実は俺、BETA大戦に介入しました!   作:夢見る黄龍

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Ursula様 誤字報告ありがとうございました




09.広島から神戸へ

 

 

 

 その姿は、周囲を映す鏡のように全身を銀色に光らせ、よく見ると精緻な文様を浮き彫りにされていて芸術品のようである。

 木々の間から光が当たると反射しとても綺麗、というよりもド派手に目立っているのだった。

 

 そこには通常なら聞こえるはずのジェットエンジンの音は無く、金属音など(かす)かにも聞こえてはこず、微かにファンの風の音がする程度で非常に静かだ。

 16mと言うサイズを考えても稼働中の大型機械とは思えない異常な静粛性である。

 しかし、山中であるにも関わらず獣や鳥の鳴き声の一つもしないそこは、葉擦れの音に紛れてしまいそうなファンの音さえも聞き取れるほどの静寂に包まれていた。

 そんな、生き物の絶えた山中を銀色の巨人が3機づつ9組、隊列を組み行軍しているのだ。

 中でも一際立派に見える先頭の機体を良く見ると兜状の頭部には頭頂から鶏冠(とさか)状のアンテナが伸び、両耳から左右上方に向けて羽飾りが伸びている。

 細身のボディーに両肩には蛇腹状の盾にも見えるパーツが確認できる。

 両肘の上、上腕部外側にナイフが見て取れる。

 背部には折りたたんだ形状の巨大な翼が見え、腰回りから後ろに向けてツバメの尾を引くようなプリーツスカート型の佩楯(はいだて)が存在した。

 そこからスラリと伸びた脚部は、音も立てず滑らかに歩を進めていた。

 その手には大型のアサルトライフルのような形状の銃器を一つ持っており、同じものをもう一つ佩楯の左右の腰部分にあるラッチに懸架していた。

 脚部・太ももの部分の左右には、ナイフシースが固定されている様に見える。

 

 後に続く機体には、頭部に鶏冠が無かった。

 

 

「もうこの辺は狩り尽くしたかな?」

 

『周囲に敵対する動体反応は存在しません。回収班に掃除をさせますね』

 

「うん宜しく頼むよ、メローペ。みんなも一休みしよう」

 

「「「「「「「「了解」ジャ」です」お腹へった」」」」」

 

 27機の銀色の巨人の中でも特に綺羅(きら)びやかな9機が丸く背を向け合うように円陣を組み、片膝を着いた駐機姿勢をとった。

 残りの18機はそれを囲むように周辺を警戒している。

 片膝を着いた各機体の翼が若干迫り上がり、自分の機体を包み込むように広がった。

 そして、翼の付け根辺りの玉子型のハッチが内側から持ち上がり搭乗席を吐き出すのだった。

 搭乗席までの高さは、およそ7mほどだろうか。

 命綱も無く軽やかに飛び降りてくる者達は、それぞれに鎧状の宇宙服(ガードスーツ)を纏っていた。

 

 そのフォルムから男性1人と残りが女性だと言うことが分かる。

 

「まだヘルメットは脱がないようにね。心配は要らないと思うけどBETAが徘徊していた土地だ。何が有るか分からないからね」

 

 そう言いながら自機の足元から何やら小型のトランクを引っ張り出している。

 駐機している円陣の中心に向かうとトランクを固定して上面の青いボタンを押してゆっくりと離れた。

 トランクからはメッセージが流れだし、周囲5mほどにレーザーポインターで線が引かれた。

 

『これより簡易シェルターを展開いたします。ユニットから5m以上離れ、目印の線の内側から外に出てお持ち下さい。…ピッピッ…安全を確認いたしました、ユニットの展開を開始いたします』

 

 アナウンスと共に30cm四方、厚さ10cmほどのトランクが自動的に展開を始めると見る間に一辺が10mのプレハブ建造物となり、壁際数か所から『プシュ』っと言う音と共に地面に杭が打ち込まれた。

 やがて全体が徐々に15cmほど持ち上がり、自動的に水平になったのだった。

 

『展開が終了しました。続けてエアロックを展開いたします。入り口から目印までお下がり下さい』

 

 入り口だろうと思わえるスライドドアの部分が光り、その手前に又レーザーポインターで警戒線が表示された。

 

『…ピッピッ…安全を確認いたしました。エアロックを展開いたします』

 

 入り口の周囲を囲むように透明な樹脂製の風船が膨らみ始め、一定の大きさになると表面が固まって簡易的なエアロックが出現したのだった。

 

『完成しました。自由に御利用ください』

 

 簡易休憩所(シェルター)? が出来上がった様だ。

 エアロックが存在するので宇宙空間や水中でも使用できるようである。

 

 

「相変わらず、また手の込んだ物を作って……まあ、良いんだけどね。ハァ~」<銀河

 

「アハハッ、こういう処に手を抜かないよね。昴兄ちゃん」<双葉

 

「フムッ、これは全機体に標準装備なのジャな?」<シャシ

 

「そうみたいだね。至れり尽くせリだよ」<聖

 

 他のメンバーは、出来上がったばかりのシェルターの周りをグルグルと見て回っている。

 

「さあ、周囲の警戒はメローペに任せて、俺達は一休みしよう」

 

 昴はそう声をかけて一人、エアロックを(くぐ)った。

 その後はみんな、順番を争うように中に入るのだった。

 

 

 

 ◆

 

 

 

 昴達が現在居るのは、岡山県津山市の山中である。

 

 8月11日未明、試験艦隊は土佐湾から瀬戸湾に入り高知市のお膝元、玉島をグルリと囲むように停泊していた。

 事実上BETAの支配域となっては居るが、現在の四国にBETAは一匹も存在しない。

 全ては先行していたドール部隊が狩り取って始末したからである。

 現在、帝都防衛に大童(おおわらわ)の帝国防衛軍は四国の方に意識が向いていないようである。

 しかし、支援の為なのか監視の為なのか大阪湾に居座っている国連軍艦隊だけはその行動が不鮮明であり懸念事項であるのだった。

 その点、在日アメリカ軍は分かりやすかった。

 既に部隊は撤収を始めており、あわよくば新型爆弾を使わせろと騒いでいるらしかった。

 

 昴達ワルキェーレ試験部隊は、瀬戸湾からサンダーバード(雷鳥)に運ばれ、まずは広島に上陸しそこから東進を開始したのだった。

 サンダーバードは広島上空までBETAに発見される事はなかったが、降下準備に入った途端にレーザーが飛んで来たのには驚いた。

 幸いサンダーバードを包むシールドによって何の影響も受けては居ないが、煩わしいことには変わりがない。

 メローペが護衛に連れてきた量産型の18機を先に降下させ、光線級吶喊(レーザーヤークト)を行った。

 サンダーバードで爆撃しても良かったのだが破壊力が有りすぎてヤバいので、量産型ワルキューレ(融合炉搭載型)で行ったのである。

 引っ切り無しに飛んでくるレーザーは、バラバラと降下した量産型の斥力場シールドに歪められ非ぬ方向に飛んでゆくのが確認できる。

 そして、ワルキューレの頭部・腕部・腰部の計6基存在する口径20mmのビームバルカンが御返しだとばかりに一斉に光を吐き出した。

 18機✕6基から地上に降り注ぐビームの雨が辺り一面を薙ぎ払った。

 当然その場に存在した標的は、別け隔てなく全て蜂の巣である。

 光線(レーザー)属種の周囲を守っていた兵士級(ソルジャー)闘士級(ウォリアー)戦車級(タンク)も全て動かぬガラクタとなったのだった。

 

「……ヤバくね?」

 

『『『『『『『『『ヤバイ、ヤバイ!』』』ウハッ♪』』壮絶!』』』』

 

「内装武器一つでこれか……BETA、チョッと(やわ)くねぇ~か? もう少し歯応えが有ると思ったんだけど」

 

[こんなもんですよ。あんな見掛けでもBETAは、採掘用の重機。戦闘用じゃないみたいですからね。こちらは(レッキ)とした戦闘を前提にマスターが制作した兵器ですよ。比べるのも烏滸(おこ)がましい]

 

「……メローペは、嬉しそうだね……」

 

[ええっ、とっても♪]

 

 それからは、見敵必殺!

 俺達は、片っ端からBETAの殲滅を開始したのだ。

 周囲に動く物は、BETAのみであり、汎ゆる動物が存在していなかった。

 やがては植物も生えない荒野へと均されてしまうのだろうと思うと、人の犯してきた自然破壊が何とも可愛いらしいものに思えてくるからおかしなものである。

 

 ちなみに後片付けしているのは随伴して来たドール部隊である。

 セッセとゴミ拾いを行いワイヤーで一纏めにすると、物資運搬用の汎用型グラビコンを引っ付ける。

 重さの無くなった荷物が浮かび上がったところを順にワイヤーで瀬戸内海方面に引いて跳んでゆく。

 海岸に待機しているリバイアサンに引き渡す為であった。

 日本海側までは手が回らないが、俺達は結構なペースでBETAを殲滅しながら東進を進めていたのだった。

 何度目かのサンダーバードからの弾薬補給を受けて、俺達は岡山県津山市の山中で本格的な昼食休憩を取っていた。

 

 

「出る時に軽く食べてきたけど、流石にお腹が減ったよね」<銀河

 

「そんだね、少しゆっくりしよう。弾薬は腐る程用意してあるからこの後も兎に角撃ちまくってくれるかな。耐久性をみたいんだ」

 

「機体の慣らしが終わったところで提案なのジャが、この後隊を3つに分けて少し本格的に狩りをしたいのジャがどうジャろう?」

 

「安全性は確認できたから問題は無いと思うけど……無理はしないでね。機体に少しでも不調や違和感を感じたら直ぐにサンダーバードで離脱すること。それを守れるなら許可するよ」

 

「分かったのジャ。昴は双葉と裕美、ジェニーは銀河と聖、妾はラクシュとリリアナで3隊に別れようぞ」

 

[肯定。母艦の方の準備も整いましたので、これからは私がCPとして指示と情報解析を受け持ちます。各隊をアルファ、ベータ、ガンマとしてマスターがアルファリーダー、ジェニーがベータリーダー、シャシがガンマリーダーとします・宜しいですね?]

 

「「「「「「「「「了解!」」」」」」」」」

 

 全員、食事を取りながらハコの話を聞いている。

 シェルターの中は、山小屋風で落ち着いた作りだった。

 テーブルに並ぶのは、メガフロートで試作している天然素材を使用したレトルト食品の数々だ。

 見た目も味も下手な高級レストランの水準を超えている物ばかりである。

 戦場のど真ん中で摂れるような食事ではない。

 

[マスター達には、これまで通りメローペの操るドール機がそれぞれに2機づつ随伴します。3機で1小隊、9機で1つの中隊として、アルファ中隊、ベータ中隊、ガンマ中隊とします。今後は、名前ではなくコールサインでの応答をする事としましょう]

 

「妥当な意見だな。今後は、ここの人類と接触した場合の事を想定してお互いの固有名詞は使わないように徹底しよう。何処から情報が辿(たど)られるか分からないからね」

 

[肯定。まだ仲間ではありませんからね。今後も敵とは成りようもありませんが与える情報は少ないに越したことは有りません。あちらからしたら我々は未知の機体を所有する第三者です。最悪、戦闘になる事も想定して置かなければなりません]

 

「平気で後ろから撃たれそうだしね」<聖

 

「ドサクサに紛れて追い剥ぎする奴が居ないとも限らないし……」<裕美

 

「そんな奴にはお仕置きをしないとだよ」<双葉

 

「人は殺すなよ、後が面倒だからな」<ジェニー

 

「ダルマにして差し上げますわ、ウフフフ」<ラクシュ

 

「ククク、楽しくなってきたのゥ」<シャシ

 

「みんな、程々にね」<呆れる銀河

 

「そうですよ、みなさん仲良くしましょう」<リリアナ

 

「そんなリリアナが切れると怖い事を俺は知っているぞ」

 

 みんな一斉に吹き出している中、真っ赤な顔でポテポテと俺の背中を叩くリリアナが可愛かった。

 とてもこれから命のやり取りをしに行く様な雰囲気ではないシェルターでの休憩だった。

 

 

 

 ◆

 

 

 

 防衛線は遂に最終ライン、神戸の市街地にまで押し込まれていた。

 怒涛のBETAの進撃に防衛線は、崩壊一歩手前だったのだ。

 そんな最前線では帝国軍の陽炎・89式戦術歩行戦闘機 (TSF-TYPE89)の中隊が必死になって戦線を支えていた。

 巌谷榮二帝国陸軍少佐はこの中隊の中隊長として、部下達を叱咤激励しながら1人の落伍者も出さずに支えていた。

 しかし、市街戦に雪崩込んだ事で弾薬の補給が間に合わずにいたのだった。

 

「CP、増援はまだか? もう前線は抜かれて市街戦に突入したぞ」

 

『国連軍艦隊からの支援攻撃が決まった。あと10分持たせられたし……』

 

「弾が無えって言ってんだよ、あと600秒も持たせろだと? 話にならんぞ」

 

「隊長、俺が突っ込みます。その内に補給を……」

 

「馬鹿野郎、死に急ぐんじゃねえ。兎に角生き残る事だけを考えろ」

 

 その時、BETAの後方から頭を飛び越える様に飛び出して来る戦術機が存在した。

 銀色に光り輝く西洋鎧のような細身の機体は、レーザーが怖くないのか危険な高度を取っていた。

 

「馬鹿野郎、レーザーに狙い撃ちにされるぞ!」

 

 その瞬間周囲から空に向かって光が煌めいた。

 やっちまった!、馬鹿野郎めと声が上がる中、上空の戦術機は爆散するかに思われた。

 しかし、光の帯は四方八方に折れ曲がるよう軌道を取って1発も銀色の戦術機には当たる事はなかったのだ。

 

「何だ? あの機体はなんだ? 何処の機体だ!」

 

 最初に飛び出した機体は囮だったのだろう。

 レーザーの発射位置に別方向から銃弾と榴弾の雨が降り注ぎ光線属腫が殲滅されていった。

 レーザーが止むのと同時に次々に飛び出してきたのは、先程と同じ機体のように見えた。

 予想外の成り行きに動きの固まってしまった中隊各機の間を続々と走り抜けてゆくのだった。

 今、目に前で繰り広げられている事が信じられなかった。

 飛び出してきた銀色の戦術機に追い立てられるようにして、BETAが狩られてゆくのだ。

 スリーマンセルなのだろう、後方から援護する2機と両手に持つ刃物で前に飛び出して一瞬でBETAを切り刻んでいる連携は確実に危なげなくBETAを殲滅してゆくのだった。

 その動きは、どう考えても到底戦術機が出来るような動きではなかった。

 そして、目には写っている光景がレーダーには一切写っていないのだ。

 そんな時、国連軍艦隊の支援射撃が始まった。

 

『国連軍の支援砲撃だ、全機退避しろ! 味方の弾になんか当たるんじゃないぞ。オイッ、そこの機体。お前達もついてこい!』

 

 俺は、自機の踵を返しながらオープンチャンネルで叫んだのだった。

 

 

 

 

 

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