ドルアーガの冒険   作:まぁしい

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26 剣技クラッシュスマイト(1)

俺がこの”ドルアーガ”の世界に来てからもう1ヶ月近くが過ぎようとしている。

 

始めは不安だったが、ゲームで使っていたスペックの異常に高いガッツの身体と身に付けていた装備やスキルのおかげで思っていたよりは平和に暮らせている。

 

中級レベルの俺でもやっていけるのかと思っていたが、イベントをクリアしてみると時間設定がゲームスタート時点であることが確認できた。

 

これならば高Lvの冒険者は今の時点で少ないはずなので街にいるかぎりは不安は少ない。

 

というよりも、ラジャフで俺より高いLvの冒険者を見たことがないし、衛兵隊長のラクターでさえLv25だ。

 

しかし、唯一人だけ二次職を見つけた。それはエブラ神官だ。何と彼は”ハイプリースト”というドルイドの上位職だった。

 

ハイプリーストとはドルイド(神官職)の中でも回復魔法や補助魔法に特化した職だ。パーティーではとても頼りになる存在と言える。

 

威厳があると思ってたんだけど、実力もあったんだね。NPCでは高飛車な神官だと思ってたけど、ここでは紳士的ないい人だもんな。設定も多少変わっているんだと思う。

 

そのうちに王都であるバビリムへ行く予定なので、エブラ様とは仲良くして紹介状でも書いてもらおうと思っている。

 

今までの流れがゲームの進行とさほど変わらないと言っても安全の保証はないし、やっぱりバビリムへ行って情報を集める必要があるからね。

 

そんなことを考えながら今日も1日を過ごすのだ。

 

 

 

 

 

今日の過ごし方なのだが、まずはパーティの予定がないので暇だ。二人に会えないのは少し残念だな。

 

決まった仕事がない(家事手伝い?)ルエリアとペアで狩りに行くことも可能だが、「私のいない時に…」とルウアにジト目でにらまれるのが確定なのでやめておく。

 

そこで俺は朝の日課となった湖畔での剣の素振りを終えると、身体をきれいに拭いてしっかりした朝食を取った。

 

朝食の後は、軽いストレッチをしてから修練に行く準備をする。今日は1日かけて計画していた修練をやることにした。

 

こんな1日がかりの修練や遠出の依頼の時には終わるまで街まで戻らずに過ごすため、ランチを作ってもらうことが多かったりする。

 

本来は中世ヨーロッパと同様に2食が基本のこの世界なのだが、元の世界の習慣と燃費の悪いこの身体を維持するために宿の若女将であるアイリーンにサンドイッチ風なものを作ってもらっているのだ。

 

他の冒険者は干し肉などの軽食で済ませることも多いようだが、同じ宿に泊まる冒険者や旅人も最近は俺のまねをしてアイリーンにランチを頼む者もいると聞く。

 

サンドイッチの具や調味料も俺が少しづつアドバイスしていたりする。食品を扱っている仕事をしていただけに、俺は食事にはかなり重きを置いている。

 

それに元々幼い頃から両親は共働きだったし、大学の4年間も節約のためもあって殆んど自炊していたようなものだった。なので一通りの料理は作れるし、そこそこの知識もあったりする。

 

先ほどランチに作ってもらったサンドイッチの具を見たが、スモークチキンのようだ。先日俺が作り方を教えたら、いろいろスモークするチップを研究しているようだったからなぁ。

 

俺はランチで食べるスモークチキンの味と香りを楽しみにしながら、街の出入り口を守る衛兵にあいさつをして”黒のオベリスク”のフィールドへ橋を渡り入っていった。

 

 

 

 

 

ガシャッ、ガシャッ。

 

「はっ!」

 

俺はいつものように斬馬刀に似た両手剣、ブラックファルクスでガイコツモンスターのテインデットスカルの振り下ろした棍棒をパリィーで弾きながら斬撃を放って骨を両断する。

 

ガラッ、カラン、カラン。

 

HPを失ったガイコツは崩れ去って消えてしまう。残ったのはバッグへドロップが確認された”骨”や金属類のアイテムだ。

 

これでスカルを10体倒したが、ここまでは慣らし運転だ。今日のメインイベントは”迷いの森”でのモンスター狩りである。

 

今までの訓練ではパリィーの習得や、マンガで見た修練を参考にした剣術の訓練を中心にやってきた。

 

よくある、木の枝に木の棒を何本も吊るして木剣で叩いたり、薩摩次元流のように手の皮が何度も剥けるまで立ち木を木剣で連打したりね。

 

街中では見せられないLv45の大剣グレートソードを使って、重量のある剣による素振りやゆっくりした型をこなして剣を自在に振るうために必要な筋肉を鍛えることもした。

 

もっとも、今回向かう”迷いの森”にいるモンスターとて所詮はLv20前後のものが殆んどなので恐れる理由はない。

 

ではなぜメインイベントかと言えば、今日はとうとう練習に練習を重ねたスキル<クラシュスマイト>(通称:クラスマ)を使うからだ。

 

 

 

両手剣使いの主戦スキルである<クラスマ>だが、前転宙返りをしながら敵を剣で切りつけるという現実的に考えるとかなり高度な技であり、使うことに躊躇していた。

 

事前練習を重視する俺としては、その動きに慣れるために湖畔の草の上で前転や前転宙返りをしていたし、慣れてからは軽い装備(皮鎧)を付けた状態で前転宙返りをした。

 

一度、ルエリアとルウアにその場を見られて、ルエリアに笑われたり、ルウアにキョトンとした顔をされたこともあったっけなぁ…。

 

まあ、生身の自分では絶対に出来なかった前転宙返りが出来たのも異世界だからだろう。それだけでも凄いと思うんだけどね。

 

しかし、<クラスマ>の訓練をして思い至ったことが一つあった。それは土属性のスキルのことだ。

 

この世界のスキル(魔法や剣技)には、火・水・土・風・光・闇と6属性があるのだが<クラスマ>は土属性なのだ。

 

土属性というのは魔法の中ではとても地味な種類のもので、大地の力を利用して行動を制限したり、敵から受けたマイナス効果を打ち消したりするものだった。

 

それがなぜ剣技に属性として付いたのだろう。その理由は大地の力を利用した重力制御ではないかと思う。そう、通常の装備である金属鎧を付けていては前転宙返りなど絶対に出来ないはずなのだ。

 

前転宙返りあびせ切り?とでも言える大技<クラスマ>には装備や冒険者自体を身軽にするため土属性が働いているんだろう。

 

それに<クラスマ>にはとても短時間だが”スタン”と言われる気絶効果を発生させることが出来る。これも大地の力のおかげなのだろう。まあ、普通に剣で殴られても気絶ぐらいはすると思うが…。

 

 

 

まったく関係ないが、格闘技の骨法に”浴びせ蹴り”という技があり、これは身体を投げ出すように相手の前で前転し、主にかかとを相手にヒットさせるものだ。

 

昔はプロレスなどでも良く使われていたため、俺は形は違うが<クラスマ>から”浴びせ蹴り”を想像してしまう。

 

<クラスマ>が上手く成功したら、今度はラジャフ街道あたりの弱いネズミと生身で戦ってみようかと思っている。前から、シャドーボクシングや蹴りの訓練は趣味でやっていたのでそこそこ自信もあるんだ。

 

極真空手の故大山総裁が戦った牛に比べれば簡単のような気がするしね。ウィリーみたいに熊と戦う気は無いですよ?(古い話ですいません^^;)

 

 

 

俺は<クラスマ>を試すため黒のオベリスクを北へ向かい、西側の桟橋から迷いの森へ入った。

 

森の中を進み最初に現れたのはLv18リーフスパイダーだ。攻撃力もさほど高くないので練習には持ってこいの相手だ。

 

まずは遠距離からゲームでは不可能だった魔法を使ったコンボを試す。

 

「<ファイヤーボール>!」

 

もちろんこの<ファイヤーボール>は改造版だ。詠唱すると俺の左手の指先に5cmほどの青白い火炎弾が出現してモンスターへ矢のように飛んでいく。(通常版は直径20cmほどの赤い火炎弾)

 

青白い火炎弾はリーフスパイダーの胴体にめり込んで爆発すると大きなダメージを与えた。さらに俺は、メイジのように近づいてくる敵から離れながらもう一度<ファイヤーボール>を詠唱した。

 

2発目は足の付け根あたりに当たったようだ。ダメージの大きさと足を1本失ったためにバランスが取れず、モンスターは青い体液を流しながら立ち止まってしまっている。

 

よし、今だ!俺は両手剣を上段に構えて走り出すとスキルを詠唱した。

 

「<クラッシュスマイト>!」

 

リーフスパイダーの4mほど手前で重力を無視して2mの高さまでジャンプした俺は、前転宙返りをするとその勢いを両手剣に乗せてモンスターの頭部へ叩き込んだ。

 

ズガッ!

 

かなりいい手応えだ。両手剣はリーフスパイダーの頭部を叩き割り息の根を止めた。モンスターは淡い光となって消えていく。

 

今の<クラスマ>は急所に上手く入ったのでクリティカルに近い威力だった。<ファイヤーボール>もそうだったが、この世界では偶然性ではなく攻撃の当たり所がダメージ判定に大きく作用するようだ。

 

しかし、<クラスマ>を使っただけで満足した訳じゃない。この迷いの森には戦っておきたいモンスターがいる。俺はそのために<クラスマ>を習得する必要があったんだ。

 

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