ヴリトラハン   作:雀盆

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本当は月曜に投稿しようと思ってたんですけど我慢出来なかった…。
何も考えずに書いてると一週間長く感じるのにいざ投稿しようって考えるとすぐ一週間経つのなんなんでしょうね


コノミ諸島の激闘 終幕

 

「アーロンッ!アーロンッ!!アーロンッ!!アーロンッ!!!」

 

 イオリがココヤシ村に到着するといたのはルフィとゾロ、ウソップ、イオリのみ顔見知りでは無いサンジ、そして短剣で自身の左腕を繰り返し突き刺すナミ。

 彼女は自身が溜め込んでいた宝についても、加えて海兵を寄越したことも全てアーロンによるものだと理解したのだろう。今まで村の為に大嫌いな海賊アーロンの元で奴隷のように測量士として働いてきた努力が全て泡沫の夢だった。

 アーロンに捕まったゾロを裏からこっそり救出したのはジョニーだが、ゾロとの関係性からゾロの逃亡を手助けしたのはナミと断定されそのまま裏切り者として一味を追い出されてしまう。今までの働きによってどうにか島を逃げ出す猶予までくれた。

 ゲンは撃たれ、ナミに対する仕打ちを知ったココヤシ村の者はアーロンの敷く悪政に立ち向かうと決起を起こし、今頃はアーロンパークの門前に辿り着く頃だろう。失意に落ちたナミは自身に刻み込んだ恨みの象徴に自身の弱さを当たる。無力にも立ち上がったナミは結局は無力な村の皆に支えられていた事実が、何も出来なかった自身へと更に追い打ちをかける。

 無事助け出されたゾロはルフィたちと合流し、ノジコから事の顛末を聞き、こうしてナミの元に再び麦わらの一味として集合したのだ。事態が思っていた以上に深刻な場面に来てしまったイオリはナミの自傷行為を止めに入る。

 

「それ以上はよせ」

「出て行って!いつまでこの島にいるつもり?!とっと出てけ!出てけっ!出てけっ!」

「自暴自棄になって大事な家族諸共死ぬのは結構だ。だが、お前にはひとつまだ仕事が残ってるだろう」

 

 ルフィは麦わら帽子を押さえ付け、血走った目でどこかを睨みつけていた。大事な仲間を泣かして傷付けたことはルフィの信念が許さない。

 

「今ナミのすべきことはソレじゃねぇはずだ」

「私の気持ちを分からないでっ!!アンタたちに何が分かるっていうのっ!?」

「さあな。今俺に分かるのは────なんでここに俺たちが居るか、だからな。そうだろ?船長さんよ」

 

 泣きながら乱暴にイオリの胸を殴るナミは周囲を確認する。麦わらの一味全員が怒りを顕にしていた。ルフィたちからすれば無理やりであったが、ナミは列記とした仲間。仲間を苦しませたアーロンを決して彼らは許さない。彼らはただ一言欲しかった。

 

「みんな──助けてっ!!!」

 

 仲間が救いの手を求めていないのに勝手に動くよりも、ナミの口から救いを求める声が欲しかった。ただそれだけで彼らは動く。大切な仲間を泣かせた落とし前を付けるために。

 

「当たり前だ!!!!!」

 

 大切な麦わら帽子をナミに預け、大きく息を吸ったルフィは大空に怒りを全て吐き出すように叫ぶ。ルフィが命よりも大事だといつも言っていた麦わら帽子をナミに預けた意味を分からないほど馬鹿な女ではない。

 

「行くぞっ!お前ら!」

 

「「「「オオッ!!」」」」

 

 ルフィの後を追うようにをゾロ、サンジ、ウソップは付いて行く。イオリは自身の羽織をナミに掛けた後彼らを追う。

 

「そういえばルフィ、その金髪が新しい仲間か?」

 

 アーロンパークへ向かう道中、イオリはずっと気になっていたことを聞く。イオリとサンジは初対面も初対面。何せバラティエでは甲板で爆睡していたイオリはバラティエでのイザコザを無視してナミによってメリー号ごと連れ去られたのだ。サンジの方はルフィから色々と話は聞いていたが、ルフィ自身もイオリについてはよく分かってないため人柄や風貌程度の情報しか知らされていなかった。

 

「ああ、そうだ。イオリはバラティエで飯食べなかったもんな。こいつはサンジ。バラティエで見つけたコックだ。サンジの飯はすっげぇ美味いんだぞ!」

「これは自己紹介が遅れたな。俺はイオリだ。たまたまアーロンに用事があったついでにルフィ達と出会ってな────」

 

 ルフィが紹介を始めたのでサンジとイオリは軽く自己紹介をして握手を交わした後、イオリがここにいる経緯を話す。自身の船を魚人に壊されたこと、遭難先でナミと出会い、立ち寄った島でルフィ達と出会い、勝手に仲間入りしたことも含めて適当に掻い摘んで説明する。変わってサンジは自身が仲間になった経緯を話す。

 

「へぇ、鷹の目が…」

「イオリ知り合いか?」

 

 サンジの話の中にでてきた七武海『鷹の目のミホーク』という言葉にゾロはミホークに斬られた傷がズキズキと響く。イオリの面識あるような懐かしい声音にルフィは気に掛る。

 

「昔ちょっとな。まぁせっかくだ。俺の身内話でも後でするか。今回の騒動を終わらせて落ち着いたらナミもいるところで話すよ」

 

 隠してきたつもりは無いが、今まで話してこなかったイオリの話を聞けると知って、戦いの後の楽しみが出来たと少し気持ちが浮つく面々。特にその辺の話が気になっていたのはゾロだ。初対面の頃からイオリの格好や偉大なる航路の話、刀を扱うところだったりと聞きたいことが前々からあったのだ。

 

「アーロンは俺がぶっ飛ばす。お前らは手出すなよ」

 

 アーロンパークの影が見え始めてからルフィはポキポキと手を鳴らしながら牽制を仕掛ける。別に誰も獲物を取ろうなんて考えてる訳では無いが、敵のトップは船長であるルフィが倒すべきモノだと皆が言葉を介さずとも理解していること。

 ゾロとサンジは互いの強さを理解しているし、ゾロはウソップの弱さを知っている。しかし、ここにいる誰もがイオリの強さを知らない。ナミだけが知っている完全な無知な状態だ。刀を差し、隙のない佇まいから明らかにこの一味総出で掛かっても勝てないのは分かる。

 

「特にイオリ!お前は手出すなよ。この島に来るまでずっとナミを守ってきたんだ。今度は俺たちに守らせろ」

「分かってるが、ルフィ。アーロン倒すだけじゃナミを助けることにはならねぇからな。船長のお前に出来なかったら俺がケツ持ってやるよ」

 

 そのため、イオリが出てしまえば簡単に片がついてしまう。麦わらの一味総出で実行するからこそ意味があるのだ。イオリの言葉がどういう意味か要領が掴めないルフィは首を傾げるも一つの結論に至る。とりあえず「アーロンぶっ飛ばせば何とかなるだろ」と。

 

「それにしても騒がしいな」

「なんだあ?」

「おい、あれは確か」

 

 アーロンパークが目前と迫った時、ルフィたちが目にしたのはアーロンパークの扉前でココヤシ村の住民が異種様々な武器を手に集まっていた。我慢の限界を超え命を懸けてでもアーロンに立ち向かおうとする彼らは扉前にいる誰かによって立ち往生していた。

 

「ヨサクとジョニーじゃねえか。おーい、お前ら何やってんだ」

「兄貴!よかった来てくれた!」

 

 ヨサクとジョニーは勝機の欠片もない命知らずの住人を扉の先へと行かせまいと譲る気配が無かったが、彼らの後ろからやってきたルフィたちを待っていた。

 

「君たちは…」

「風車のおっさん!そこどいてくれ」

「なにを───ッ!?」

 

 ルフィは扉の前に立つと片手を後ろに伸ばし縮ませた勢いで殴るゴムゴムの銃弾(ブレット)で頑丈そうな扉を破壊する。

 

「アーロンってのはどいつだ」

「あぁ?アーロンは俺の名だ」

「そうか、俺はルフィ」

「てめェはなんだ」

「海賊」

 

 歩いて近づくルフィとそれを座って眺めるアーロンは静かに問答を繰り返す。アーロンへと近づく不審者を下っ端魚人が止めに入るも意味もなく倒される。

 

「海賊が俺に何の用だ…」

 

 遂に目の前まで来たルフィはアーロンの頬を打ち抜く。まさか殴られるとも思ってなかったアーロンはしっかりと腰の入ったパンチを受け塀まで飛ばされてしまう。

 

「うちの航海士泣かすなよ!!」

 

 一瞬の間を置いてすぐ魚人たちが飛び掛ってくるもサンジとゾロによって防がれる。サンジは一人で先行したルフィを咎めるが、心配と言うより獲物を独り占めするなというニュアンスが強い。続けてウソップが「全部やってくれても構わん」とリーダー風吹かした仁王立ちで登場するが、 足はガクガクと震えている。

 タコの魚人がラッパのように口を鳴らして呼んだのは牛の海獣モーム。モームに続くように周りの魚人海賊団も少数の麦わらの一味に襲い掛かるが、ルフィはモームの角を掴むと風車の要領で回転するとこで魚人を倒していく。

 

「俺がぶっ飛ばしてェのはお前だよっ!」

「そいつはよかった。俺も今ちょうどお前を殺したくなった」

 

 同胞を下等生物たる人間にやられ額に青筋を浮かべるアーロンは海賊団の幹部を呼ぶ。しかし、遅れてアーロンパークへ踏み入れたイオリの姿を見つけると瞠目する。

 

「なんでお前がそこにいる?!イオリィ!!!」

「俺は俺のモノ取り返しに来ただけだ」

 

 イオリはアーロンの言いたげな目を無視して魚人の幹部とゾロ、サンジ、ウソップの戦いを見守る。ルフィは先程の風車の技で両足が深く地面に突き刺さってしまったのか足が抜けない状態となってしまった。ウソップはチュウと呼ばれる魚人の怒りを買ってしまい逃げるようにアーロンパークを後にする。

 

「何やってんだアイツは。はぁ…アーロン.俺の荷物はどこにある。安心しろ。俺から手出しはしない」

 

 イオリは泣きながら魚人から逃げるウソップに思わず頭を抱えるが、ウソップなら上手くやるだろうと大して気にはとめない。

 アーロンは目線だけで場所を示すと相変わらず足が抜けないルフィに視線を戻す。先程の攻撃でルフィが悪魔の実を食べた能力者だと断定したアーロンは明確な弱点である海に突き落としてしまえば、簡単に殺すことが出来る。そこで魚人の怪力を活かしてルフィの周囲の地面を破壊し、大岩に突き刺さる聖剣よろしくルフィを持ち上げそのまま海に放り捨てる。

 

「これはゲームだ。お前らが俺たちを殺すのが先か、あの人間が先に死ぬか」

「おいロロノア!おれはお前を許さないぞ。よくも騙してくれたな!」

「アーロンさんあんたは大人しくしててくれ」 

 

 彼らの戦いを他所にイオリは漸く遅れてやってきたナミと話していた。ナミからすればいくらルフィたちが強くてもアーロンの強さを近くにいた故に知っていた。負けるとは思ってはいないが心配なのだろう。

 

「そんな心配した顔するな。負けやしねぇよアイツらは」

「そんなの分かんないでしょ」

「仲間なら信じろ。こんな平和な場所で王様気取りしてる馬鹿(アーロン)に夢を追い続ける馬鹿(ルフィ)には勝てねぇよ」

「あ、ちょっとどこ行くのよ。ルフィ助けなくていいの?!」

「俺の荷物探しに。俺も能力者だから海には入れないんだよ」

 

 ゾロとサンジによる魚人との勝負を横目に流しつつイオリは欠伸しながら奥に位置する倉庫に向かう。魚人相手に渡り合う海賊とそれらを前に気怠そうに敵陣地をズカズカと歩くイオリにココヤシ村の住民は動揺したようにザワつく。つい先程まで自身の命を懸けてでも倒そうと誓った屈強な相手が、渡り合うどころか何処か余裕の表情で戦う彼らに驚きで声が出ない。

 

「おぉあったあった。あれから一週間以上は経つが何一つ欠けることなくあってよかった」

 

 倉庫の中には保存の効く食材や武器、その他諸々の雑貨が乱雑に積み上げられていた。その倉庫の一角に恐らく海賊から略奪してきた金銀財宝や武器などが保管されていた中にイオリの荷物が置かれていた。

 ここで何故イオリは自身の体内にモノを仕舞えるのに態々別に持ち歩いていたのかというと、単純に武器となる童子切安綱は浪人とはいえ侍ではあるので帯刀はする。金剛(ヴェーダ)に関しては性能とその強度を保つおかげで一部海楼石が使用される為、持つ分には構わないが体内には仕舞えない仕様になっている。

 金剛(ヴェーダ)にはそもそも弾倉は存在しない。有るのは自身の能力を吸収する穴と、その能力をを六発の弾丸に変化させて貯蔵する装置と、その貯蔵部分と引鉄により射出する部分との暴発を防ぐための遮断シールドと若干現代では再現不可能な品に仕上がっている。また、通常の銃だと射撃音が周囲に響くが金剛(ヴェーダ)は打ち出すモノが能力由来の弾丸な為、込める能力の力具合によっては轟音が響くことなくほぼ消音で敵を撃つことが出来る。

 それ以外の荷物は特に外に出しておく必要もなかったが、お金と食料くらいは最低限出しておこうと一緒に布袋に詰めていた。食料は保存の効く乾物や酒程度だったので取られずに済んでいた。他にも愛用する煙管もその荷物に含まれていた。実は暇さえあれば吸っているヘビースモーカーなイオリさん。

 

「さてと、うちの船長さんを助けに行きますか」

 

 アーロンパーク内の倉庫にあった物品を使えそうな物だけ取り込んだイオンは銃を片手に先程のプール前まで戻る。どうやらだいぶ戦闘が進んでいるようで幹部相手に戦うゾロとサンジの方はもうすぐ決着がつきそうだ。ルフィの方はナミ、ノジコによって首だけ地上に出され空気の確保をしているようだ。

 

「ルフィ無事か?」

「助けてくれイオリ。足が抜けないし力も抜けるぅ」

 

 乗り込んだ当初の勇ましい表情とは一転して情けない表情で助けを求めるルフィに溜息を吐く。手は出さないと言ったが、助けないとは言ってないと内心結論を勝手に出し、金剛を構える。

 

「そういやアーロンはどこだ?」

 

 ルフィの首の伸びから凡その足の狙いを定めながらアーロンの気配を探るが陸上にはいなかった。ナミとノジコもそちらには意識を割いていなかったのでアーロンが居ないことに気づく。陸上に居ないということは海中に潜み、恐らくルフィをそのまま噛み殺そうとしてるのだろうと考える。

 

「海中にいるなら仕方ない。ルフィ死なねぇように調整はするが、死んだら済まん」

「イオリちょっと何する気?!」

 

 ナミはイオリがしようとしてることに合点が言ったのか、失敗したらルフィが撃ち抜かれると思い声を荒らげる。しかし、海中故に覇気を込めるとはいえルフィを撃つミスはしない。

 一方、イオリの言ってることを察したルフィは力の無い表情を一転させる。

 

「なっ!?イオリ!アイツは俺がぶっ飛ばすんだからな!」

「それはアーロンの強度に願え。ルフィと水面から離れろ」

 

 雷撃を吸収させ覇気を込めて「ドパンッ!」と鈍重な音を立てて射出された雷速で進む弾は瞬く間にルフィの足枷となる岩を破壊する。その衝撃で発散される雷撃は海中に居たルフィとアーロンを襲う。ゴミ人間であるルフィに雷は効かないが、通常の人類であるアーロンには特攻のように響く。

 

「ガアアアアアア!!!!!」

 

 水中から稲光の音とアーロンの悶絶する声がアーロンパーク内に響き渡る。

 

「ふぅ、危なかった。イオリ!アーロン倒してないだろうな?!」

「ほら、肉」

「おおぉぉ!!お前っ!凄いな!!」

 

 無事陸上に引き上げられたルフィが口煩くイオリに抗議するが、いい加減こんな下らない争い終わらせて欲しいのでルフィの意識をアーロンに向けるために肉を渡す。体内に保存させていた骨付き肉をルフィに渡すと目を肉マークにさせヨダレをダラダラと垂らしながらその肉へと食いつく。

 食べ終わる頃にはアーロンも水面から出てきて肩を縦に震わせ此方を睨み付けてるのがわかる。ルフィも飯を食べて満足したのかすぐにアーロンに意識を戻す。

 

「ほら、早く行ってこい。とっととこんな場所ぶっ壊せ」

「おう!!」

 

 アーロンは壁を上手く使いダーツの要領でその自慢の鋭利な鼻でルフィを攻め立てる。しかし、昔から大型の獣相手に森の中で暮らして来たルフィは戦闘のセンスがずば抜けている。相手の攻撃を見て理解する頭は持っている。指を交互に重ねてゴムの能力を活かした網によってアーロンの(シャーク)・ON・DARTSを軽々攻略する。

 魚人の脚力と鋭利な鼻で攻撃する技だが、実際はただ鼻から突っ込む突進技。漁網さながら鮫の魚人を捕獲したルフィはそのまま地面に向けて放り出す。空中で捕まったアーロンは為す術なく地面に落下する。その間にもルフィは両足を槍の如くアーロンの鳩尾へと突き刺す。地面に突き落とされたアーロンは体内が圧迫されたことによって喀血する。

 半ば意識が飛びそうになるほどの威力を喰らうも人間を下等生物と蔑むアーロンにとってその人間に負けるのはプライドが許さない。その要らないプライドが魚人に眠る狂暴な意識を目覚めさせる。

 

「下等な人間がァ!俺に何をしたァ!!!」

 

 落下するルフィの髪を掴むと遠心投げのようにルフィを壁へ投げつける。打撃無効のルフィに聞くものではないが、完全に我を失ったかのように凶暴化したアーロンはそのままルフィへと突進する。

 アーロンの狙いはルフィではなく、壁の反対側に掛かっている自身の愛武器キリバチ。ノコギリのように六枚の刃がくっ付いた剣。

 アーロンはキリバチを手にするとそのままルフィへ何度も真向斬りでたたき斬る。縦に回転しながら地面や壁を破壊しつつ上空へ逃げるルフィを追うアーロンは遂に最上階にてその動きを止める。

 

「あの場所は…」

 

 複雑な顔で呟くナミ。恐らく、そこがナミの言っていたアーロンたちによって働かされていた測量室。

 

「幸か不幸か。ルフィはナミの因縁を断ち切ってくれるらしいな。これでもまだ…アイツは俺たちは仲間じゃないって言えるか?」

 

 これまでの8年で積み上がった辛く苦しい思い出が蘇っているのだろう。嗚咽を漏らさないように口を手で覆うナミの目には大粒の涙が流れていた。血の滲む思いで今まで生きてきたナミにとっての救いはその記憶に残る場所を破壊すること。

 イオリがこの戦いの行方を見届けた後破壊しようと思っていたその場所から物が降ってくる。最上階での戦闘が激しいのではない。そこに深く根強く残る呪縛を全て無くすために破壊する。人間を仮にも仲間にしたナミを道具のように使うアーロンはルフィが最も嫌うこと。

 地上からは上で何が起こってるかは分からない。ただそこで暮らしてきたナミには伝わる。次第に戦闘の嵐が止み、静かになったアーロンパークに有るのは一本の上空へと伸びる足。

 

「イオリの言いたかったことはこれか」

「テメェ!俺の海図をっ!」

「やっとナミを助ける方法が分かった。こんな部屋があるから行けねェんだ!居たくもねェあいつの場所なんて俺が全部ぶっ壊してやる!!!」

「下等生物がッ!調子に乗るなァ!たかだか下等生物に落とされるアーロンパークじゃねェ!!(シャーク)・ON・歯車(トゥース)

「ゴムゴムの─────戦斧(オノ)!!!」

 

 伸びた足がアーロンに叩き付けられそのまま地上へと押し落とす。中心を撃ち抜かれ全体に罅が入るとすぐに轟音と共にアーロンパークは崩れていく。通常は生き埋めになるほどの崩壊だが、ルフィはゴム人間。アーロンに噛まれた傷から血を流してはいるが無事崩壊した瓦礫の上に立ち上がる。後光に照らされ立ち上がるルフィは正に神秘的でそして戦いの勝利を告げる。

 

「ナミィ!お前は俺の仲間だ!」

「うん!!」

 

 遂に8年もの間コノミ諸島を支配していた悪夢は覚め、自由の生活を呼び戻す。アーロンパークが落ちたことでココヤシ村の住民は武器を捨てて大手に喜ぶ。喜びを分かち合う彼らを無視してイオリは一人未だ海中に身を潜める人物へと話し掛ける。

 

「いい加減出てきたらどうだ?ジンベエ」

 

 水面が大きく揺れ広がる波紋より姿を現すのは一人の鮫の魚人。アーロンと同じ種族の魚人が急に現れたことで、さっきまで活気溢れていた住民らはすぐに静かになり、ルフィたちはそれぞれ警戒態勢に入る。

 

「誰だお前 」

「何者だ」

 

 ジンベエは鼻も折れて血だらけで瓦礫に埋もれるアーロンと地面で力無く倒れ伏す魚人に目を向けると険しい顔を解くことなく住人たちの方は歩み寄る。

 

「ワシの名は海峡のジンベエ。此度の件はワシの不徳が致すところ。本当に申し訳ない」

 

 

 

 

 

 

 

 

 




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