ボーダー万年A級最下位のやべー奴らがいるらしい………いや、ウチじゃん   作:しゅう@ハーメルン

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決起集会

 

 

「ちっがうんだよなぁ!!!!」

 

 

 剣城がそう叫んだのは、彼が鈴鳴から帰ってすぐのことであった。

 

「んだよ……うっさいな早朝からギャーギャーと。もっと俺に配慮しろ。折角の休日の快眠を妨げるなよな」

 

「ほんと。そこのクソ男には別に何しても構わないけど、私が睡眠不足になって少しでもこの美貌が損なわれたらどうしてくれるわけ? 世界の損失よ、世界の損失」

 

「……キミらほんっっとブレないねぇ」

 

 モゾモゾと隊室奥の布団から出てくる二人*1に対し、剣城は厳しい目線を向ける。だが、肝心の二人はどこ吹く風。手鏡を見てあーあー寝癖がー、と言いながら手櫛で髪を整えている。

 

 いつもであれば、この空気に流されてなあなあで話は終わってしまうのだが、今日の剣城は一味違っていた。布団の上でゴロゴロとし続けている二人の首根っこをむんずと掴むと、そのまま引きずって隊室中央の作戦机の椅子に強引に座らせる。

 二人からは身だしなみを整える時間くらい寄越せ、と文句が出るが、それもトリオン体に換装すればいいだろ、と一蹴した。

 

(……なんか、今日の剣城雰囲気変じゃない?)

 

(あれだろ、年一の発作。ほら、昨日川平がやらかしたから、また意識改革だーって騒いでんだよ)

 

(えー、あの剣城ってごちゃごちゃ五月蝿いから嫌なのよねぇ……)

 

 着席に抵抗する川平と格闘する剣城を横目に、ヒソヒソと陰口を叩く二人。トリオン体になったことで身だしなみは整っているが、相変わらず心は汚れたままの様だ。

 

「───うわっ。やれやれ隊長、ちょっと強引過ぎやしないかい?」

 

 ついに剣城の力押しに負けて椅子にぶん投げられ着席した川平が、腰をさすりながらわざとらしく首を振る。

 

「うるさい。こうでもしないとキミたち話を聞こうともしないじゃないか」

 

 しかし、剣城はそんな川平の生意気もばっさりと一刀両断した。

 

 あまりに様子の違う隊長を前にして、ちょっと今日はやりすぎたかな、と川平は微妙に後悔したが、時すでに遅し。剣城はどかり、と椅子に着席すると、バン、と机をたたいて三人へと語りかけた。

 

 

「これより、剣城隊の今後の方針についてミーティングを行う!!!」

 

 

 え~、と麻野から声が漏れる。有星も、声は上げないものの視線をあちこちへ飛ばしているのでめんどくさがっているのが透けて見えた。

 現状、話をまともに聞く気があるのは逃亡を完全にあきらめた川平だけのようだ。空気は完全に冷え切っている。

 

 そのことにさらに腹を立てたのか、余計にとげとげしくなった声色で剣城は続けた。

 

「みんなも、ボーダー内の我が隊の評判を君たちは知ってるだろ! 万年最下位、A級の恥、やる気だけ、ビジュ隊以外の仕事してんの?、エトセトラエトセトラ……防衛任務だけは頑張ってるから市民からの支持はあるけど、正直そろそろA級続けるのも厳しいんだよ!!」

 

「別に言わせとけばいいだろ。顔は売れてるからどうせ上もウチを降格にはできないだろうし」

 

「そうそう、それにAに上がった時には司令もボーダー隊員はランクじゃないって言ってたじゃない」

 

「あれは慢心するなって意味であってランクを無視していいって意味じゃないんだよなぁ……」

 

 向上心のかけらもないようなことをのたまう二人。一度「向上心がないものは馬鹿だ」とでも言ってやろうか、と思ったが、こいつらは普通に「でもそう言ったやつは自殺したじゃん?」とか言い返してきそうなのでやめた。無駄に教養だけあるのがタチが悪い。*2

 

(……というか、毎回思うけどこの二人はあれだけプライドが高いのになぜ現状に甘んじていられるんだ? 普通はプライドが多少なりとも行動に影響するものじゃないの?)

 

「いや、プライドよりも楽するほうが大事だろ、冷静に考えて」

 

「さらっと心を読むな」

 

「いや経験則な。隊長こういう話すると毎回これ言ってくるから」

 

 ドヤ顔をさらしてくる有星に青筋を立てながらも、剣城はその強靭な理性で怒りの感情をねじ伏せると、ごほん、とした咳払い一つで冷静さを取り戻した。

 馬鹿二人の煽りを真に受けていると話が進まないことを知っていたからである。それこそ、経験則で。

 

「とにかく! こちらとしては早急な現状改善を求めます! 次のランク戦では最下位脱出を目指すからね!!」

 

 そう、剣城はわざとらしく声を張り上げ、全員の顔を見回しながら言う。

 しかし、はいはい、と隊員どもの口から出る絶妙にやる気のない返事に、絶対こいつらやる気ないな、と頭を抱えるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

  ──────尚その数日後、二宮隊と影浦隊がB級降格になり、二人が「順位は上がったんだからもうこれでよくない?」などとド不謹慎なことを言い出したので、剣城はトリオン体の痛覚を50%オンにしてふたりをボコボコにした。*3

 

*1
有星と麻野はボーダーに寝泊まりしている。隊室の私物化……

*2
二人は読書が趣味。なお勉強は……

*3
川平協力。悶え苦しむ二人を前に彼は爆笑していた





 注意:二人は特別な訓練を受けています。拷問ごっこは絶対に真似をしないでください。

 というわけで、この作品の時系列は「あの年」の5月です。
 よろしやす。
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