ドルアーガの冒険   作:まぁしい

31 / 40
読んでいただきありがとうございます。


31 襲われた旅人(2)

俺が見たのは森の中で山賊まがいのヤツラに襲われた旅人だった。こんなイベントは聞いたことがないぞ?どうなってるんだ?

 

すでに一人は倒れ、もう一人も片腕を怪我して追い詰められている。さらに、小柄な人物をレイピアを持った若い金髪の男が守っていた。

 

山賊は少なくとも5人確認できる。こちらには気付いていないようだから不意を突けば有利に戦えるはずだ。

 

もっとも、人間相手の戦闘は俺も初めてなのでかなり不安がある。リアルでも殴り合いすら数えるほどしかしていないのだから当たり前だ。

 

それでも、ルエリアとルウアをこの戦闘に巻き込むことだけは出来ない。小心者の俺は二人が傷つくことが何よりも恐ろしいんだ。

 

 

 

「俺が魔法で先制攻撃を仕掛けて突入する。二人は事が片付いてから来てくれ」

 

「一人で行くなんて無理よ!」

 

ルウアもその言葉に肯く。

 

「お前たちは俺の全力を見ていない。悪いが周りでチョロチョロされた方がやりにくいんだ」

 

ルエリアは唇を強くかみ締め、ルウアが肩を落として悲しそうに下を向く。

 

かなりキツイ言葉を言ったが、彼女たちを守るためなら恨まれても仕方がないと思っている。それくらいの覚悟はあるつもりだ。

 

ただし、一切のけ者にするには惜しいので指示を出す。

 

「いいか。二人は俺が左側の三人を倒したら、傷付いている人を保護してヒールで回復するんだ。いいな」

 

二人ははっとして、ゆっくりと肯いた。そして、俺は左手を前に突き出す。

 

 

 

先制攻撃として選んだ魔法は、つい先日に命を危険を感じながら習得したものだ。

 

「<アイスブレスⅡ>」

 

俺は小さな声でつぶやくと、MP15を消費して大気中の水を凝縮冷却し作り出した氷塊を放つ。氷塊の大きさは直径40cmはあるだろう。

 

その重量は30kg以上あると思われ、この大きな氷塊がぶつかれば大きなダメージを与えることは明白だ。

 

ボゴッ!

 

背後から不意に襲ってきた氷塊を受けて一人の男が倒れた。残った二人の男は、どこから襲われたのかと素早くあたりを見回している。若い男と対峙していた男たちも気になるようだ。

 

続けて、俺はもう一度<アイスブレスⅡ>を男たちに向けて放つ。

 

今度はおそらく氷塊が飛んで来るところが見えるのだろう。目標となった短剣を持ったの男は避けようと動いた。

 

しかし、俺はその氷塊の軌道を変えて男に激突させることに成功する。これで敵の戦闘力は半減したはずだ。

 

俺は傷を負った男のそばにいる敵を目がけて走り出す。そして、バッグから直接攻撃するためにアイテムを取り出した。

 

それはいつもの両手剣ではなく、短くてゴツイ姿をしているアイアンメイスと小さな丸い金属製の盾だ。

 

アイアンメイスと呼ばれるこの金属製の棍棒は、本来ドルイドの武器だが、俺は対人用にこの武器を選択した。その理由は、出来れば人を殺したくないからだ。

 

剣で戦えば必ず相手を切ることになり、殺してしまう可能性も高いと思う。俺はまだ心理的に”殺人”を受け入れられないのだ。

 

ガッツの記憶が蘇ったので、戦いで人を殺したことを頭では理解しているのだが、自分の意志で人を殺すことにはどうしても抵抗を感じてしまうのだ。

 

先端部分に鉄塊を付けたアイアンメイスは、モンスター相手だと少し頼りないが、人が相手なら十分に大きな攻撃力を持つ。これで殺さずに敵を制圧したい。

 

 

 

「何者だ!」

 

髪の赤い30台ぐらいのがっしりとした体格の男が叫んだ。いや、お前たちこそ何者だよ?俺は無言で片手剣を持った男に近づく。

 

ステータスのうち名前とLv、職業を確認することができる俺は男を”視た”。Lv16 ベン 冒険者。こいつら山賊じゃなくて冒険者なのか?

 

男は近づいた俺に剣で切りかかってきた。それを盾で受け流して相手の体勢を崩してこちらが反撃にでる。

 

「おらっ!」

 

恐怖感からだろうか?振り上げたメイスを相手に叩きつける時に思いがけず声が出てしまった。攻撃を受けるかもしれない恐怖感と、人を傷つけてしまう恐怖感が入り混じっているのだ。

 

男は木製の盾でこちらの攻撃を受けていたが、力任せでもLv差のある相手からの攻撃をだんだん捌ききれなくなってきたようだ。

 

剣による反撃も体勢が後ろに残っているので力がなく、簡単に防御できた。

 

「がはっ」

 

とうとう受けきれなくなった男の脇腹に皮鎧の上からメイスがめり込む。手の感触で肋骨が何本かいったことがわかる。

 

俺は倒れた男に近寄り、剣を持った右手を足で踏み潰すと、手から離れた剣を遠くへ投げ捨てた。<アイスブレスⅡ>の攻撃で近くで倒れていた二人の男の武器も離れたところへ投擲する。

 

一人は起き上がりそうだったので側頭部に軽く蹴りを入れておいた。これくらいなら死なないだろう。

 

俺は傷を受けてやっと木にもたれかかっていた男に向かって声をかけた。

 

「大丈夫か?」

 

「ああ、助けてくれてありがとう。それよりも、たっ、頼む。あっちの二人を助けてくれ」

 

目を向けると、フードを被った人物と剣を持った若い男が二人に挟まれたいた。俺が途中で乱入したために一人がこちらを注意しなければならず、決定的な攻撃には至っていないようだ。

 

「分かった、俺が助けよう。安心して休め」

 

そう返答すると、男は緊張の糸が切れたように木へ寄りかかったまま座り込んでしまった。

 

 

 

俺はフォローに入るはずのルエリアとルウアが近くまで来ていることを確認すると、残った二人の敵を始末することにした。

 

遠距離から<アイスブレスⅡ>をスキンヘッドの男へ放つ。男はこちらへ注意を向けていたため、持っていた盾で何とか氷塊を受けてダメージを最小限にとどめたようだ。

 

しかし、魔法による攻撃は追加効果があり、その冷気を身体へ受けるため行動力が一時的に低下するのだ。人間誰だった急激に冷やされれば筋肉も動きにくくなるものだしね。

 

敵の一人である若い茶髪の男は、旅の若い男と対峙していて動けないようだ。俺はダッシュしてスキンヘッドの男との距離を一気に詰めた。

 

俺はその勢いのままに相手の首筋へメイスを上から振り下ろした。しかし、直前に動くことが出来るようになった男は盾でメイスの鉄塊を受け止める。

 

そればかりか剣を突き出して反撃に出てきたので、俺もその攻撃を盾で受け止めていったん距離をとる。

 

「お前ら降伏しろ。命までは取らん」

 

俺はスキンヘッドの男へ声をかけた。

 

「そうもいかねぇんだよ。こっちにも事情ってもんがあるんだ」

 

やはりただの山賊行為とは違うってことか。いくら何でも国が認める冒険者を集めて人を襲うのはリスクが高いはずだ。

 

「それならば叩きのめしてから、ゆっくりとその事情ってやつを聞かせてもらおうか」

 

「面白れぇ、やってもらおうじゃねえか。<ヒートスラッシュ>!」

 

男は片手剣を構えると剣技スキルにより燃焼させた武器を振り降ろしてきた。俺は装備している金属の盾でその攻撃を受け流してダメージを最小限にした。

 

この男がリーダーなのかもしれない。Lvも確認すると18あるので、この世界ではそこそこ経験のある冒険者だろう。

 

「おらおらっ、どうした!<ヒートスラッシュ>!」

 

さらに<ヒートスラッシュ>を連打してくる。溜めの少ない剣技スキルを連打してくるところを見ると対人戦闘には慣れているようだ。

 

しかし、今ならばこの程度の攻撃を捌くのには苦労しない。俺は<ヒートスラッシュ>の剣を横から強引に盾で殴りつけて弾くと、隙が出来たところへ踏み込んだ。

 

「<ヒートボディ>」

 

「ごふっ」

 

熱気を纏(まと)った俺のショルダーチャージがまともに身体へ入った。モンスターでもその威力で動きを止めるほどなのだから、人間の身体に決まればどうなる?

 

スキンヘッドの男は3mほど飛んで地面で一度バウンドすると、仰向けのまま気絶した。クリティカルで入ったようだ、…やりすぎたかな。たぶん死んでないと思うんだが…。

 

「後はお前だけだ」

 

「うゎああ!」

 

短剣を持った若い茶髪の男にそう言い放つと、追い詰められた男は短剣を振り回しながら襲ってきた。

 

残念なやつだな。俺は盾をぶつけて短剣を弾き飛ばすと、メイスを突き出して鉄塊を腹にめり込ませた。

 

「これで終わりだな」

 

「助かった。俺はこちらの方の護衛でアルフェスという。危うく殺られるところだったよ。礼をいう」

 

金髪の若い男が声をかけてきた。彫りの深いイケメン野郎だ。特に意味はないが反感を覚える。

 

「ありがとうございました」

 

澄んだ声がフードを被った人物の方から聴こえる。ベージュ色のローブのフードを取ると、そこにいたのは金髪の長い髪をした美女だったのだ。

 

「サリアと申します。ラジャフまで旅をしている者です」

 

 

 

その後、傷ついた従者を介抱しながら話を聞くと、彼らは四人でバビリムからラジャフへ旅をしていたらしい。

 

今日はドルアーガの塔近くで昼に休息してからラジャフへ出発したのだが、街道で山賊のような男たちに囲まれて森へ逃げ込み戦闘になったとのことだ。

 

残念ながら従者の一人は首筋を切られ、すでに死んでいた。もう一人の従者はルウアのヒールで表面上は腕の傷を再生したが、もっと上位の回復魔法でなければ筋肉の再生は出来ないらしい。

 

俺たちは相談して、この襲撃グループのリーダーと思われるスキンヘッドの男だけを連れてラジャフへ向かうことにした。

 

他の連中は武器を奪い、縄で縛り上げて街道へ放置だ。もっともいつもボウケンがいる安全地帯に置いていくのでモンスターに襲われる可能性はほとんどないだろう。

 

 

 

しかし、俺は旅の三人が嘘をついてことに気付いてしまった。彼らの職業を確認したからだ。

 

アルフェスは”宮廷騎士”。そして、サリアは”王女”だったのだ。

 

お姫様キターーー!どんなテンプレだこれ!?もうフラグたったのか?

 

ゲームの知識からは事情がまったく見えない。

 

でも、こっちからはどうしてお姫様がこんなところにいるかなんて聞けないし。

 

俺は先行きにかなり不安を覚えていた。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。