超昂大戦SS ひと夏のメモリアル! 超昂戦士と行く豪華クルーズ船ツアー   作:環 藍河

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第4話 目くるめくナイトクルーズ、目覚めの船外レク…そして解散式

「アカリ、お疲れさま。」

「長官!」

一般客の船室と離れた乗務員用キャビンの個室は、メインゲストを通すには簡素すぎる一室。

夜景を一望するバルコニー付きのスイートルームもあったが、セキュリティの観点からこうなった。

 

「あ…あの、私…ちゃんとできてましたか? お客さん達に、つまらないお話をしたりしていませんでしたか?」

「バッチリだ。みんな、素顔のアカリを見たくて、この船まで足を運んだんだからな。」

「あ…良かったです…。」

 

「本当はアカリと、このクルーズ船で一夜の思い出を作りたかったけどな…。」

NAUのクルーズ船とはいえ、Dチャージの秘密が船員に漏れないとも限らない。

「ちょっと残念ですけど…私は大丈夫です。それより…」

(…?)

「ライカちゃんをねぎらってあげてくださいね。敵リーダー役だけじゃなく、屋台の切り盛りやトークショーの警備、とっても頑張ってましたから。」

「ああ、この後行くつもりだ。だが…」

 

 くいっ。(あっ…)

 ちゅっ…ちゅぶっ…(んんっ…くふっ…!)

 …ぷはっ。

 

「アカリにも、許される範囲でねぎらいたかった。残りは必ず、次の夏に…な。」

「はい…約束ですよ?」

 

トキサダはシャワーを3回浴び、沙由香とハルカにもねぎらいに回った。

極めて紳士的な、プラトニックなひととき。

 

だが、エリスとキリカの船室では…

 

 どくんっ。

「うぐっ…ぐうう〜〜っ!?」

「トキサダっ!?」

「トキサダさんっ!? せ…船医さんを呼んでくるっ!」

 

 …がしっ。「『!?』」

 

「待て…違う、これは…ぐっ…」

きびすを返すキリカの腕を掴み、制止するトキサダは、しかし脂汗と動悸が止まらない。

 

「…ふっ…ふふふっ…

ふははははははあーーーっ!!」

 

…!!

「トキサダ…いや、継彦なのっ!?」

「ふはははっ! こんなチャンスを逃す手は無いからなあっ!」

「チャ…チャンスって、センパイ、何を…」

 ぐわっ!

「きゃあああっ!?」

 

「2人とも、知ってるか?! 航海中の船上は治外法権、そしてこの船が船籍を置くのは…一夫多妻制の国なのさっ!」

『〔!?〕』

 

「エリスっ、キリカっ! 俺はお前たちと今宵、合法的に重婚式を挙げるっ! 3人で幸せになるぞおおおっ!!」

 

 ……!!

「ま…魔王的ですううっ!!」

「センパイのっ…アホおーーーーっ!!」

…プラトニックとはほど遠い、ツアー客には絶対秘密の夜が更けていった。

 

……

 

出港翌朝、未明に閂市へ帰港した「あとらんてぃっく・のあ号」のボーディングブリッジが架けられたのは、明け方5時半。

希望者のみ参加・行き先秘密の船外シークレット・レクリエーションだったが、早朝にも関わらずツアー客全員が参加を希望。

大型バスがコンボイを組んで、暁の客船ターミナルを出発した。

 

ダイビートが目指すのは、街に根ざした、市民の生活を護る組織。

これまでも地域住民との合同イベントを数々開催し、ダイビートまつりやハロウィンだけでなく、ボランティアの清掃活動や、子ども向け企画「超昂戦士とお花を植えよう」など、市民との距離を近づけようと積極的にアプローチしてきた。

 

ツアー参加者だけのプレミアイベント、その舞台は…郊外の牧場。

「皆さま! 早朝にも関わらず大勢のご参加、痛み入ります!」

「や~っほ~。牛さんと待ってたよ~。」

 

 ぶもお~~っ。

 

客を待ち受けていた神騎・ミカフィールとアルデバランとともに、大勢のホルスタインが挨拶。

「今日は私たち超昂戦士と皆さんで、牛さんの乳搾り体験をします!

さらに、搾りたて牛乳でミルクパイを作りましょう!」

 わあああ…っ!!

 

「人差し指から順番に、小指までリズミカルに握っていきましょうね。」

「わわっ…牛さん、痛がったり怒ったりしないかなあ?」

「だいじょうぶだよ~。ここの牛さん、みんな優しいから~。」

 

「わあ…ハルカさん、上手ですねえ。ミルクたっぷり…!」

「ふふっ、ふくよかな牛さんですもの。

張っているお乳を優しく撫でて、いっぱい出すお手伝いをしてあげるだけですよ。」

 〔【《(………ごくっ!!)》】〕

※ホルスタインの乳搾りである。念のため。

 

「それじゃあ、こちらの鍋で煮詰めて、練乳にしますよー。どんどん持ってきてください!」

「あっ…は~いっ!」

瞬く間に満タンになった集乳缶を持ち寄り、中身のフレッシュミルクをかまどにかけたホーロー鍋でグラニュー糖とともに煮詰め、とろとろに。

すぐにミカフィールが手際よくパイ生地に包み、数百個ものパイが石窯で次々と焼き上がっていく。

 

「中のミルクがアツアツですから、やけどに気をつけてくださいね?」

はふはふっ、ざくっ…じゅわっ。

「…美味しい…っ!」

「ミルクって、こんなにいい香りなんだ…。」

「搾りたてだから?」

「パイ生地も香ばしいっ…!」

「お褒めに預かり恐悦至極です!」

「パイ生地のバターも、この牛さんたちにもらったんだよ〜。」

「こ…これ、ホントに牛乳なの?」

「コクも甘さも、市販のパックと全然…!」

「合うっ! パイと悪魔的に合うううっ!!」

 

秋晴れの青空の下、枯れ草と干し草の香りに包まれ、大人も子ども達も大地の恵みを満喫した。

 

「ミカフィール、アルデバラン。」

「トキサダ殿…?」「ん~?」

「今日は協力ありがとう。たくさんの人たちを招いたのに、おかげでゆっくりふれ合えたよ。」

「ん~、トッキー、お礼を言うのはこっち〜。

みんな、いい人。牛さんも喜んでる~。」

「私たちの使命は、この笑顔をいつまでも護ることなんですね。精進します!」

 

 ぶもお~~っ。

 

……

 

心地よくまどろむツアー客を乗せ、バスはクルーズ船へと帰る。

その途中にも、あちこちで街に溶け込むダイビートの戦士たちの姿。

「焼きたてふわふわのパンに、ホットドッグはいかがですか~!」

「今日も街は平和っスね! 何かあったら即見参っ! 飛んで来ますよっ!」

「落ち葉の季節ですね。ヤブルー、雪乃さん。お掃除行きますよ。」「『はいっ!』」

そんな彼女たちを見つめるツアー客も、行き交う市民も…彼女たちが超昂戦士と知る者も知らぬ者も、好意と親しみ、そして信頼の目線を送る。

 

バスの車窓越しに、トキサダの心に熱いものが去来する。

未来では市民との絆を失い、果てには戦士たちを失ったが…この世界なら、絶対大丈夫だ。

市民を信じ、誇れる俺の仲間を信じよう…!

 

「でゅふっ、でゅふふっ、おはよう、私の天使ちゃんたち~! 今日もおべんきょう、ガンバりまちょうね〜!!

…ああ? なにガンくれてんのよ、このクソボウズどもっ! チンコ引っこ抜くわよっ!」

 

…前言撤回。

 

……

 

…そして。

 

「今回はこんなにも多くの特別隊員がサテライト基地に集まってくれた。ダイビート長官として、心から感謝する。」

「船を降りても、私たちは大好きな街を護りぬくという同じ志を持った、大切な仲間です。

この絆を胸に、明日からもガッツで頑張りましょう! えいえいおー、です!」

「ダイビートで迎える3度目の夏、皆さんとステキな思い出ができました!

間もなく迎える4度目の秋も、冬も春も、次の夏も…これからもずっと、私たち超昂戦士を…ダイビートを応援してくださいね!」

「ここに諸君の特別隊員任務を解く。勇気ある君たちと、これからもダイビートは歩んでいくだろう!」

 

昨日、シージャック犯に監禁されたのが、ついさっきの出来事のよう。

はじまりのメインホールで行われる解散式は、壇上の戦士たちのひと言ひと言に…臨時隊員たちは、夢の時間の終わりを告げられるような寂静感に包まれていた。

 

そして、シンデレラの魔法は解ける。

ターミナルに降り立ち、夢のような2日間をくれた舞台を…遠ざかるあとらんてぃっく・のあ号を見送る戦士達とツアー客。

戦士達はいつもの基地へ。

短いバカンスをとった家族たちも帰途へ着く。

 

(いつか…また会おうね。)

スーツケース一杯の思い出と誓いをお土産に、戦士たちは大好きな街のあちこちへ戻っていった。

 

……

 

 ばんっ!

 

『錦秋の神戸・広島・関門海峡防衛戦! エスカ・ルビーと行く瀬戸内海5日間クルーズ船ツアー』

〔雪まつりとゲレンデ・レイドバトル! エスカ・ルビーと行く北海道一周7日間クルーズ船ツアー〕

【指宿・湯布院・道後広域戦! エスカ・ルビーと行く九州~四国9日間クルーズ船ツアー】

 

「…あの~、これは…?」

「企画書ですっ! ルビーさんっ、ぜひとも前向きなお返事をっ!!」

ビッグビジネスの予感に燃える、NAUの大番頭・クラリスの直談判であった。

 

「先日のクルーズ船ツアー、カスタマー満足度がウチの企画ツアーでぶっちぎりナンバーワンだったんです!

軌道に乗れば、ダイビートの戦略予算もスポンサー営業も、うなぎ登り間違いなしなんですっ!!」

おねだり目線の瞳に紅蓮の炎を宿し、イエスかハイかで返答を迫る。

 

「エ…エリーちゃん…?」

「チームメイトのお願い、きいてくれる?」

「と…友だちを、客寄せパンダにしてない…?」

「あら? 友情はプライスレスって思ってる? 

 NAU社長・雪城エリーのビジネスポリシー、教えてあげる。

 

 『大事なものほど、売値が高い。』

 

 …なんてね。」

 

 ぽんっ。

「アカリ、みんなで幸せになろう。ね?」

「エ…エリーちゃ~~んっ!!」

 

 波乱と激闘、戦士の素顔と日常。

 超昂戦士と行くクルーズ船シークレットツアー・第2弾企画進行中。

 詳細は「NAUツアーズ」ウェブサイトで随時速報をお届けします!

 

 次のバケーションに…続く(?)

 




筆者の環藍河です。
超昂戦士と過ごす空想バケーションSS、プロローグ含めて全5話をお届けいたしました。
ありきたりな部分が多々ありますが、そこは「こういうのでいいんだよ」で優しく生暖かくご寛容のほどを。

…ところで。

プロローグでアカリと並んだWヒロイン、ライカ。
その割りに、第1話で早くも老朽船もろともフェードアウトしてしまった彼女。

次のシリーズは、このクルーズ船ツアーのメイキングPVとも言うべき、ライカの2日間の活躍をお届けします。

※読者の皆さまは「誰得だ?!」とお思いでしょう。
 敢えて答えましょう。「俺得です!」
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