さて、抱えきれないほど素材を稼いでホクホク顔(ないけど)のオタクだよ!名前はまだない。
レジスタンスキャンプ付近、鉄骨のバリケードを越えたすぐ隣。要するにパスカル達穏健派の機械生命体の村に入るか入らないかくらいの位置にパーツを集めている。
キャンプと村を繋ぐ通路を塞ぐ大きなブロックは動いてなかったのを見るに、2Bたそとナインズきゅんはまだ歌姫ちゃんとは戦ってないのかな?
ともあれ、知的生命体の近くにいれば見つかるのも時間の問題というもので。
『パスカルおじーちゃん!コノ箱、ナニ?』
『うーん、私も見かけたことはないですねぇ』
目の前にはみんなのおじいちゃんこと、村長のパスカルさんがいた。ワタシね、君のこと最初女性型だと思ってたよ。声が可愛すぎるんだよ君。
「やぁこんにちは!」
『わぁ!?』
アームを勢いよくガショっと上げて挨拶するとパスカルさんがひっくり返ってしまった。ご老体になんてことを!
ごめんねぇと謝りながら助け起こした後、お詫びに素材をいくらが提供した。
『ふぅ。貴重な素材、ありがとうございました。助かります。私の名前はパスカル。ここから少し進んだ所にある村の長をしています。』
「あれまご丁寧に!ワタシはただのオタクだよ!名前はまだない!」
ワタシの自己紹介にコテンと首を傾げるパスカルさん。
『オタク、というと、何か熱中している物があるのですか?』
「もちろんさぁ!ま、語るとややこしいから言わないけどね!」
『そうですか、残念です…』
少し肩を落とすような仕草をするパスカルさんに申し訳なさを感じる。すまんなおじいちゃん。オタク特有の早口で推し達のことを垂れ流したいところであるが、まだ面識のない彼ら彼女らについて、これから起こる未来の出来事について話す訳にもいかないのだよ。
あ、そうだ!いいこと思いついた!
「ところでパスカルさんや」
『はい、なんでしょう?』
「とあるアンドロイドが来るまでここでお店を開いて良いかな?」
そう、このパスカルの村はストーリーでも割と絡んでくるスポット!今はポッドに乗り換えたとはいえ、ワタシもこの世界に機械生命体として生まれ落ちた身だからスムーズに受け入れ難いと思うわけだよ!
だがしかーし!温和な機械生命体との交流が済んだ後の2人なら受け入れる土台が完成していると言って良いのでは!?という考えの元、ここに居を構えていればいずれ接触を果たせるという天才的なプランを立てたのだ!!
2人だけでなくAにゃんも来るしね!
『お店、ですか?まぁ構いませんが…。今回いただいた素材のような物を売るつもりでしたら、あまり利益は見込めませんよ?あれらは私の趣味のためにいただいただけなので…』
「だーいじょうぶ大丈夫!ワタシの主目的はアンドロイドの方だから!たぶんここに来るからさ!」
『そういう事でしたら、どうぞお構いなく。私たちはアナタを歓迎しますよ。ぜひ村にもいらしてください!』
なんと魅力的な提案!やっぱ好きなゲームの見知った場所は巡りたいよねぇ!!
喜んでー!!
〜side 2B,9S〜
「……見つからない。ほんとにこの辺りにいるんでしょうか、例のおかしなポッド」
「バンカーからの情報が正しければいるはず」
レジスタンスキャンプの近くで出没するという情報を貰った2B達は、バンカーからの指令を受けて暴れ回るポッドの行方を追っていた。
探し始めて、はや3日。武器を持ったポッドの姿は一向に見つかる気配が無かった。
ろくに情報も無いままの現状に溜息を吐きつつ、近くにあった岩に腰を下ろして9Sが呟く。
「にしても、動かなくなったポッドがひとりでに再起動して独自に行動するなんてことあるのかな…。それもヨルハ機体に随行しようともせずに」
「わからない。6Oはそそっかしいところがあるから…。でも、指令が下っている以上、間違いではないと思う」
「そうかな〜…」
2Bも足を止め、9Sの疑問に応える。
実際のところ2Bも半信半疑ではあるが、先程述べた通り指令が下っているのだ。ポッドかどうか調査、ではなくポッド028との接触による起動要因の調査が今回の任務だ。
番号まで確定されているのだから間違いは無いのだろう。
「2B、一度レジスタンスキャンプに戻ろう。ろくに情報が無いまま捜索を続けても埒が明かないし、遊園地跡の反応も気になるからそっちに行こう」
「わかった。そうしよう」
数分後、遊園地跡へ向けて進路をとった2機。
邂逅の時は案外近いのかもしれない。