ドルアーガの冒険   作:まぁしい

25 / 40
読んでいただきありがとうございます。


25 ドルアーガの塔(3)

”選別の岩”を確認した俺たちは次の用件を済ませるべく、さらに塔の中を移動した。それはラジャフの衛兵テベスからの依頼。この塔で死んだ父親の遺品を見つけるためだ。

 

問題はスライムに倒されて死んだというテベスの父親ネヴィルの遺品が塔のどこにあるか分からないことだ。ただし、多少の救いはある。

 

ゲームの設定が生きているなら1階のグリーンスライムを倒し続ければ、そのうちに遺品である陶片のタブレットをドロップするはずなのだ。テベスのためにも頼むから設定が生きていることを願う。

 

クランクになった広い通路を進んでいくとT字路になった。先に俺が様子を見に行くと右側からグリーンスライムがゆっくりと移動してくるところだった。

 

「やるぞ」

 

そう声を掛けると二人は無言でうなずく。俺は岩の前での戦闘と同じように無言のままスライムへ<プロボ>を放ち、駆け寄って攻撃を加えた。

 

スライムは体当たりを掛けてくるが、一度実物を見れば対処できるのがガッツの並外れた身体能力だ。俺はバックステップでそれをかわす。

 

そこにルエリアの<ソニックブロウ>と俺の片手剣による2連撃で攻撃を加えると、同じようにゼリーのような体は崩れ消えていった。

 

しかし、残念ながらスライムがタブレットをドロップすることはなかった。そう簡単には出ないものだ。

 

ここであることを思いついた。ドルアーガの塔の攻略にはいくつかの利点があるのだが、その一つに階ごとにある謎=”エニグマ”を解き、宝箱を手に入れるというものがある。

 

設定が変わっていなければ1階のエニグマは”グリーンスライム3匹を倒す”だったと思う。そう考えると、あと1匹だ。

 

ついでにエニグマを解いて出てくる宝箱は1階フロアの南西のエリアだったので、そちらへ通路を進むことにする。

 

すると、岩があったところと同じぐらいの規模のホールが現れ、そこに2匹のグリーンスライムがブヨブヨと這い回っていた。

 

「2匹いるのね。ガッツ、大丈夫かしら?」

 

「ああ、俺が両方とも引き付けるから1匹づつ片付けるぞ。ルウアは俺を<ヒール>でフォローしてくれ。余裕があれば攻撃に参加してもいい」

 

「回復優先で余裕があれば攻撃ですね。わかりました」

 

「ルエリア、複数の敵と戦う時は集中して攻撃をしかけ、1匹づつ出来るだけ早く殲滅することが重要になるからな。ただし、やりすぎると敵の攻撃が分散するから注意だ」

 

「ええ、集中攻撃とスキルを使うタイミングに気をつけるわ」

 

「よし、いくぞ!」

 

「「はい!」」

 

 

 

基本的にはウルフの群れとやりあう時と変わりないが、HPが多い敵が複数いる場合は長期戦になる場合もあるので注意するに越したことはない。

 

俺は念のため姿勢を低く保ちながらスライムの15m手前で止まり、近くにいる方から連続して<プロボ>を放っていく。

 

さらに近くにいるスライムへ移動しながら片手剣で一撃を加え、続けざまに近寄ってくるもう片方のスライムにも斬撃を入れる。これで敵の攻撃は俺に固定だ。

 

ただし、2匹分のスライムの攻撃を受けるているため俺の防御は完全ではない。

 

「くっ!」

 

盾で守ってもLv制限で最弱となっているのでダメージを受けてHPを少しづつもって行かれる。

 

「<ヒール>!」

 

ルウアが早めに回復魔法で俺をフォローする。PTでは前衛に適切な回復をしないとな。

 

その間にも俺とルエリアは通常の攻撃でスライムのHPを削り取り止めをさす。

 

「<ソニックブロウ>!」

 

よし、まずは1匹。そこでどこからかファンファーレの音が流れてきた。ゲームの設定は生きていたようだ。

 

「何ですかこれは?」

 

「ルウア、これはエニグマが解かれた合図だ。このホールのどこかに宝箱が出現する」

 

すると言ったとおりホールの中央に宝箱がポップした。

 

「ただし、宝箱を見るのはこいつを倒してからだ!」

 

スライムはその大きな体で俺を押しつぶそうと円を描くようにサイドステップで逃げる俺を追ってくる。

 

しかし、残念ながら残り1匹になったからにはいつものタコ殴り決定だ!スライムは三人からの攻撃を受け、あっさりとやられてしまった。

 

 

 

「ねえガッツ、あの箱には何が入っているの?」

 

「開けてみな」

 

ガシャッ。ルエリアが木製の古ぼけた宝箱を開けると、そこには”ツルハシ”が入っていた。

 

「何でこんな物が入ってるの!」

 

そりゃあそうだ。宝箱に土木作業の道具が入っているとは普通思わない。

 

「聞いたことがあります。このツルハシは”カッパーマトック”と言って塔の内部の壁を壊すことが出来ることがあるそうです」

 

「へぇ~。あんまり丈夫そうな感じじゃないけど大丈夫なのかしら」

 

「攻撃には向かないが壁を壊すことはできるぞ。だたし使うのはもっと上の階だがな」

 

「今度は上の階まで行きたいですね」

 

「そうだな。ルウアの状況を見ながらまた来てみるか?」

 

「ルウアは神殿で巫女の仕事があるから仕方ないわね。ドルイドがいないと塔を上っていくのは難しそうだしね」

 

「そういう訳だ。さあ、遺品が見つかるまでスライムを片付けながら捜索するぞ」

 

「「了解よ(です)!」」

 

 

 

その後もスライムを倒しながらフロアーを捜索すると、一番奥の2階への扉を開ける鍵のあるホールまで辿り着いた。

 

「あれが階を上がる階段の扉を開けるキーだ。今日は上がらないが、あそこを開けると宝箱があったはずだから取っていくぞ」

 

「でもこのホールにはスライムが3匹もいますよ?」

 

「なに、始めに1匹を俺が<プロボ>で引っ張って来るからいつもと同じだ」

 

同時に3匹を相手にする必要はない。ある程度モンスター同士の距離が離れていれば1匹づつ別の場所まで引いて倒す方が危険が少ないのだ。

 

フィールドでもモンスターがポップしない安全地帯を見つけ、そこでタイマンを張るのがソロプレーヤーの常識だ。

 

案の定、1匹倒した後で2匹を軽く倒して鍵を取ることに成功した。

 

同時にモンスターが”ネヴィルのタブレット”をドロップしたことに気付いた。

 

「おい、テベスの依頼も済んだようだ」

 

「えっ!タブレットも見つかったの?」

 

「ああ、ネヴィルはフロアー奥まで来ていたんだろうな」

 

「もう少しで鍵を取るところで死んでしまって…、無念だったでしょうね」

 

「そうだな。しかし、これでテベスにいい報告が出来る。急いで帰るとするか」

 

「そうね。ラジャフが恋しいわ」

 

「私も巫女の仕事があるので早く帰らなければ」

 

俺たちはフロアーを急いで戻り、”選別の岩”のホールにあった扉を開けて宝箱から回復薬を取り出すと、最初に塔へ入ったホールにある出口の扉に手を当てた。

 

『ああ、ガッツさん達ですね。この塔から出ますか?』

 

結界の管理人が反応して『声』をかけてくれた。こちらも思考によって『声』をかける。

 

『目的は済んだので出してくれ。みんな無事だ』

 

『それは良かった。今から結界に綻びをつくって出口にします』

 

「二人とも、塔を出るぞ。近くに寄っていてくれ」

 

「「はい」」

 

すると、ルエリアとルウアがなぜか両側から密着してくる。ル、ルエリア、腕に絡みつくんじゃない!ルウア?む、胸が当たってるよ~!こんなの状態耐えられんわ!

 

間もなく三人は光に包まれて塔の外へと出ることが出来た。さすがに二人とも結界の管理人の前では密着するのをやめたようだ。

 

「お世話になりました」

 

ルウアが管理人に頭を下げてお礼をいう。

 

「また来ますからよろしくお願いしま~す」

 

ルエリアも挨拶をして次に来ることを予告していた。

 

「またお出でください。冒険者のみなさんがドルアーガの塔の謎を解いて、バビリムから闇を取り払ってくれることを祈っています」

 

「じゃあな」

 

俺たちは足早に管理人と別れ、塔の監視者エムドの元へ向かった。

 

 

 

 

 

「おお、お前たち戻ったのか。選別の岩…アサドの奴には、会うことが出来たか?」

 

「会えました。お知り合いの方だったのですか?」

 

「ああ…。俺も先発隊の隊員でな。奴は我々の隊長だったんだが、あの聖刻の力で何とか、ここまで脱出することが出来たんだ」

 

「大変だったのですね…」

 

「まあ、お前が無事でよかったよ」

 

「でも、強くないと上の階へは行けないのね」

 

「ああ、そうらしいな。まあ、お前らみたいなひよっこには縁のない話だ」

 

「そう考えるとたくさんの魔物を倒して階を上がり、悪魔ドルアーガを倒したギル王子と巫女カイは凄いのですね」

 

「そうとも!お前なんか、生きて帰ってこれただけでも感謝しろってこった。推薦状を書いておいたから早くタムドに報告してこい!」

 

「わかったわ。ありがとう!」

 

こうして俺たちは冒険者の試験を無事にクリアしてラジャフへ戻ることになった。

 

 

 

 

 

 

日も暮れてはじめ、空が茜色にころラジャフに到着した俺たちは入口のところで立っていた衛兵のテベスを見つけた。

 

「お前たち、無事のようだな」

 

「ああ、三人とも無事だ。そして、これが依頼の品だ」

 

俺はバックから古ぼけたタブレットを出してテベスに渡した。

 

「これは…、親父がいつも身につけていたタブレットじゃないか。ありがとう。懐かしいな、親父を思い出すよ」

 

テベスの目にはうっすらと涙がにじんでいるようだった。やめてくれ、こっちまでウルウルきそうじゃないか。キャラじゃないから泣けないし~。

 

「それで親父さんの供養をしてやってくれ」

 

「本当にありがとう。こんなもので申し訳ないがお礼に受け取ってくれ」

 

そういってテベスはおれに装飾品のブロンズリングを手渡した。

 

「本当は受け取らないかとも思ったが、俺も冒険者だから依頼を完了したら報酬を受け取ることもこの二人に知っておいて欲しい。ありがたく受け取っておこう」

 

「そうしてくれ。これで少しは俺の気も済むってもんだ」

 

俺たちはテベスの依頼を完了し、笑顔で彼の元を後にした。うん、やっぱり依頼を完了して感謝されるっていいよな。

 

その後は、タムドへエムドから預かった推薦状を渡して試験の報告書を預かると、それを持ってイシター神殿のエブラ神官のところへ向かった。

 

「ただいま戻りました」

 

ルウアがエブラ神官へ帰還のあいさつをする。

 

「よく無事にもどりました。ガッツさん、ご苦労様でした」

 

「それほど手のかかるものでもなかった。いい生徒たちだったよ」

 

「そうでしたか。二人ともお疲れ様でした。これが冒険者の証となるタブレットです」

 

そういうとエブラ神官は二人に石で出来た薄い板のようなものを手渡す。俺も持っている”冒険者のタブレット”だ。

 

これがあれば各街にある倉庫が使えるし、国からの依頼も冒険者として正式に受けることが出来るのだ。

 

「今日は疲れたでしょう。とりあえず、今は身体を休めておきなさい。また改めて、任務を依頼しましょう」

 

「「はい、エブラ様」」

 

 

 

 

 

こうしてルウアから受けた長い依頼は終わりを告げた。本当に疲れた(精神的に)。

 

ああ、ルウアからの報酬も受け取ったよ。前に作っていたかざり紐で編んだミサンガのようなものだった。

 

巫女のルウアが祈りを込めながら編んだらしいから何か効果があるんじゃないかな?

 

ほう、HP+5と全耐性+3が付いてるみたいだ。ゲームの課金アイテム並みだわ。がんばったねルウア!

 

俺はイシター神殿の前で二人と別れ、定宿の夕食を楽しみに帰ることにした。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。