<ファイヤーボール>や<ヒートボディ>などのスキルを使いこなせるようになった俺は、ラジャフで一旦休息することにした。
ここにいると曜日感覚が無いためまともに休息日を取っていなかった。たまにはいいだろう。
そう言えばオベリスクスネーク狩猟クエの証明部位である蛇の皮を2週間近く溜め込んでいたのを思い出す。
最初の1週間の時には、一度衛兵詰所に80個程の蛇の皮を置いて来たが、どん引きされたっけ。
よく聞いたら衛兵4人で1日10匹ぐらいしか狩れないらしいから、ソロで1週間80匹は驚くわな。
報酬は1銀と600銅になった!ゲームでは一番いい素材で報酬を受け取っても半分位にしかならなかった様な気がする。
でも、今回は2週間で150枚貯めちゃったから何て言われるだろう。ガイコツの近くのヤツをついでに狩っただけなんだけどね。
俺はクエの報酬を貰う為、朝から広場の衛兵詰所へ顔を出すことにした。
「邪魔するぞ。駆除した蛇の皮を持ってきたんで受け取ってくれ」
「おぅ、ガッツか。また大量に持ってきたのか?今度は何匹駆除したんだ?」
「ラクター隊長か。今回は150匹だな」
俺はタブレットを差し出して確認して貰う。
「…またでたらめな数だなおい。普通ソロで狩れる数じゃないだろ?しかも、前に納品してから2週間しかたってないんじゃないか」
「たまたま近くに蛇がいただけだ。おかげでいい練習になったがな」
「ロデューのやつは喜ぶだろうがな。あいつの嫁さんが毒蛇に足をやられてな、かなり腫れたらしいんだ。命に別状はなかったらしいがな」
「そうか。頼んでた時の目がかなり真剣だったな…」
毎日嫁さんに駆除するよう愚痴られてたりしたのだろうか?大変だなロデュー。
「まあ、そう言う訳でラジャフの住民としてはお前に感謝してるってことだ」
「意図してやったことじゃないが、悪い気はせんな」
「これは報酬だ。受け取ってくれ」
タブレットでアイテムをトレードし、俺は3銀を手に入れた。
「つまらんことを聞くが、渡した蛇皮はどうするんだ?」
「素材屋に持っていくと1枚10銅で買い取って貰えるんだ。加工した蛇革はバビリムでバックになるらしいぞ」
蛇皮のバックか。財布とかベルトにもなってるのかな?
「ガッツ。お前、ラジャフでかなり噂になってるらしいぞ」
「何でだ?迷惑を掛けた覚えは無いぞ?」
「逆だ。腕の立つ冒険者がいると話題になっているようだ。商隊の荷物を回収したり、毒蛇を大量に駆除しているから誰がやったか噂になったんだ」
「おいおい。クエストの内容はそんなに簡単に知られるのか?」
「普段はそうはならないな。恐らく女達の情報網から広がったんだろう。商隊はルエリアが、毒蛇はロデューの嫁さんあたりだろう。あいつは嫁さんから問い詰められたら耐えられないからな」
衛兵がそんなことでいいのか。ルエリアも村長の娘だろうが!?
「目立つのは好きじゃないんだ。何とかならないのか?」
「もしかして…、お前ルエリアに狙われてるんじゃないのか?どうもこの噂で村長の受けが良くなる様に仕向けてる節がある。あいつはロデューの嫁さんとも仲が良かったしな」
ここでフラグ消化なのか?いやいや、それはまずいぞ。
「衛兵にも腕に立つヤツはいるだろう。何で俺なんだ?」
「ここにいる衛兵は30以上のヤツばかりだからルエリアには合わないだろう。聞いた話だが、今の村長も若い頃腕のいい冒険者だった時に奥さんから見初められて婿へ入ったらしいからな」
あの村長、入り婿だったのか。
「俺は生粋の冒険者だ。悪いがラジャフに長く居るつもりは無い」
ラクター隊長はニヤニヤしながら言った。
「そうだろうな。上手くルエリアから逃げろよ」
俺は微妙な気持ちで衛兵詰所後にした。
人から好意を受けるのは嬉しい。しかし、異世界でモテるのは違うだろ?
俺は元の世界に帰りたいんだ!
もしもここで恋をしても別れる事が前提なんだ。チキンな俺に恋人との別れなんて耐えられないぞ?
それならば最初から恋人なんて作らない方かいい。へタレとでも何でも言ってくれ!
俺はただの一般人でハーレム体質じゃないんだ。
歩きながらそんな事を頭の中で考えていると後ろから声を掛けられた。
「ガッツ!丁度良かったわ。探してたの」
声の主はルエリアだった。このタイミングで見つかるとはラクターに嵌められたのか…。
「ルエリアか。用でもあったのか?」
動揺していたが、何でもない様に振舞う。
「ええ。ちょっと家まで来て欲しいの。その前に紹介するわ。父のタムドよ」
彼女の隣には、がっしりとした身体で恰幅のいい壮年の男がいた。パパ登場か。
「私が村長のタムドだ。娘がお世話になったようだね」
「ガッツだ。依頼を受けてこなしただけだ。仕事だから気にしないでくれ」
変に意識されたく無いからな。
「そうはいかんよ。商隊の荷物を回収し狼を駆除してくれたおかげで、少しづつ信用が回復して商人の行き来も増えてきたんだ。本当に感謝している」
「それならいつかどこかの冒険者がやっていたことだ。俺が特別な訳じゃない」
「それならば黒オベの毒蛇はどうだ。こんなに短期間に大量の毒蛇を駆除するなんて普通の冒険者には無理な話だ」
「あれも俺の前によく蛇が出て来ただけだ。ただの運だよ」
おいおい、やっぱり知ってるのかよ村長…。ルエリア何で村長の後ろでニコニコ笑ってんだよ?
「まあいい。実は折り入って君に依頼したい仕事があるんだ。家まで来てくれないか?」
「依頼か…。いいだろう」
俺はタムドとルエリアの後を付いて家に向かうことにした。
ログハウス風の大きなロッジに似た村長の家は広場に面しているのですぐに到着する。
木製の重いドアを開けるとルエリアはお茶の用意をするためか台所の方へ向かった。
「ガッツ、取りあえずその椅子に掛けてくれ」
二人が年を重ねた長方形の木のテーブルを挟んで椅子に座るとタムドが話し始めた。
「実は私も以前ラジャフを中心に冒険者をやっていたんだ。ラジャフ街道や黒オベでの活動が主だったが、護衛の仕事でバビリムまで行ったこともある」
「そのことはラクター隊長から聞いたぞ。腕を見込まれて婿に入ったんだろ?」
「その通りだ。実はその頃、黒オベの奥のフィールドへ5人パーティーで挑んだのだが、運が悪くモンスターとの戦闘で仲間を2人失ったところだった」
「先のことを考えていたという訳か?」
「ああ、そうだ。冒険者というのは危険な仕事だ。そこへ村長の娘だったルエリアの母エリスから告白されてな。今のルエリアと同じぐらいの年頃だった」
マジかよ。あんたかなり若い奥さん貰ったんじゃないのか?それに、ルエリアに似ていればかなりの美少女だったろうからな。
「いいタイミングだったんだろ」
「そうだな。少し考えたが彼女に惹かれたこともあって婿に入ることを受けたんだ」
そりゃー、いい歳の男が美少女に告白されたらやられて当然だわ。
「その頃は前の村長も健在だったから少しは依頼もこなしていたんだが、ルエリアが生まれてすぐに義父が亡くなってからは身体も鈍ってしまってご覧のとおりだ」
「村長が危ないことばかりしてはいられんだろ。それで、依頼と言うのは何だ?」
「あぁ、すまんすまん。依頼なのだが、それは君が最近狩場にしている黒オベに関することなんだ」
こうして村長のタムドはやっと依頼について話し始めた。
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