ヴリトラハン   作:雀盆

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休みたかった…でも書きたい欲が抑えきれなかった。



狂愛片思い

 

「随分と楽しそうだな」

 

 その一言でマーリンは固まってしまう。冷や汗が止まらず、精神的に不味い状況に置かれていると脳が即座に理解する。

 

「何十年ぶりだ?『浄土』で会って以来か」

「ボボボホボボクのの、のこ、ことをおぉぼぼぼえてくれててていたのかい?!!」

 

 ロビンのことなど忘れたかのように先程まで展開していた魔術を消し去り、声の主の方へ吃りながら振り返る。白刃を肩に担いだ状態で冷たい視線を向けるのはルフィの気配を追ってきたイオリだった。

 

「ついさっきまでここにルフィが居たと思ったんだが、花に運ばれたのか」

「そそそうだとも!ボクの魔術は凄いんだぞ!!あの時とは全然違うのさ!」

 

 イオリは別に褒めてなければ、警戒も解いていないのだが、目の前のマーリンが余りにも限界オタクな状態にあるため毒気が抜かれてしまったのだ。

 

「それでニコ・ロビンを殺すのか」

「ん?なんでそんなことを聞くんだい?イオリ君に関係あることかな?この女のことなんて関係ないじゃないか。それよりもボクの魔術を見てくれないかな!!君のためにボクは地上に降りたんだ。もしかしてこの女が邪魔かな?安心して直ぐに消してあげるから。こう見えてボクは円卓の座(イスカリオテ)の人間だからね!実力は申し分無いはずだ。こんな女消して直ぐにボクらだけの幸せな世界に行こう!大丈夫!君とボクだけの世界!綺麗な花に包まれた美しい世界に行こうじゃないか」

「これは……なんだ?」

 

 彼女の機密情報である円卓の座(イスカリオテ)であることも明かしてしまうほど、彼女の暴走はイオリにとって予想外のものだった。イオリの見聞色というのは少し先の未来を見ることに長けているのではなく、人や物の感情や心の声などに成長しているため、目の前のマーリンが自分にどのような感情を抱いているのかは一目見て分かった。

 しかし、実際の恋慕というのは想像の遥か上を行くヤンデレ。それも暴走列車のように自分の都合を押し付けるタイプのヤンデレ。おかげで円卓の座(イスカリオテ)というのは警戒しなくていい悩みの種では無いかと内心考えてしまう程、宇宙猫になった気分に陥るイオリはこめかみを押さえる。

 

「ニコ・ロビンを殺すなと言ったらお前はどうする」

「じゃあ殺さないでおこう」

「おい!それでいいのかよ。政府の役人ってのは」

「ふふふ、何を言っているんだい。確かに五老星の爺様から命令はされたけどイオリ君に邪魔されたと言えば何とかなるのさ!」

 

 ビシッと拳を握り親指を立てた状態でキメ顔をするマーリンに「これも能力の弊害か?」と考察を始めるイオリ。マギマギの実で体年齢をストップさせたマーリンの精神年齢もその体に引っ張られてしまったのではないかと考える。

 

円卓の座(イスカリオテ)の目的は俺の抹消か?それとも俺の生け捕りか?」

 

 気を失っているロビンを抱えながら、そのロビンを睨み付けているマーリンに問い掛ける。

 

「初期メンバーとあと何人か以外は君のことを殺すことに気合い入れてるね。ただ本当は()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。爺様方にはその後は好きにしていいと言われているから予定ではボクと団長と君で一緒に暮らそうって計画を立てている途中なのさ!!」

「おかしな話だな。両儀ってのは世界政府が消しておきたい家系では無いのか?」

「さぁ?それは君が直接爺様方に聞いておくれよ」

 

 話にならないと理解したイオリはマーリンに外まで送るように目配せを送る。想い人に頼られたと頬を赤らめながら杖を健気に振るう姿は少しばかり敵には見えないと内心思ってしまう。

 

「どうだい?凄いだろうボクの力は!正しく神たるボクに相応しい能力だよ」

 

 誇らしげに語る彼女は正しくオモチャを親に買ってもらってはしゃぐ子供のようだった。イオリ1人の世界に酔っているマーリンを置いて立ち去ろうとする。彼の頭には既にマーリンについて考えておらず、如何に海兵やビッグマム海賊団の連中にバレずにロビンを逃がすことしかない。

 

「おや、もう行ってしまうのかい?」

 

 意識が無いロビンを横に抱えて歩き出そうとした時、独り劇場から戻ったマーリンが杖を構えていることに気づく。

 

「なんだ悪いのか?」

「悪い悪くないで言えば悪くないね。ただ───気が変わった。キミをここでコロしていくことにした」

 

 先程までの少女のような雰囲気から一転して殺意が膨れ上がったことでイオリは即座に距離を取ろうと後ろに飛ぼうとする。しかし、既にマーリンの能力は発動していた。

 

「っ?!花の香り────まさか?!!何故気づけなかった?」

「ふふふふふふふ!!!!気づかなかっただろう?キミがボクに外へ運ばせるように言った時?いぃやぁ?キミがボクと将来について語り合っていた時には既にキミを魅惑の世界に招いていたのさ!!」

 

 自分の身体を抱きしめクネクネと揺れる姿は到底40代のおばさんには見えない。10代の姿だから多少可愛らしいモノに見えてしまうイオリの反応は間違っていない。

 全方位を白い花で多いつくし砂ばかりあった乾いた土地は花畑へと遷移した。狂気に包まれた声で笑う彼女は正しく魔女。彼女の本性は天竜人であることは変わらない。故に、彼女は周りを醜悪な豚と認識していても、例え彼女が才色兼備、羞花閉月、桜花爛漫、眉目秀麗だとしても、彼女は自分と自分の愛する存在以外を家畜以下ゴミ以上の存在だと認識しているのは変わらない。

 イオリのことは愛している。ただそれは彼女の最上級の愛玩の対象にあるだけ。彼女は愛する者を手元に置いておきたい。彼女のこれまでの人生で叶わなかったことは無い。彼女がイオリを夫にしたいと願ったのであれば、世界がそうせざるを得ない。彼女の希望は願望でも理想でもなく、紛れもない現実を指す。

 

「ボクが一度でもキミを望んだんだ。キミに逆らう権利はない」

「随分とさっきまでのキャラとは違うじゃねえか。そっちが本性か?仮面舞踏会のお誘いなら別の人間を選んでくれ」

「ボクは一途なんだ」

 

 彼女は杖を振るうと無数の魔法陣を展開するとそこから巨大な火の玉を連射する。主に彼女が狙っているのはイオリの抱えるロビン。女の嫉妬は怖いものだ。

 

「ボクの戦い方は知っているだろう?キミにはボクを倒せない」

「さぁな。それは遠い昔の話だ」

「では昔話でもするとしようか」

 

 マーリンの能力は一言で表すならチートだ。恐らくなんでも出来る。「これは魔法、魔術だ」と認識すればソレが可能になる。攻防サポート全てが優れた欠陥という欠陥が見当たらない夢のような能力。空も飛べるし、攻撃手段はマーリンの知識が増えれば増えるほど無限大に膨れる。常に防核術式とやらで身を守り、例え海に落とされてもシャボンの応用で身を守る。海中戦闘も魚人以上の実力を持つ欠点無しの相手り。俺の雷撃もマーリンの壁には敵わない。さて、どうするか。

 マーリンの一番厄介なところは体術はからっきしな代わりに覇気を異常に鍛えているところだ。能力に甘えずに覇気が力の真理であると早いうちに気づいていた。エレインの影響もあったんだろうが、それでもマーリンの武装色と見聞色は充分新世界の強者に通用するレベルに鍛えられている。

 

「紫電一閃・雷鶏」

 

 一羽の雷鳥が迸り、空中へと逃げるマーリンへ猛追する。しかし、魔法陣を地面と彼女の頭上に向かい合うように展開すると光の壁のような真っ白な柱が出現し雷鳥をそのまま呑み込む。

 

「甘美な刺激だけど、今ボクには要らないから返すよ」

 

 光の柱に包まれた状態で新たに言葉を紡ぐ。イオリの頭上に魔法陣が展開されると、先程呑み込まれた雷鳥がイオリに襲いかかる。人獣型に変化することで雷を受け流し、金剛(ヴェーダ)を構える。

 

「出し惜しみは無しだ。出力最大」

「ふふふ、アハハハハ!!!最高だよ!よく狙ってみるといい!!華時雨」

 

 花畑から空へと打ち上げられた無数の花弁は蝶の様に舞う。花弁一片(ひとひら)が刃として牙を剥き、花びらの嵐が空間を支配し始める。

 

「相変わらず厄介な空間だ」

 

 マーリンの展開しているこの空間ではイオリの天候操作が出来ない状態となっている。これはバジュラを使用しても不可能。なにより花の香りが充満するこの空間において毒、幻覚、幻聴、麻痺といった身体への悪影響を促す成分を含んでいることが一番厄介なところだろう。呼吸するだけで徐々にイオリの身体を蝕む以上、長期戦になれば必然的にイオリの敗北を示す。

 

「ボクの能力は無限大!魔術を思いつけば思いつくほどボクの能力は強化されていく。世界中が魔術とは何か、魔法とは何か、想像すれば想像した分だけ魔術・魔法は貯蔵される。今のキミに出来ることは大人しく眠ることさ」

「確かにこの空間は異様に居心地が良い。気持ち悪いくらいな」

「キミの好みに合ってくれて良かったよ。安心するといい。ボクのモノになってくれるのならずっと天上の世界で至福の空間を味あわせてあげるとも」

 

 特に褒めた訳では無いのだがな。さて、どうする?雷撃で襲い来る花びらは一片ずつ手動でやるのは面倒だが充分焼き落とせる。挙動一つ一つを執拗に捕捉されているのは恐らく花や舞う花弁による接触探知。

 さっきから上空に薄く構築している魔法陣は俺を一撃で削り落とす為のデカい攻撃。植物の魔法が中心なのは油断…いや慢心か遊びといったところか。

 

「おや、覇気を込めるのを忘れていたよ」

「ッ?!一刀雷仙・神鬼鏖殺(しんきおうさつ)!この数に武装色の覇気を込めることが出来るようになっているとはな。伊達に円卓の座(イスカリオテ)の番外席次を名乗っているだけはあるな」

 

 10何年も前、当時の円卓の座(イスカリオテ)と『浄土』で戦闘した時は見聞色の覇気に長けている印象があったが、どうやら今は武装色の方にも成長を著しくあげているらしい。今までは単純な魔法にしか武装色の覇気を乗せることができなかった。常時展開型の魔法にも武装色の覇気を常駐させている技術力に素直に感心する。

 天候操作が出来ないイオリにできることは身体から発生する電気を金剛(ヴェーダ)の弾丸に変換して射出する雷撃砲か体術に合わせて繰り出す雷撃、もしくは純粋な剣術のみ。

 

「とにかく今俺はお前と一緒に暮らす気分じゃないんだ。五手だ。五手でここから出ていく」

 

 刀を仕舞い、居合の型で構えるイオリにマーリンが花びらの嵐を猛襲する。イオリをこの空間を埋め尽くすほどの嵐に包み込むが一瞬にして全てを消し飛ばされる。遮る視界が無くなりイオリが先程までいた場所には何も無かった。

 音を置き去りにして姿を移動したイオリを次に捉えた時には既にマーリンの後ろを取っていた。直ぐに防護魔法で身体を守るのと同時に火矢の魔術を展開する。

 

「っ?!!何故刀を持ってないっ?!!両儀イオリっ!」

「もう遅い」

 

 イオリは刀ではなく金剛(ヴェーダ) を構えていた。その銃口には既に雷が装填されているのが膨れ上がった武装色の覇気から感じ取れる。至近距離から放たれる最大出力1億Vの雷撃砲を見てマーリンは自身が展開する防御魔法が貫通することを理解する。マーリンは雷撃砲が届くよりも先に防御魔法を雷撃砲と自身の間にのみ展開するように操作する。ダメージを最小限に抑えるために一点集中型にする。咄嗟にこの動きを可能にした彼女はやはり天才と言ったところだろう。

 

「ただの銃でこのボクの防御を突破することは出来ない!」

「だっはは!本命はコッチだからな」

「なnっ───ッ!?なんでそこに?!」

 

 イオリの手元には童子切安綱がなかった。最初は勿論持っていた。視界が遮られた時に刀を雷の手に持たせて空へと打ち上げていた。そして、その雷の手はイオリと細く長く繋がっており、金剛(ヴェーダ)を放つと同時にその刀の場所まで素早く流動していたのだ。

 

「一刀雷仙・天音(アマネ)!!」

「アアァアァァッ!!!!」

 

 防御魔法は雷撃砲に集中しているためマーリンの背中はガラ空きとなっていたところに、彼女よりも三間(さんけん)離れた上空から縦一文字の雷斬(らいきり)を放つ。そのまま地面に叩き付けられた衝撃で創っていた空間が解除されると、上空に構築されていた魔法陣が完成し光柱が降りてくる。時限式且つ空間が解除された時に発動する魔法だったのか、条件が満たされたということだろう。

 

「これは不味い」

 

 イオリはロビンがまだ気を失っていることを確認すると直ぐに立ち去ろうとするも光柱の方が地に到達する方が少し早い。光柱が触れた建物は光柱の持つ熱量によってドロドロに溶かされていた。

 

「ボクの最高傑作『高天原』。ゴフッ!はぁ…はぁ…太陽のような熱量と重力圏を持つソレは全てを呑み込む!ふふふふ、あはははは!!はぁ…っ」

「自殺する気か!俺に心中する趣味は無ェ。物体には全て核がある。お前の魔法にもな。これだけ大きければ容易に見つけやすい。雷仙・龍鱗無骨(りゅうりんむこつ)!!」

 

 マーリンは高天原を太陽のような質量の塊と説明した。熱量と重力圏を持つ質量の塊は中心核が光柱の真ん中に存在していた。その核を黒化した雷を纏った一閃と光柱が甲高い衝撃音を鳴らして衝突して高天原を霧散させる。

 

「慢心、遊び。お前の悪い癖だ」

「うぅ…また慢心してしまった」

 

 駄々っ子のようにジタバタ暴れるマーリンを無視して歩き始める。どうせこの後も円卓の座(イスカリオテ)に絡まれるのは変わらない。それに早くロビンを安全な場所まで逃がさないといけないしな。

 それにしても今日は厄日だ。カタクリにマーリンとかどうなってるんだ今日は。ルフィたちは無事だろうか。後で連絡入れなきゃな。

 

「一度メリー号を確認しに行くか。海軍の動きが荒々しくなってる」

 

 

 

 

 

 




相変わらず戦闘描写が下手で執筆してて何やってんだ感が強い。
頭の中ではfateやワノ国編ワンピみたいに作画マシマシの戦闘がピュンピュンしてるのに文字に起こせないのがもどかしいです。
科学が発展して想像力をそのまま現実に表現出来るなんて夢のような機械が欲しい……

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