かくしてガマの町を正面から出たナミとイオリは丁度いい船を港から奪って次の島へと進んでいた。
目的地はナミの故郷ココヤシ村があるコノミ諸島であったが、奪った船にはまだ財宝が積めるということで帰る前に海賊と出会ったらそこから財宝を盗もうということになった。
そうして宛もなく海を彷徨うこと3日。食料も無くなりそうというタイミングで前方に島が見え始めたのだ。
「本当にアーロンに会う気?」
「俺は約束通りお前を助けた。今度は俺の番だ。俺はアーロン一味に奪われた荷物を取り返さなきゃなんねぇ」
「アーロンは凄く凶暴なのよ!いくらイオリが強くっても」
「だっははは!魚人だろう?俺の出身は
「だ、だけど!」
「心配するなナミ。お前が村を買う為に1億ベリーと言うが相手は海賊。そんな約束守るとは限らねぇ」
「アンタに何がわかるって言うのよ!」
「何も分からねぇよ!だが、自分の故郷を奪われる気持ちくらい分かるもんだ。俺も似たようなもんだからな」
事情はどうあれ、イオリもまた故郷であるワノ国を海賊によって支配されている事実がある。それ故にナミに少しばかり共感することはあるが、イオリは力があった。その力で支配から逃れ来る日のためにずっと力を磨いてきた。
対して、ナミはナミなりにその支配から逃れようと故郷を救うために敵の懐に入ってお金を稼いできた。
「アイツらに奪われた荷物には大事な武器があるんだ。それを大人しく奪われたまんまなんて嫌だろ」
「大事な武器ってその刀じゃないの」
「この童子切安綱は確かに大事だが、俺の武器は別に刀だけじゃない。俺の銃は特注品だぞ!」
イオリの持つ武器は2つ。一つは童子切安綱は刃長85cmの鍔の無い白の刀。もう一つの武器は50口径、重量3000g、装弾数6発の全長312mmの特製拳銃である。名は金剛。これはベガパンクにワノ国の素材で作らせた特注品。使用する弾薬も少々特殊となるため失う訳にはいかない代物である。
「はいはい、分かったわよ。とにかくもう直ぐ島に着くんだから上陸するわよ」
「あぁ、丁度いいことに海賊船もある事だしな」
2人が見据える先には港に停まっている一隻の海賊船。補給目的に立ち寄った島に幸運なことに海賊がいた。今回の海賊はどれだけ財宝を持っているか若干ウキウキとしながら上陸するのだった。
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「へぇ、じゃあここはオレンジの町って言うのね」
「あぁ、だがしかし、今は道化のバギーと呼ばれる海賊一味が占領しておるのだ。悪いことは言わない。早くこの街から立ち去れ」
「生憎と爺さん。それは遅いみたいだな」
上陸した町にはブードルと名乗る町長が一人だけ、町は既にバギーという海賊によって占領されていた。ブードルの話を聞いてるうちにその海賊の下っ端と見られる連中に囲まれていた。
「げへへ、お前ら何者だ?ここが誰の島か分かってるんだろうな!」
「一体誰の島なんだ?」
「ここは道化のバギー船長の島だって分かって踏み入れたんだろうな!」
サーベル片手に尋ねてきたのは海賊の下っ端5人組。どうやら町に見た事のない男女が居たということで尋問しに来たようだ。イオリは話に出たバギーという男に聞き覚えがあった。
「勝手に占領してるだけだろ。船長の威光に縋ってるだけの下っ端が」
「なんだとォテメェ!」
「
イオリは右手の人差し指に円盤状の紫電を走らせ、それを海賊たちに向けるとバチバチと雷鳴と共に紫電が男たちを貫いていく。
「行くぞナミ。そのバギーって奴のとこ行けば飯と宝奪い放題だろ」
「アンタほんとに強いのね」
倒れている男にバギーの居場所を聞き出したイオリはバギー海賊団が滞在している場所へと足を運んでいく。
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イオリ達が上陸する少し前、ある1人の麦わら帽子を被った海賊がバギーの目の前に捕まっていた。
「テメェは何者だって言ってんだ!このスットコドッコイがァ!」
「俺か?俺はモンキー・D・ルフィ。海賊王になる男だ!!!」
「なぁァァにぃィィ!!!」
つい先日海賊になるために海へと繰り出した若き海賊ルフィ。シェルズタウンで仲間にしたゾロと2人で出航し、途中見つけた大きな鳥に掴まって辿り着いた場所が、道化のバギー率いるバギー海賊団の宴会場だった。正確には落ちた場所が丁度バギー海賊団のモージがシュシュを調教しようとしていたところだった。そのままモージに捕まり連行されてきたのだ。
「檻にぶち込んどけェ!お前ら」
「バギー船長!助けてくれぇ!港にあの海賊狩りのロロノア・ゾロが暴れてんです!!」
「なぁにやってんだお前らァ!」
「なぁお前が道化のバギーってやつか?」
「あん?そうだ!この俺こそがグランドラインを制し!派手に輝く全世界の財宝全てを手中に収める男!道化のバギー様だ!」
「ほぉやっぱそうか。その特徴的な鼻はお前くらいだもんな」
「だァレが赤っ鼻だァ!それよりもお前は誰だ!」
コントのような会話のキャッチボールをバギーと交していたのはイオリとナミであった。イオリはここに来るまでの間にいたバギー海賊団の下っ端たちを切り伏せながらバギー達が宴会していた場所へと歩いてきた。
「こんなド田舎で何してんだ?お前」
「テメェは!!───テメェこそなんでこの海にいやがる!イオリ!!!」
バギーとイオリはかつて新世界において出会っている。海賊王ゴールド・ロジャーの船に見習いとして乗っていたバギーは、同じ見習い仲間だったシャンクスと共に軽く修行を付けてもらったことがある。所謂ちょっとした師匠でもある。
「シャンクスが心配していたぞ。死にはしてねぇだろうが、ちゃんと飯食ってるかってな」
「母親か?!アイツは!」
「え?!お前ら、シャンクス知ってんのか?!」
シャンクスと聞いて気になってしまったルフィはつい声を出してしまった。ルフィからしてみれば命の恩人でもあり、海賊になる切っ掛けを作ってくれたシャンクスのことは気になって仕方がない存在だ。
それが目の前にいる2人が共にシャンクスと知己の仲にあると知れば話に混ざるのも必然だろう。
「ん?お前は、その麦わら帽子…そうかお前が」
イオリは縄に捕まっている麦わら帽子を被っている青年を見て勘づいたのか何やら納得した素振りを見せた。一方バギーの方はシャンクスのことが気に食わないのかワナワナと震えながらルフィの方を指差した。
「そうだ!テメェがなんで気に食わねぇのか、ようやく分かった!そのテメェが被っている帽子だァ!麦わらァ」
「これはシャンクスから預かった大事な帽子だ!」
「だァから!それが気に食わねいって言ってんだよ!まぁいい。イオリ!話は後だ!先ずは麦わらァこの特製バギー玉で派手に死ねい!!」
頭に血が昇りすぎて顔を真っ赤にさせたバギーは部下に大砲を持ってこさせた。バギーは完全に怒り心頭でルフィを殺す気満々。形容し難い殺気が立ち込める中、イオリは静かに刀を抜きルフィが捕まっている檻へと一閃する。
「何しやがんだ!イオリ!」
「スマンが事情が変わった。お前らから財宝を奪ってここから出ていくことにした」
「ちょっと!!なんで言っちゃうのよ!」
バギーはイオリの行動に瞠目していた。ルフィを縛っていた縄は解け自由になったルフィは傍にあった宴会の食事を根こそぎその口に放り込みエネルギー補給を行った。ナミはイオリが目的を喋ってしまったことで悲嘆に暮れていた。
「おい、麦わら。名前は」
イオリはそれらを無視して一息ついたルフィへと問い掛ける。
「俺はモンキー・D・ルフィ!海賊王になる男だ!」
本日二度目の口上を述べたルフィは気合十分のようでバギーに対して構える。
「イオリ!テメェが何の目的でここに来たかは知らねえが、俺の邪魔をするって言うだったら容赦しねえ!!」
「安心しろ。俺からは手出さねぇよ。そうだろ?麦わら」
「あぁ、手出すなよ。こいつは俺がぶっ飛ばす」
ナミは男達の視線がバギーとルフィに釘付けになっているうちにバギー海賊団が貯めに貯めた金銀財宝と宝の地図となる海図を盗み出す為に動き出していた。それを横目に流していたイオリはこの建物の下のほうで暴れているゾロの行方を追っていた。
「おい、ピエロ。覚悟しろよ」
「ピエロじゃない!バギーだって言ってんだろ、ハデアホが!!」
「ゴムゴムの
「うぉおおおおお!!!」
ルフィのゴムの力によって殴られたバギーは雄叫びと共に身体をオレンジの町へと飛ばされていく。
「なぁお前ら誰だ?」
「イオリ。ただの旅人だ。んであっちが事情あって同行中の泥棒やってるナミ。よろしくなルフィ」
「イオリ!お前それにしてもシャンクスの話聞かせてくれよ!」
「別に構わんが、大した話でもないぞ」
敵地の真っ只中にいるのに暢気に会話に花を咲かしているルフィとイオリを余所に、バギー海賊団は飛ばされてしまったバギーの元へ追い掛けていった。
「シャンクスには昔修行をつけたことがあってな。色々あったが奴から話は聞いていたが、お前のことだったのかルフィ」
「ん?なんのことだ?」
「シャンクスと数年前偶然偉大なる航路で出会って、そこで色々と話を聞いた。今お前が被っている麦わら帽子のことや────片腕のこともな」
「そうか…シャンクスが」
その時、突然大きな轟音と共にイオリたちの後ろの方が爆発した。爆風に思わず二人は体勢を崩すが直ぐに持ち直し、爆発のあった場所を見てみれば、そこにあった町並みは爆発によって大きなクレーターが出来上がっていた。
「なんだ!一体何が起きた?!」
「麦わらぁぁあ!!よくもこの俺様をド派手にぶっ飛ばしてくれやがったなあ!次は外さねえ!特製バギー玉ァ喰らいやがれえ!」
ルフィに飛ばされたバギーが戻ってきたのか4つ程離れた建物の屋上から次のバギー玉を装填していた。
「どうやら敵さんはまだまだ元気のようだな。雑魚の処理は任せておけ」
「おう!任せた!」
そう言うやいなやルフィはバギーの元へと走り去っていく。イオリはこの建物に登ってこようとする下っ端を次々と倒していく。
一方ナミは奪った荷物を持ってこっそりと抜け出そうとしていたが、バギー海賊団に囲まれていた。その内の一人は幹部のモージである。
「おっと、姉ちゃんその荷物を一体どこに持っていく気だ?」
モージはペットにリッチーを従えている男で、この世に操れない猛獣はいないと豪語する着ぐるみのような髪型をした男だ。
「何よアンタ。これはもう私のよ」
「いいや。それは我らバギー海賊団のお宝だ」
ナミめ、あわよくばこっそりと逃げる気だったな。まぁずっと視界には入れていたから逃がす気はないんだが。もう一人の幹部と見られる男はもう一人の緑髪の男に任せるか。
「おい!そこの緑髪剣士!ルフィはその道真っ直ぐ進んだとこにいるぞ!」
「おう!誰か知らんが助かった!ありがとよ」
「さてと、後はあの男か」
ナミは背負っていた荷物を下ろすと仕舞っていた折畳み式の棒を取りだして応戦しようとしていた。そこに屋上から飛び降りたイオリはそのままモージへと斬り掛る。
「ッ?!」
「俺は獣臭い男嫌いなんだ」
────────────────
「テメェ、良くもやってくれやがったな!麦わらァ」
「バギー!お前シャンクスのなんだ」
向かい合うルフィとバギー。二人の心境はどちらも怒気に侵されているが内情は真反対である。バギーは過去シャンクスによって見舞われた不幸を呪い、ルフィは尊敬する海賊を馬鹿にしたバギーのことが気に食わないのだ。
「そんなに知りてえなら教えてやるよ。あれは俺が昔ある海賊の見習いをしていた頃の話だ。俺はそこであの野郎に人生を狂わされた!それ以来俺は…ただ1人!絶対に許せねえ奴だ!生涯俺は奴を呪うと誓ったんだ!!だからテメェの持っている帽子を見ると奴の顔がチラつくんだよ。ハデアホ野郎め!!」
「うるせぇ!この帽子はシャンクスから預かってる命よりも大事な帽子なんだ!」
「んじゃあお前、死ぬ気で守ってみろよ」
二人の戦闘が激化していく。バギーの所有するバラバラの実の力とルフィの持つゴムゴムの実の力による戦闘が始まった頃、ゾロもまた戦いの火蓋を切ろうとしていた。キコキコと音を鳴らしながら動く一輪車に乗っているのはバギー海賊団幹部カバジと対面したゾロは三刀流の構えを取る。
「ここから先は通す訳にはいけないな。海賊狩り」
「漸く骨がある奴を見つけたぜ。一応言うが、そこを退け」
「私の曲芸ショーとくと見よ!曲技『一輪刺し』!」
一輪車で壁を駆け登り上空へ高く跳躍したカバジは剣をゾロへと突き刺すように落下していく。
「ちィ!」
「曲技『湯けむり殺人事件』」
「下らねえ!こんなお遊び剣技付き合ってられるか!」
「ならば本物の剣技を見せてくれる!」
「鬼斬り!」
二本の刀を交差した状態で斬りつけたゾロはカバジとの戦いに難なく勝利。ゾロの目的はルフィを一発殴ること。自分を置いて勝手に次の島へと向かったせいでここまで船を漕ぐ(途中からバギー海賊団の下っ端にやらせてた)羽目になったのだ。
「ルフィの奴!絶対許さねえ」
ルフィはと言うと、最初こそバギー玉やバラバラの能力によって翻弄されていた。殴ろうにも身体をバラけさせて避けられてしまうせいで有効打に掛けていた。対してバギーの方はあの手この手でルフィに一方的に攻撃していた。
だが、ルフィも馬鹿では無い。なんなら戦闘面であれば驚異的な学習能力を持つ程潜在能力が高い。バギーの飛ばすバラバラとなった身体は別に神経も別々になっている訳では無い。バラバラとなっても身体はひとつ。痛みは変わらずやってくるのだ。バラバラとなった部位を狙って攻撃すれば自ずとバギーの攻略を容易に行うことが出来る。
バギーの身体も限界が近くバラバラにする意味もないためか既に身体を元に戻している。
「ゼェ…ゼェ…よくもハデに暴れてくれたな。ゴムゴム野郎」
「うるせえデカっ鼻」
「誰がデカっ鼻だァ!!」
「ゴムゴムの銃!」
「ッ?!ぐぉお…」
「これで最後だ!ゴムゴムのバズーカ!!」
ルフィはバギーがよろめいた隙に両手を後ろに伸ばし、縮ませた勢いでバギーの腹に掌底を喰らわすことでオレンジの町の奥へと吹き飛ばす。
「勝ったァァ!!」
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オレンジの町にてバギー海賊団を破ったルフィとゾロは財宝を盗み出したナミとそれを援護していたイオリに合流した。今はそれぞれ自己紹介をしたあとである。
「イオリ、見て!この海図、宝の在処を示す地図よ!」
「海図?おいナミ!イオリ!お前ら俺の仲間になれよ」
「はぁ?!アンタ何言ってんのよ。海賊の仲間になんかなる訳ないでしょうが」
「なんでだよ。海賊は楽しいんだぞ」
「私が嫌いなのは海賊、好きな物は金とみかん!海賊なんて…」
「まぁ別に海賊にも色々といるもんだが、それよりもお前たちの船は何処にあるんだ?」
イオリ達がいる場所はイオリとナミが乗ってきた船が停泊している港。あるのはバギー海賊団のものと見られる海賊船と2人が乗ってきた船。他には水面に浮かぶ木片だけ。
「ルフィ!俺たちの船が無いぞ!」
「何だってぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!?」
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