鉄血のホライゾン   作:メンツコアラ

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フリーデンXVの初動に驚きを隠せないコアラです。
短期間で多くの方々が評価とお気に入り登録をしてくださり、誠にありがとうございました。
それでは四話をお楽しみください。


#4 学ぶとき

 

 今から遥か昔。

 神として天上へ昇った人類は争いの末、神々の力を失い、再び地球と呼ばれた大地へ戻ってきた。しかし、星の環境は酷く荒れ果て、人が住める場所は神州のみとなっていた。

 人々はかつての繁栄を取り戻すべく、『聖譜(せいふ)』と呼ばれる前時代の歴史を元に歴史再現を行っていた。

 しかし、ある出来事が世界各国による極東神州の分割支配を招き、各国の王はそれぞれの土地の戦国大名との合一を行ったのだ。

 そして現在、極東の戦国大名と世界各国の英傑たちは極東史の戦国時代と世界史の三十年戦争時代をやり直しつつ、世界の覇権を争っていた。

 

 

 

 

◇◆◇午前10時40分

   多摩・青雷亭(ブルーサンダー)◇◆◇

 

 

 

 日が昇り、店内に焼いたパンの香りが漂う中、出された水とパンを頬張る者が一人いた。

 

「餓死寸前はヤバいよ、正純さん。男子として通っているとはいえ、一応女の子なんだから」

 

「───ぷはぁ……いつも御迷惑おかけして申し訳ありません。この御恩は将来必ず返します」

 

「別にいいって。焼き損ねたパンと水を出しただけなんだから。お礼はP-01sに言ってちょうだい」

 

 店主の言葉に教導院の男子用制服を来た少女『本多・正純』の視線が、店の外にいる一体の自動人形『P-01s』に向けられた。

 

「それで今日は生徒会の仕事? まさか、サボりじゃないでしょうね?」

 

「Jud. 三河に着いたら副会長として酒井学長を関所まで送らないといけないので今日は自由出席です。だから、午前中は小等部の講師のバイト。このあとは三河に着く前に母の墓参りに行こうかと」

 

「副会長さんも大変だね。そういや親御さん、暫定議員の御偉いさんだっけ? 正純さんも卒業後はそっちに?」

 

「まあ…そのつもりです」

 

 店主は空になった正純の前に置かれたコップに水を注ぎ、自身も彼女の前に腰かけた。

 

「だったら生徒会長になればよかったのに。総長はともかく、生徒会長は選挙でしょ?」

 

「……生徒会長には総長である葵・トーリが立候補したので。武蔵の住人たちにとっても三河から転校して一年の私よりも武蔵生まれの彼の方が人となりを知ってるでしょうし……」 

 

 正純の言葉に、店主は『そうかい』と答えながら優しい笑みを向ける。正純の方は『今頃どうしているのだろう』と授業中であろう自分のクラスメイトたちの顔を思い浮かべていた。

 

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

片や学び

 

片や教える時

 

 

 

配点《授業》

 

 

 

 

◇◆◇午前10時43分

    武蔵アリアダスト教導院◇◆◇

 

 

 

 

 

 

 一方、その頃。

 高等部三年梅組の教室では極東の歴史を学ぶ『極東史』の授業が行われていた。

 ここで一つ、オリオトライの授業方法について説明しよう。

 まず、彼女の授業は他のクラスとは違う。

 教師の質問に正しく答える事が出来れば授業点を『加点』。ここは普通だが、出来なければ、月始めに自己申告した『厳罰』を受ける事になっているのだ。

 また、厳罰の内容によって与えられる授業点も変動する。

 さらに、彼女の授業には教師の代わりに内容を説明する『ご高説』があり、此方は間違っても厳罰は受けなくてもいい。

 そして、今日もオリオトライが獲物を見定めていた。

 

「はい。じゃあ、次、ここ神州が暫定支配される経緯になった"重奏統合争乱"についてだけど……はい鈴ッ! 知ってるだけでいいから先生の代わりにお願い」

 

「ご、ご高説、ですか?」

 

「そうよー。私の代わりに授業するの」

 

 オリオトライの言葉に、Jud.と小さく答えた鈴は椅子から立ち上がり、指定された『重奏統合争乱』について説明を始めた。

 

「む、昔、世界は、現実側の神州と、べ、別の空間にコピーした、重奏神州に、分か、分かれて、ました。げ、現実側の神州には、神州の民、重奏神州には、せ、世界各国の民が住み、お互いに仲良くしてたと、思、思うんですけど……」

 

「いいわよ~その調子で続けて」

 

「安心しろよ、ベルさんッ! 危なくなったら俺が殴られるか、ミカが守ってくれっからさッ! 大丈夫ッ! 俺、今日は少なくともエロゲの最初の分岐点まで死なねぇから」

 

 そう言うトーリの手には、今朝買ったエロゲのアンケートと説明書が握られていた。

 

「また死亡フラグみたいなこと言って……てか、授業中に何やってんのよ」

 

「なんだよッ! 会員特典欲しいだけなんだからほっといてくれよッ!」

 

「そうしたいのも山々なんだけど、これもビジネスだから」

 

「き、汚えッ! てか、このエロゲ、主人公の名前変更できねぇのかよッ! 初プレイは『点蔵』にして、この黒髪貧乳委員長ルートをバッドエンドにしてやろうと思ってたのにッ!」

 

「何で自分でござるかッ!? 自分は金髪巨乳担当にござるよッ!?」

 

「安心しろよ。二周目は『ウルキアガ』で弟キャラ攻略すっから」

 

「貴様ァッ! 拙僧は姉キャラ担当と決まっておろうがァッ!!」

 

 『いや、授業中ですよね? 何やってんだよ』と普通の人なら思うだろう。しかし、このクラスにとって、このような出来事は日常茶飯事である。また、真面目に受けている生徒も少数なのだ。

 

「貴様ら、静かにしろ。今、仕事中だ」

 

「あのね、シロくん。今、授業中でもあると思うんだけどな」

 

「おかしい……三河からの荷物がない……?」

 

「ねぇ、ガっちゃん。ここのネームってこんな感じ?」

 

「うーん……そこはもう少し暗くでお願いできる?」

 

「うるさいなぁ……原稿に集中できないじゃないか」

 

 ある者たちは攻略キャラはどうだのと言い合い、またある者たちは趣味を、またある者たちは夢の世界へ旅立っていた。

 そんなクラスメイトに鈴はどうしようかと困っていた。

 オリオトライが指定したのは『重奏統合争乱について知っていること』。鈴が座ろうとしないのは、まだ知っていることがあるからである。梅組トップクラスで真面目な鈴は授業を真面目にこなそうとするが、気弱な彼女が強く言える訳もなく、『あの、えっと……』と口ごもるだけ。そんな彼女にオリオトライは助け船を出した。

 

「三日月ぃ~。皆を黙らせて、鈴を助けてあげて」

 

「Jud. 分かった」

 

 オリオトライに言われ、三日月はトーリに対して先の授業で折れたソードメイスをぶん投げる。刀身が半分に折れているとはいえ、そこそこの重量があるソードメイスはトーリを頭を見事に捉える。彼には芸能の神との契約によるダメージ軽減があるが、ノックアウトには十分の威力。『ぐべぇッ!!?』と悲鳴を上げた後にトーリは床で悶える結果となった。

 席を立った三日月はトーリの側まで歩み寄り、投げつけたソードメイス拾うと皆に見せ、次はお前だぞと無言で警告する。

 あっという間に優等生となる梅組(痛みに悶えるトーリ以外)。三日月がやるときは殺る男だというのは、すでに皆が知っていた。

 

「ミ、ミカッ! も、物を投げちゃ、メッ!」

 

「真喜子がやれって。それにゴム弾だし、トーリならボケ術式で防御出来るから「メッ!」……Jud. ごめん」

 

 梅組でもトップクラスの戦闘力を誇る三日月も鈴には敵わなかった。

 

「鈴~? そろそろ進めて貰ってもいい?」

 

「あ、J,Jud. ご、ごめんなさいッ!そ、それじゃあ、ミカ、代弁、おね、がい」

 

 鈴のお願いにJud. と答えた三日月は通神を繋ぎ、鈴から送られてくる文章を読み上げた。

 

「えっと……『すべては、南北朝戦争です。当時、神州と呼ばれた極東の地に、二人の帝の代理人が存在し、争った戦争です。聖譜歴一四一二年に、その戦争のなかで地脈を制御していた神器が失われ、支えられていた重奏神州は地脈の制御を失って、こちら側、神州に落ちてきました。

 落ちた世界は半分以上が崩壊消滅。残った部分は神州と融合。その部分は重奏領域と呼ばれています。

 そして、重奏神州に住んでいた人々は神州に移り、事件の責任を追及。各地で争いが起きました。

 これが重奏統合争乱です』」

 

「よろしい。言い感じね。次も鈴に頼もうかしら」

 

「あ、ありがとう、ミカ」

 

「お礼を言われることじゃないよ」

 

 それでもありがとう、と三お礼を言った鈴と言われた三日月は席に着席。それを確認したトーリは席から立ち上がり、教室にいる全員に聞こえるように声を張った。

 

「はいッ! じゃあ皆、注目ッ! 今夜は俺の告白前夜祭ってことで騒ぎまぁすッ! 場所は───」

 

「金のかからない場所にしろ」

 

 はっきりと言うシロジロの目は『金のかかる場所は許さん』と語り、金がかかる場所を選べば殺されるのでは?、と思わせるほどの気迫を感じさせた。

 

「なら教導院(ここ)だな。去年みたいに肝試しでもすっか?」

 

「トーリくん……今時分は止めといた方がいいかもしれません。末世の影響か、去年に比べて怪異の発生率が上がっていて───」

 

「だったら今夜は『除霊大会』だなッ! いいだろ、先生ッ!?」

 

「まあ、そろそろかなぁって思って宿直入れてたし……いいわよ」

 

「よっしゃあッ! じゃあ「その前にトーリ。君、厳罰ね」……ほえ?」

 

 オリオトライの言葉に、トーリはなんで?、と疑問符を浮かべるが、それはクラスにいる者の大半が浮かべていた。

 

「実は、さっきの鈴のご高説、北朝の独裁が始まったのは一四一二年じゃなくて一四一三年なの。チョイミスね。まあ、その後の説明で十分挽回できたし、鈴はオッケー。そもそもご高説で失敗しても厳罰はないしね」

 

 でーもー、とオリオトライは教師が生徒に向けるべきでない悪い笑顔を浮かべ、

 

「───殴られるなら俺が代わりにって言ったバカがいたわよね~?」

 

「いやぁぁぁッ! 乱暴はらめぇぇぇぇッ!?」

 

 体をくねらせるトーリをほっといて、オリオトライは月始めに提出された自己申告した内容を確認した。

 

「えっと、トーリの今月の自己申告は───『ミカと脱ぐ』」

 

 その瞬間、教室にいた生徒たちの一部が目をキラーン☆と光らせた。

 

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

 

 武蔵アリアダスト教導院の廊下。そこには『いかにも王様ッ!』といった格好をした中年、教導院の教頭兼 " 武蔵王 " 『ヨシナオ』。その隣には、旅行鞄を引く、女の子と見間違いそうなほど華奢な少年『東』が歩いていた。

 

「───しかし、武蔵の民も冷たいッ! 東くんが帰ってきたというのに、麻呂以外の迎えがないとは……」

 

「いや、余も静かな方が良いし、それに聖連に騒ぐなと言われてたので……でも、皆、通神で『早く帰ってこいよ』とか、色々と連絡をくれていたので」

 

 東の言う『皆』とはトーリたちのことである。ヨシナオは外道が集まる梅組に真面目な東をいれるのはどうかと思っていたが、東の言葉に自分の思い過ごしだったと判断した。

 

「ふむ……それは申し訳なかった。先の発言は聞かなかったことにしてもらえないかな?」

 

「Jud. 分かりました」

 

 そうしている内に、二人は梅組の教室前に到着した。

 ……したのだが、中から聞こえてくる声に、ヨシナオは扉を開けようとした手を止めてしまった。

 

『賢弟ッ! 全部脱がなくていいのよッ! そのまま机の上で片膝を抱えなさいッ!』

 

『……こう?』

 

『いいぃッ! 素敵よ賢弟ッ!』

 

『破、破、破廉恥ですわ…………ッ!』

 

『え、えッ!? み、ミカ、脱いでる、の……ッ!?』

 

『はだけた三日月ッ! ネタの神キタァァァァッ!!』

 

『ガッちゃんッ! 鼻血ッ! とりあえず、鼻血拭こッ!?』

 

『あの、ナイトさん? あなたも大変な事になってますよ』

 

『ハイディッ! 今すぐに印刷所に連絡だッ! これは売れるぞッ!』

 

『とりあえず、枚数は一冊三十枚くらいで部数は初回600位でいいかな?』

 

『おいおい皆ッ! なんで半裸のミカばっかで、全部脱いだ俺を見てくれねぇのッ!? 俺の方がヤベェだろッ!?』

 

『『『『『……はっ』』』』』

 

『鼻で笑うとか酷くねッ!?』

 

「なっ、何をやってるんだ、貴様らはぁぁぁぁッ!!?」

 

 ヨシナオは我慢出来なかった。もっとも学舎で『半裸』だの『全部脱いだ』だとの叫んでいたら、真面目な教師は誰だって怒るだろう。

 しかし、教室の中を見た瞬間、その怒りは明後日の方向へ吹っ飛んでいった。

 まず、視界に入ったのは教卓の上に立つ全裸(トーリ)。彼の彼処は術式を使っているのかモザイクがかけられている。

 次に写ったのは衣類のボタンを外し、肩や腹が見える程度に着崩し、机の上で言われたポーズをとる三日月。

 そして、鼻血を流したり、顔を赤くしたりなど、様々な反応を見せる生徒たち(※主に女子)。東も三日月の姿を見た瞬間、顔を赤くし、両手で見ないように、しかし、隙間からチラチラと彼を見ていた。

 

(東くん、それは少女の仕草だぞ? しかし、なんと言うことかッ!? あの真面目な三日月くんまでもがッ……!)

 

「ん? 扉が開いてえええッ!?」

 

 慌てて教室の外に出たオリオトライは扉を閉め、ヨシナオに乾いた笑みを浮かべながら挨拶した。

 

「おはようございますッ! 東を連れてきてくれたんですねッ!? ありがとうございますッ!」

 

「あ、うむ。……て、ちがぁぁぁうッ! 君、これはいったいどういう──」

 

「東、帰ってきたばかりで悪いんだけど、ちょっとだけ待っててねッ!」

 

 その言葉を残し、オリオトライは教師の中へ消えていった。

 それから数秒もしない内に破壊音が聞こえてきたのは幻聴だと思いたい。ヨシナオは胃薬を買おうかと真剣に悩むのだった。

 

「さあ、賢弟ッ! 待ち構えている愚衆共に見せてやりなさいッ!」

 

「……これでいい?」全裸

 

「「「「───ブハァッ!?」」」」

 

「女子数名が鼻血出してぶっ倒れたでござるよッ!!!?」

 

 なお、三日月のヌード写真集の初回番が1日足らずで完売したのはここだけの話である。




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