超昂大戦SS ひと夏のメモリアル! 超昂戦士と行く豪華クルーズ船ツアー 作:環 藍河
「おおっ、アカリちゃん、沙…エスカレイヤーちゃんたちも、いらっしゃい!」
「あーーっ、おばちゃんたち、ホントに来てるっ!」
アトラクションの昂奮も冷めやらぬ中、クルーズ船ツアーは初日のランチタイムを迎えていた。
「ちょっと厨房の勝手が違うけどねっ、味はいつも通りを保証するよっ!」
「ありがとうございますっ! それじゃ、いつものっ!」
「あいよっ、ダイビート定食、一丁!」「『〔はいっ、毎度!〕』」
クルーズ船ツアーの食事は、24時間いつでも乗客のリクエストで、常駐のシェフに好きなものを注文できる。
そしてせっかくのダイビート体験クルーズ、この2日間はダイビート基地の食堂と同じメニューを、出張スタッフが提供することになっている。
「…うんっ、うん! いつもの味!」
「当ったり前さ! おかわり行くでしょ?」
「お願いしますっ! うう~ん、やっぱりおばちゃん、凄いっ!」
頬を緩ませるアカリに、乗客が思わず生唾を飲み込む。
「それじゃあ皆さん、じゃんじゃん注文してちょうだいっ!」
ダイビート定食が、蒸発するように次々に運ばれていき…その味が乗客の胃袋をわしづかみにしていた。
そして。
「うん! 船の上でもダイビートのごはんは変わらず、ぜんぶ美味しいです!」
「ハルカさん…これ…ぜんぶ銘柄が違うの…?」
「ああ…基地でも滅多に味わえない、限定プレミア定食…!」
「あはは…エリスは念願叶った、ってトコだね。」
ハルカは漫画盛りのごはん食べ比べ、エリスは定食(ノーマル+プレミア)食べ比べ。
その健啖っぷりには、沙由香やキリカのみならず、乗客誰もが度肝を抜かれていた。
※変身前の超昂戦士はアカリ以外、認識阻害機能付きのお面をハチマキのように頭にかぶっています。
これにより身バレの危険はありません。安全。
……
…
超昂戦士の活力源を堪能し、乗客誰もがすっかり満腹に。
そして食休みに戻った船室は、ダイビート居住棟を模した特別仕様に改築済み。
テーマパークのアンバサダーホテル宿泊客のように、ここだけのダイビート隊員気分を満喫していた。
その後、先ほど戦場となった甲板は本来の姿を取り戻し…スイミングやビーチバレー、フリースローやボルダリングを楽しめるプライベート・ビーチと変化していた。
昼下がりの甲板は穏やかな日射しに恵まれ…最初にハイネのドローンで集合写真の記念撮影ののち。
「アタックっ!」「はああっ!」「アカリっ、上げるよっ!」「行きますっ!」
変身前でも敏捷なフィジカルの超昂戦士たちに度肝を抜かれる乗客たち。
おずっ。
「あ…あのっ、…~~!」「…?」
「…ビっ、ビーチバレー、おしえてください!」
子ども達が、一緒に遊びたいと勇気を持って声を上げた。
「えっ…うん! じゃあみんな、ボールを持って。
まずはみんなの稲妻サーブを、あの長官にお見舞いしちゃおうっ!
長官、全部拾ってくださいよっ!」
「なっ…!!」
「ファイヤーっ!!」
ぼすっ、ばしっ、どどどどどどっ…!
「ぐふっ…アカリ、覚えてろ…!」
アカリの合図で乱れ打ちになったボールを拾いきれず、大の字に卒倒するトキサダに、一同大爆笑。
これを皮切りに、一気に打ち解けた乗客と超昂戦士たち。
「こ…怖いよお…風が強いよお…」
「大丈夫だよ。足を踏み外しても、わたしが絶対守るから!
さ、右を向いてごらん?」
すっ…。
「う…。…わあ…!」
「どう? 私たち、あそこから出港して、もうこんなに来たんだよ。」
甲板上部に設えられたボルダリングウォールのてっぺんから見た閂市はとても小さく、そして…補助に寄り添うアカリの姿は、少年にはとても頼もしく、心強く映った。
ぶしゅうーーーーっっ!!!「あぴゃーーあっ!?」
「水着エクシール、降臨っ! 船の上でも負けませんっ!」
水鉄砲を撃ち合う子どもたちは、エクシールチームVSエスカレイヤーチーム。
「エ…エスカレイヤーが、やられたぞーーっ!!」「や…やったなあーーっ!!」
「な…何のっ、これしき! みんな、左右に散って挟み撃ちよっ!」
息を切らしてデッキを駆ける子ども達の歓声と、レジェンド戦士をこれでもかとびしょ濡れにする水しぶきが、潮風に溶けていく。
「ハルカさんっ、サンオイル塗りますよ?」
「あっ…お願いしますね。」
パラソルの下で寛ぐハルカと、スポーツトレーナーの全身ケアのようにハルカの肢体すみずみをいたわるキリカ。
「…いいなあ…しなやかな筋肉と、世の男どもが絶対放っておかないプロポーション…こんなに絶妙に両立するなんて…ハルカさんはズルいですよ。」
「ええっ? …そんな…!」
〔【《(………っ!!)》】〕
若いパパから初老の紳士までもが聞き耳を立てていた。
……
…
模様替えのため、日が沈む前に甲板は一時閉鎖。
遊び疲れた乗客は船室でくつろぎ、あるいは船内カジノやエンターテイメントを楽しんだ。
そんな船内の、客室の一つに。
「こんにちはっ!」「……っ!?」
「超昂戦士エスカ・ルビー!」
「同じく、神騎キリエル。」
「デッキで遊べなかったあなたのお部屋に、個人的に参上っ!…なんてね。」
ルビーは気がかりだった。乗船時に一人、松葉杖の男の子がいたこと、そしてその子の姿が見当たらなかったことを。
ツアーを心待ちにしていた彼の高揚感は、数日前の不慮のケガで暗転してしまった。
そのことをプールサイドで妹たちに聞いたルビーたちは、いたたまれず…放っておけなかった。
「…そっか、妹さんに気兼ねなく遊んでもらおうって気遣って、デッキに来なかったんだ。」
…こくっ。
「超昂戦士がキライなわけじゃ、なかったんだね。」
「キ…キライなわけ、ないですよっ!」
「偉いなあ。私の弟にも、見習わせたいな。」
(えっ…? …あ…。)
そこからは、少年に戦士と神騎がツーマンセルで付きっきりのひととき。
そして最後に、キリエルの知られざる特技が炸裂。
「こ…これっ、俺…ですか…?」
色紙にモノクロであっという間にしたためた、ルビーの横で満面の笑顔の少年。
「集合写真に混ざれなかったから…こんな記念もいいかなって、ね。」
〔お知らせします。デッキにて納涼ダイビートまつりの準備が整いました。ぜひお越し下さい。〕
「あっ…もう、早いなあ。それじゃあ、また後で会おうね。」
「あ…ありがとう、エスカ・ルビーさん、キリエルさんっ…。」
ぱたん。
孤独だった船室は、嘘のような賑やかさと温もりにしばし包まれ…また静かになった。
だが、夢のようなひとときは、決して夢では無い。
少年の手元に残された色紙が、それを証明していた。
……
…
戦場、プールサイド…そして夏祭りの縁日と、クルーズ船のデッキはまさに七変化。
「うわあ…すごいっ!」
「祭り囃子に、屋台も並んで…」
「これ…想破の里の盆踊りですよ…!」
鶴子プロデュースの夏祭りは、船上だろうと妥協なし。
何しろ、先ほどまでの紙袋閃忍軍団改め、月想館学園センニン科生徒一同、幼い頃から祭り無しでは夏が終わらない、というほどの、祭りの手練れ揃い。
踊り手、囃し手、屋台の切り盛り…それぞれの仕事ぶりは、もはや堂に入っていた。
「…ハルカさん、あれは?」
アカリが見つけた行列の先は、屋台…のような、屋台じゃないような。
「エリーさんの発案で、忍者屋敷風の甘味処だそうですよ。あの板を木槌で叩くと…」
かんかんっ!…がらんがらんがらんっ…
(あ…アレは、侵入者が引っかかると鳴るヤツでは…?)
…しゅたっ!
「只今参上っ! ご注文は?」「お団子とお茶、3人前で。」「承知っ!」
しゅたたたたたたっ…!
「ああやって給仕の忍びが飛んできて、注文を受けたら綱渡りで駆け上がるのね。」
よく見ると、クルーズ船のマストまでぴんと張られた綱が、注文口の手すりまで伸びている。
しゅるるるるるるっ…!「ええっ!?」
綱に滑車で繋がれた竹籠が、注文の甘味をマストのてっぺんの見晴台からデッキの客までするすると運んでいく。注文客が団子とお茶を下ろすと、繋がれたもう1本の綱で空になった籠が引き上げられていく。
「オー! ファンタスティック!」「カラクリ、ニンジャー!」
「…上弦衆のお祭りって、ホントにこんな屋台…あるんですか?」
「…私は見たこと、ありませんよ?」
「ハルカ様、ご安心ください。私の知る限り、現代の上弦衆にもこんな屋台はございません。あくまでもエリーの脚色です。」
「ヒビキちゃん…そ、そうなんだ…。」
それでも、世界旅行クルーズ中の海外客と、子ども達には大ウケ。
ケレン味たっぷり、欧米人の考えるニンジャっぽい何かを叶えるギミックであった。
そして始まった、ダイビートの名を冠した夏祭りは、伝統的な盆踊りから演出過剰のカーニバルまで、あらゆる祭りがてんこ盛り。
オレンジに染まる薄暮の大海原に、提灯が幻燈のように非日常を彩る。
祭り囃子は潮騒と二重奏を奏で、焼きそばソースの焦げる甘美な香りが鼻腔をくすぐる。
何より、ここでしか、この夏しか拝めない、浴衣姿の超昂戦士たち。
目で、耳で、鼻で、舌で…乗客は全ての感覚で祭りを堪能した。
【続く】
【神騎環藍河】です。ネオノロイ党の宝箱開封役として、日々履歴書のアピールになるために闘っています。
…というわけで、りるかとハルヒーナの使いっパシリに就任しました筆者です。(現在開催中の超昂戦士診断メーカーより)
クルーズ船ツアー第2話は水着回…のような(でもエロくねえ)、常在戦場の緊張が続く原作では少しご無沙汰の、ほっこりストーリーをお届けしました。
皆さんはダイビートの戦士と旅に出たら、一緒に何をしたいですか?
次話はあれもこれも…ダイビートと戦士たちの秘密に迫るトークショーです。乞うご期待。