俺はルエリアを伴ってイシター神殿に着くと、近くにいた青年神官に対して巫女のルウアに「ガッツが来ている」という言伝を頼んだ。
10分ほど神殿の入り口前の階段下で待っているとルウアが現れた。神殿の巫女が着る白を基調として青い意匠のラインが入ったローブだ。
しかし、そのローブにも彼女の豊かな双丘を全て隠すことは出来ないらしい。階段を一段一段下りるたびにゆっさゆっさと揺れているその胸元から目が離せない。
それを横からルエリアに見られジト目を送られたが、男としてこの習性を隠すのは無理なので甘んじて受けよう。
「ガッツさん、ルエリア。わざわざ来ていただいてすみません」
「頼みたいことがあるとルエリアから聞いたが?」
「はい。本当は宿の方に伝言を残すつもりだったのですが、ルエリアから村長さんのお家へガッツさんがいらっしゃると聞いたので伝言を頼みました」
「ちょうど買い物に行く時にルウアと会ったの。それでガッツが来るって教えてあげたのよ。あなたなら必ず1日で依頼を済ますと思ったのよ」
何だかルエリアの中で俺の評価が高まってるみたいなんですけど…。
「こんなに早く来ていただけるなんてルエリアに頼んでよかったわ。ガッツさん、ルエリア、ありがとうございます」
「そんなにかしこまらなくていい。また神殿からの宿題でもあったのか?」
「いえ、そうではないんです。ガッツさん、私と冒険者のパーティーを組んでいただけませんか?」
「急にパーティーを組んで欲しいとはどういうわけだ?」
「はい。私も巫女として神殿に使えてきましたが、やっと基本的な回復職(ドルイド)の魔法スキルを習得することができました。そこで実技をかねて冒険者となり自分の魔力を上げたいんです」
「神殿は了承しているのか?」
「もちろんです。多くの神官は冒険者として登録し、回復職として活躍することも多いのです。昔、エブラ様も村長夷のタムドさんやその奥様とパーティーを組んだことがあるそうですよ」
村長は戦士、エブラ神父は回復として奥さんは何やってたんだろう?
「お母さんは剣士だってお父さんから聞いたわ。細身の割りに力も素早さもあったってお父さんが目を細めながら言っていたわよ」
「ですからイシター神殿の特にラジャフの神官や巫女は冒険者としての経験が不可欠なんです。まだまだ未熟ものですが一緒にパーティーを組んでいただけませんか?」
「う~ん。これまでは他の冒険者からの誘いもソロとして活動したいからと言って断ってきたからな。どうしたもんか」
「それならばこう言ってはどうでしょう?神殿から巫女の修行を手伝う依頼を受けたことにしては。形だけならエブラ神父に相談すれば何とかなると思います」
「そうか。それなら何とか言い逃れることが出来るかもしれんな」
ここで横で話を聞いていたルエリアが割り込んできた。
「そういうことなら私もパーティーに入れてもらうわよ。私だってお父さんから剣の手ほどきを受けているんだから。ルウアだけガッツと一緒にいるなんて不公平だわ」
ルウアが少し顔を赤くしながらルエリアに弁解する。
「一緒だなんて、そういうことじゃないのよルエリア。巫女としての修行なんだから」
「そんなことはどうだっていいのよ!これはガッツに聞いてるの!どうなのガッツ?」
顔はクールさを保ちながら、俺は軽い修羅場にかなり戸惑っていた。こんな経験リアルじゃ無いですから~!ここは公平に行くしかないのか…。
俺は二人の顔を目線を流して見た後でゆっくりとルエリアに言った。(目が泳いだ訳じゃないからね!)
「俺としては面倒を見るのは一人も二人も一緒だ。ルウアが神殿の許可を得て、ルエリアが村長の承諾をもらい付いて来るならば特に断るは無い」
「ありがとうガッツ。お父さんには許可をもらっておくわ。まあ、若い頃にお母さんと冒険者やってたんだから断れるはずは無いけどね」
「念のため村長からも形だけは俺に依頼をしたことにしてくれ。村の大物二人からの依頼で断れなかったことにするしか無いだろう」
「了解よ。ねえねえ、いつから冒険者を始めるの?」
「どうするんだルウア。神殿の予定があるだろう?」
「まずは装備を揃えたいんですが、ちょうど明日が当番がお休みなんです。ガッツさん、経験者のアドバイスを受けたいので付き合ってもらえませんか?」
「もちろん私も一緒に行くわよ。楽しみだわ」
えっ…、流れ的にデートっぽくなってきたんですが?もしかしてこれもテンプレなんですか?
焦る気持ちを厚い胸板で抑えつつ、俺は二人に言った。
「それでは二人とも許可を得た上で明日の9時に広場のオーブの下へ来てくれ」
「「はい!」」
ここは揃うんだな?それに、二人に組まれると負けそうになるのは気のせいだろうか?流されないぞ、俺!
こうして宿へ帰ったのだったが、どんなクエストや訓練よりも二人とのやり取りが疲れたのを思い出しながら俺の意識は夜の闇に飲まれていった。
次の朝、約束の時間の10分前ほどに広場へ行くとルウアとルエリアが待っていた。
「遅いわよガッツ!」
「おはようございます。すいませんガッツさん。予定よりかなり前には来てしまって」
「おはよう。俺は予定の時間に遅れたわけじゃないから謝らんぞ?こんなもんだと覚えておいてくれ」
ここでフェミニストを気取っても仕方が無い。
「まあいいわよ。どこから行くの?」
「まずは身体を守る装備が重要だ。防具屋へ行こう。予算はどれぐらいだ?」
「私は今のところ神殿の武器を借りることが出来ますから1銀までなら出せます」
「私は家の財布を握っているから2銀まで出せるわ。それ以上はお父さんを締め上げ…いえいえ、お父さんに相談してみるわ」
こ、こえーよルエリア。そうか、タムドは娘に財布を握られてんのか。何となく哀愁が感じられるなぁ。
「ま、まずはラジャフ街道中心だからそれほど上級の装備でなくても問題ないだろう。それでは行くか」
三人は防具屋でルエリアのレザースケイルやルウアのレザーショルダーといった初期装備を買いそろえ、武器屋ではルエリアが刺突剣(レイピア)を購入したところで昼になった。
両方の店で若い店員からジト目と恨み言を贈られたが、タイプの違った二人の美少女を連れているのだからあたりまえだよね。武器屋の店員が「リア充殺す」ってつぶやいてたのは空耳だと思います。
「後は雑貨屋で装飾品ぐらいか?」
「私は母さんの残したイヤリングがあるから買わなくていいわ」
「私もイヤリングなら両親が冒険者を始めた頃の物があります」
「ルウアの両親も冒険者だったのか?」
「はい。父が戦士で母がメイジでした。母は祖母の血を受け継いでラジャフでも有数のメイジだったと聞いています」
「…もしかしてその祖母って、メリヤ婆さんか?」
「その通りです。ガッツさんも魔導書を買いに行っていますから顔見知りですよね」
「ああ。いろいろと魔法スキルのアドバイスをもらっているよ」
「でもお婆ちゃんがいってましたよ。凄い速さで上達していくから、もうすぐ教えることもなくなるだろうって」
「そんなことはないだろう。メリヤ婆さんは技術に加えて冒険者の経験があるからな。上達は婆さんのおかげでもある」
「そう言っていただくとお婆ちゃんも喜ぶと思います。ガッツさんからはそんな話はしてないでしょう?」
「もちろんだ。面と向かっては言えないな」
「それじゃあ、私から伝えておきますね」
ルウアがメリア婆の孫だったとはな。全然似てないから気が付かなかったぞ?でも、ルウアがメリア婆の様になるところは想像したくないものだなぁ。
それにルウアの両親だが、話が過去形だったところを見ると他界しているようだ。詳しい話はそのうちに聞けばいいだろう。
俺たちは広場の屋台で売っていた串焼きや甘いパンを食べ歩いて昼食にすると、回復薬のポーションを薬剤師のところで購入してから解散することとなった。
「ルエリア、いつなら予定が空いているんだ。冒険者の登録をするためにはドルアーガの塔へ登るクエストをクリアする必要があったはずだ。その前にお前たち二人の実力が見たい」
「そうですね。2日後ならば実習目的で神殿を出られると思います」
「それならば2日後の8時に同じ場所へ集合だ。いいな二人とも?」
「「はい!」」
女子高生二人を受け持った家庭教師みたいな感じだな。俺は明日に備えて宿へ帰った。
夕食を終えて部屋で休んでいたのだが、明日のことを考えるとどうも眠れなくなった。
無理もない。美少女を二人も連れてピクニック(訓練)なのだからいろいろ思うところもあるのだ。だって男の子だもん。
そこで俺は宿を抜け出しある場所へ向かった。どこかって?それはほら、あっち系のお店です。
やっぱりどんなところでもあるよね。さすがに人類最古の職業の一つと言われるだけはあるもんだ。
いやだってさ、生徒に手を出しちゃまずいでしょ?あれだけ魅力的だといろいろ大変なんだよ?
だからどっかの学校の先生みたいに変なところへ手を出さないで、ちゃんとしたお店へ行くわけです。
これはおとなの常識ですからね。紳士は規律正しいのですよ。
お店の感想ですか?詳しくは教えませんが満足しましたよ。ガッツ君は体力ありますからね~。
明日はがんばるぞ~!