ドルアーガの冒険   作:まぁしい

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19 ニンカルラクの樹の実

「ガッツ。君も知っていると思うが黒オベにはオベリスクの遺跡がある。この黒オベでは遺跡が遺跡が不思議な力を放っているのか、多くの薬草や、有用な木の実が採れるのだ」

 

「そうだったのか。薬草は採取していないからわからんな」

 

「村の皆もよく採取にいったし、私もよく出向いたものだ。だが最近、塔の影響なのかあのあたりも魔物が凶悪化していて私でも近づくこともままならん状態だ」

 

「あれだけモンスターが出ては村人が入るのは無理だろう」

 

「そこで君に採取して来てほしいものがある」

 

「採取か。その程度なら問題ない」

 

「そうか、行ってくれるか?それでは黒のオベリスクの近くにあるニンカルラクの樹の実をいくつか採取してきて欲しい。10個もあれば十分だろう」

 

「その場所の地図はあるのか?」

 

「地図は無いのだが、樹のことはオベリスクの管理人ダウードさんに聞けば分かるはずだ。このナイフと手袋を持って行ってくれ」

 

そう言ってタムドは俺に刃渡り10cmほどの手作りの小さなハンティングナイフと薄皮の手袋を取り出して渡す。

 

「ニンカルラクの樹の実は特殊なのでこれを使って採取して来てくれ」

 

「分かった。明日にでも黒オベに行こう」

 

「ありがたいことだ。よろしく頼むよ」

 

その後、ルエリアの入れたお茶を飲みながら三人で30分ほど雑談をし、村長宅を後にした。

 

 

 

*****

 

 

 

「ルエリア。ガッツは想像以上の力を持った青年だな」

 

「そうでしょう?あんな人はそうそういないわよ!」

 

「恐らく戦士としての力だけでもラクターを超えるし、メリヤ婆に聞いた話では魔術の力も彼女以上の才能だということだ」

 

「凄いじゃない!両方の才能がそこまである人なんて見たこと無いわよ?」

 

「ああ。だから父親としては複雑だが、村長としては彼をルエリアの婿に迎えることに賛成するよ」

 

「お父さん気が早いわよ!まだガッツ付き合ってもいないのよ」

 

「ふふふ、そんなに顔を赤くしなくてもいいだろう。死んだ母さんが私と結婚したのも、今のルエリアぐらいの歳だからな」

 

「そうかぁ。お母さんも同じぐらいだったなんて、そう言われると何だか意識しちゃうな」

 

「お前が噂を広めたせいでライバルも多いんじゃないか?」

 

「そ、そうなるの?拙いわねそれは。何か手を打たなくちゃ」

 

「まあ、頑張りなさい」

 

『ルエリアから噂を聞いて試してみたくなりガッツに依頼を出したが、直接会ってみると噂どおりかそれ以上の様だ。

 娘にはああ言ったが、ガッツがラジャフに残る可能性は恐らく低いだろう。

 あれだけの才能がこの村に収まるとは到底思えない。遠からずバビリムの都へ向かうだろう。

 私の場合は自分に力に限界を感じていたので結婚という道を選んだが、彼はこれからもっと凄いことをやるように思える。

 エリア、お前が生きていたらルエリアにどんな言葉をかけてやっただろうか?私には上手くアドバイスしてやることは出来そうも無いよ。

 ルエリアがガッツの好みど真ん中だったら少しは可能性も上がるが、あの娘はお前に似ないで胸が残念な…』

 

「お父さん、私の胸元を見てナニ考えたの!少しオ・ハ・ナ・シしましょうか?」

 

「い、いやルエリア。何も考えてないぞ?あ、あれ?お話するのに手に棍棒を持つのはどうしてかな?少し落ち着こうじゃないか…」

 

 

 

*****

 

 

 

次の日俺は黒オベに入り、オベリスクの管理人ダウードの元へ向かった。

 

オベリスクはラジャフの出入り口から30分ほど歩いた北東の小高い丘の上にある。途中にはオベリスクスライムなどもいるが、軽く<ファイヤーボール>で瞬殺した。

 

余談だが、オベリスクと言えばエジプトが発祥の地なのだが、現地にはあまり残っていないらしい。古代ローマや後はナポレオンなどが持って行ってしまったようだ。

 

自分が旅行先のローマのサンピエトロ広場で見たオベリスクもその一つだったのだろう。

 

エジプトのオベリスクは花崗岩で出来ているため白っぽい石柱なのだが、ここのオベリスクは黒曜石を使っているので黒く重厚な存在感がある。

 

俺は黒のオベリスクに到着すると、その前にいた40歳ほどのローブを被った男性に話しかけた。

 

「俺は冒険者のガッツだ。あんたがオベリスクの管理人ダウードか?」

 

「私がダウードだが何の用だ?」

 

「実はタムド村長に頼まれてニンカルラクの樹の実を採取しに来たんだ。場所はあんたが教えてくれると聞いてきた」

 

「…ニンカルラクの樹?ああ、それならこの東にあるが、あの実はちょっと特殊でな。そのまま触れるとかぶれてしまって、とても耐えられるものではないぞ」

 

「ほう。だからタムドはこれを渡した訳か?」

 

俺はダウードにナイフと手袋を見せる。ゲームでは手袋をダウードに作ってもらうためにこの辺のオベリスクバット狩ったけなぁ。

 

「ふむ、これはタムドのナイフだな。手袋もあるのか。これならいいだろう。オベリスクの東側の道を真っ直ぐ歩いて1時間ほど行った左側に森があるんだが、その中にニンカルラクの樹がある。霊樹なので感の鋭い者なら分かるはずだ」

 

「多分わかると思う」

 

「あと、あの木の実だが処置をしないと凄い速さで腐るから、採取したら急いで帰ったほうがいいぞ」

 

「了解だ。教えてもらって助かった」

 

 

 

 

俺はすぐにオベリスクの丘を駆け下りるとニンカルラクの樹へ走って向かう。

 

途中で道に迷い出たモンスターを片付けながら走り、30分ほどで目的地に到着する。

 

ウィンドウ上で樹をターゲットすればその素性が判明するのだが、数が多かったため10分ほどかかってしまった。

 

ニンカルラクの樹は幹周りが3mを超える大木と言っていい立派な樹で、森のあまり樹が密集しない場所に立っていた。

 

俺は実がかなり高い場所になっていたので、スキルを使わずに体当たりしてみる。すると、バラバラと直径3cmほどの赤い実がいくつか落ちてきた。

 

10個ほどあったので手袋をはめ、豆の腐ったような、あるいは放置された魚のような、強烈な臭気を放つそれを慎重に採取する。

 

この匂いは実が既に、腐りはじめているということだろうか?ダウードの言うとおり、実は急速に腐りはじめていると見て間違いないだろう。

 

現実に嗅ぐとこれはかなりきついぞ。こんな物を長い時間持ち歩く様になるとはタムドも言っていなかった。これは一種の拷問か?

 

俺は匂いが広がらない様にバッグから素材で持っていた皮で採取した実を二重に包むと、皮紐でくくった先を手に持ってラジャフへ向かい駆けていった。

 

 

 

 

 

ラジャフに着いた俺は、真っ直ぐ村長の家へ向かいそのドアを勢いよく開けて言った。

 

「邪魔するぞ。依頼のニンカルラクの実を取ってきた」

 

村長は自宅にいて待っていたようだ。リビングで木の椅子に座っている。俺は革紐を解いてニンカルラクの実を見せた。

 

「おお、これは正しくニンカルラクだな!ありがとう、とても助かったよ」

 

俺は実を皮で包んだままタムドへ渡した。こんなに匂ったらもう他へ使えないからな。

 

「実を包んできた皮はサービスだ、タムド。それと、俺に何か言うことはないか?」

 

「あー…、言いませんでしたかな。ニンカルラクの実は中々、やっかいな実でしてな。娘のルエリアなど、触るのも嫌がる始末です。冒険者殿に手伝っていただいて、今回はとても助かりましたよ!」

 

村長、今さら殿じゃねーよ!この実をその鼻につっこんでやろうか?俺は村長へジト目を送った。

 

「いやー、どうもありがとう。少ないがこれが報酬だ」

 

俺は村長からNPCでも売っていた回復量が小の強化体力回復剤と強化精神回復剤を10個づつ受け取った。

 

ん、良く見たら村長、あんた頭にこぶを作ってないか?何かあったのか?あんたが回復薬使ったほうがよくね?

 

「それじゃあ受け取るぞ。ちなみに採取したニンカルラクの実はどうするんだ?」

 

「この実は加工することで村の伝統的な体力回復や精神回復の薬になるのだが、加工に時間がかかるのだよ。そう、ルエリア。お前からも礼を言いなさい」

 

「ありがとうガッツ。とても助かったわ。あんな匂いのする実を取ってくるなんて私には絶対出来ないもの」

 

俺はいつの間に3Kの職場で働いていたんだ。「危険、汚い、きつい」…、どれも当てはまってんじゃねえか!?

 

まあ、最近は3Kも「きつい、厳しい、帰れない」とエンジニア職で使われることが多いらしいけどな。ブラック企業ってやつ?

 

そこでルエリアから声がかかる。

 

「ガッツ。ルウアがガッツにお願いがあるから時間があったら神殿まで来て欲しいそうよ」

 

「そうか。何ならこのまま行ってみよう」

 

「それなら私もついて行くわ。どんなお願いなのかしら?」

 

「内容によっては席を外してもらうからな」

 

「分かったわ。それでいいわよ」

 

俺はルエリアと二人でルウアのいるイシター神殿へ向かうことにした。生温かい目で見送る村長の視線を背に受けてな。

 

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