ヴリトラハン   作:雀盆

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描きたい場所に辿り着くのが先かエタるのが先か。毎日更新は厳しい…


8年の想い

 

 

 

 シロップ村を後にしたルフィらは次の島に向け航海を続けていた。

 

「出来た!!海賊旗!」

 

 ルフィが描いた海賊マークはマーク呼ぶには程遠い乱雑なロゴだった。もちろん、そんなモノ死の象徴でもある海賊旗にするには芸術性が欠けている。続いてウソップが代わりに描くと言ったものの出来上がったのは麦わらの海賊旗ではなく、自身のマークであった。結局ちゃんと描き直した麦わらのマークを完成させ、ようやく海賊船ゴーイング・メリー号が出来上がった。

 その後、船に積載している大砲の試し撃ちや部屋の確認など行い落ち着いてきた頃、ルフィらは次の仲間について話し合っていた。

 

「考えたんだけどよ。偉大なる航路に入る前に仲間が必要だと思うんだ」

 

「そうよね。立派なキッチンがあるもん」

 

「音楽家だ」

 

「「アホか、テメェ!」」

 

「だっはは!海賊といや歌うもんだがよ。コックと医者は長旅に必要不可欠だ」

 

「出て来い海賊どもォーっ!」

 

 すると外から何者かの叫ぶ声が聞こえた。ルフィ一人甲板へと走り、相手の鎮圧に急ぐ。すぐに鎮圧が済んだのか甲板で物音がしなくなった。

 イオリは特に気にせず部屋の中で酒を飲んでいるが外に耳を傾ける。船に乗り込んできたのはゾロがまだ賞金稼ぎをしていた頃の知り合いのジョニーと呼ばれる剣士。どうやら少し前までピンピンしてた相棒のヨサクが急に青褪めて気絶を繰り返し、歯も抜け落ちる謎の病に倒れたという。そこで安静にするために岩山で休んでたところ何処からか砲弾が飛んできて今に至る。イオリは溜息を吐きながら立ち上がりキッチンにあるライムを搾り始める。

 外ではナミが原因をは説明し終えると同時にコップに並々に入ったライム汁を持ったイオリが甲板へと現れた。

 

「とりあえずこれでも飲ませておけ。安静にしとけば元気になる」

 

「イオリ、聞いてたの?」

 

「船旅には当たり前の病気だろ」

 

 何故か元気になったヨサクとジョニーは自己紹介を済ませる。船旅についてまわる栄養不足を解消は海のコックにしか出来ないこと。現状ルフィ達の中で調理を出来るのは高額の対価を要求するナミと肴を作るのは得意なイオリくらい。

 

「次の仲間は海のコックにしよう」

 

「海のコックであればうってつけの場所がありやすぜ。ついて来てくれるかは別の話だが、海上レストランってとこがある」

 

「「「海上レストラン!?」」」

 

 ヨサクとジョニーによって海上レストランに向けて航路を少々北に曲げて船は進んで3日。彼らが辿り着いたのが、海上レストラン『バラティエ』である。

 魚船首をした巨大な海上レストランが乗った船の周りにはバラティエの評判を聞き付けて訪れた者たちの船が停泊している。その中には海軍の軍艦もある。

 

「俺は海軍本部大尉鉄拳のフルボディ。良かったな無名海賊。俺は今日定休でな。俺の任務中には気をつけるんだな」

 

 軍艦の甲板にでてきた男に何故か強く出たヨサクとジョニーは何故か手を出さないといったフルボディに攻撃を仕掛けるも返り討ちに合う。フルボディも先に手を出された以上無視する訳にはいかない。

 部下に大砲で沈めるように命令を下し、メリー号へと放たれる。大砲の轟音をBGMにフルボディはそのまま連れてきた女と共にバラティエへと向かう。

 

「ゴムゴムのっ!風船!!」

 

 船に向けて放たれた砲弾を空気を吸って膨らんだ身体で弾き返す。

 

「ルフィ!どこに弾き返してんだ馬鹿っ!!」

 

 弾き返した砲弾はそのまま軍艦を通過しその先にあるバラティエに当たり爆発する。バラティエを破壊したルフィは謝りに行くと一人勝手に船を降りてバラティエ店内へと消える。

 

「アイツ遅いな」

 

「様子でも見に行きましょうよ」

 

「海軍もいるんだ。俺は船番してるよ」

 

 イオリは皆を見送った後、甲板に寝転がる。面倒なことに巻き込まれそうな予感に関わりたくないと刀に身を預ける。

 

 

 

──────────────────

 

 

 

「──きて!起きて!」

 

「ん…んぅ。もう終わったのか?」

 

 

 ナミの声で起きたイオリは周りを見渡すと既にバラティエを後にした後だった。船にはナミ以外の姿は無い。

 

「ルフィたちはどうした」

 

「置いてきた。私は別にアイツらの仲間になった訳じゃない。言ったでしょ。私は海賊が大嫌いなの」

 

 静かに問い掛けられたナミはイオリから顔を背けて答える。イオリはたまたま船に乗っていたからこの場にいるだけと言葉を残して船室へと消える。

 

「海賊嫌い…ね。船で大笑いして騒いでたお前は嘘じゃねえだろ」

 

 イオリの言葉は広く澄み切った大空にポツリと響くだけだった。

 ナミの故郷を支配しているアーロンは昔タイヨウの海賊団のメンバーだった男だ。王下七武海海侠のジンベエの弟分として名乗りを上げたアーロンは人間たちを酷く見下している。

 

「ナミ、そんなにルフィたちを信用出来ないのか?」

 

 暗い顔で座っているナミは顔を合わせることなく否定する。ナミの抱える闇はたかが数日で拭えるほど生易しいものでは無い。

 

「当たり前よ!海賊なんて信用出来る訳ないじゃない!」

 

「俺の故郷はワノ国っていう屈強な侍たちがいる鎖国国家」

 

 扉を背もたれに静かに語り出す。ワノ国もココヤシ村と同じ海賊によって支配された場所である。

 

「それがどうしたって言うのよ」

 

「俺の故郷もまた外からやってきた海賊によって支配されている国だ。将軍が変わり国が地獄となって24年。形は違えど支配されてきた気持ちは理解出来る。10何年もワノ国に帰ってはいないが、アソコは既に俺の知る美しい国とは掛け離れている」

 

「同情でも買う気!?」

 

「さあな。ただそんだけ憎い相手の懐に入ってでも村を救うなんてのは普通の人間には出来ない。ナミの覚悟は計り知れねぇ」

 

「じゃあ邪魔しないで!アンタの荷物は私がアーロンに掛け合ってみるから大人しくしてなさい」

 

「海賊は裏切るぞ。名を上げる海賊の大半は仁義を通すが、海賊全体で見ればそれは一割にも満たない。多くが同盟も約束も守らない猛犬」

 

 ナミの心の奥にある海賊たちへの疑念を突く言葉に椅子を押し倒して立ち上がる。言われなくても分かっている海賊の非道さを言葉にされる苦しみ。激昂する相手が違うと理解していても誰かにぶつけなければ辛くなる。ナミのする行為はただの八つ当たり。無力な自分が大好きな村を守る為に自分なりに答えを出した「一億ベリーでココヤシ村を買う」条件の元、アーロン一味に入った事実。

 

「薄々感じてるんじゃねえのか。アイツらの優しさと強さに。お前…本当は────」

 

「もう辞めて!分かっ…てるのよ」

 

 イオリがこの数日ナミと一緒に行動をしてきて感じ取った想いはナミの不安定に揺れる心に響く。自身でもわかっている。もうとっくの昔にルフィたちに気を許していることも、仲間として一緒に居たいことも。

 

「でも、それでもこれは私が解決しなきゃいけないことなの。ルフィたちを危険な目に合わせたくない!」

 

 イオリの胸の中で嗚咽を漏らしながら涙を流すナミを抱き締める。

 小一時間程泣き続けたナミは泣き疲れで眠ってしまった為、ベッドに置いてきたイオリは甲板へと出てでんでん虫を取り出す。プルプルプルプルと何回かの着信音の後ガチャという音ともにでんでん虫が何処かに繋がる。

 

「よォ、ジンベエか」

 

「イオリさんか!随分と久しぶりじゃの」

 

 でんでん虫の相手は七武海の海侠のジンベエ。イオリとは数年前に魚人島で出会った以来。出会いは10年前のタイヨウの海賊団に起きた事件。

 

「ジンベエ、今手隙か?」

 

「ん?なんじゃ一体。イオリさんの頼みなら聞いてやりたいが」

 

「お前が七武海に入った代わりにアーロンを釈放しただろう。アーロンが今何してるか知ってるのか」

 

「まさかアーロンを見たんか?!」

 

 ジンベエが七武海に入る条件にかつての弟分だったアーロンを釈放したが、その後の行方は掴めていなかった。タイヨウの海賊団の一部を連れてどこかの海で海賊をしていることは知っていたが、現在どうしてるのかは知らなかった。

 

「無関係の人間まで人を呪うことは無ぇだろ。俺のビブルカードは持ってるよな。奴の後始末くらいお前がやれ」

 

 でんでん虫の通信を切ったイオリは遠くぼんやりと映るコノミ諸島を睨む。上陸まで一時間弱となり、ナミを起こしに船室へと戻る。

 

 




一話ごとの文字数は特に決まってないので長かったり短かったりします。短い時は八割幕間みたいなものです。
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