実は俺、BETA大戦に介入しました!   作:夢見る黄龍

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06.日本上陸戦・後

 

 

 

 さて、50体の戦闘用ドール(鎧武者)がBETAの遅滞活動と住民の避難誘導に励んでいる間、昴達は何をしていたのかと言うと、せっせと畑仕事と言う名の食糧生産を広大な屋内ファームで行っていたのだった。

 

 このメガフロートは上から見ると1辺100Kmの正方形をしている。

 一番広い一層だけでも総面積にすると1万平方Km、東京ドーム213,880個分の広さが有るのだから広いなんてもんじゃない。

 更に、このメガフロートは外周部で三層構造、中心部は六十階層300mにもなる高層建築物で上面が平坦で海中に逆さまになったピラミッドの様な形状をしている。

 どれだけ巨大な建造物なのか想像できるだろうか……。

 

 密かに補給と点検整備に戻っては、BETAの現物を情報として持ち帰っているドールによって、着々と反抗作戦の準備は進められて居たのだが、昴達ファミリーは暇を持て余していたのだ。

 仕方がないので自分達が食べる物の他にも多種多様な野菜や穀物などの栽培を開始していたのだった。

 ここでは進んだ遺伝子工学で品種改良された安全で美味しい生産物が大量に促成栽培されていた。

 おまけに今の日本で育てても問題無いだろう農作物の促成栽培と保存食品の開発にも従事していたのだった。

 

 建物の中とは思えない広大な耕作地をコンバイン型のオートワーカーが走り回っている。

 ワーカー達が自動で農作物を刈り取っている(かたわ)らで、麦わら帽子を被り首にはタオルを巻いた昴がワーカー達と競争するような勢いで稲刈りをしていた。

 刈り取られた稲は、銀河を筆頭に嫁達が藁束に仕上げて流れ作業で織田掛(おだが)けに掛けられてゆく。

 自分達が食べる分は時間を掛けて天日乾燥するために、態々織田掛(おだが)けにしているのだ。

 同じ品種の米であっても刈り取った際の手の掛け方で、まったくの別物に仕上がるのだから農作物は不思議で面白い。

 稲わらが時間を掛けて天日乾燥される事で下にぶら下がった稲穂に旨味や栄養が凝縮するのだから凄い、長い年月培われてきた農家の知恵とは偉大であるのだった。

 自動化出来ない訳では無いのだが、ワーカーに織田掛(おだが)けさせるのも野暮というものだろう。

 コンバインで収穫されている物も十分美味しいのだが、そこは日本人の拘りと言ったところだろう。

 実際には昴達の見えないところでメローペの操るワーカー達が器用に手作業を模倣して作業していたりするのだがそこはご愛嬌というところだ。

 丁度一休みしようと手を止めたタイミングで待っていましたとアステローペが麦茶を持って現れた。

 

[地球上に存在するBETA本体の(なま)のサンプルが手に入りましたのでナノマシンとのマッチングを進めさせています。現地で確認出来た種類別に活動時間のモニターを続けております。マーキングした個体の追跡調査の結果はこちらに……。先行しております『リバイアサン』と『ポセイドン』による昆虫型情報ポッドの散布状況ですが地球全体のおよそ30%、人類生存圏の60%をカバーしました。現在、各国の政治拠点及び軍事拠点への浸透を行っておりますので各種情報が出揃うまでもう少しお待ち下さい。昨日のドールによる遅滞活動で擱座しておりました日本帝国軍の機動兵器を取得致しました。脱出したと思われるコックピットには血痕だけが残っており、パイロットはBETAに捕食されたものと思われます]

 

 俺は冷たい麦茶を一息に飲み干して報告に応える。

 

「プッハァ~、前みたいなネット社会なら情報集めるのも楽だったんだけど、インフラがまだ整ってないんじゃしょうがないさ。BETAにとっちゃ人も資源の一つだからね」

 

「メッチャ人間狩りマシーンになってるよねBETAって……」

 

[肯定。どう識別しているのか無人機を無視して有人機に群がっておりますね。BETAの個体を増やすための優良な材料ぐらいに認識しているのでしょうか]

 

「スタン・ハリセンは、効果が有ったみたいだね」と聖が(つぶや)いた。

 どうやらアレの制作者は聖のようである。

 彼女もクオーターとは言え日本人なのか、染まりつつあるようだ。

 

[肯定。たかが下等なバイオ機械(マシン)ですからあの程度の電撃でも行動不能にするには事足りるようです。あまり電圧を上げますと周囲へ火災や延焼のおそれもありますので出力は絞っております。そのせいで大型種にはさほど効いていませんね。次回は、直接内部に打ち込んで痺れさせるパイルタイプのスタン・パイルバンカーの投入を具申いたします]

 

「採用! 運用は任せるよ。この際だから取れるだけのデータを取っといて。但し、接触した個体は絶対に逃さないで最後に始末する事。いいね?」

 

[肯定。そこは徹底させます。此方のデータを共有されてはどんどん不利になるでしょう。この次元の人類が犯している(てつ)は踏みませんよ]

 

「そうそう、奴等に知恵をつけさせちゃいけないよ。機械だけに生産力は馬鹿にできないからね。……フムッ、活動限界は燃料補給するタイミングだとして何時補給しているのかだよね。どうも人を襲ったBETAは活動時間が伸びてるみたいなんだよね」(この辺は、独自解釈です)

 

[肯定。BETAが日本に上陸して10日あまり、そろそろ活動限界に差の出る個体が出始めて良いはずです。人類を資源……燃料として利用しているのだとするとその辺にハッキリと結果が出てくる物と予想いたします]

 

「OK。このまま追跡調査を続けてよ。この際だ、動いてるBETAを丸裸にしてやろう」

 

[了解いたしました]と、アステローペは返事をして姿を消した。

 

[マスター。回収した日本帝国の機動兵器はどういたしますか? サンプルとして工房の方に運ばせてはいますが、材質・ジェネレーター・制御系の全てにおいてローテクの塊のような物です。あまり参考にはならないかと思われますが……]

 

「いやいや、この次元の年代的に戦闘機がどうしてこんな進化をしたのか考察する材料にはなるんじゃないのかな。この後暇つぶしのオモチャにするから解析データを纏めといてよ」

 

[肯定。オモチャということは、ウンサンギガ製の機動兵器を作るのですね……現在の日本に提供しても問題ないレベルで使えそうなものをピックアップしておきましょう]

 

「その辺はハコに任せるよ。一応主要部分は、ブラックボックス化しといてね。さぁ、作業を再開しようか」

 

「「「「「「「「はーい」」」」」」」」

 

 稲刈りを再開した昴達は、この日だけで2年分は余裕で食べていけるだけの織田掛けを熟すのだった。

 この後は、程よく乾燥が進んだ時点で脱穀したら籾の状態で氷温保存される予定である。

 

 

 

 7月も半ばを過ぎ、この時点での日本本土の戦力分布は次のようになっていた。

 九州では帝国本土防衛線・防人(さきもり)ラインが今も奮戦しておりBETAと拮抗している。

 山口・広島から中国地方はBETAが支配域を広げているが兵庫手前でドールが防衛線を張って俺達が色々な追跡調査を行っている。

 そして四国だが全てのBETAの駆逐が完了し俺達が実行支配に成功したのだった。

 日本帝国には四国もBETAの活動域という欺瞞情報を流すことで現在もBETAが占領している様に見せかけている。

 日本海側のフォローまではしていないがそこは帝国軍に任せている。

 足止めしてあげてるんだから少しは頑張ってもらうことにしよう。

 

 

 

 ◆

 

 

 

 8月2日

 この日、再び第一防衛線の姫路にBETAが進行したのだ。

 とうとう九州で頑張っていた防人(さきもり)ラインが崩壊、九州地方のBETAによる支配域が確立してしまったのである。

 更に7月末には、本土防衛軍西部方面部隊の再編が完了。

 その時点で中国地方に生き残っている避難民が居ないことが確認された事でドールによる避難誘導を切り上げ、BETAの足止めを最低限としていた。

 九州での決着が着いたことが切っ掛けとなりBETAは一気に攻勢に出たらしい。

 

 これを迎え撃つのは、再編された本土防衛軍西部方面部隊であった。

 

 

 

「撃て撃て、一匹も通すんじゃねーぞ!」

 

「とうとう来やがった」

 

「俺達ものんびり寝てたわけじゃねんだ。弾の用意は十分だ」

 

「今回は支援砲撃も有る。しかし、油断はするなよ」

 

『BETA先頭が第一地雷原に接触。各機誘爆には気をつけたし……』

 

「チキショウ、奴等仲間の死体を足場に地雷原を抜けてきやがる」

 

「ギャー、組み付かれた!」

 

「いったい何匹居やがるんだ?」

 

『5分後に支援砲撃を開始する。前線の機体は避難されたし』

 

 

 この後、一進一退を続けるBETAとの血みどろの戦いが7日間続いたのだった。

 ジリジリと押し込まれる本土防衛軍は神戸・舞鶴を結ぶ第ニ防衛線の崩壊と共に最終防衛線まで雪崩込むことになった。

 

 帝都までは後わずかである。

 

 8月10日

 この日、帝国政府は在日米軍及び国連軍に京都の放棄と東京への正式な遷都を通達したのだった。

 

 

 

 

 

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