都合で原作にあったシーンは飛ばしますが、バラティエのルフィやゾロ、サンジの名シーンはちゃんと裏で恙無く行われてます。
イオリがいないから書いてないです。全く書くのが面倒だと思ってる訳では無いですよ。全然。
「いい?イオリはこの先のオレンジ畑にある家にノジコって言う私の姉がいるからそこで待ってて。アンタの荷物は私が何とかするから」
ココヤシ村に着岸したメリー号を降りた二人は小言を言い合いながら村の前で別れる。ナミはアーロンパークにそのまま向かうとのことで、宝が入った袋をイオリに預け林の中へ消える。海賊に身を売ったナミを裏切り者と認識している村の住人と顔を合わせたくないのだろう。現に家の外にいる住民たちはナミの姿を捉えるとすぐに家の中に入るのを確認した。
「本当に大丈夫なんだろうな」
ナミの後ろ姿を見送った後、イオリは村の奥にあるオレンジ畑に向けて歩き出す。村は閑散としているが、何もナミの姿があったからだけではない。アーロンの支配によって活気が失われている。力ある者がする恐怖の支配は人々を萎縮する。
村を抜け、少しの丘を越えると広大なオレンジ畑が拡がっている。オレンジの仄かな香りに包まれるこの土地を豊かな大地だと教えてくれる。
「着いた。ここがナミの言っていた家か」
「あんた、誰だい?」
オレンジ畑の中にある一軒家の前に着いたイオリは背負っていた荷物を降ろして、家の中に人の気配がしないため周囲を見渡していた。オレンジ畑から歩いてきた青髪の肌黒い女性が訝しげな表情で歩いてくる。
「あんたがノジコっていうナミの姉か」
「あんたナミの知り合いかい?」
「あぁ訳あってナミと一緒にこの島に来てよ。アーロンに見つかると不味いからって理由で、この場所で匿って貰えと言われてな」
「ふぅん、そうかい。まぁ入りなよ。お茶くらいしか出せるモン無いけど」
「助かる。俺の名前はイオリ。ただの旅人だ」
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ナミはアーロンパークに到着していた。アーロンは現在海軍支部第16支部のネズミ大佐と賄賂の受け渡しを行っていた。壁の陰に隠れてアーロンたちの会話を盗み聞いていた。
用を済ませた海兵はタコの魚人ハチによってアーロンパークを離れていく。静かになった頃を見計らいナミは帰宅した旨をアーロンに告げる。
「おぉ帰ったか!ナミ。成果は順調のようだな」
ナミの持つ荷物は持って帰ってきた財宝の一部。もしものために隠している財宝とは別に、正規にアーロン一味の為に働いて盗んできた財宝である。今までアーロンに渡してきた分は村を買うための資金には含まれない。よって、隠している分で一億ベリー集金する必要があり、ようやく長い年月をかけて集めた目標目前の9900万ベリー。
「えぇ、上場よ。…でもなんだか胸にポッカリ穴があいたみたい」
「シャハハハハ!!いつからそんなセンチメンタルなこと言うようになったんだナミ。裏切りはてめェの十八番だろ!!シャハハハハハ!」
「長旅で疲れたの少し休むわ」
アーロンパークは海に面した城のような建物。建物のすぐ目の前に広がる海から次々と同胞たる魚人海賊団が姿を現す。
魚人が主役抜きでどんちゃん騒ぎして一時間ほど経った頃、アーロンパークに見回りをしていた魚人が人間を捕らえて帰ってきた。魚人は小船に捕らわれたゾロを怪しいと睨みアーロンの元に連行しに来たのだ。アーロンの圧に屈することなく、ゾロも気迫で押し返す。
「海賊狩りのロロノア・ゾロか。シャハハハハ!俺の首でも取りに来たのか?」
「だから女と男を探してるっつってんだろ!!半魚野郎!!!」
「下等生物が…一度は許すがその半魚ってのは二度と口にするな」
その後アーロンによる如何に自身ら魚人が優れた生物なのか大手を広げて語る。勿論、アーロンが従える魚人もまた人間を劣等種と差別する同胞が多いため、アーロンの語りに優越感に浸る姿は海賊らしく似合っている。
だが、この一味には一人そのアーロンの持論に嫌気がさす者もいる。城内から歩いてきたアーロン海賊団の測量士をしているナミで、 あり、ゾロが探しているうちの一人でもある。アーロンはゾロにナミのことを自慢気に紹介を始める。
ゾロはアーロンと連むナミに驚愕はするもののナミの人が変わったような口振りに敵認定する。
「それがテメェの本性か!?」
「そうよ。驚いた?私はアーロン一味の幹部。元々海賊なの」
「シャハハハハハ!!まんまと騙されたって訳か!こいつは金のためなら
ゾロは『親の死』の言葉を聞いたナミの顔が一瞬だけ憎しみに揺れる表情になったを見逃さなかった。アーロンに対する憎悪だけは嘘ではなかった。
「ナミ!イオリはどうした?!テメェと一緒にメリー号に乗ってたはずだ」
ナミが裏切ったのならそれでよし。最初からロクでもねぇ女だと見切っていたゾロだ。今更裏切ったことに怒りはない。しかし、ゾロには気掛かりがある。ナミはこの島にメリー号に乗ってやって来た。であるならば、船番をしていたイオリも一緒に来ているはずなのだ。
「なんだナミ。そんな話聞いてねえぞ」
「イオリはテメェの事情を知ってるような素振りだった。アイツはどこにいるんだ!」
「アーロン気にしないで。こいつが言ってるイオリってのは私がしくじって捕まってたところを助けてくれた奴なの」
「ここに来てるなら連れてこいよナミ。うちの測量士の命の恩人だ。感謝を伝えねぇとな。お前らソイツを牢にぶち込んどけ」
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「ってことがあってアーロンがイオリを連れて来いって。だから行くわよ」
アーロンに招待されたと伝えに来たナミにノジコと呑気にミカンを貪っていたイオリは思わず口からミカンを落としてしまう。
「おいおい、俺の荷物はどうしたんだよ」
「別にいいでしょ。アンタが直接アーロンに掛け合えばいいじゃない」
「ちっ!仕方ないか。ノジコ、オレンジ美味かった」
イオリは机に立て掛けてた刀を手に立ち上がり、ナミの後についていく。そうしてナミの案内の元、アーロンパークに辿り着く。アーロンパークの庭には既にアーロンが鎮座して待っていた。アーロンパークを取り囲む石造りの塀の陰にジョニーの姿を捉えたイオリはそちらに視線を向けるとゾロの気配を感じる方へと顔を動かす。
「ナミ戻ったか!それでその男がナミの命を救ったっていう恩人か?」
「よォ、久しぶりだなァ。アーロン」
「なっ?!てめェは───っ!」
ナミに続いて入ってきたイオリの姿を捉えたアーロンは意外な人物の登場に唖然とする。
10年前、まだアーロンがフィッシャー・タイガーの部下だった頃、フィッシャー・タイガーが奴隷だったコアラという少女をフールシャウト島に送り届けることとなった。しかし、コアラを帰郷させたいと言った人間たちに罠を嵌められ、フールシャウト島に潜伏していた海兵によってフィッシャー・タイガーは重傷を負ってしまう。人間の血の輸血を拒否したタイガーは48歳で死亡。元々人間嫌いだったアーロンは尊敬する兄貴分を罠に嵌めて殺した人間を深く憎悪することとなった。
海軍の動きに気付いたジンベエとアーロンはタイガー救出のために動き出したが、それを邪魔したのが当時海軍中将のボルサリーノだった。ピカピカの実の前に覇気を覚えていないアーロンと覇気の練度の足らないジンベエでは手も足も出ずに捕まってしまう。そこで現れたのが、莫大な覇王色でボルサリーノを硬直させたイオリ。
ボルサリーノ含め海兵を簡単に制圧したイオリは三人の魚人を抱え、タイヨウの海賊船まで持ち帰った恩人でもある。結局タイガーは輸血拒否により死亡したことでアーロンは単身で海軍基地に攻撃して捕まったが。
イオリとアーロンは見知った顔でもあり、命の恩人でもあり、嫌いな人間族の人間でもある複雑な関係でもあるのだ。
「お前がジンベエのおかげで釈放されてからまさかこんなとこで世界政府の真似事とは面白ぇな」
「シャハハハハハ!まさかお前がナミの命の恩人とはこんな奇縁なことがあるか!何しにきやがった」
「ナミを助けたのは成り行きだ。気にすんな。俺がお前らに聞きたいのは一週間ほど前、俺が乗ってた船を破壊して荷物を奪い去ったことだ。大事なモンなんだ。返してくれ」
イオリの意外な返答に驚愕するが、すぐにそういえばちょっと前に同胞が大荷物抱えて帰ってきたなと思い出す。
「シャハハハハハ!確かにそんなこともあったな。まさかテメェのだったとはな。イイだろう。裏の倉庫に置いてある。テメェは俺の命の恩人でもあるからな。返してやるよ」
素直に返すと言ったアーロンに懐疑的になるも嘘は言ってないと感じたイオリは静かに感謝を述べる。
「──だが、今返す訳にはいかねぇ。丁度立て込んでるんでな。今日の夜、宴をやるからテメェも来い。これでもテメェには感謝しているんだ。そこでテメェの荷物も返してやる」
「まぁいい。そういうことなら素直に招待されよう」
面倒なことになったと内心愚痴を零すイオリはアーロンパークを後にする。どうやらルフィたちもこの島に着いたようだ。アーロンが別件で何かを企んでいるらしく、巻き込まれそうな予感を覚えていた。自身が回避をしようと頑張っても結局渦中に飛び込む者が若干二名いるが。
「良いの?大事な武器なんでしょ?」
「売り飛ばされてないか不安だったからな。アーロンの言葉に嘘はなかった。素直に返してくれるとは思ってないが。お前はいいのか?ココヤシ村に帰らなくて故郷なんだろう?」
「今更どんな顔して帰ればいいの」
ノジコとの会話で実は村のみんなはナミのことを心配していると知ったイオリは一人戦うナミの気持ちも理解できる。村のために戦っているのにその村には排斥行為を受ける。そのストレスは尋常なものでは無いだろう。ナミの視点ではただの村の裏切りでしかない海賊行為はこの8年。ナミの顔から笑顔を亡失させた。
ナミとイオリを見送ったアーロンの元に牢屋のある方向からクロオビが何かを持って戻ってくる。彼の手には何かに切られたような断面を持つ縄の残骸だった。牢屋にゾロの姿を確認に向かったクロオビは牢の中にその姿が無く、あったのはその縄の残骸だけ。固く縛っていたはずのゾロが自力で抜け出すのはありえない。
つまり、誰かがゾロの逃走を手助けしたのだ。同胞でアーロンに異を唱える奴はいない。考えられるのは同じ人間のナミくらいだろう。
「アーロンさん、これは明確な裏切りだ。」
「ナミの十八番は裏切りっチュッ♡」
クロオビとチュウはナミの裏切りを疑っておらず、周りの魚人もそれに同調する。アーロン自身ナミのことは働きから疑うようなことはしたくなかった。しかし、ナミが実はヘソクリのように財宝を別に隠しているのも魚人に対する怨嗟を少なからず感じ取っていた。
「おい、あの人間に連絡しろ。良い話があるってな」
裏切りはほぼ黒よりの白。だが、アーロンにとってはそれで十分。優秀な測量士であったが少しでも違和があるのなら人間である以上残しておく必要も無い。これまでナミが貢献してきた功績を加味して事情を聞くまではナミには手を出さない。
アーロンが目論むのはナミの溜め込んでいると見られる宝の数々とナミが守りたいと思っているココヤシ村を壊滅させること。
少し前まで感情を表に出さず淡々と村を買うために宝を盗んできたナミはここ最近、その表情を明るくさせていた。つまり、ヘソクリはそれなりに溜まってきたということ。隠し持つ宝と買い取りたい村が無くなればナミの心も折れるだろう。それで裏切りの疑いは帳消しにする腹積もりであった。
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