超昂大戦SS ひと夏のメモリアル! 超昂戦士と行く豪華クルーズ船ツアー 作:環 藍河
ディナータイム、静かなセンターホールの客席に着座した乗客達。
お待ちかね、ツアープログラムの目玉、超昂戦士たちを囲むトークタイムである。
『神州アマツpresents・超昂戦士を囲むクルーズディナー・トワイライトトーク、スタートです。』
壇上にはアカリ、沙由香、ハルカ、エリスが映画の試写会のように並び、あらかじめツアー参加者から募った戦士たちへの質問を、アマツがスクリーンから穏やかに読み上げていく。
※蛇足だが、Vスタジオ調整室ではフェリニが拘束監禁されていた。
〔もがあーーーっ!?(言論弾圧ーーーっ!!)〕
『あなたの仕切りだと絶対、暴露ネタや恋バナ方面じゃないですか…!』
《2000%、アウトですっ!》
『いつもは生配信ですが、今回は後日配信にしました。
今宵明かされる超昂戦士たちのあれやこれやの秘密は、ダイビート・サテライト基地体験ツアーに志願してくれた皆さんだけが世界一早く知ることが出来る、トップシークレットなのです。
神の子たちよ、存分に楽しみましょう。』
「『【《ええーーーーっ!!》】』」
どっ…!!
きわどさの予感に湧く参加者と、羞恥におののく壇上の4人を無視して、アマツのオープニングトークは粛々と続いていく。
『それでは、最初の質問です。
「超昂戦士の皆さん、今日はお会いできてとっても嬉しいです。
突然ですが、お昼ご飯を皆さんとってもたくさん食べるのにびっくりしました。アカリさんもですが、ハルカさんやエクシールさんの食べっぷりが観ていて気持ちよかったです。
もしかして、超昂戦士ってとってもお腹がすくんでしょうか?」
…あらあら、ご指名のハルカとエクシールは、耳まで真っ赤ね。』
かああああ…っ…!
『我がしもべ達よ。恥ずべきことはありません。
食は人を育み、この御世を護る、尊き営みなのです。これからもよく食べ、ダイビートの超昂戦士として益々精進なさい…。』
「ア…アマツ様…!」
自分が仕えるアマツと違うとは解っていても、エクシールのこそばゆさが止まらない。
「あ…でも、神騎の皆さんって…ご飯やお菓子、本当に美味しそうに食べますよね?」
(えっ…?)「ア…アカリさん…?」
「この世界で私たちが食べ慣れた普通の食べ物でも、すごくいとおしそうに食べるエクシールさんやメイファールさん、イザナエルさん…神騎さんたちを見てると、ついつい私も食べたいって思っちゃうんです!」
「も…もうーーーっ!」
わははははっ…!!
エクシールの羞恥心が限界を突破し、ほぼ同時にホールが爆笑に包まれる。
『そうね。食が無い天界から人間界に顕現するとき、貴女たち神騎は人の生理的欲求を初めて知るのよね。だから、眠ったり、ワンちゃんネコちゃんを抱っこしたり、カラオケでシャウトしたり…俗世の文化を誰より新鮮に味わう神騎も多いの。
エクシールの食欲もその一つ。人々を愛で、人の世を愛するゆえの、尊い振る舞いですよ。』
(へえ…っ!)
アマツの解説に、得心する乗客たち。神騎の知られざる一面に、興味津々であった。
「ア…アマツ様っ、そのくらいでご容赦を…!
…そ、それじゃあ、神騎ではないハルカさんの食欲は?」
「……!!」
強引に、レジェンド閃忍を身代わりの生け贄に供するエクシール。
「わ…私は自分の世界では、こちらで言う戦国時代の乱世から、時を超えて現代に来たんです。
だから…普段は雑穀ばかりの食卓で、白米は滅多に口にできませんでした。
…それが、こんなに当たり前に毎日食べられて、それもいろんな食味のお米があるなんて…!
そう思うと、食べずに居られないんです…。」
(……っ!!)
これまた、超昂閃忍の知られざるエピソード。
「…あっ! わかりました!」
「アカリさん…?」
「ハルカさんにとって、ごはんは平和の証なんですね! ノロイを封じたからこそ続いた世界で、ノロイから世界を護ったからこそ味わえる…そのシンボルだから、ごはんが美味しくてたまらないんですよ、きっと!」
「えっ…、…あっ…?!」
「そっか…ごはんを美味しく食べられるって、当たり前のことじゃなかったんですね!
明日は私、平和の味が詰まったごはん一膳を、心して味わいますね!」
「も…もーっ! アカリさんは十分、食いしん坊じゃないですかっ!」
わははははっ…!
『積もる話は尽きませんが、次の質問はなかなか鋭いですよ。心して答えるのです。
「エスカレイヤーさんにハルカさん、エクシールさん…貴女たちは、この世界のアルダークやオルタナスタイン、滅忍やノロイ…私たちの記憶にも新しい、あの恐ろしい強敵…奴らに勝るとも劣らない難敵を、それぞれの世界で討ち滅ぼしてきたそうですね。」』
すくっ。
「そ…そうですっ! だから私は…皆さんに憧れて、超昂戦士に志願したんですっ!」
思わず体を前に乗り出し、質問に付け足すアカリ。
『…貴女への質問じゃなくてよ?』「あっ…」
どわははははっ!
『逆に言えば、貴女たちにとってこの世界の存亡は、直接の関わりが無いこと。それなのに…貴女たちはどうして危険を冒してまで、この世界を救おうと戦ってくれるのですか?』
…ざわっ…!
…質問者は感謝の気持ちを込めて、この質問を書いてくれたのだろう。
それでも、そのヘビーな内容に、ホールは重い空気に包まれる。
すっ。
「確かに、私が時空を超えて、この世界へ赴いて戦うことは、自分の世界のことだけを考えれば、必要なことだったとは言えません。」
右手を挙げ、発言を求めたエスカレイヤー…沙由香が返答する。
「でも…長官さんは本当に苦しんで、困っていた…。未来で市民に見捨てられ、手を取り合った超昂戦士や科学者、仲間をみんな奪われ…最後の望みを私たちに賭けて、呼びかけてきた。
世界線を超えて助けを求めてきた長官さんを見捨てることは、できませんでした…!」
すっ。
「私も…私が戦ったノロイ党の恐ろしさは、今も忘れるべくもありません。ノロイを蘇らせて人類を滅ぼし、文明を壊し尽くす…その企てを打ち砕く戦いは、私達のすべてを賭けた死闘でした。
すんでのところでノロイを封じたものの、もう一度戦って勝てる保証など無い…命懸けの戦いは、残念ながら今も続いています。」
沙由香に触発されたかのように、ハルカが挙手し、続けた。
「でも、私たちが危機に瀕した誰かを救えるなら…。私が元の世界でお仕えした頭領は、躊躇うこと無く私をこの世界へ送りました。
私の戦いは…こちらの頭領・トキサダさんと、元の世界の頭領・タカマル様、2人の意思を背負った戦いなんです。」
すっ。
「私は神騎ですから…創造神さまの御心に従うだけです。アマツ様がこの世界を救うべきと思し召して、そのお導きで私はこちらに顕現したのです。」
『あら? それは違うわね。エクシール…貴女はきっと、私が止めてもこの世に来たと思いますよ。』
「えっ…?!」
『元の世界で貴女は魔王を討ち滅ぼそうとした…。…でも、奇縁の巡り合わせで、貴女は魔王と共闘するに至った。
豪放磊落な彼と心を通じ合わせた貴女は、今は神の子たちを自らいとおしく感じ、慈しんでいる。
私や天使長の命としてではなく、自らの心の赴くままに日々ふれ合っているではありませんか。』
「あっ…!!」
継彦の魔王的な…我が儘を突き抜けた熱い情は、優等生のエクシールに熱い血潮を吹き込んだ。
人のだらしなさや煩悩、我慢の足りなさ…かつての彼女なら汚点と断じた人の弱さ。
だが、今のエクシールはそのいびつさを許容し、慈しむ寛容を併せ持つ。
そして、エリスのその優しさに惹かれる人間は…元の世界でも、そしてこの世界でも。
「ふふっ…私もまた、心はエクシールと一つですよ。
神の子たちは時にどうしようもなく…しかし愛おしい存在です。
だから、別世界でも分け隔てなく、その苦しみは私の心をかき乱す憂慮の種なのです…。
神の子たちよ、明日からも貴方がたの安寧なる未来を、私たちダイビートと共に歩みましょう。」
……
…
(カナデちゃんは…すっかり私ね…。)
Vスタジオで見守る真の創造神・アマツは、仮の姿で…自らの生き写しのごとし神州アマツのなりきりに、舌を巻いていた。
(エリスの闘う理由は…ホントはそれだけじゃないけどね。)
その横で収録を見守る、アバター担当のキリカも、思いを馳せる。
(センパイは…デタラメで魔王的だけど、絶対に弱い人を放っとけない、熱くて、誰より優しい人。
そして、この世界を護ることは、あの人の望みでもあるんだ。
だから、この戦いは他人事じゃない。私たちとトキサダさんの戦いであり、そして私たちとセンパイとの戦いなんだ…。)
エリスの大切な人の存在は…このプレミアムツアーでも教えられない、禁則事項だった。
……
…
エスカレイヤー、ハルカ、エクシール…レジェンドたちの精神に、心打たれる参加者たち。
『もう一つ紹介しましょう。これはアカリへの…エスカ・ルビーへの質問ですね。』
「えっ…は、はいっ!」
『「ルビーさん、こんにちは。私は3年前…街がアルダークに襲われ始めてから、ずっとダイビートと、ルビーさんの闘う姿を見てきました。
でも、あの頃のルビーさんは、勝ってもいつもぼろぼろでしたね。
私はずっと不安でした。超昂戦士は本当に勝てるのか。この街は滅ぼされちゃうかもしれない…あの時はみんな、私のように思っていたはずです。」』
「あはは…あの時は激弱で、エスカレイヤーさんたちには及びもしなかったから…心配かけて、ごめんなさい。」
『「だけど、不安はルビーさんも同じだったと思います。ぼろぼろになって街を護っても、みんな冷たくて。一時は幻魔とグルだ、なんてデマまで流されましたよね。
私がルビーさんの立場だったら、絶望していたかもしれません。こんな人たちのために、どうして体を張って闘わなきゃいけないんだ、って…。
今は謝りたいです。ルビーさんたちを信じなくて、本当にごめんなさい。」』
「いっ…いえいえ…!
…思いやりが嬉しいです。ありがとう、ございます…!」
『「…それなのに、ルビーさんはそれでも闘い続けて、私たちを護り続けてくれました。どんなにやられても立ち上がって、そして見違えるほど強くなって、アルダークもオルタナスタインもノロイも撃退してくれました。本当に感謝しています。」』
(しぃ…ん。)
続く沈黙は、先刻の気まずさが消え、乗客みんなの心が一つに。
…そう、みんな、ダイビートに…ルビーに救われた。
アルダークに奪われた平穏。
オルタナスタインに石と変えられ奪われた、かけがえない人たち。
ノロイに怯え続けた日常。
…でも、奪われたそれらは、ダイビートが…ルビーが奪還してくれた。
誰にとっても平坦な道のりではなかった3年間を振り返り…胸を熱くする。
『「ルビーさんにお聞きします。あなたが闘い続けられるのは、どうしてですか? この街が好き、というだけじゃなく、辛い逆境でも、孤立無援でも、変わらず私たちを護りたいって思える、ルビーさんの心の強さの秘密を、私は知りたいです。お願いします。」』
「えっ…? …あれっ…?」
質問に当惑するルビーは…少しの沈思黙考に続いて。
「…どうして…かな? …わかりません。」
(ええ…っ…?!)
客から漏れる嘆息は、拍子抜けとも少し違う驚きに満ちていた。
「あまり私、考えていないんです。
目の前に困ってる人がいて、私が手の届く範囲にいて…そしたら、自分にできるかどうか考えないで、思わず飛び込んじゃうんです。
だから、あの日…長官が超昂戦士を募集したとき、『これだあっ!』って思って、迷わずダイビートに志願しました。」
『…普通の女の子だったら、超昂戦士になるなんて…そもそも自分が闘おうなんて、最初から考えはしないのよ。アカリは…そこはどうなのかしら?』
アマツの合いの手が、アカリの当たり前と一般市民とのギャップを整理してくれる。
「あの日…私もフーマンに襲われました。普通の女の子の力じゃ、全然戦えなくて。
それが…非力な自分が、すっごく悔しくて…。
だから、助けてくれたエスカレイヤーさんたちが、とても眩しかったんです。
そして、自分も超昂戦士になれる、みんなを護るために戦えるんだ、って思ったら、居ても立ってもいられなかったんです。」
『アカリ…普通の女の子は、そこで【悔しい】とは思わないのですよ。』
「…そうなんですか?」
どっ…!!
あっけらかんと語るアカリに、度肝を抜かれる参加者たち。
「だから…困ってる目の前の人を助けたいのと、それができるエスカレイヤーさんたちみたいになりたい、っていうのが、私が闘う理由なので…みんなに応援してもらえるか、見る目が温かいか冷たいかは、関係ないかもしれません。」
見返りを期待せず、ただ自分の信じるままに…。
『う~ん…もう少しいいかしら。
アカリはそうしてダイビートに志願して、エスカ・ルビーとして戦い始めた。
でも、素人戦士のルビーは苦戦ばっかりで、周囲の目も冷たかったわね。
デマを流されたときは、群衆の罵声も酷かった…石を投げられたこともあったわね。
…ルビーは、それでも闘ったあの時、どんな気持ちだったのかしら?』
参加者の質問を改めて繰り返すアマツに、言葉を選んでルビーが返す。
「…確かに、キツかったです。
でも、皆さんに信じてもらうために、自分の心を押し殺して幻魔と…オルバちゃんと闘おうとは思えませんでしたし、皆さんが信じてくれなくても、私はオルバちゃんも皆さんも、どっちも護りたいと思いました。地盤の崩落に巻き込まれたオルバちゃんを助けたことが間違いだったとは…あのまま見捨てることが正解だったとは、私には思えなかったんです。」
そして…知られざる核心へ。
「…私も昔、助けられたんです。」
(えっ…?)
『それは、フーマンの襲撃をエスカレイヤーたちに助けられた、あの日じゃなくて?』
「私は…そのずっと前に、交通事故で長期入院したんです。車に轢かれそうな子どもをかばって、私が足を轢かれて…。
入院直後は、『君はもう走れない。最悪、歩けないかもしれない。』ってお医者さんが…。
身代わりになっちゃったことや、その子を守れたことは、後悔していません。
でも、考え無しに突っ込んで、立てなくなった自分には…自己嫌悪していました。」
トークショーの観客、誰もが…沈黙し、込み上げる感情を押し込めていた。
「だけどそんなとき、みんなが寄り添ってくれて…そのことが凄く嬉しかった。だからまた立ち上がれた。
…それが私の…園崎アカリのスターティング・ポイントなんです。」
(…ああっ…!)
今、ここにいる観客全員が感じていた。この場に立ち会えた幸せを。
「困っている人を助けられるって…本当に素敵なことだと思います。
そして、私にはその力が…困っている誰かを護れる力がありました。
デビュー当初は失敗もたくさんあって、皆さんに信じてもらえない時もありました。でも、エスカ・ルビーの力で皆さんの日常を少しだけ取り戻せたとき、皆さんが私にくれた笑顔や感謝が忘れられなかったんです。
今はダメでも、踏ん張って、ガッツでもう一度闘えば、次は少し良くなるかもしれない。
…私がいちばん困っていたときに、皆さんから貰った力…そのおかげで、私は闘い続けることができました。
その繰り返しで、あっという間に3年過ぎちゃって…びっくりしています。」
(……!!)
「…私、いま分かりました。誰かを助けることで、実は私が助けられていたんですね。
だから…エスカ・ルビーが挫けないのは、皆さんの笑顔と応援のおかげです。
本当にありがとうございます。これからも、よろしくお願いします!」
このツアーに来て良かった。
超昂戦士以外で誰よりも早く耳にした、エスカ・ルビーのエピソード・ゼロ。
ルビーだけじゃない。ダイビートの最強戦士たちは、こんなにも優しい気持ちで、日々拳を握っていたんだ…!
この夜、観客の思いと戦士達の思いは、いつまでも共鳴し続けた。
配信の収録が終わっても。ディナーメニューが全て供され、食後の紅茶が冷めてしまっても…。
静かで、しかし熱いトークは秋の夜長にいつまでも、戦士と市民を繋ぐラリーの応酬を続けた。
筆者です。始まりました超昂フェス、皆さん楽しんでますか?
環はレア現象に出くわしました。
「あ…ありのまま、今起こったことを話すぜ…。
『超昂キリエルのPUガチャを回したのに
超昂エクシールを引いた』
な…何を言っているのか(以下略)」
提供割合を見たら「0.06%」。約1666分の1でしたね。あるんだ…!
※覚醒ポイント300Pがつかないので、むしろ損。とほほ。
お届けしました第3話、3周年記念当日のアツいうちにお届けできず、申し訳ありません。
次話、クルーズツアーの喧噪が冷めやらぬ深夜と、翌朝の船外レクリエーションをお届けします。