名前:秋元 チエ
年齢:15歳
誕生日:10月22日
身長:165cm
趣味:人形作り
所属:日本帝国本土防衛軍
最終階級:少尉
所属部隊:パンサー隊
ポジション:突撃前衛長
戦術機で戦う場面は基本的にありません。出すとしても過去編かもっと後の話になるかと思います
なんで、私は生きているんだろう。
焚火の炎を膝を抱えながらぼんやりと眺めながら、ふと思う。少なくとも、あの状況で生き残ることが出来ない戦況だったのは確かだ。
けれど、私は今こうして生きている。
私だけが生き残り、同じ部隊にいた仲間たちは全員死んだ。強くていつも気にかけてくれた隊長も、私をいつもクソガキと揶揄ってきた人も、仲が良かったあの子も、同じ訓練校で苦楽を共にしたあの子も……みんな死んで私だけが生き残った。
死んだ仲間から回収できたドックタグを強く握る。
この世界は、地獄だ。希望なんてものは存在せず、文字通りこの世の地獄。勝利の為の反攻作戦は失敗し、敗北に次ぐ敗北の日々。一日で何十万という人の死が日常となり、宗教に出てくる救世主はついに現れなかった。
家族は殺され、故郷も荒野と化し、護ると誓った国家はその国土を捨てる事を決定した。
殺しても、殺しても減るどころか倍以上に増えるBETA*1の物量。最早人類に奴らを押し返す力はない。
生きる希望も、理由もなくなった。
「うぅ……、グスッ……」
衛士強化装備*2の機能のお陰で身体が冷えることは無い、しかし心が寒い。
機械的な熱では決して暖める事が出来ない寒さ。それに私は耐えなければならない。
軍人である以前に、私は人間だ。それも齢15*3と言う若さ、BETAが居なければ今頃私は高校生だった筈だ。
常に考えてしまう。誰か助けて欲しいと。
衛士*4の心構えも軍人としての責務も、何もかも捨て去って逃げ出したい。何度もそう思ってしまう。
だからこそ、余計に不思議でならない。こんなにも弱い存在なのに、それでも生きているこの現状に……。
きっと、見て回ったあの街も私が見た幻覚なのだろう。あの街に住む住民も、頭の上に天使の輪のような物が浮かんでいる学生達も全て私の幻覚に違いない。
だって、普通に考えてあり得ないでしょ。学生達は何気ない顔で銃火器を持ち歩き、ロボットや動物が人間のように振る舞う世界なんて。
けれど、偽りの光景だとしても。
空に浮かぶ巨大な輪っかも幻覚で、現実には存在しない。
だったらせめて───
「夢なら、夢の中で死んでもいい、よね……」
そばにあった拳銃を手に取り、呟いた。
死にたくは、ない。
だけどこのまま飢えて死ぬより、BETAに食われて死ぬより遥かにマシな選択だ。
そう自分に言い聞かせ、拳銃の銃口を咥る。グリップを逆向きに握り、親指で引き金に添えた。
セーフティは既に解除してある。あとは引き金を引けばこの
「…………」
───パフェっていう奴、食べてみたかったなぁ。
終ぞ叶うことがなかった密かな夢、あの世で食べられたらいいなと考えながら親指に力を入れる。
そして───
「ストーップ!!!」
「ふぎゃっ!?」
そんな叫びと共に後頭部に衝撃が加わり、その意識を手放した。
12時間前
皆、死んだ。
大尉も、戦友達も皆。私を残して死んでいった。
轢かれ、喰われ、焼かれ、溶かされ……。出撃回数が二桁を超えるベテランとも呼べる部隊が、瞬く間に全滅した。
この世界ではよくある事、精鋭が呆気なく全滅する話はよく聞く話だ。
けれど、私は心のどこかでこう思っていたかもしれない。
私達なら大丈夫、と。
「うわぁぁぁ!!!」
悲鳴にも似た叫びと共に突撃砲が火を噴く。
砲口から吐き出された36mm劣化ウラン弾は戦車級*5の群れを容易く蹴散らし、大地を赤く染め上げる。
「お前たちさえ、お前たちさえ居なければ!皆、皆が死ぬ事がなかったっ!」
家族も、友人も、故郷も全部消えた。
最後の拠り所だった場所も今さっき消えてしまった。私は奴らが、BETAが憎い。憎くて、憎くて仕方がない。
トリガーを引いただけ敵が死に、長刀を薙ぎ払った回数だけ敵が死ぬ。実に良い気味だ。
けれど、それでも敵の数は減らない。減るどころかむしろ増えている有様であった。
HUDのレーダーは敵の光点で埋め尽くされ、隙間が文字通り存在していないようにも見える。
文字通り絶体絶命な状況。いつ死んでも可笑しくはない。
私一人が戦ったところで戦況は覆す事が出来ない。どれだけ殺してもそこに意味は無いに等しく、ただただ虚しい行為だ。
けれど、けれどだ。
「返せ、皆を返せ!」
せめてもの抵抗にと、私は叫ぶ。
救援は絶望的、たった一人の衛士を助ける為に態々救出部隊が編制されるとは思えない。
匍匐飛行で戦域の離脱を図ればレーザー*6に焼かれるのが目に見えている。重金属濃度が規定値を大きく下回り、とっくの昔にその効力が損なわれているのだ。
僅かな隙でも死ぬ。推進剤が切れたら死ぬ。どこかのパーツがイカれれば死ぬ。弾薬が切れれば死ぬ。長刀が壊れたら死ぬ。
私の死神は今まさにその鎌を振り落とさんとしていた。
「それでも私は!」
一体でも多く、敵の注意をこちらに向けさせる。
仲間の死が価値のある死になるように、少しでも多く敵を引き付ける。そうする事によって後方に展開する味方の圧力が僅かかもしれないけど減らすことが出来る。
そうする事によって誰かの命が救われるかもしれない。どんなに些細な影響だとしても、それが任務達成に貢献できるのなら私は喜んで受け入れよう。
それが、私に与えられた最後の仕事。味方を支援し、日本列島から国民を一人でも多く脱出させるのがこの任務。
要塞級*7を無視し、要撃級*8を切り伏せ突撃級のケツに劣化ウラン弾の弾幕をくれてやる。
これでも私のポジションは
「邪魔だァッ!!!」
恐怖をかき消すように、吼える。
まだ、私は死ねない。戦って、戦って、戦い続けて……後方にいる人々を護らなければならない。例え死ぬ事になったとしても。
これ以上、家族を失った私のような人間を生み出さない為にも、これ以上誰かが悲しまない為にも、私は……私はッ!
「私はまだ───」
瞬間、網膜に投影されていた視界が大きく揺らいだ。
次いで、機体に襲い掛かる強烈な衝撃。空と大地が何度も反転し、様々な情報が私の脳を蹂躙する。
機体に異常が発生した事を報せるアラームが網膜の端に表示される。機体ステータスには戦術機の下半身全てが赤黒く塗りつぶされ、これは脚部ユニットの喪失を意味するものであった。
圧力注射
搭乗員脱出勧告
敵生体接触 即時排除勧告
背筋が凍った。
網膜投影装置*10に投影された警告、それは私に対する死刑宣告にも等しいものであった。
味方も、救助もないこの状況で私に訪れる結末はただ一つ。
死、だけだ。
その結論に至ったのと同時に、無数の戦車級が機体に殺到する。
墜落の衝撃から生き残っていた腕を使い、それらを振り払おうとする。しかしそれも虚しく瞬く間に
「いや、いやぁっ!」
戦意が砕かれ、蹲る。
機体ごと戦車級に喰い殺される恐怖、座学で嫌と言う程刷り込まされた。そして、戦場で戦車級に喰い殺される瞬間を幾度も聞いてきたからこそ知っている恐怖。
今まで想像もしたくなかった結末が、目の前まで来ている。
その事実から目を背けようと耳を塞ぎ、叫んだ。
「誰か、誰か助けてッ!お母さんッ!大尉ッ!誰でもいいから助けて!」
とっくの昔に枯れたと思っていた涙を流しながら助けを求めた。
しかし助けは来ない。父も母も、大尉達も既にこの世にはいない。それでも私は誰かに縋りたかった。
先ほどまでの威勢が嘘かのように泣き叫び、恐怖に震える。
「いやだッ!私はまだ死にたくないッ!」
やり残したことはたくさんある。
食べたかったもの、見たかった映画、着てみたかった服……挙げればキリがない。
ずっとやりたいことを我慢してきた。ずっと悲惨な日々を耐えてきた。
その結果がこれなのだ。
恨まずにいられなかった。この世界を、この世界に生まれてしまった私と言う存在を憎悪した。
何も成すことが出来なかった自分。大切な人を誰一人護ることが出来なかった自分。
そして、戦術機に乗る事で強くなったと錯覚した自分。私という存在はちっぽけで、どうしようもないくらいに弱い存在だという事実を突き付けられ、漸く理解させられた。
決して来ることのない助けを呼ぶ。
戦車級が機体の装甲を喰らう音をかき消すように、何度も何度も死にたくないと叫び続けた。
そして、ついにその時が訪れる
「ッッッ!!!」
ベコンッという音と共に搭乗ハッチが強引に剥がされ、外気がコクピット内へと雪崩れ込む。
私ごと機体を喰らう為に開かれた戦車級の顎は眼前にまで迫り、大きく開かれた口から悪臭を伴った唾液が滴り落ちた。
誰も助けてはくれない。誰も護ってはくれない。
今の私に出来るのは蹲り、いずれ来る凄惨な未来を幻視し震える事だけ。
最早、私に助かる未来などありはしなかった。
・・・・・・
・・・・・
・・・・
・・・
・・
・
あれから、一体どれだけの時間が経ったのだろう。
どれだけ身構えてもその時が来ない。それどころかついさっきまであった戦車級の気配すら、消えているような気がした。
気のせいか、あの鼻が曲がりそうな異臭も消えているような気がする。
「………?」
恐る恐る、目を開けてみる。
そこに、戦車級の姿は無かった。さっきまであった異臭も消え、代わりに別の匂いが私の鼻を刺激する。
───知っている匂いだ。
この匂いを、私は知っている。小さい頃、家族と共に登山に挑戦した時嗅いだ森の匂い。
不意に蘇る懐かしい記憶を思い出しながら身を起こし、外の状態を確認しようとした。
「あ、がっ……」
強烈な吐き気と頭痛が私を襲い、思わず身体をよろめてしまった。
その結果、管制ユニット*11から身を乗り出していた私は機体から外に転落した。幸い頭から落ちることがなく、衛士強化装備の特殊保護皮膜のお陰で怪我を負う事は無かった。
「おえ、オエェッ」
落下の衝撃で吐き気を耐える事が出来なくなり、胃の中にあった物を全て吐き出した。
出し切っても無くならない吐き気、そしてハンマーで殴られたような頭痛は数十分経っても治まることは無かった。
連続した高機動戦闘、規定量を超えた戦術薬物の投与、そして後催眠暗示の重ね掛け。当然の結果だ。
吐き気と頭痛がある程度収まったところで飲料水パックを使い、口を洗う。その最中、視界に入る範囲だが周囲の状況を確認した。
見渡す限りの木々、ここが森の中だという事だけは分かる。
少なくとも、私が戦っていた場所は森の中ではない。その証拠に大地を埋め尽くしていたBETAの姿は何処にもなかった。
「意味、分かんない……」
訳が分からない。ここが何処なのか、そもそもなんで私が生き残っているのか理解する事ができない。
大破した戦術機を見ながら、ポツリと呟いた。あの時、私は戦車級に喰い殺される寸前の状態だった。
にも拘らず、私は今こうして立っている。
状況から見て前まで居た場所から離れた場所に機体ごと移動したのは百歩譲って分かる。しかし取り付いて筈の戦車級はこの場には居ない。
あまりにも都合が良すぎる。
こんな現象、今まで聞いた事がない。あったとしても眉唾物で信憑性が欠けるもので参考にすらならない。
考えたくないけど。これは夢で、現実の私は戦車級の餌になっているとしか思えなかった。
絵空事のような事は起きる筈がない。だから、これは夢。現実ではない。
あの空に浮かぶリング状の妙な構造物、これが夢だという動かぬ証拠だ。
とはいえ、だ。
いくら夢の中とはいえ、このままほっつき回るのはあまりやりたくない。
機体の状態は最悪で強化外骨格も駆動系が故障して使えそうにもない。夢ならこういうのも何とかしてほしいけど、そこはどうにもならないらしい。
バッテリーが動いているだけまだマシと考えるべきか。そう考えながら管制ユニットの中にあるCウォーニングジャケット*12を着用し、備え付けのアサルトライフルを装備した。
少なくとも、これである程度戦えるようにはなった。アサルトライフルは本当に最後の命綱としてあるだけでマガジンの数も四つと少ない。
なるべく戦闘は避けた行動を心掛けた方がいいだろう。小型種と遭遇する物なら、例え一体でも脅威だ。
「死にたくないな……」
本音を言えば死にたくない。
これが現実だと思いたいが、そんな都合のいい事が起きる筈もない。
けれど、苦しんで死ぬより遥かにマシだ。そう言い聞かせながら、私は歩き始めた。
あのリング状の構造物を目指して。
ふと思ったけどオリ主ちゃんを衛士強化装備のまま街中に出したら、ハナコと同レベルになってしまったり何なら武装もしてないからキヴォトス史上類を見ない変態になるのでは?