ボーダー万年A級最下位のやべー奴らがいるらしい………いや、ウチじゃん   作:しゅう@ハーメルン

1 / 5
プロローグ

 

 日本、三門市。

 そこにあるのは、異世界からの侵略者近界民から街を、世界を守る為の組織、界境防衛機関(ボーダー)

 

 そしてこれは、そんな組織において万年A級最下位を務める、ある部隊の話である。

 

 ◇

 

 ボーダーの食堂。白い蛍光灯があたり一面を照らす中、1組の男女が自販機の前で飲み物を選んでいる。その容姿は美しく、サラサラの髪に白磁の肌、澄んだ瞳に長い睫毛と、街ですれ違えば誰もが二度見をする……いや、その程度では収まりえない圧倒的美しさを備えていた。

 そんな彼らの後ろを、白い隊服の光る二人のC級が通りがかった。

 

「……あ、あれ麻野(まの)さんじゃないか?」

 

「ほんとだ。それに、隣にいるのは有星(ありほし)さんじゃんか!」

 

「あんま人前でないから、見られてラッキーだなぁ」

 

「嵐山隊に続くビジュ隊だろ? カッケーよなぁ、この前のインタビュー見たか?」

 

「ああ、市民を守るのに理由はいらない、批判者しかいなくても戦い続ける、かぁ。顔良し、性格良し、しかも二人は幼馴染……ボーダーのカリスマだよ!」

 

「ハハハ、俺たちも二人みたいにA級目指して頑張らないとな」

 

 そうして、二人の無垢なC級隊員は笑いながらランク戦へと向かった。

 その後ろ姿に、彼らの視線が刺さっているとは知らずに。

 

 ◇

 

 数分後、自販機から飲み物を取ってきた有星と麻野は隊室へと戻ってきていた。部屋の中には誰もいない。「オペレーター」と「隊長」はどこかに出かけているらしい。

 有星はどさっと音を立ててソファに腰掛け、そしてはあ、と一息ついて────

 

 

「また一人、俺の美貌の虜にしてしまったか……」

 

 

 因みに、美形の性格はいいという言葉は有星(かれ)に全く当てはまらない。

 

 

「は? 私の方に決まってんでしょ、頭湧いてんの?」

 

 

 失礼、訂正しよう。当てはまらないのは麻野(かのじょ)もだった。

 

「いやいや冷静に考えろよ。あいつらの視線の先はどう見ても俺だったから」

 

「冷静じゃないのはあんたよ、自尊心優って幻覚見てんじゃない? そもそもあの二人は男だったし、見惚れるなら私よ私!」

 

「あ、そういうの今時古いんだぞ、多様性だぞ配慮だぞ」

 

「え? 配慮って弱者への思いやりからなるものでしょ? 全人類は私に傅くべき木端なのになんでこの私が態々そんなことしなくちゃいけないの?」

 

「いや傲慢すぎるわ。冷静に考えろよ、世界の頂点は俺に決まってるだろ? お前みたいな売女はこれから悲惨な運命しか待ってないんだから、凡百に媚びる練習くらいしといたほうがいいぞ」

 

「チッ、ちょっと顔が世界クラスなだけのくせに何が世界の中心よ自分中心野郎。インタビューでも市民を守る〜、とか調子いいこと抜かしちゃって! 金だけ欲しいって普段から言ってるくせに!!!」

 

「その言葉はそっくりそのままリボンをつけてお返ししてやんよ!」

 

「はあ〜〜〜〜ん???」

 

 この世で最も醜い争いであった。

 外面はいいだけに見苦しさも倍増である。

 

「てめえ黙ってたら調子づきやがってぶっ殺すぞクソ⬛︎⬛︎⬛︎! 胸だけじゃなくて脳も足りねえよーだなぁ!!!」

 

「あーらそのちっちゃい⬛︎⬛︎⬛︎でよくもまあいったわね先ずはその⬛︎⬛︎を⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎したげるから!」

 

 ますますヒートアップする言い争い。そろそろ文字にできなくなってきた。だというのに顔だけは未だ絵画のような美しさを保っているのは流石の美形力と言えるだろう。……美形力ってなんだろ。

 

 そして、二人の妄言が完全に規制されるレベルになり始めた、その時であった。

 

 

 

「二人ともいい加減にしろ!!!!」

 

 

 

 彼らの頭上から天罰……いや、ゲンコツが降り注いだ。

 その拳はガゴン、と小気味いい音を立ててその頭を直撃し、二人を地べたに這いつくばらせる。二人はボーダーの床は味がないという新たな知識を得た。

 

「まったく、君たちは本当にボーダー隊員として……いや、人として大失格なんだから」

 

「アッハッハ! どうしたんだ二人ともそんな現代アートみたいな体勢で黙りこくっちゃって!! 急に芸術を志したのかい?? 美術をかじってる僕から言わせてもらうと、それじゃ売れて十万円だと思うよ!!!」

 

 床に這いつくばる有星たちを見下ろすのは、彼らと同じ隊服を着た二人の男。

 

 呆れた様子で頭を抱えている方の男は、剣城清摩(つるぎせいま)。この部隊の「隊長」である。

 高い身長と、大ぶりな骨格にしっかりと蓄えられた筋肉が特徴。広い胸板やぱっちりと開いた瞼に浮かぶキラキラとした黒目が、彼に健康で真面目な、頼り甲斐のある青年なのだという印象を与えている。

 細マッチョな有星や体格が小さく清楚な見た目の麻野とはまた違う美形だ。

 

 一方、その後ろで笑い転げているクズ男は川平明(かわひらあきら)。このボーダーにおいて、唯一の男性「オペレーター」である。

 その性格は見ての通りサイアク。自分の享楽のためなら他者がどうなろうが何を思おうが知ったこっちゃないと思っている。上級ボーダー隊員は大抵人格者が多いが、こいつは数少ない例外であり、その言動は三門市(その中でも特に剣城隊)のGDH減少に着実に寄与している。というか、例の二人は自尊心が高いだけで一応それ以外は人畜無害なのを考慮すると、コイツがこの隊で一番なクズと言っていい。

 そのせいで、今日も彼は男からは「なんでコイツが女の園(オペレーター)所属なんだよ」という嫉妬の視線に晒され、女からは「性格がドブじゃなければ高身長イケボタレ目八重歯とかいう完璧イケメンなのに……」という哀れみの視線を向けられている。

 

 

 

 そして、全員が揃った隊室は、より一層騒がしさを増していく。

 

「痛い……地面ぶつかって歯折れた…………もう今日の防衛任務休むぅ」

 

「有星、君今トリオン体だよね? 歯が折れるわけないよね??」

 

「あ、ごめん剣城。今の言い争いで私の美しさに泥がついたから洗浄のために休暇が欲しいんだけど。具体的には一月(ひとつき)くらい」

 

「そんなふざけた理由で本当に休暇が通ると思ってるんなら驚きだよ!」

 

(あの机の上に放置された新品コーラは振り待ちってことでいいのかな……?)

 

「何するつもりか知らないけど川平は次炭酸触ったら本当にオペクビにするからね」

 

 

 ……まあ、なんというか。これ以上この隊の説明は必要あるまい。

 

 そんなわけで、改めて。

 これから始まる、万年A級最下位「剣城隊」の、カスとクズとドブと少しの良識人が構成するボーダー物語を、皆様どうか、温か〜い目でお楽しみください。







 入れ忘れましたが、最初の二人のフルネームは
「有星令仁(ありほしれいと)」
「麻野優亜(まのゆうあ)」
 です。



 詳細なキャラ設定は次回に紹介します。
 とはいっても基本情報くらいのもんですが……
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。