられてしまっているのでは隠しようがないのであった。

 現場周辺には、謎のドローンカメラが配置されていたらしく、事の顛末を漏らすこと無く細部まで記録しており、テロ現場のリアル画像を迫力満点で放映していた。

 今回、敵味方双方とも関係者の預かり知らぬ間に各種情報が垂れ流しにされていた。

 後日明らかになることだが、実際に現場の当事者より放送を見ていた外野のほうが、詳しい情報を理解していたくらいである。

 そして、これら悪質な放送の全てはアスガルドの仕込みであるのだが、香月夕呼側へも当然テロを企んだ側へもそんな事は知らされてはいないのだった。

 

 襲撃に関係した大国の情報部は即座に情報の揉み消しに動いたようだが時すでに遅く、ライブ映像のほかにもニュースや関連情報はあっという間に全世界に拡散する事になった。

 蛇足では有るが、このときの速報と銘打った発信元不明のニュースは海賊放送にも拘わらず詳しいコメントや事件の背景などのナレーション付きで放送されたため、最初は悪質な電波ジャックによる悪戯放送だと思われていた。

 しかし、放送されている速度や内容が内容だけに、これを無視することは困難だった。

 忖度無しにド迫力のライブ映像と詳細で愉快な解説までついたナレーション映像は、全世界で驚きの視聴率を記録したのだった。

 他の電波メディアをジャックしての海賊放送だもの、当たり前ではあるのだが・・・。

 

 

 BETAの日本帝国上陸から始まった現在の反攻体制は、世界中の敗戦ムードを徐々にだが明るい方へと押し上げていた。

 そして、その中心人物とも言える重要参考人がその日、国連の演台に立つのだから最初から注目度は爆上がりしていたはずだ。

 そんな国際中継の最中での出来事である。

 最初、国連主導のTV中継は、適当なところで差し替えられる手筈になっていたらしい。

 しかし、差し替えられるはずの映像は流れずブルーバックの画面には

 

『只今少々混乱しております。しばらくお待ち下さい』

 

とのテロップが表示されしばし固まったままだったのである。

 

 そしてこの後、固まった文字テロップの代わりに唐突に始まったのが件の海賊放送である。

 そこからはどう見てもライブ放送と受け取れる生々しい映像が流れ出していた。

 画面の端には『LIVE』の文字がデカデカと表示され、緊急ニュース映像の体裁が整っていた。

 映されているのは、爆炎に混乱して逃げ惑う国連ビルの人々の姿と悲鳴や爆音。

 そして国連ビル周辺で繰り広げられているリアルな戦場の光景だった。

 

 襲撃しているのは、複数機種で構成された所属不明戦術機とその支援と思われるミサイル郡であり、国連ビルの前面で防衛するのは純白の船体にオリーブ色の国連マークの意匠の施された大型ホバークラフトがただ一隻映しだされているだけである。

 海賊映像には、敵味方のテロップや武装の考察などがされており、さほど軍に詳しくなくてもある程度の状況が判断できる材料になる物だった。

 つまり軍関係者が見ればどこが仕掛けているのか一目瞭然とも言える物だったのである。

 

 しばらくするとこれまで防御一辺倒だった白いホバークラフトに動きがあった。

 船側のハッチが開き、これまで見た事の無い白くスマートな戦術機が音も無くフワリッと飛び立ったのだ。

 そう、『音も無く』である。

 通常空母などから発艦する際の機体からは、エンジンを吹かした際の爆音が甲高く聞こえ、合わせて発艦時の蒸気カタパルトの噴出音などがするはずなのだが、映像の戦闘音の中にそれらしい音声は確認できなかった。

 文字通り、音も無くフワッと左右から飛び出した4機の戦術機は、イースト川の川面に一筋の波も立てずに滑るように襲撃者に襲いかかったのだった。

 いかに細身に見えても全高18mもの金属の巨人が、重さを感じさせない動きを見せているのである。

 その動きは風に舞う木の葉のようにフラフラと揺れ動き、飛び交う銃弾や敵機の攻撃を避けるその動きはまるでそよ風に舞う羽毛のように軽やかだった。

 

『何だあれは? なぜ一発も当たらんのだ・・・』

 

『ボス、俺はあんな機体見たことが無いぜ』

 

『俺もだ。何処の機体だ?』

 

『ヒャッハァ~~!』

 

『エエィ、船を狙え!』

 

 命令と同時にテロリスト4機のミサイルコンテナから一斉に発射された飛翔体は、ランダムな軌道をとって宙に浮く白いホバークラフトに殺到していった。

 この近距離では迎撃は間に合わない、次の瞬間爆炎が花開き誰もが殺られたと思った。

 しかし、川風に吹かれ煙が晴れたその場所には、何事もなかったように白い船体を輝かせるホバークラフトが姿を表した。

 その白く輝く船体に煤一つ付いてはいない。

 直前の盛大な爆発が嘘のようである。

 

『ナニ~無傷だと……』

 

『ボス、弾も流される。ありゃ~何か目に見えね~障壁があるぞ』

 

『俺達の手持ちの火器じゃ抜けねーよ』

 

『どうする…ギャ……』

 

 そんな通信がされている際中、これまで無視されていたワルキューレは近接必中の距離にまで近づいていた。

 

『いつの間に?』

 

 4機のテロリストは、ワルキューレと擦れ違った一瞬のうちにコックピットブロックを残しバッラバラに機体を切断されていた。

 アッという間にコックピット代わりの外骨格部分だけにされ、川に落下する前に慌てて起動するも、フレームを摘み挙げられて無動きも取れずにいた。

 下手に機体とコックピットの接続を残すとS11を起動され自爆される恐れもあった。

 これ以上周辺に被害を引き起こすことは極力排除する事に配慮して、捕獲時に気絶する程度のスタンショックでパイロットを気絶させる念の入れ様だった。

 この時何故か4機の内1機だけコックピットが爆散してしまったのは、不可抗力といって良いだろう。

 後で確認したところでは、この爆散した4号機パイロットはコックピット内にC4爆薬を所持していた模様だ。

 制圧に使用したスタンショックの電撃で起爆してしまったものと予想されるが、連行後に起爆されなかった事は、事後の被害が少なくて済んだことで幸いとも言えた。

 

 兎に角敵戦術機は黙らせたが周辺テロリストの鎮圧はまだである。

 支援砲撃的に散発的なミサイルが飛んで来ているところを見ると、残敵が移動しながらミサイルを発射しているのだろう。

 まだ敵対者が存在する事がハッキリしている。

 

[こちら、ボーイ。移動する大型車両が4台、国連ビルを中心に移動しながら攻撃を行っている模様。先の戦術機の移送用ポーターと思われる]

 

『CPより各機へ。散開して敵移動砲台を殲滅してください』

 

『『『『了解!』』』』

 

 4機の白い戦術機は、音も無く風の様に舞い上がると4方に散っていったのだった。

 

 

 

[艦長、エネミーの排除完了しました。引き続き敵支援車両の排除を続行します]

 

「任せるわ。適当に相手してあげなさい。副長、的勢力の情報は?」

 

「現在確認しております。敵火器からの選別は不可能です。着弾前に確認できた物の製造データから跡をたどって見ましたが、全てがすでに戦場で使用された物です」

 

「そうすると戦場で横領された武装ってことね。何処が盗んだのかは大体予想がつくけれど確証は取れないってところね」

 

「イエス、マム」

 

「引き続き背後関係を洗って頂戴。折角私達が囮になったんだから手ぶらってのは無しよ」

 

「アイアイ、マム。既にアスガルドが動いていますので、然程待つことは無いと思われます。……来ました」

 

「相変わらず、アスガルドはチートよね。それで?」

 

「主力はアメリカCIA、装備は主にソ連・中華の横流し品ですね。捕縛した衛士は現役海兵隊で最近MIA(戦闘中行方不明者)になっている者達です」

 

「要は現役の工作員ってことでしょ? 第五の連中も良くやるわよね」

 

「まったくです」

 

「それじゃ、どうせ知らぬ存ぜぬで袖にされるでしょから、この後使い物にならない程度にトラウマ植え付けて、離してあげなさい。お土産(トレーサー)は、忘れずにね」

 

「アイアイ、マム」

 

 

 

 ◆

 

 

 

 さて、地球上で相変わらずの内輪揉めが炎上している頃、月のハイブが密かに落ちようとしていた。

 プレアデスシスターズの駆る最上位機種ワルキューレによる単騎駆けが行われ、重頭脳級は何の抵抗もできず即時殲滅された。

 その後、エネルギー源を失ったBETA達はその活動を停止して逝くこととなる。

 既に太陽系内に存在していたハイブの内で活動しているのは月と地球を残すのみとなっていた。

 そしてこの事実を知るものは、昴達アスガルドのメンバー以外ではメガフロートに招かれた香月夕呼と巌谷英治など極僅かな地球人だけである。

 これまでの戦闘による放射能や重金属が引き起こしていた地球環境の汚染も人知れずアスガルドの手によって除染が進められている。

 

 

 

 イリーナ・ピアティフは、第4計画に送り込まれた香月夕呼の監視役だった。

 しかし、既にこの時点でアスガルドに身を寄せる決断をしていた。

 第4計画に寝返るのでは無くアスガルドに身を寄せる……。

 それは、地球人類を見限ることにしたと言う事に他ならないのである。

 その決断をハッキリ口にしたのは、香月夕呼とのこんな会話からだった。

 時間は、国連総会出席の早朝、

 

「ねぇ、ピアティフ。あんたもそろそろ先の身の振り方を決断しておきなさい。今更だけど内ゲバで自滅する様な連中にいつまでも忠義立てして一つしかない大事な命を投げ出すなんてこともう必要は無いでしょ。過去に多少の恩があったにしてもそれは国家の義務と国民に施されたものであって無能な上司や政治家に対して返す必要なんて無いのよ」

 

(そうです、私は第五から送り込まれた香月夕呼の鈴。今回の国連総会への出席予定も私のリークによって計画されていたテロ活動だろう。殺意マシマシで、諸共の手口から行っても多分私の口封じも兼ねているのだろう事がうかがえる。司令のいうとおりこの辺で古い柵とは縁を切ってもいいかもしれない)

 

「そうですね。散々人間の汚いところを見てきましたし、もう見限っても良いかもしれません」

 

「それって彼ら(アスガルド)に着いてゆくって事よね? 私もそうしようかしら……」

 

「まだ決めてらっしゃらなかったのですか? 司令はてっきりもう決めていると思っていました」

 

「まだハッキリ返事してないのよね。取り敢えず地球はもう大丈夫そうだし責任は十分に果たしたと思うのよ」

 

「司令が征くのであれば私も付いてゆきたいと思います」

 

「そう……分かったは、私も決断しましょう。この後の結果はどうあれ彼らについて行くことにするわ」

 

「これからもよろしくお願いします」

 

「よろしくね」

 

 

 

 あと何人かが一緒に付いてゆくことになるのだが、それはまた後の話。

 

 

 

 

 

 

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